チェコ好きの日記

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(チェコ好き)の日記で売れた本ベスト10 2013年下半期

当ブログのAmazonアソシエイトランキングを作ってみました。2013年下半期(7月〜12月現在)の集計です。Kindle版の売り上げも考慮に入れています。


……というと何だか味気ないですが、私がこのランキングを公開しようと思った理由は、このブログのAmazonアソシエイトランキングがわりとそのまま「私の好きな本ランキング2013」または「私の個人的なおすすめ本ランキング2013」として通用するからです。好きな本が売れたということは、書く身としては非常にうれしいことです。まぁ好きな本の書評しか書いていないので、当然といえば当然なのですが。

ちなみに、タイトルにあるように「売れた」といっても、儲かっているわけでは決してありません。1冊売れるごとに1円〜150円くらいしか、私の懐には入らないからです。でも私の好きな本に興味を持ってもらえたということが純粋にうれしいので、そのあたりは別にいいです。本に興味を持ってもらえたら、別にこのブログのAmazonリンクからでなくても、お近くの書店や図書館で手にとってもらっても全然かまいません。ただ、私の書評は基本的に「文章を読んでくれた人にいかにしてその本を手にとってもらうか」というところを目指しているので、Amazonのリンクを貼らないと興味をもってもらえた度合いを集計できない(私の書評がどれくらい成功したかわからない)のです。だから便宜的にAmazonのアフィリエイトを使っているというわけです。“食欲をそそる書評”が書きたいんです。

※こういうイメージ
おいしい書評の書き方 - (チェコ好き)の日記

お小遣い目的というのも、まったくないわけではないですけど。

前置きが長くなりましたが、1位から順番に紹介していこうと思います。

★★★

1位 『雨天炎天』村上春樹

雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行 (新潮文庫)

雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行 (新潮文庫)

この本を紹介しているエントリ
村上春樹の「好き」「嫌い」はどこで分かれるのか? に関する一考察 - (チェコ好き)の日記

まず、ぶっちぎりの1位が村上春樹の旅行エッセイ『雨天炎天』でした。理由はもちろん、私が上記のエントリにて猛プッシュしたからです……。でもこれを書いたあと、やっぱりアンチ村上には『村上ラヂオ』とか『村上朝日堂』とか『ひとつ、村上さんでやってみるか』とかのほうが嫌味がなく軽くてよかったんじゃないかとか、どうでもいいことでウジウジ悩みました。でも『雨天炎天』は、村上春樹のなかで私がいちばん好きな本なので、素直にうれしいです。

購入してくれた人は読んでくれたのかしら。「こんなもんすすめやがって!」と怒っていないかしら。返金はできませんが、クレームは受け付けます……。

私がこの本を初めて読んだのは学生のとき、半月ばかりのイタリア旅行から帰ってきた直後でした。旅行の「非日常」と普段の生活の「日常」の差というか、世界観のちがいに頭が追いつかなくて、ふわっとしてしまう感じがこのエッセイでは非常にうまく表現されています。「さて、本当はどっちがリアル・ワールドなんだろう?」っていう最後の文章がすごく好きで、ずしっと来ます。何度読んでも本当にいい。

2位 『日の名残り』カズオ・イシグロ

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

この本を紹介しているエントリ
「正直、人生ちょっと後悔してる」そんなあなたが読むべき本はこの1冊! - (チェコ好き)の日記

この『日の名残り』という小説は、2013年に読んだ本のなかで最も感動、いや大感動した1冊でした。「人生を後悔している人が読むべき本」じゃなくて、「これを読まないと人生後悔するよ」ってレベルでおすすめです。私の人生哲学というか、美学が詰まっている本です! スティーブンス(主人公)みたいに生きたいです。

今だからいいますが、私は上記のエントリ、号泣しながら書きましたからね。『ONE PIECE』の尾田栄一郎さんが、キャラが泣くシーンを描くときは自分も泣いているという話をどこかで聞いたことがありますが、何だかその感じがわかってしまったエントリです。鼻水をズビズビしながら感動絶頂のピークで書いているため、今読み返すとちょっと恥ずかしい気もしますが、これはこれでよいということにしたいと思います。

カズオ・イシグロはこの本の前に『わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)』を読んで、何となく好きな作家だなーとは思っていたのですが、『日の名残り』で完全に心を掴まれ、ファンになりました。イシグロはきっと、世の中のパラダイムが変わってしまったときに、個人としての人間はどこに向かえばいいのか、みたいなことを追求している作家なのだと思います。

