チェコ好きの日記

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【NYひとり旅/2】メトロポリタン美術館の珍品と、「何でそれ作ろうと思ったんスか?」の問い

前回はAirbnbを使っての宿泊と実現しなかったUberの利用に関して書きましたが、今回以降はもう少し個人的な旅行記です。

【NYひとり旅/1】成功と失敗談 AirbnbとUberの利用所感 - チェコ好きの日記

ところで前回書き忘れたんですけど、Airbnbの唯一の欠点は、何しろ宿泊先がホテルではなく「一般人の家」であるため、その場所を見つけにくい、ということかもしれません。私の場合は結果的に、ニューヨークでの住所の読み方をそれで習得することができたのでやっぱりいい経験になったなという気がするんですが、ニューアーク空港から乗せてくれたタクシーの運転手さんが家を一緒に探してくれなかったら、路頭に迷っていたかもしれません。

タクシーの運転手さんは、ニュージャージー州にあるニューアーク空港からタクシーでハドソン川をわたるとき、「見ろよ、あれがマンハッタンだぜヒュー!」みたいなことをいう陽気なおっちゃんだったのですが、私は基本テンションが低めに設定されている人間な上に、13時間のフライトで疲れていたので「はぁ……そうっすね」みたいなリアクションしかできず、ちょっともったいないことをしました。他にも、路線図を眺めながらぼーっと地下鉄に乗っていたら「あなたどこに行きたいの? Grand Central? じゃあ一駅過ぎちゃったわよ、次の駅で乗り換えるのよUptownって表示よUptown! わかる?」みたいなことを話しかけてきたおばちゃんがいて、ニューヨークの人は総じて親切だなぁという印象を持ちました。

このあたりは英国出身、日本在住のちニューヨークに移住したジャーナリストのコリン・ジョイス氏も著書で「ぼくの印象では、ニューヨーカーは世界でも際立って礼儀正しい人たちだし、彼らがいつもマナーよく、親しげに振舞うのには驚かされる」と書いているんですが、これはなかなか信憑性のある情報だなぁと思いました。いろんな人の話を聞いてみたいもんです。

「アメリカ社会」入門―英国人ニューヨークに住む (生活人新書)

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★★★

観光初日は、まず徒歩でセントラルパークに行きました。午前10時くらいだったんですが、ランナー多し。
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下の写真は、セントラルパーク中央にある貯水池です。後で調べてみたら、これ「ジャクリーン・ケネディ・オナシス貯水池」っていう立派な名前がついてたんですね……。

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ストロベリー・フィールズとかも見ようかと思いましたが、ビートルズファンというわけでもないので省略し、セントラルパークを抜けてメトロポリタン美術館に行きました。

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世界のメガ美術館といえば、ロンドンの大英博物館、パリのルーブルサンクトペテルブルクのエルミタージュときて、ここニューヨークのメトロポリタン美術館があるわけですが、私はこれで残すところエルミタージュのみとなりました。早々に制覇したいところです。

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大英博物館メトロポリタン美術館は、考古学作品を観るところです

私の芸術鑑賞の信条として、「その作品が息をしているところで観ないと、作品を観る意味がない」というのがあります。これは、ローマのボルゲーゼ美術館でカラヴァッジョやティツィアーノの作品を観たときに強烈に感じたことなんですけど、要はイタリアの作家の作品はイタリアで観るのがいちばん良いよ、ということです。

その作家が生まれ過ごした場所に行くと、作家がどのようなものを食べて、どのような空気を吸って作品を創作していたのかを、疑似体験することができます。なぜその光と色彩が生まれたのか、なぜそのような表現になったのか、専門書なんか読まなくても、現地に行けばそんな諸々のことが一瞬で理解できてしまいます。沖縄の珊瑚礁をスイスイ泳いでいる魚を、海にもぐってナマで見るのと、水族館で水槽越しに見るのとくらいのちがいが、「現地で観る/現地以外の場所で観る」の間では発生すると、私は考えています。

とはいっても、イタリアの作品が必ずしもイタリアの美術館に収蔵されているとは限りません。それを言い出したら、メトロポリタン美術館の収蔵品なんてほとんどがアメリカ以外の国のものなので、私の芸術鑑賞の信条からはだいぶズレることになります。実際、私がメトロポリタン美術館やちょっとコンセプトが似ているロンドンの大英博物館に抱いた印象って、「巨大な水族館」なんですよね。面白いことは面白いんだけど、胸を鷲掴みされてぐるぐる振り回されるような衝撃は、そこにはありません。今のところ、私は世界最高峰の美術館はやっぱりローマのボルゲーゼ美術館だと思っています。

なので、ロンドンの大英博物館やニューヨークのメトロポリタン美術館みたいなタイプの場所は、近代美術を鑑賞するよりも、考古学作品を徹底的に観たほうが楽しいんじゃないかなーと私は考えています。作者不詳の考古学作品にまとめてお目にかかろうと思ったら、こういった世界のメガ美術館でないと、なかなか機会がありません。こんなのとか。

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こんなのとか。

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フェルメールゴッホみたいな近代美術や、キリスト教美術なんかは、何というか「制作に至ったモチベーション」みたいなものが普通に理解できるんですよね。これくらいの創作ができる技術を持っていれば、そりゃこういうのを作りたくなるよね、みたいな。

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ヨハネス・フェルメール『水差しを持つ若い女』。異彩を放っていました

でも、アフリカやオセアニア、アメリカの考古学系の作品って、その制作に至ったモチベーションがよくわかんないんですよね。「何でそれ作ろうと思ったんスか?」っていう。もちろん本とかを読めば「こういう目的のために」「こういう信仰があって」みたいなことは書いてあるんですけど、頭ではわかるけど実感として「よし、この信仰のためにコレを作るぞ〜!」ってなったモチベーションがわからない。

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これは私が現代日本に生きる現代人で、価値観とか思考の枠組みが現代人仕様になっているからであって当然なんですが、だからこそアフリカの考古学系の作品なんかを観るのはすごく面白くて、人間てまだまだわかんないもんだなと思うわけです。

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上の写真の絨毯? は何十人寝転がれるんだっていうくらい巨大なんですが、ほんと観てみると「何でそれ作ろうと思ったんスか?」という思いしかわいてきません。でも、繰り返しますがそこが面白い。こういうのを観ていると、私は芸術作品というか、つくづく「人間のつくったものが好きだ」と思います。人間の考えることっていうのはちょっとした宇宙みたいな広がりを持っていて、自分が普段、いかに脳みその一部しか使っていないかがわかります。

メトロポリタン美術館はニューヨークのなかでも定番中の定番といえる観光スポットですが、やっぱり面白かったです。ロンドンの大英博物館が入館料タダなのに対して、大人1人で$25とあまり安くありませんが、そんなところにお国柄を感じるのもまた興味深いですよね。

というわけで、旅行記はまだまだ続きます。

その3へ。
【NYひとり旅/3】タイムズスクエアは渋谷みたいなもん/話題のハイライン - チェコ好きの日記