チェコ好きの日記

もしかしたら木曜日の22時に更新されるかもしれないブログ

「あの頃は本当に楽しかった」と語るパタゴニア原住民のこと(前編)

前回、ブエノスアイレスキリスト教テーマパーク「ティエラ・サンタ」について書いた。今回は南へ下り、アルゼンチン・チリのパタゴニアという地方について。なお南半球なので、当然ながら南下するほど気温は下がっていく。


私たちの祖先は、約10万年前にアフリカ大陸で誕生したホモ・サピエンスだということになっている。ホモ・サピエンスはアフリカ大陸からユーラシア大陸へと移り住み、そこからベーリング海峡をこえて、北アメリカ大陸に到達した。そしてそのあとも、アメリカ大陸をどんどん南下していった。つまり、南米大陸の最南部であるパタゴニアは、「人類が最後に到達した場所」なのだ……ということになっている。現在わかっている限りでは。



このパタゴニア、現在はアルゼンチンに属する地域とチリに属する地域があるのだけど、19世紀中頃までは、国境線がぐちゃぐちゃだったらしい。1856年頃から「ちゃんとしましょう」と話し始め、1881年に両国の合意がなされた。


そんなくらいなので、おそらく多くの旅行者はアルゼンチンとチリの間を、ジグザグと行ったり来たりしながら進むことになるだろう。その度にいちいちバスを降りて国境でスタンプを押してもらわないといけないので、これがけっこうめんどくさい。ちなみに長距離バスで移動している間、窓の外の景色は……なーんもない。まじで、なーんもなく、地平線のみがある……。


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エルカラファテとプエルト・ナタレス


まず、ブエノスアイレスから飛行機で2時間半ほど行った先にあるのがエルカラファテ。ペリト・モレノ氷河を見に行く際の拠点となる町なのだけど、野犬が多い。人間で怖い人はいなかったが、まじで、野犬が怖い。食べ物を持って歩くと匂いを嗅ぎつけてくるのか近寄ってきて吠えられます。


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パタゴニアにある氷河は、南極、そしてグリーンランドについで世界で3番目に大きいのだそうだ。船に乗って近くで見たり展望台にのぼって遠くから見たりできるのだけど、見えている部分はほんのわずかで、その約7倍が水中にあるという。話で聞いてもでかいが実際に見るととにかくでかい。あまりにもでかいので脳がバグるくらいでかい。つまりすごくでかい。しかも、温暖化の影響で毎年小さくなってるんですぅ〜とか言われるのかと思いきや、なんと、毎年でかくなり続けているという……。


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そして、エルカラファテからバスで7〜8時間行くと着くのがチリのプエルト・ナタレス。ここからパイネ国立公園に山を見に行くのだけど、この地域の原住民テウェルチェ族は、パイネの山々を「神の山」と崇めていたのだとか。私もまったく同じ「神様が棲んでそう」という感想を抱いたので、人類、そういう感覚は普遍的なんだなーと思ったりした。



そしてフエゴ島、ウシュアイア

そして世界最南端にある都市が、アルゼンチンのウシュアイアである。ここにはかつて「セルクナム」と呼ばれる人々が住んでいたが、その最後の生き残りの1人であったビルヒニア・コニンキ氏が、1999年にこの世を去っている。孤独とアルコール中毒に悩む日々の中で、死因は心臓発作だったそうだ。

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上の写真は前述したチリのプエルト・ナタレスの観光案内所? を撮ったものだけど、「セルクナム」と呼ばれる人々は、「ハイン」という儀式を行なう際に、写真のような珍妙なペインティングを体に施した。


ハイン 地の果ての祭典: 南米フエゴ諸島先住民セルクナムの生と死

ハイン 地の果ての祭典: 南米フエゴ諸島先住民セルクナムの生と死


「ハイン」はどのような儀式だったのか。珍妙なペインティングを体に施すのは主に男たちで、彼らはこれによって「精霊」に扮装する。そして、クロケテンと呼ばれる成人候補者たちが、この精霊たちに拷問を受ける。それが、男性が成人になるための通過儀礼だったらしい。


面白いのは、これが人間の体にボディペインティングを施したものであることは一目瞭然なのだけど、その儀式を見守る女性たちは、そのことについて「知らないふり」をし続けていたらしい。そして男性たちは、女性たちは本当に精霊の正体を知らないと思い込んでいた。


と、ここで時間切れになってしまったので、続きは来週にします。かつてない中途半端ブログだ!


