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チェコ好きの日記

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ホリー・ゴライトリーのように善きことをしたい2015年、『ティファニーで朝食を』。

あけましておめでとうございます。2015年も張り切って更新していこうと思ってますので、今年も当ブログをみなさんよろしくお願いいたします。

さて、私が毎年1月1日に行なう作業といえば、愛用しているほぼ日手帳の入れ替え・予定及び目標の更新です。が、ずっと手帳への書き込みをしていると手が疲れるので、飽きたら気分転換に本を読みます。このとき読む本は、新年だからといって特に気合を入れて選ぶわけではなく、昨年の読みかけを続きから読んだり、積読タワーのなかから適当に1冊を引っ張り出すだけです。

そして、2015年の今年、積読タワーのなかから偶然引っ張り出したのは、トルーマン・カポーティの『ティファニーで朝食を』でした。

ティファニーで朝食を (新潮文庫)

ティファニーで朝食を (新潮文庫)

私はこの小説を過去に一度読んだことがあるのですが、当時はピンとこなくて途中で挫折したか、ざっと流し読みしたかだった気がします。なのでほとんど初めて読むような感覚だったのですが、改めて読んだ『ティファニーで朝食を』は、今の、というか今年の私の気分にうまいことハマってくれました。

なので今回は、新年のテーマと読書感想文をかけるという力技で、1本エントリを書きたいと思います。

ミス・ホリデー・ゴライトリー、トラヴェリング

訳者の村上春樹もあとがきに書いていたことですが、本書のヒロインであるホリデー・ゴライトリー、彼女の容姿はだいたいの人の頭のなかで、オードリー・ヘップバーンのそれと重なることでしょう。私も何となく、オードリーを頭に浮かべながら最初は読んでいました。

ティファニーで朝食を [DVD]

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しかし読み進めているうちに、「これはどう考えてもオードリーではないだろう」という疑念が確信に変わり、ラストのほうは完全に彼女の像はどこかへ消えておりました。どっちかっていうと、まだ沢尻エリカのほうが近いんじゃないんでしょうか。でも沢尻エリカだと、ホリーのあのちょっとバカでイノセンスなかんじ、あれが表現できないですね。だとすると、いったいだれが演じれば……という脳内会議を読み終わった後延々くり広げていたのですが、飽きてしまったので続きはどなたか考えてください。

ホリーは性的に奔放で、犯罪に加担しちゃうようないかがわしいところもあり、でも愛嬌があって魅力的な女性です。物語ではそんなホリーを、主人公である〈僕〉の目を通して描くわけですが、ホリーの郵便受けのカードに印刷されている有名な言葉、これはやっぱり素敵ですね。住所のところに、「ミス・ホリデー・ゴライトリー、旅行中」って書いてあるんです。いつもフラフラしていて、自分の居場所がきっちり定まらない。素性もよくわからない。ニューヨークにいたかと思えばメキシコに行ったり、アフリカで目撃情報があったり。実際にそんな人がいたらまわりの人間はいい迷惑でしょうが、やっぱり自由奔放なその姿に、一種の憧れを抱いてしまいます。

私は映画とか小説の影響をすぐ受けてしまうので、「次にブロガー名刺とかを刷る機会があったら、“ミス・チェコ好き、トラヴェリング”って入れよう……!」とか思ったのですが、“チェコ好き”って字面がイマイチなのでこれはナシかな……。いや、それくらいカッコイイと思った、という話です。

2015年、新たにブログを始めようとしている方がもしいたら、私からできるアドバイスは1つだけです。「ミス/ミスター・○○、トラヴェリング」、ここに入れてサマになるハンドルネームを考えてください。

あなたが善きことをしているときだけ、善きことが起こる

物語の後半で、ホリーは麻薬密輸への関与を疑われ、逮捕されてしまいます。結局、〈僕〉の協力を得てホリーは高飛びをするのですが、その前に入院していた病院でホリーがいう言葉、これを私の2015年のテーマにしようかなと思ったのでした。長いですが、引用します。

要するに『あなたが善きことをしているときだけ、善きことが起こる』ってことなのよ。いや善きことというより、むしろ正直なことって言うべきかな。規律をしっかり守りましょう、みたいな正直さのことじゃないのよ。もしそれでとりあえず楽しい気持ちになれると思えば、私は墓だって暴くし、死者の目から二十五セント玉をむしったりもするわよ。そうじゃなくて、私が言ってるのは、自らの則に従うみたいな正直さなわけ。卑怯者や、猫っかぶりや、精神的なペテン師や、商売女じゃなきゃ、それこそなんだってかまわないの。不正直な心を持つくらいなら、癌を抱え込んだほうがましよ。だから信心深いとか、そういうことじゃないんだ。もっと実際的なもの。癌はあなたを殺すかもしれないけど、もう一方のやつはあなたを間違いなく殺すのよ。
ティファニーで朝食を (新潮文庫)、p130、強調は筆者

奔放な女性ホリーがいう「善きこと」とは、「自分のノリに正直に従うこと」、という意味のようです。「自分に正直に生きよう」みたいにいってしまうと安っぽい自己啓発書みたいで嫌なのですが、私が強調した最後の部分、ここはとても重要です。

安っぽい意味じゃなく、本当に「自分に正直に生きよう」と思えば、それはときに自らを殺しかねないような癌を抱え込むことにもなり得るでしょう。物語のなかのホリー・ゴライトリーは魅惑的だけれど、現実の世界ではだれもがホリーになれるわけではないし、私だってなれません。犯罪に加担して高飛びするハメになるのはご勘弁願いたい。

だけど、「癌はあなたを殺す“かも”しれないけど」、もう一方のやつ――「不正直な心を持つ」ことは、癌よりも確実に、間違いなくあなたを殺します。だとしたら、どちらを選ぶか。私はホリーにはなれないけれど、そこで「癌」を選びとれる人間でありたいし、なんとなく2015年はそういう年にしようと思ったのでした(ムリヤリ)。

ティファニーの店内にいるみたいな気持ちにさせてくれる場所が、この現実の世界のどこかに見つかれば、家具も揃え、猫に名前をつけてやることだってできるのにな。

もう少し深く読み込むとすれば、ここでホリーのいう「猫」とはいったいなんの象徴なのか? なんて話もしたいところではありますが、そこは割愛して、とにかく「ティファニーの店内にいるみたいな気持ちにさせてくれる場所」、ホリーはまさしく世界中を旅して、自ら癌を選び取りいろいろなことに巻き込まれながら、これを見つけ出したいのでしょう。私もどうにかして、「ティファニーの店内にいるみたいな気持ちにさせてくれる場所」、もしこの現実の世界にそんな場所があるのだとしたら、何とかそこに近付きたい。「あなたが善きことをしているときだけ、善きことが起こる」とは、「自分の心に従わないと、真実は訪れない」という意味だと、私は解釈しました。だから2015年は、たくさんの「善きこと」をしたいですね。

★★★

カポーティは現在、同時進行で『冷血』も読み進めています。私は、あまり詳しく語れるほどまだこの作家について理解しているわけではありませんが、この人は女性の描写がめちゃくちゃ上手いですね。『ティファニーで朝食を』に入っている『花盛りの家』も、おとぎ話めいたゾクゾクする物語で、相当気に入りました。

2015年が、私とあなたが真実に近付くための、素敵な年になりますように。今年もよろしくお願いします。