チェコ好きの日記

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国立新美術館「エルミタージュ美術館展」の感想

六本木の国立新美術館で開催されている、「エルミタージュ美術館展」に行ってきました。

月曜日に行ったのですが、平日とか関係なしに人がごった返していました。会場にいらっしゃったのは、主におじいちゃん・おばあちゃん。でも、この後に行った森美術館の「イ・ブル展」はガラガラで、私のような職業不詳の若造とか学生っぽい人しかいませんでした。

エルミタージュと同じくらい、いや個人的には「イ・ブル展」のほうが面白かったくらいなのですが、お年を召された方はやはり現代アートって苦手なんでしょうか。エルミタージュも悪くはなかったけど、こういった海外の由緒ある美術館の展示は、国立新美術館で見てもその魅力の50%も伝わらないんじゃないかな、と個人的には思います。

ボッティチェリを見るならフィレンツェのウフィツィに行くべきだし、カラヴァッジョを見るならローマのボルゲーゼに行くべきです。その作品が「息をしている」場所で見るのが一番です。それに比べて現在アートは、まさに「今、生きている」作品なので、いい意味でどこで見ても伝わる魅力は一緒です。

さて、このエルミタージュ美術館とは、ロシアのサンクト・ペテルブルグにある大博物館です。パリのルーヴル美術館やロンドンの大英博物館とならぶ規模で、所蔵品は300万点。

ルーヴル、大英と共通しているのは規模だけではありません。所蔵作品の特徴もある意味共通しています。どういうことかというと、ロシアにあるからといってロシアの作品が所蔵されているわけではない、ということです。歴代ロシア皇帝やロシアのコレクターが収集してきた「ヨーロッパの美術作品」がコレクションです。だからルネサンスもあるし、ロココもあるし、ポスト印象派もあります。ルーヴルだってフランスの作品だけあるわけじゃないし、大英は考古学系のコレクションがメインだと思うのでイギリス自身のものなんてそもそもあんまりない。

だから私は作品そのものよりも、どういった経緯でこれがイタリアやフランスの美術館ではなくロシアにやってきたのか、という歴史的な観点に興味がいきました。そして、このエルミタージュ美術館のあるサンクト・ペテルブルグという街についても。

サンクト・ペテルブルグは、その昔「レーニンの町」レニングラード、とよばれていた時代がありました。社会主義の時代は「5か年計画」の資金を得るために、せっかくコレクションしたいくつもの美術品が国外に売却されたそうです。

しかし、エルミタージュをここまで巨大な博物館にしたのもまたソビエト政府だったらしい。民間コレクションを国有化して、多くの中小美術館や研究機関がエルミタージュに統合されたそうです。社会主義っていうのは私有財産をとことん嫌うんですね。とにかく何でも国有化したいらしい。

このサンクト・ペテルブルグという街、少なくとも数年以内、早ければ来年にでも行きたいと思っています。

白夜というのを体験してみたい。数日間太陽が沈まず、うっすらとした明かりのなかに浮かび上がる街。華やかなのに、かつて経験した社会主義の時代のせいか、どことなく鬱屈とした雰囲気をかかえている不思議な街。ドストエフスキーゴーゴリの街、アンドレイ・タルコフスキーの世界。

サンクト・ペテルブルグについてはこの本にくわしく。

サンクト・ペテルブルグ―よみがえった幻想都市 (中公新書)

サンクト・ペテルブルグ―よみがえった幻想都市 (中公新書)