私は映画が好きです。最近は映画を観ることにちょっと疲れてしまっているところもあるんですが、それでも映画は映画でやっぱり好きなんだと思います。
ちなみにどういう映画が好きなのかというと、「チェコの60年代の映画」とかいうと狭すぎるので、ここでは「芸術系映画」ということにします。(今度は広くなりすぎたか……)一定の評価を得ている古い映画とか、ストーリーの面白さよりも芸術性を重視したような映画が好きです。
とはいえ、映画ってそもそもがすべてエンターテイメントから出発しているようなところがあるので、「エンターテイメント」とか「芸術系」とかでジャンル分けするのってナンセンスだよなぁ、とは思います。しかし、やっぱりシネコンに通いつめる「映画好き」と名画座に通いつめる「映画好き」とでは、少しばかり距離があることは否定できません。もちろん、どちらが優れていてどちらが劣っているという話ではなくてね。
なので、自分の好みの映画を伝える手段としては、芸術系・ミニシアター系・エンターテイメント(シネコン)系みたいなジャンル分けは、便利なのかなと思っています。エンターテイメントだと思われていた映画が、20年後に評価されて「芸術系」ってことにされたとかっていう例は枚挙に暇がないので、かなりざっくばらんでいい加減なジャンル分けではありますけれど。
上記のジャンル分けにしたがうならば、私は芸術系>ミニシアター系>エンターテイメント系の順で好きなのですが、「芸術系映画が好き」なのは、別にかっこつけているわけでも知識自慢をしたいわけでもなくて、本当に心の底から素で好きなんです。
ただ、ちょっとせこいことをいうならば、映画学を専門的に学んでしまった人間の怠慢、という側面はあるかもしれません。歴史的な流れのなかで一定の評価を得てきた作品は「新たな評価」を下す必要があまりないので、観ていてラクなんですよ。まだ評価が定まっていない映画や新しい映画は、「この作品をどういう映画史的文脈に位置づけるか」みたいなことを考えながら観てしまうので、しんどい。「そんなこと考えなきゃいいじゃん」という声が聞こえそうですが、これは職業病というかこびりついて離れないクセのようなものなので、なかなか上手くいかないんです。うちの大学の教授も同じようなことをいっていたので、これは映画学とかをやっちゃった者の宿命なんでしょう。
脱線しましたが、そういうせこいことを除いた上で語らせてもらいたい私の「芸術系映画が好きな2つの理由」を、以下にまとめてみました。
1 疲れているときでも観られる
心身ともに疲れているときにふと観たくなるのは、私の場合芸術系映画です。B級エログロ映画で有名な『ピンク・フラミンゴ』とか、疲れているときに観たくない。あれを笑い飛ばせるのは、心身ともに元気があるときだと思うんですよ……。
ホラー映画も怖がりだから実は苦手だし、ヤクザ映画も疲れているときには観たいと思わない。コメディ系も、疲れているときは放っといてほしいと思ってしまう。感動・青春系も、「勝手にやってくれ」と思ってしまう。アニメは、なぜか観るととても体力を使う。
疲れているときに観たくなるのは、フェリーニです。『8 1/2』をあまり物語の筋を追わずにぼわ〜っと観て、ラストシーンでうるうるして、「明日も頑張ろう」って思います。
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2 既視感みたいなものを重視してる
これはいささか変わっているかもしれない私の趣味ですが、私は映画に「既視感」みたいなものを求めています。なかなか説明しづらいんですが、映画を観ているときにふと「あれ? 前にもこんな光景を見たことがある」ってなるときがあるんです。それが実際の私の過去の光景なのか、私の夢なのか、それとも本当はそんなものは見たことがないのかわからないですけど、映画のなかでデジャヴュを体験することがあるんです。で、私の超個人的な映画趣味に基づくならば、そういうデジャヴュを体験できた映画は「いい映画」。私の個人的な記憶と映画が重なると、それは私にとって無視できない作品になります。
私のなかでデジャヴ度が最も高い監督といえば、アンドレイ・タルコフスキー。このブログの他のエントリでもしつこく何度も紹介してしまっていますが、『ノスタルジア』は既視感バチバチのシーンが多くてやばかったんです。「何でタルコフスキーは私のことを知っているの?」と思いました。タルコフスキーに関しては、記憶のなかに入られすぎて怖いと思うこともあります。
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最近の映画だと、アピチャッポン・ウィーラセタクンの『ブンミおじさんの森』でそれに近い体験をしたかもしれません。アジアの死生観って不思議ですよね。日本もアジアだけど。
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エンターテイメント系だと、「既視感」を感じるような映画ってあまり出会えません。「芸術系」っていうよりかは、「記憶のなかに深く入っていく系」が好きなのかもしれないですね。
★★★
好きな映画って人それぞれあると思いますが、なぜそれが好きなのか、あるいは自分がそのジャンルにこだわっている理由は何なのか、時間があったら考えてみてほしいし、聞いてみたいなと思います。
しかし、私の映画に対する基本的なスタンスはこれです。
「映画の好みを主張しすぎると、よく人間のつながりを壊しますよね(笑)」
山田宏一『映画千夜一夜』より引用
— 成沢行彦 (@Petit_Cineclub) 2013, 12月 2
そうです。その通り!
※多くは語らないが、たぶん観ないほうがいい映画
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