チェコ好きの日記

もしかしたら木曜日の22時に更新されるかもしれないブログ

ヤン・シュヴァンクマイエル 忙しいビジネスマンに、究極のシュルレアリスムを!

今回は、突然ですが、私の卒論の話をしたいと思います。

このブログのタイトルにも私のIDにも、“czech”という単語が入っております。これはなぜかというと、まぁ、チェコが好きだからです。

私は大学の卒論と大学院の修論で、チェコの映画を研究していました。
大学4年〜大学院2年の3年間、毎日チェコの映画のことを考えていたのです。

そのためか、今の私の人生観とか芸術観とか、さまざまなものに“チェコ映画的価値観”が侵入しています。

チェコ映画的価値観”とは何かといいますと、一言でいうとブラック・ユーモアです。

かるーくいうと、私はすべてのことにおいて「おもしろければいーじゃん」と思っているフシがあります。

もうちょっと真面目にいうと、私はすべてのことにおいて、“笑い”さえあれば、どんなに過酷な政治的・精神的環境でも突破できると思っています。

ふざけたり、脇道にそれたり、いたずらしたり、無駄な時間を過ごしたり、余計なことをしたりすることの力を信じています。

ビジネスマンにこそ見てほしい映画

さて、そんな私が大学4年のとき、卒論で研究していたのが、チェコヤン・シュヴァンクマイエルという映画監督です。

この監督、聞いたことのない人にとっては一生知らないまま終わってしまう監督だと思います。ですが、芸術界ではかなり有名な監督です。芸術学科や美大出身でシュヴァンクマイエルを知らない人はいないでしょう。

それでですね、この監督を芸術界のなかで囲っておくのは非常にモッタイナイなぁ、とぷち専門家としては思うわけです。どうして芸術界の外に出ていけないんだろう?  キモイからかな?

しかし、芸術界の閉鎖的な空間のなかでこねくりまわしていては、袋小路にハマって何も生まれないので、ぜひ外の世界に出ていってほしい。と、卒論を書いた身としては願ってやまないわけです。そして、今までこんな映画を見たことのない人に、この映画を評価してほしいです。

今までこんな映画を見たことのない人――私は特に「ビジネスマン」と呼ばれる人たちを想定しているのですが――に、シュヴァンクマイエルの映画を見てほしい。

また、そういう人たちこそシュヴァンクマイエルを見るべきだと思う理由は、3つあります。

1 時間を優雅に無駄にできます

社会に出て仕事をしている人間にとって、時間は何よりも貴重な財産です。たとえ5分でも無駄な時間をなくそうと、みなさんいろいろな工夫をされています。
そんななかで、みなさんの貴重な時間を確実にドブに捨ててくれるすばらしい作品があります。

意味ありげに展開するコマとコマの間には、ぶっちゃけ何の関連もありません。私たちはただ、「なんじゃこれ?」と首をかしげていればいいのです。
そして首をかしげたまま終わる9分弱。

『自然の歴史』(1967年)

Historia Naturae - YouTube

2 論理も根拠もどうでもよくなります

仕事をする上では、論理的な思考力やそれを裏付ける根拠が必要です。

でも、世界のすべての場所において「論理」や「根拠」が必要なわけではない、というのもまた然り。
忙しい毎日を送っていると、ついついそのことを忘れてしまいます。

そんな人はこの作品を見てみましょう。予告編動画にはありませんが、冒頭にはヤン・シュヴァンクマイエル、監督自身が登場します。

この、シュヴァンクマイエル監督がチェコ語でなんかしゃべってるところが私は好きなんですけど、意味わからなくても大丈夫です。簡単に要約すると、「本当はちゃんとしたふつうの動画の映画を作りたかったけど、お金なくて切り絵アニメになっちゃった。アハハハハ」みたいなこと言ってます。←要約しすぎ

シュヴァンクマイエルの体が突然バラバラになるのはなぜ? 後ろを通り過ぎる車にはどんな意味が? シュヴァンクマイエルの頭がガイコツになるのはなぜ?

…考えても無駄なので、自由なイマジネーションをおもしろがりましょう。 

サヴァイヴィング ライフ』(2011年)

映画『サヴァイヴィング ライフ -夢は第二の人生-』予告編 - YouTube

3 スキルアップの勉強よりも〜♪ 踊りたくなっちゃいます

あの、なかなか伝わらないかもしれませんが、私はヤン・シュヴァンクマイエルの作品を本当に愛していて監督を深く尊敬しています。
このエントリ、熱が入りすぎて若干書くの疲れてきました…。

勉強も仕事もブログの更新もほっといて、ノスタルジックな音楽にあわせて踊りましょう。最後は焼かれちゃうかもしれないけど〜♪

『肉片の恋』(1989年)

★★★

「仕事」「ビジネスマン」「スキルアップ」「経済」――そういうものの対極にある世界観、それがヤン・シュヴァンクマイエルの作品世界です。

忙しいビジネスマンにこそ、この究極のシュルレアリスムの世界を体感してほしいと私は考えています。

なぜかというと、それは「視野を広げる」とか、そういう陳腐な言い方はしたくありません。

ふざけたり、脇道にそれたり、いたずらしたり、無駄な時間を過ごしたり、余計なことをしたりすることの力を、私が信じているからです。

今日はいつも以上にシュミに走ったエントリでした…ここまでお付き合いくださった方、ありがとうございました。