チェコ好きの日記

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ニッポンの美の概念 婆娑羅とヤンキー

私は地方公立中学の出身なんですが、公立中なので、クラスにはもちろん“ヤンキー”がいました。朝教室に行くと黒板にデカデカと「喧嘩上等」と書いてあったり、授業中に隣のクラスの子が鉄パイプを持って殴り込んできたり、校庭を原付で走り回った子が警察呼ばれたりしていました。

そんなヤンキーくんたち、服装がとにかくド派手。特に、うちの中学のヤンキーはおしゃれな“チーマー”とかではなく、特攻服とかを着ている暴走族系のヤンキーだったので、私はよく背中に書かれている文字に釘付けになったものです。「あの漢字、何て読むんだ……?」と。


今となってはすっかり保守派と化してしまい、あまりけばけばしいものは好まない私ですが、中学2〜3年生くらいのときって男女問わずヤンキー的なものがかっこよく思えてしまうこと、ありますよね。ヤンキーくんが卒業式のときに着てきた、おそらくいちばん気合いの入った特攻服、今でも覚えています。「天上天下唯我独尊 男一匹うんたらかんたら」と書いてあった。そして、なかなか素敵であるなぁと思ったものです。

しかし、同時に疑問でもありました。ヤンキーくんの特攻服にあるような、仰々しくて、ド派手で、度肝を抜くようなデザイン。あれはいったいどこにその源流があって、どこからやって来た美意識なのだろうと、私は当時、足りない頭でうんうん唸って考えていたのです。


中学を卒業してからはそんな“ヤンキーくん”の思い出はすっかり忘れていたのですが、先日とある本を読んでいて、「そうか、ヤンキーの美意識ってのは婆娑羅から来てるんだな!?」と、10年以上かけてようやく答えにたどり着くことができたのです。

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《猩々緋羅紗地違鎌模様陣羽織》小早川秀秋 所用

今回私が読んだ本『常識として知っておきたい「美」の概念60』は、西洋美術における美の概念のほか、日本美術の美の概念についても相当数のページを割いて解説してくれています。「花鳥風月」「枯山水」「幽玄」「婆娑羅」「数寄」「わび」「さび」「陰影礼賛」から、「カワイイ」「萌え」まで! 

「わび」「さび」と「婆娑羅

日本美術には、上記にあるようないろいろな美の概念があります。が、いちばんポピュラー(?)な概念って、やっぱり「わび」「さび」だと思うんですね。「わび」「さび」は、欠けているもの、寂しいもの、枯れているものに美を見出すという、独特の感性です。

一方、けばけばしくド派手な「婆娑羅」は、そんな「わび」「さび」とは正反対に位置する美の概念に見えますが、「BASARA」を現代アートとして表現し活動している天明屋尚氏のインタビュー記事を読んでみたら、「わび」「さび」と「婆娑羅」って正反対は正反対だけど、表裏一体というか、実は根底に同じ美の概念が流れているよなー、とふと考えました。

http://news.linkclub.jp/lcnewsletter/2011/04/11spring-news6.html

婆娑羅」という美の様式が流行したのは戦国時代、下剋上の世の中です。武将たちは常に死と隣り合わせにあって、そんななかで一瞬一瞬を輝かせようと、どんどん装飾が華美になっていったのではないかと、天明屋氏は語ります。

日本人は“桜”のように、うつろいゆくもの、消えゆくものに美を見出すとはよく聞く話です。だとすると、常に死を想いながら、生きている今の一瞬一瞬を豪華絢爛に彩ろうとした「婆娑羅」は、まさに日本人的な美意識ですよね。そして、死んでしまった、枯れてしまった「わび」「さび」は、そんな「婆娑羅」の変化形に過ぎないのではないかと私は思ったのです。

そして、戦国武将たちが“今の生”を賭けて彩った「婆娑羅」という美意識を、喧嘩に明け暮れる現代のヤンキーたちが引き継ぐのは、ある意味当然だなと納得がいきました。何というか、歴史がかかっているか・かかっていないかみたいな違いはあれど、根底にある精神が同じだものね。美の概念というのは、様式と同時に精神を引き継ぐものなのだと、一人で頭をぶんぶん上下に振りながら頷いている私です。

1518年に成立した『閑吟集』には、「一期は夢よ ただ狂え」という歌がありますが、これ中学生のとき、めちゃくちゃかっこいいと思ってたんですよね。今読んでも、やっぱり最高にかっこいい歌だと感慨に耽ってしまいます。婆娑羅の真髄という感じです。


暴力行為はいけませんが、ファッションや音楽、デコトラなど文化としての“ヤンキー”は、日本の美の一形態として、保護しておくべきかもと思いました。みなさんも、何か理解できないものや新しいものに接したときは、外観に惑わされず、その根底の精神を見つめてみてはいかがでしょう。

そうすると、何か面白いものが見つかるかもしれないですよ。夜露死苦

ジャパニーズ・スピリット―天明屋尚作品集

TENMYOUYA HISASHI

美術手帖 2009年 09月号 [雑誌]

天明屋尚氏は今年、制作したフジテレビのポスターが物議を醸したそうですね……。私は嫌いではないですが。というか、私は嫌いな作家・作品ってあんまりないんですよね。