愛が暴走するカトリック系テーマパーク「ティエラ・サンタ」in ブエノスアイレス

4月にアルゼンチンとチリに行っていたことはすでに書いているけれど、今回はその中でも、ブエノスアイレスにあるカトリック系テーマパーク(という名称はたぶん存在しないが、そうとしか呼びようがないので)「ティエラ・サンタ」について個人的メモを兼ねて記録。ちなみに「ティエラ」はスペイン語で「地」、「サンタ」は「聖なる」なので、聖なる地……つまり英語でいうと「Holy land」です。Googleマップで見ると「Holy land」で出てくることがある。最初地図で見たとき「Holy landて!!!」と思ってしまいました。


こういうノリで、日本人的感覚からするとちょっとfunnyなテーマパークではあるのですが、かなり真面目に作られてもおり、決して現地の人は冗談でやってるわけじゃないというのはわかった。実際、テーマパーク内には各展示の側にかなりしっかりとした説明書きが並んでいました(全部スペイン語でまったく読めなかったが)。


日本に帰ってきてから敷地内でもらった英語パンフレットを読み直したのだけど、ここは、愛が溢れすぎるあまりちょっとfunnyになってしまっているが、キリスト教カトリックについて考える上でとてもinterestingな場所であるとも再認識しました*1


場所はここ。ブエノスアイレスの中心部からはちょっと外れている。バスで近くまで行き、あとはもうどれにどう乗ったらいいのかわかんなかったので、流しのタクシーをつかまえて行きました。ブエノスアイレスのバスは難しいんだよ……!



外国人観光客向けにはあまり作っておらず、あくまで現地の人用のテーマパークであるという印象(もしくはアルゼンチン以外のラテンアメリカの人用)。現地の人って具体的には誰が行くのかというと、幼稚園〜中学生くらいの集団を何組も見たので、おそらく社会見学的な何かに使われている施設と見た*2*3。ちなみにアルゼンチンは国民の74%がカトリック信者、その他はプロテスタントユダヤ教イスラム教など。


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(※入り口で見かけたブエノスアイレスのキッズたちと引率の先生。こういう集団を何組も見ました)

園内の地図(パンフレットより)


すみません小さくてわかりづらいですよね。別に大きくしてもわかりやすくはないんですが、ざっくりいうと、上の図でいう左側が入り口で、入るとすぐにあるのが旧約聖書の世界です。神が「光あれ」というところから始まり、アダムとイブが蛇にそそのかされてリンゴを食べちゃったり。そこから受胎告知のシーンがあり、このコーナーの最後にベツレヘムイエス・キリストが誕生します。そこから、門をくぐって本格的に新約聖書の世界に入る。


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(※動物の作りが細部までしっかりしているので、ガチ度が伝わる)

新約聖書コーナー

新約聖書コーナーも聖書の記述にたぶんわりと忠実に展示が進むのだけど、私は聖書については名場面しか知らないので、これが何のシーンなのかとかはあまりわからず。下の写真は、「イエスエルサレムに来た!」みたいな感じ???


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これはまじで何のシーンなのかわからず。スペイン語が読めれば……!

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あと、写真撮り忘れたのですがイスラム教のモスクとかもあった。他は、ユダヤ教徒にとっての聖地「嘆きの壁」など。このテーマパーク全体で、約2000年前のエルサレムの街並みを再現していたということだったらしい。実際にエルサレムにも行ったことがある身として、ちょっとニヤニヤしてしまいました。園内のレストランも、普通のピザ屋とかもあるんだけど、中東料理屋みたいなのもちゃんとあって「ヘェ〜」と思いました。

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これは私がエルサレムに行ったときに撮った本物の嘆きの壁。本物とはやはり大きさは全然ちがうけど……。

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そしてクライマックスへ。十字架を背負ってヴィア・ドロローサを歩くイエス・キリスト

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ゴルゴダの丘で磔にされてしまう。エリ・エリ・レマ・サバクタニ……

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(※ゴルゴダの丘は映画のセットみたいで本気でかっこいい作りでした)

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(※ちなみに現代のエルサレムには、ゴルゴダの丘には聖墳墓教会が建っています)


そして、ハーレルヤ〜の音楽とともに丘からニョキニョキ生えつつ復活!!!*4 ちなみに復活時間はパンフレットで詳細をチェック。だいたい1時間に1回復活しています。ここそもそも金土日と祝日しか営業してないんだけど、金曜日だけは午前から復活しています。土日祝日は午後のみ。復活は、見やすい場所にベンチとかもあるので、お弁当やお菓子を片手にもぐもぐしながら見るのもよいですね。