3位 『名画で読み解くハプスブルク家12の物語』中野京子

名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)

名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)

この本を紹介しているエントリ
高校生のときに出会いたかった! 『ハプスブルク家12の物語』 - (チェコ好き)の日記

このエントリには、検索でたどり着く方が多いようです。ハプスブルク家にまつわるエピソードを、名画を見ながらたどっていく美術好きも世界史好きも楽しめる本です。

私のエントリでは『狂女フアナ』と『カルロス2世』の絵を紹介していますが、今読み返してもやっぱりこの2作品にぐっと来ます。恋に狂った美女と、黒づくめの暗い宮廷スペイン・ハプスブルク家を断絶させた男。華やかなハプスブルク家のエピソードも楽しいですが、私はやっぱりこういうブラックなハプスブルク家の話が大好きなんですよね。著者の中野京子さんは現在これのロマノフ王朝編を準備中だということで、発売を心待ちにしています。

4位 『サザビーズ「豊かさ」を「幸せ」に変えるアートな仕事術』石坂泰章

サザビーズ  「豊かさ」を「幸せ」に変えるアートな仕事術

サザビーズ 「豊かさ」を「幸せ」に変えるアートな仕事術

この本を紹介しているエントリ
富裕層の世界をのぞいてみよう|サザビーズとクリスティーズ - (チェコ好き)の日記

このエントリにも、検索でたどり着く方が多いようです。「仕事術」とタイトルにありますが、ビジネス本ではありません。ただ単にサザビーズの日本支社の社長がサザビーズについて語ってる、という本です。

庶民には無縁かもしれない、美術品の有名オークション会社であるサザビーズとクリスティーズ。富裕層の世界の話なので、芸術を専門にしている私もなかなかこの手の話題はとっつきにくいものがあります。しかし、この本はそんな謎に包まれた美術品オークションの世界をエキサイティングに語ってくれます。宝くじが5回くらい当たったら、私もオークションに参加してみたいです。ピカソ9億円、迷ったけど悪くない買い物だったわ……みたいな。

5位 『「イギリス社会」入門ー日本人に伝えたい本当の英国』コリン・ジョイス

「イギリス社会」入門―日本人に伝えたい本当の英国 (NHK出版新書 354)

「イギリス社会」入門―日本人に伝えたい本当の英国 (NHK出版新書 354)

この本を紹介しているエントリ
イギリスを旅するならこれを読め!な、5冊 - (チェコ好き)の日記

今年の夏にロンドンを訪れたときに読んだ本です。イギリスの地下鉄や天気、パブのルールなど、旅行に役立つ豆知識を知ることができます。実用的な意味でも役立つ本ですが、著者のジョイスさんがちょくちょく微妙なブリティッシュ・ジョークを挟んでくるので、イギリスに旅行に行かなくても笑えて楽しめる本です。

そういえば、この本で「イギリスの美しい自然について知りたいならカズオ・イシグロの『日の名残り』を読むべきだよ!」みたいなことをジョイスさんがいっていたから、私は『日の名残り』を読んだんでした。本が本を呼ぶ好例(?)ですね。

イギリスは本当に面白い国だったので、いつか絶対にまた行きたいです。でも今度は、ロンドンではなくて湖水地方とかスコットランド、あとはイギリスのお隣、アイルランドに行ってみたい。ブログでも旅行記を書くのめちゃくちゃ楽しいので、2014年はどこに行こうかと現在画策中です。

6位 『パン屋再襲撃村上春樹

パン屋再襲撃 (文春文庫)

パン屋再襲撃 (文春文庫)

この本を紹介しているエントリ
村上春樹の「好き」「嫌い」はどこで分かれるのか? に関する一考察 - (チェコ好き)の日記

1位の『雨天炎天』を紹介したのと同じエントリで、こちらの本も「私が初めて読んだ村上春樹の小説」として紹介しました。この短編集に収録されている『象の消滅』は、やはり良くも悪くも私の村上春樹のイメージの原型になっています。あとはこの本のなかだと、『ファミリー・アフェア』とかも好きですね。

7位 『遠い太鼓』村上春樹

遠い太鼓 (講談社文庫)

遠い太鼓 (講談社文庫)

