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人生相談はなぜ面白いのか 「悩みのるつぼ」〜岡田斗司夫編〜

読書

人生相談。調べたことがないのでわかりませんが、おそらくその歴史はとても古いものなのでしょう。かつてお昼にみのもんたがやっていた生電話はもちろん、キリスト教における「懺悔」も、一種の人生相談と思えなくもありません。古今東西老若男女、人は実にさまざまな悩みを抱えているものです。これから先、どんなにテクノロジーが発達しても、人類がそこにいる限り人は「人生相談」をやめないし、持ち込まれた「人生相談」にのる人も、どこかに必ずいることでしょう。

では、現代日本におけるもっとも面白い「人生相談」とは何かというと、(おそらく)それは朝日新聞に掲載されている「悩みのるつぼ」です。読者のお悩みに回答するのは岡田斗司夫上野千鶴子美輪明宏金子勝……そのうち、書籍化されている岡田斗司夫の『オタクの息子に悩んでいます』と上野千鶴子の『身の下相談にお答えします』を読んだので、今回はそれの岡田斗司夫のほうの感想です。

オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)

オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)

“不安”を解消する方法

この『オタクの息子に悩んでます』ですが、この本に載っているいくつもの回答のなかで、私がいちばん「ほほう」と思ったのが以下、“「禁煙プレゼント」も裏切られ……”というお悩みでした。

46歳の主婦です。結婚25年目の夫の喫煙のことで、ストレスを感じています。
5年前の結婚記念日の前日、わざわざ会社から電話で、「明日は結婚記念日だけどお金がないから何も買えない。その代わり、お前が一番喜ぶプレゼントを考えている」と告げられました。当日に「禁煙したから」。
私はたばこが大嫌いなので、私にとってそれは、以前から何よりも望んでいた、本当に一番のプレゼントでした。
ところが、3カ月もたたない間に、また吸い始めました。追及すると、会社の飲み会で「1本くらい大丈夫やろ?」と勧められたというのです。
長年喫煙していた私の父は、心臓病を患って63歳で他界しました。夫の父も、狭心症になったのをきっかけに禁煙。そのときの病院の先生の「息子さんも今から禁煙された方が良い」という忠告も聞かず、亡父のようになって欲しくないと私が言っても「ほっといてくれ」と逆ギレされる始末でした。
だから禁煙のプレゼントはうれしく、それだけに禁煙破りのショックは尾を引き、そのことでケンカする夢までみます。
その後は禁煙する気配も全くなく、最近は「離婚」の2文字が浮かび始めました。家族思いの人なのですが、約束破りによる、心のわだかまりが取れないのです。喫煙で、そこまで考える私は変なのでしょうか。

最初このお悩みを読んだとき、私は正直「???」というかんじだったんですよね。この相談者が、何で「離婚」の2文字を出してきたのかよくわからなかったからです。禁煙のプレゼントを裏切られたのが残念だ、というのはわかりますが、なぜそれで離婚まで話が飛躍してしまうのか理解できなかったのです。相談者自身も「私は変なのでしょうか」と聞いていますが、やっぱり「それは考え過ぎですよ」と返したくなります。

が、しかし、岡田さんはこの最後の文章の前の「父が心臓病で他界」「夫の父も狭心症になったのをきっかけに禁煙」の部分に注目し、この相談者が何をそこまで深刻に考えているのか突き止めています。いわく、この方は「父たちのように、夫が喫煙で死ぬことを怖れている。夫が死ぬ前に逃げ出してしまいたい(離婚してしまいたい)」のだそう。相談内容は質問文がすべて、ではないのですね。

相談内容を分解していく過程も面白いので詳しくは本を読んでみてほしいのですが、私が岡田さんのこの回答のなかでいちばん「ふむ」と思ったのが、不安を解消する2通りの方法について解説しているところです。その1つは「不安の種を解決する」ことで、もう1つは「不安の正体をはっきりさせ、真正面から見つめ、覚悟を決める」ことだと岡田さんはいいます。

今回の相談者の例でいえば、1つ目の方法は夫に禁煙を再開させることです。でも、不安の種を解決するのが難しいからみんな頭を悩ませているわけで、今回の相談に限らず多くのお悩みや不安において、この方法は使えないことがほとんどだと思います。

なので、より積極的に活用できるのはおそらく後者でしょう。今回の例でいえば、「夫は喫煙が原因で、いずれ死ぬ」ことを、相談者が覚悟すること。岡田さんは、こんなふうに答えています。

「死ぬかもしれない」と思うから不安なのです。「死ぬ」と決めつけて対処しましょう。夫の残り少ない(?)人生、それを2人や家族で、精いっぱい楽しんでください。

何だか一見突き放したような回答に見えますが、この「悩みを解消する方法」、いろんな人が応用できると思うんですよね。私もたまに「お金がなくなるかも」みたいな不安に駆られますが、それを解消するには「お金を稼ぐ」か「お金がなくなっても生きていく覚悟をする」しかないです。後者のほうの解消法をとる場合、悩みの正体ってこんがらがっているケースが多いので、それを1つ1つ解きほぐしていくのが大変ですが……。


「悩み」は「悩み」のままだととても苦しいので、対処可能な「問題」に変換することが大切です。「問題」に変換できない不安や怖れは、対処不可能なので忘れるしかありません。本書はその“変換”に使う具体的な思考ツールがのっているので、恋愛でも仕事でも学校のことでも、何か悩んでいることがある人は読んでみるといいと思います。

この「悩みのるつぼ」シリーズ、書籍化されているものすべて制覇したいと思ってるんですが、『オタクの息子に悩んでます』はいちばん応用がきくというか、実生活に役立つ本ですね。

個人的に、読み物としては上野千鶴子のほうが面白かったです。次回かそのまた次回に、上野千鶴子編を書こうと思います。