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まとめ

ここをそもそも私は何で知ったのかというと、TRANSITに載っていたのでした。あと今、検索してて思い出したけど、奇怪遺産にもあったな。

奇界遺産

奇界遺産

そういうわけで、日本人的感覚からすると「???」となるところが少なくないこのティエラ・サンタなのですが、改めて、カトリック圏の人々にとって宗教やキリスト教がどういった存在なのかを考える良い機会になったと思います。子供たちが多く訪れていたことを振り返ると、私たちが考えるよりもずっと、アルゼンチンの人々にとってキリスト教は生活に密着した、魂に刷り込まれたものなんだろうなあと。キリスト教という枠組みを越えて何かを思考することは困難なのではないかと思うほどに。


逆にいうと、非カトリック圏で生まれ育った日本人の私には、こういった枠組みの中で何かを思考することこそが困難なのではないかと痛感してしまいました。いくら聖書を読んでも、神学書を読んでも、私は本当の意味ではキリスト教を理解できないのではないかと。「1時間に1回復活するイエス様、不謹慎なのでは!?」と私たちは思うかもしれないけど、信仰心さえあれば神様はたぶんそんな細けぇことは気にしないし、「生活に密着した」ってそういうことだと私は思います。素朴な感じっていうの? まあただ、このラテンアメリカのノリを西洋圏のカトリックの人がどう思うのかは、ちょっと気になるところではあるな!


世界に様々な宗教がある中で、私にとってもっともinterestingなのはやっぱりキリスト教です。仏教でも神道でもイスラム教でもない、キリスト教の何が私をそんなに惹きつけるのかは自分でも未だにわかりません。教会建築が好きだからとか、西洋美術が好きだからとか、教会音楽が好きだからとか、それらしい理由は見つけられるんだけど。


気になった人はぜひ行ってみてね! といえるほど気軽には行けない場所ですが(南米は遠いからな!!!!)何かの機会でブエノスアイレスに行くことになった人は、ふらっと訪れてみて損する場所ではないことを私が保証します。

*1:現地にいるときも、同行の小池みきさんが聖書についての知識を持っており、かつ私がイスラエルエルサレムに行ったことがあったので、お互いの知識を交換しながらわりと真面目な話をしていた(『カラマーゾフの兄弟』の「大審問官」を、日本人である我々が本当の意味で腹の底から理解することはかなり難しいのでは?などなど)

*2:金曜日に行ったので、平日だったからかもしれません

*3:ちなみになんですが、入場料はアルゼンチンのインフレの煽りを受けてか、かなり値上がりしています。2019年4月時点で370ペソ

*4:上のTwitter埋め込みから動画も見てね。

アルゼンチン・チリの旅情報 南米初心者におすすめかもしれない?

4月、アルゼンチンとチリを旅行していました。GW前に2週間以上のお休みをもらってしまったので、世間と入れ違いのように、このGWはほぼ毎日働いております。世間とズレると多少の孤独感はあるけど、まあでも、このほうがいいなと改めて。


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南米は治安が悪いイメージがどうしてもあるので(イメージというか、実際に悪い)行くのになかなか勇気がいるエリアではあるのだけど、私はガルシア=マルケスやらマリオ・バルガス・リョサやらを読んで、ずーっとこの地に憧れていました。まあ、マルケスはコロンビアでリョサはペルーだけど……。だから、実際はどうだったの? という簡単な情報をまとめておきます。この地方への旅を検討している人の参考になればいいなと思います。

①治安について

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まずいちばん心配なのが治安だと思うのですが、治安は、アルゼンチンやチリの中でももちろん地域によって差があるようです。私は今回、幸いにも危ない目にまったく遭わず、ひやっとするシーンにすら巡り合わなかったのでだいぶ運がよかったのですが、お世話になった現地在住日本人の方に「気を付けて」と何度も忠告してもらったので、ブエノスアイレスの治安は本当に良くないのだと思います。運が良かったからいいものの、ちょっと装備が甘かったかなと今更反省している。大通り以外歩かない、夜の一人歩きは絶対にだめ(昼も極力避ける)、は徹底したほうが良さそう。女性はもちろんだけど、男性も同じです。あと地下鉄でぼーっとスマホを見ているとヒョイっと持っていかれるらしいので、もし次に行くことがあったら、スマホはチェーンでカバンに繋いどきたいと思いました。