この本を紹介しているエントリ
村上春樹『遠い太鼓』に見る旅の極意3つ - (チェコ好き)の日記

『遠い太鼓』は、1位の『雨天炎天』の次、いや同じくらい好きな村上春樹の本です。村上春樹がギリシャとイタリアに滞在していた頃のエッセイですね。

イタリアの犬にケンカを売ってみたときのことや、ギリシャの島でランニングをしているところを地元の人に変な目で見られたときのことなど、笑える話がたくさん入っています。あとは奥さんに言い負かされている村上さんも面白い。「それすらもヤツの演出なのだ!」という可能性も考えられなくはないですが、この人はたぶん根は普通のおじさんですよ。

8位 『もし僕らの言葉がウィスキーであったなら』村上春樹

もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫)

もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫)

この本を紹介しているエントリ
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読む前に、これもチェック! - (チェコ好き)の日記

またしても村上春樹なのでだんだん書くことが尽きてきましたが、これは村上さんがアイルランドのダブリンでウィスキーを飲みまくったという旅行エッセイです。青山のバーでウィスキーを飲みながら美女を口説く話ではまったくないので、タイトルで嫌いにならずに読んで欲しい。

私はアルコールを分解できない体質でお酒はほとんど飲めないので、アイルランドでウィスキーを飲む、チェコでビールを飲む、フランスでワインを飲む、沖縄で泡盛を飲む……みたいな旅行の楽しみ方ができる人が心底うらやましいです。

村上春樹はこのエッセイで「うまい酒は旅をしない」という名言をのこしていますが、これはお酒以外にもいろいろ使える私の大好きな言葉。うまい料理も旅をしないし、美しい芸術品や教会も旅をしません。もし“本当の”それらと出会いたいならば、自分のほうが旅をしなくてはいけない。これは私の哲学でもあります。

9位 『西洋美術史入門』池上英洋

西洋美術史入門 (ちくまプリマー新書)

西洋美術史入門 (ちくまプリマー新書)

この本を紹介しているエントリ
あなたの美術の知識がどれくらいあるかを試す例題10問 - (チェコ好き)の日記

上記はつい最近書いたエントリですが、この『西洋美術史入門』は著者の池上さんが「高校生向けに書いた」といいているだけあって、本当にわかりやすい本です。

そういえば、私の大学の美術史コースにも「デッサン」の授業があったのですが、この本で「美術史でデッサンをやることの意味」みたいなことが書いてあって、今さらながらあれは何のためだったのか謎が解けました。真摯な批評をしたいと思ったら、自分も1回創作側にまわってみないとわからないことがある、っていうのはどんな世界にも通用する話なのかもしれません。

10位 『未来の働き方を考えよう 人生は二回、生きられる』ちきりん

未来の働き方を考えよう 人生は二回、生きられる

未来の働き方を考えよう 人生は二回、生きられる

この本を紹介しているエントリ
ちきりん『未来の働き方を考えよう 人生は二回、生きられる』の、書評。 - (チェコ好き)の日記

この本以外に実は同率10位がもう1冊あって、村上春樹の『辺境・近境 (新潮文庫)』がそうなんですが、あまりにも村上本が続いて飽きてきたのでこちらを紹介します。

2013年の6月に発売されたこのちきりんさんの本は、いろいろな人が読んでいろいろなことを考えたのではないでしょうか。私はというと、何においても「ストックだけじゃなくフローも大事」って考えるようになりました。とはいえ、お金のことはいつも頭にあって悩んでいます。ピカソ9億円への道は遠いです。


★★★

書籍の紹介はここまでですが、実は2013年の6月にも、同じようなAmazonアソシエイトランキングについてのエントリを書いています。
(チェコ好き)の日記で売れている本ランキング ベスト5! - (チェコ好き)の日記

この頃と比べると、何だか「売れる」本がガラリと変わっていて、“アートのブログ”っぽくなってきたじゃないかと、本人は喜んでいます。リンク先を見てもらえるとわかるのですが、半年前はほぼ日手帳に関する本とかがよく売れていました。

もともと私はちきりんさんの影響でブログを始めたようなところがあるので、開設当初は「働き方を考える」みたいなエントリが多かったんですよね。今でももちろんそういった話題に興味はあるのですが、キャリアとかビジネスについてはあまり私の得意分野ではないので、1年間で書くことが尽きてしまったみたいな部分があります。

しばらくはこのまま“アートのことを書くブログ”としてやっていこうと思っていますが、またいつどこで気が変わるかわかりません。たまには変化球も投げてみたい。でも、そういう自分の変化も楽しみながら、2014年も良きブログライフを送れたらいいなと思っています。

しかし、このランキングの村上春樹率がちょっと異常な気がするので、これは2014年の課題(?)にしようかと思います……。