チェコ好きの日記

だいたい木曜日の22時に更新されるブログ

読書

〈無計画〉のすばらしさと難しさ/『家族無計画』感想文

紫原明子さんが最近上梓された、『家族無計画』という本を読みました。家族無計画作者: 紫原明子出版社/メーカー: 朝日出版社発売日: 2016/06/10メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見るどんな内容かというと、実業家の家入一真さんと離…

人事を尽くして天命を待つ/『仕事ができて、小金もある。でも、恋愛だけは土俵にすら上がれてないんだ、私は。』

ファーレンハイトさん改め桐谷ヨウさんがこの度上梓された、『仕事ができて、小金もある。でも、恋愛だけは土俵にすら上がれてないんだ、私は。』というタイトルが長いため『でも恋』と略されている本を遅ばせながら読んでみました。仕事ができて、小金もあ…

社会を信じるか、大衆を信じるか?/『隠居系男子的。』の感想

くいしんさん(@Quishin )が編集されている、灯台もと暮らし運営会社Wasei代表の鳥井弘文さんへのインタビュー本、『隠居系男子的。』を読みました。あまり自分のことを語らない鳥井さんが、人目に触れるかたちでは初めて、自分のルーツや生い立ちや学生時…

美しい歌声をもつ者は、やがて惨たらしい死を遂げる/ポール・ボウルズ『優雅な獲物』

ニューヨーク出身、のちにモロッコのタンジェへ移住した作家、ポール・ボウルズに激ハマリしています。異郷・北アフリカの猟奇と野蛮を好んで描くグロテスクな作家、といった偏見が強いボウルズですが、彼が描く異郷の物語は、どこか普遍性を持っているよう…

ユダヤ人の定義不可能性/四方田犬彦『見ることの塩』ほか

もしバスに乗るならば、なるべく後部座席に坐ること。ガラスの近くには身を置かないこと。爆弾犯人は大概、バスに乗車しようとした時点で誰何され、次の瞬間に起爆装置のボタンを押すから、前方の乗車口付近に坐っていると、死亡したり怪我をする確率が高い…

お正月読書:夏目漱石『行人』/いいたいこともいえないこんな世の中じゃ

あけましておめでとうございます。今年も当ブログをよろしくお願いいたします。昨年の下半期から、夏目漱石の小説をちょくちょく読んでいました。私は実は、本を1冊だけ読んで、その1冊だけで感想文を書くというのがどうも苦手です。同じ著者の本を何冊か読…

流謫と残留 あなたはどっち派?

私のハンドルネームは「チェコ好き」というんですが、今更ですがこのハンドルネームの由来を説明すると、大学と大学院時代にチェコ映画を研究していたことが元になっています。具体的にいうと、卒業論文はヤン・シュヴァンクマイエルという監督について、修…

2015年、読んでよかった本ベスト5 #読み終わった本リスト Advent Calendar 2015

www.adventar.org今年読んだ本を数えてみたら、現時点で101冊でした。今月末に読み終わる本が何冊かあるので、最終的には103〜105冊くらいになるんだと思います。ちなみにこれ、昨年の同時期にまったく同じこといっていたので、読み直したらちょっと笑えまし…

ノームコアとマツコ・デラックス

「衣服にこだわるなんて、もはやそれ自体がカッコ悪いことで、鍛え上げられた健康な肉体さえあれば、なんでもないTシャツを1枚、さらっと着ているのが最もカッコいい」。 さて、こちらは私の意見ではなく浅子佳英・宇野常寛・門脇耕三の共著『これからの「カ…

魔物をつれて帰る

勇気を一度も知らなくて、わたしは悲しい。 恐怖が去ろうとしないので、わたしは悲しい。 太陽に近く、熱からは遠く、 わたしの終末はもうそこまで来ていると思う。 ピクニックは賑やかすぎて、足を踏みだせない。 テーブルは強すぎて、わたしは縁に蹙みつい…

欲望にひた走った中村うさぎが逆に禁欲的であるという聖書のはなし/あるいは『フラニーとズーイ』。

怪しげなカルト宗教にハマってしまったわけではなくただの趣味ですが、最近聖書に関する本をたくさん読むようにしています。今回読んで面白かったのは、クリスチャンでカルヴァン派の作家・佐藤優さんと、同じくクリスチャンでバプテスト派のエッセイスト・…

渋谷直角『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』のわりと本気な感想

実は8月上旬に読み終わっていたのですが、旅行等々でバタバタしていたらすっかり感想を書くのを忘れていました。というわけで本日は『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』の感想文を書きますが、きっとネタバレするので未読の方はご注…

過去の呪縛から逃れられない男 『おやすみプンプン』感想文

サブカル界隈で槍玉にあげられることの多い浅野いにおという漫画家がいますが、私も昔、よく読んでいました。映画化した『ソラニン』のほか、『素晴らしい世界』とか『虹ヶ原ホログラフ』とかも持ってましたね。素晴らしい世界(1) (サンデーGXコミックス)…

『クラブカルチャー!』/「意味」から「強度」へ、音韻から音圧へ

私は昔から音楽の話をするのが苦手で、理由の1つはたぶん、歴史がわからないからです。文学史は高校の世界史とか日本史でやるし、映画史は本を数冊読めば事足りるし、美術史もどっかから出てる「西洋美術史」と「日本美術史」ってタイトルがついている2冊を…

日本の「インターネット的」はテレクラから?