コクヨ キーチェーン まなびすと クリップ付 GY-GEB100B ブルー

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(※現地在住日本人の方がこういうのを使っていた)


一方、今回1人でまわったパタゴニア地方に関しては、ブエノスアイレスとは対照的に治安がめちゃくちゃいいです。ど田舎だし、観光で儲けてるから必然的にそうなるんでしょう。もちろん「ここは海外」という最低限の気配りは必要だけど、パタゴニアに比べたらナポリやローマのほうがよっぽどおっかないです。なので、パタゴニア地方は南米初心者におすすめ。アルゼンチンに行くのならやっぱりブエノスアイレスは見たいと思うので、ブエノスを何とか乗り切って、パタゴニアに来てしまえば治安的な意味ではちょっとホッとできます。


あと、チリは南米でもっとも治安がいいらしい(経済も安定している)。私は今回プエルト・ナタレスにしか滞在していませんが、首都のサンティアゴとかもそんなに悪くはないみたいです。


あと前にも書いたのですが私はこのモンベルのダウンをめちゃめちゃ気に入っている、内ポケットにパスポートもクレカも現金もなんでも突っ込めて最高です。マネーベルトが不要になるダウン!

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Wi-Fiについて

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私は毎回海外旅行に行くと現地でSIMカードを買っていて、今回も買うつもりで行ったのですが、アルゼンチンはWi-Fi環境がめちゃくちゃ整っていて、結果的に買わなくても2週間平気でした。ホテルにはよっぽどの安宿じゃなければちゃんとあるし、地下鉄の駅でも、大通りでも、カフェでもある。逆に、ブエノスアイレスで買ったSIMカードがど田舎のパタゴニア地方で使えなかった……とかってこともあるらしいので、あんまり買わないほうがいいのかもしれない。


そして私は今回、同行の小池みきさんに初めて教わったのですが、Googleマップには「オフラインマップ」という機能があるんですね……! 事前にダウンロードしていくとオフラインでも地図が見られる! やり方は、詳細は書かないのでググってください! 今回はブエノスアイレスはじめ各地のホテル付近の地図をすべて事前にダウンロードして行ったのですが、これめちゃめちゃ便利だった〜。情弱なのでこういうこと何もわかりません。

③バス会社について

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パタゴニア地方を周遊する人は必然的に長時間バスを使うことになると思うのですが、私が今回使ったバス会社をメモ。

Bus-Sur社
www.bussur.com

サイトが見やすい。ここで、エルカラファテ→プエルト・ナタレスのバスと、プエルト・ナタレスリオ・ガジェゴスのバスのチケットを買いました。

Ticket Online Argentina

https://securesite.ticketonline.com.ar/TOLWeb/pages/main.seam?v_aw=tol&conversationId=67243

リオ・ガジェゴス→ウシュアイア行きのチケットはここで買いました。MARGAという会社のチケットになった。

tabitabi1110.com

そしてこちらのブログの記事をすごくすごく参考にさせてもらいました。バスターミナルの場所はここをチェック、地球の歩き方にある記載は間違っています!

④物価について

インフレが激しいアルゼンチン。タクシー代も国立公園の入場料も、地球の歩き方に載っている値段の1.5倍くらいになっていました。滞在中にアルゼンチンペソを使いきらないと、紙切れと化してしまう可能性があるので要注意だ。なお、大きめのホテルなどではUSドルでも支払いができるっぽい。

⑤参考文献

今回、旅行前に読んでいった本・雑誌たちです。私はLonely Planetより断然、地球の歩き方派。日本語で読みたいから……。

載っている情報が古いこともあるけど、やはり参考にはなる

歴史やカルチャーはこれを読むと大枠はつかめる。

伝奇集 (岩波文庫)

伝奇集 (岩波文庫)

ラテンアメリカの文学 砂の本 (集英社文庫)

ラテンアメリカの文学 砂の本 (集英社文庫)

せっかくなので、ボルヘスも読んでいきました。南米文学は基本的に私好み。

物語ラテン・アメリカの歴史―未来の大陸 (中公新書)

物語ラテン・アメリカの歴史―未来の大陸 (中公新書)

そしてこれは今読んでいる本。

まとめ

そういうわけで、南米はどうしてもおっかないイメージがあるのですが、その中でもアルゼンチンとチリは比較的治安が良いほうみたいです。とはいえブエノスアイレスはかなり注意が必要な街ですが、パタゴニアはのんびりしているので初心者の方でもそこまで気負わずに出かけられるかなと。飛行機に25〜30時間くらい乗らなくてはいけないので、クソ遠いのを我慢できれば……。


南米の大自然は、ちょっと日本のものとはスケールがちがいます。サイズを司っている(?)脳みその部位をぐいぐい引っ張られてびよんびよんに拡張された感じがしました。いつか誰かの参考になれば幸いです。


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世界の果てには何があると思う?