先日Kindl版が出た出た宮台真司の『世紀末の作法 終ワリナキ日常ヲ生キル知恵』を読み終わりました。本書は宮台真司が主に90年代に雑誌などに書いた文章をまとめたもので、全体から90年代のかおりがムンムンするのですが、2015年の今になって読むとまるで「…

アイディアは移動距離に比例しない/ユクスキュルのダニ

今回は、いつも以上にわけのわからない話をしようと思うので、お忙しい方は回れ右をおすすめします。しかも私自身あまり理解していないので、なんか解釈を誤っている可能性があります。 ユクスキュルのダニ ユクスキュル[1864-1944]という人はエストニア生ま…

ショッピングモールは嫌われ者?

批評系の人たちの間では、ショッピングモールという存在はひどく嫌われています。かくいう私もこの施設に対して、今まではあまり良い印象を持っていませんでした。便利だし、実際はなんだかんだいって利用しているんですけどね。ショッピングモールが一部の…

「ポスト・インターネット」の時代と情報の濃度

「ポスト・インターネット」とは、「インターネットとリアルがもはや区別されない、シームレスとなった環境」*1のことだそうです。6月号の美術手帖の特集が「ポスト・インターネット」だったので、今回はこれの感想を書きます。美術手帖 2015年 06月号作者: …

ほかのものは消えていい。なぜなら醜いから。

なんかどうかしてる小説っていうのは、とにかく冒頭とラストの破壊力がとんでもないものだと私は思っています。 大切なことは二つだけ。どんな流儀であれ、きれいな女の子相手の恋愛、そしてニューオ ーリンズの音楽、つまりデュ ーク・エリントンの音楽。 …

私たちはどうしたら“イケてる人”になれるのか?

イケてる人とダサい人、どちらでありたいかと問われたら、よほどひねた回答をするのでなければ、ほとんどの人は前者でありたい、と答えると思うんですよね。しかし問題はここからで、では“イケてる人”とはどのような人なのか、という話になります。何におい…

フィッツジェラルド『ベイビー・パーティー』についてのノート

スコット・フィッツジェラルドの著作を着々と開拓している私。とりあえず日本語で読めるものを完全制覇しようと思い、地味にいろいろ買い集めています。いつか完全制覇をするその日の前に、印象に残った短編小説の感想をメモしておきます。『冬の夢』に収録…

消費じゃない「上質な暮らし」と、解釈じゃない批評

先日読んだこちらの記事が話題になっているようだったので、少しばかり私見をメモしておこうかと思います。【第61回】ネタ化される「上質な暮らし」と盲信する「サードウェーブ系男子」 | すべてのニュースは賞味期限切れである | おぐらりゅうじ/速水健朗 |…

ハッピーエンドか、地獄の始まりか『ザ・ゲーム』感想文

どうしてお前がそれを読むんだ、という前提については省きますが、『ザ・ゲーム 退屈な人生を変える究極のナンパバイブル』という本を読みました。アメリカのPUA(ピックアップアーティスト、ナンパを常習的に行なっている人たちのこと)たちのコミュニティ…

岡崎京子の描いた”ガールズ”はどこへ消えたのか?

どこで読んだだれの文章なのか忘れましたが、「岡崎京子の漫画に出てくる女の子っていうのは、男と恋愛するのが好きなんじゃなくて、男と恋愛した話を女同士でするのが好きなんだよね」ということをいっていた人がいて、なんて的確な岡崎京子評なんだ! と思…

『オトコのカラダはキモチいい』は腐女子のための本ではなくて

発売するやいなや早々に重版が決定したとのことで話題になっている、『オトコのカラダはキモチいい』という本を読みました。AV監督の二村ヒトシさん・文筆家の岡田育さん・腐女子文化の研究者である金田淳子さんの3名による共著です。オトコのカラダはキモチ…

本気で好きだと、ちょっと気持ち悪い。

当ブログをある程度継続的に読んでくださっている方は、私が昨年の夏頃から、スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』の話をしつこく繰り返していることをご存知かと思います。 退屈は人を殺す『グレート・ギャツビー』と『ザ・スコット・フ…

『笑ゥせぇるすまん』で喪黒福造にドーン!ってやられた人はビフォーとアフターどっちが幸せなのかな

少々思うところがあって、2月に入ってから『笑ゥせぇるすまん』をまとめて読んでいたのですが、実はわたくし、幼稚園時代に夢のなかで喪黒福造に追いかけ回されたことがあり、以来こちらの漫画は若干トラウマになっています。あの夢怖かったなあ。笑ゥせぇる…

アートよ、私を受けいれて 『アート・ヒステリー』その他

「自分を好きになろう」「自分を肯定しよう」という話は、いろいろな界隈で頻繁に見かけます。私自身としてはこのことに特に異論があるわけではなく、「まあ結局そこよね」と納得はするのですが、それにしたってよく見かけるので、「またその話か」と耳タコ…

読書会を終えて『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』

2月15日に、二村ヒトシさん著『すべてはモテるためである』を課題図書にした、Skype読書会に参加しました。 第5回Skype読書会「女子目線で語る『すべてはモテるためである』(二村ヒトシ)」開催のお知らせ - 太陽がまぶしかったからというわけで、今回はその…

狂わせ、狂う能力はあるか 橋下治『恋愛論』感想文

1年以上前に、二村ヒトシさん著『すべてはモテるためである』を読んだのですが、その二村さんが影響を受けた本であるという話を聞き、橋下治の『恋愛論』を手に取ってみました。『すべモテ』のほうの感想文はこちら。 二村ヒトシ『すべてはモテるためである…