Netflixでやっている『ビハインド・ザ・カーブ』を、見よう見ようと思っているうちに出発の日となってしまい、結局この番組を、旅行中にちまちまと見ている。『ビハインド・ザ・カーブ』は、「地球は実は球体ではなく、平面なのではないか?」と考える人たちのコミュニティを追った、ドキュメンタリー番組だ。

 

ビハインド・ザ・カーブ -地球平面説- | Netflix (ネットフリックス)

 

地球平面説──個人的にはなかなか面白い説だと思うけど、もしもこの地球が本当に球体ではなく平面だったとしたら、世界の端の端まで行くと、「ごつん」と何かにぶつかったりするんだろうか?

 

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平面である地球も球体である地球も、私はきちんと見たことがない。また、天体を見て計算とかもできないので、とりあえず今は、私は学校で教わった「地球は球体である」とする従来の説を信じることにしている。しかしだとすると、「世界の果て」などというものは、実質的には存在しないことになる。なんといっても地球は球体なのだから、すべての場所は世界の中心であり、同時に世界の果てなのだ。

 


だけど、神に始まり、人間は「実質的には存在しないもの」を頭の中に作り出すことを得意とする生き物である。だから、たとえ地球が球体であっても、「世界の果て」はちゃんと存在させられている。

 


アルゼンチンにある世界最南端の都市、ウシュアイア。人々が普通に暮らす都市としては世界でもっとも南にあるらしいこの町は、南極ツアーの拠点になっていたりもする。まあ、町を上げて「世界の果て」をアピールしているわりには、実際にはビミョーに、より南に、人々が普通に暮らしている場所があるんだけど。ちなみにそれは、チリにあるプエルト・ウィリアムズである。人口的な意味で、「都市」として最南端なのはウシュアイアなのだけど、「町」という単位まで含めて最南端を考えると、プエルト・ウィリアムズになるらしい。まあ、「世界の果て」って、アピールしたもん勝ち、言ったもん勝ちだもんね。ゲンキンだなあ。

 

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fin del mundo、スペイン語で「世界の果て、世界の終わり」。ウシュアイアからプエルト・ウィリアムズに行くツアーもあります。まあ、目と鼻の先ではある。

 

さて、とはいえ「世界の果て」とは、なんだかロマンチックな響きを持つではないか。人々が普通に暮らしている場所としての、最果て。そこには何があって、何がないのか? 「世界の果て」を見てみたいという思いに駆られてこの場所を訪れる私のような旅行者は、だから後を絶たないわけだ。

 


ウシュアイアという都市に、私は3泊ほど滞在した。あるときはバックパックを担いで歩き回り、あるときはタクシーに乗り、あるときは傘を差してやっぱり歩き回った。そうして、世界の果ての風景を、頭の中に刻み込んだ。

 


世界の果てには何があったか? レストランがあり、ホテルがあり、本屋があり、観光案内所があり、スーパーマーケットがあり、博物館があり、カフェではWi-Fiが飛んでいた。つまり、それは来る前からわかっていたことだけど、単純に、人々が普通に暮らしているただの一地方都市だった。村上春樹の『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』みたいに、町が壁に囲まれていて、一角獣がいて、自分の影とお別れしなくてはいけない……なんてことはなかった。まあ、当たり前である。

 

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ウシュアイアが位置するフエゴ島は、ティエラ・デル・フエゴと呼ばれる島々の中のひとつだ。この島を発見したのはかのフェルディナンド・マゼランで、先住民があちこちで焚き火をしていたのを、大地から火が噴き出ていると勘違いした。だから、ティエラ・デル・フエゴ──火の大地、と名付けられたのだという。

 


吹きすさぶ強風と、年中雪に覆われた荒廃した大地。焚き火をしていた先住民は歴史の知る通り、西洋人が持ち込んだ病原菌に感染してもういなくなってしまったけれど、真っ白な大地の中でいくつも燃え上がる炎は、さぞかし怖ろしくて、美しかっただろう。マゼランの見た光景を想像する。

 


透き通るような海が美しいリゾートも、南国の風も、輝くような陽射しも、笑顔を振りまく人々も、私は決して嫌いなわけではないのだ。ただ、私はこの最果ての荒廃した景色のほうに、なぜだかより親しみを感じる。悲しい歴史と、宿命と、身も凍るような寒さと、真っ白な雪の中に灯るオレンジ色の明かり。日の出は遅く、日の入りは早い。太陽の光に恵まれないこの地に、私はなんとも言えない懐かしさを覚える。

 


ウシュアイアはそういうわけで、ただの一地方都市だ。だけど、船で少し海を進むと、この町には灯台がある。世界の果てであることをしめし、人間の住む場所としての終わりを告げるような灯台が。ウォン・カーウァイの映画『ブエノスアイレス』にも登場するこのエクレルール灯台は、ウシュアイアの象徴的な存在でもある。そして、灯台の先にあるのは南極だ。

 

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灯台を見て、私は少し絶望する。こんなに大変な思いをして(って、飛行機とバスに乗ってただけだが)地の果てまで来たというのに、世界にはまだ続きがあるらしい。はるばるウシュアイアまで来ても、その先には南極が続いていて、この世はまだ終わってくれないのだ。どんなにつらいことがあっても、まだ続きがある、明日がある。それはやっぱり、希望というよりは絶望だろう。だけど、厳然たる事実でもある。

 


世界の果ての向こうにあるらしい南極にも、いつか行くことがあるだろうか。行かずに死ぬことになるだろうか。それはまだわからない。果てまで来てもまだ終わらないこの世界に絶望して、私はまた東京にもどり、今日の続きを見なければならない。

Dybe!に寄稿しました/お祝いリソースは無限ではない

Dybe!に寄稿しました。

誰かのことがうらやましくて悲しくなったら、一度そのことを忘れてみて|チェコ好き | Dybe!

本文で「人の幸せを上手く喜べない」ことについて書いたのだけど、もちろん嫉妬の場合もあるけど、私の場合は単に共感力が低いってのもあり、他人にハッピーなことがあってもけっこう「あ、そう」となってしまいがちです。他人のハッピーな出来事に対して真摯に喜び、お祝いできる人へのコンプレックスがある。コンプレックスというより、罪悪感かな。結婚式嫌いだしな。というか、結婚式が嫌いなのは百歩譲って許されるとしても、葬式も嫌いだしな。冠婚葬祭が嫌いなんだよね、という話は度々していますが……。

 

だけど、別にそんなことでいちいち喜ばなくたって、邪魔してなきゃいいだろ、と開き直りの境地に至れたので、Dybe!ではそのあたりのことについて書きました。いろいろなタイプの人がいるだろうけど、私はお祝いリソースに限度があるタイプの人間なので、「一人一人のハッピーを大切に!」みたいな思想にはどうも馴染まんですね。遠くのハッピーより今日の私の夕飯ですわ。SNSはどうしても綺麗な人間・良い人間でいなきゃいけないプレッシャーが強いので、私みたいな人間はせせこましくやっていくしかないのだけど、まあでも本当に「邪魔してなきゃいい」んじゃないかな。本当に身近なごくごく一部の人のハッピーを祝うので、私のリソースはいっぱいいっぱいです。

 

……と、そんなつもりはなかったのだが卑屈になってしまったので旅行の話でもすると、今はアルゼンチンからチリのほうに来ました。ブエノスアイレスは24〜30℃くらいだったのでともかく、パタゴニア地方はものすごく寒くて、日本の東京の2月と同じくらいか、それ以下と考えてもらうといい。ただこちらの人って惜しみなく暖房を使いますよね。室内は半袖でいいくらい。なので体感としては実はそんなに寒くはないです。

 

どちらかというと寒い時期・寒い場所への旅が好きで、それは何の色気もない実利的な理由なのだけど、寒いと着込めるんですよね。イコール、貴重品を服の中にしまい込める。だから、安全面を考慮して、リゾートに行くのでなければダウンジャケットを羽織って問題ないくらいの寒い時期に旅行するのが好き。

 

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私が旅先でいつも着てるのがこのモンベルのパーカーなのですが、これ内ポケットがいっぱいついてるので、パスポートもクレカも現金も入れ放題。あったかいし、スリ対策として重宝しています(なぜ内ポケットがいっぱいついてるのかというとリバーシブル仕様だからです)。

 

日本に戻ったら、旅行のことはまたゆっくり書こうと思います。時差を考慮して予約投稿できているのは、昨年のイタリア旅で学んだからです。