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チェコ好きの日記

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『パッション』とカラヴァッジョの絵画の世界、イエスの最期の12時間

映画 中東

10年くらい前にメル・ギブソンの『パッション』を観たんですが、最近思うところあってこの映画をもう一度観たのです。10年前といえば私はまだホヤホヤの大学生なので、聖書のこととかあんまりよくわかってなかったんですよね。まあ今だってたいした知識を持っていないのは変わりないのですが、旅行でヨーロッパに行ってバチカンサン・ピエトロ大聖堂を見たりとかしたので、当時よりはキリスト教というのを実感を伴って理解しているつもりです。

『パッション』は、イエスの最期の12時間を聖書にできるだけ忠実に描いた作品で、カトリックの人もプロテスタントの人もあまり関係なく観ることができる映画だそうです。東方正教会の人はどう思うのかとかはよくわかりません。

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メル・ギブソンはカラヴァッジョを意識して作ったらしい

で、『パッション』はゲッセマネの園*1でイエスが捕らわれるところから始まるんですが、ここでイエスが祈りをささげている最中、悪魔のサタンが登場します。サタンは地球上の生物に化けると蛇なので、人の姿として現れたあとに蛇としても出てくるんですけど、それをイエスが足でギュッと踏む場面があって、それが私にカラヴァッジョの絵を彷彿とさせました。映画は下の絵みたいなやつじゃなくて、近くにマリアはいないし、子供じゃなくて立派な大人のイエスが足で踏むんですけど。

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『聖アンナと聖母子』(1605年 - 1606年頃)ボルゲーゼ美術館(ローマ)

あとで解説を読み直してみると、監督のメル・ギブソンはこの映画をカラヴァッジョを意識して作ったみたいです。私はカラヴァッジョの絵って本当に好きなんですが、確かにいわれてみればあの陰影の濃さというか、光の当たり方なんかが似ているなあと思いました。ちなみに上記の絵は、聖なる母子のわりにはマリアの胸元が開きすぎているとか、雰囲気がイヤラシイとかの理由で、サン・ピエトロ大聖堂に飾る予定だったのに却下されてしまったようです。

マリアとイエスの関係

捕らわれたイエスを総督ピラトは、人殺しのバラバとどちらを釈放するか民衆に問います。このとき民衆はユダヤ人聖職者のカイアファに煽られ、バラバを釈放することを選択してしまいます。私はキリスト教徒ではないので、この映画で強く印象に残ったのは、慈愛に溢れたイエスよりもこの、人殺しのバラバの釈放を選択してしまう民衆のほうでした。罪人となったイエスに容赦なく石を投げたり唾を吐きかけたりするんですけど、卑近な例をあげればこういうのってまさしく今のインターネットの世界みたい。

で、 イエスは十字架を背負って約1Kmのヴィア・ドロローサ*2を歩きます。その様子をイエスの母であるマリアが見守っているんですが、途中でこのマリアの回想シーンが入るんですね。十字架の重さに耐えかねて躓くイエスと、幼かったイエスが道で躓くところが重なって、そこにマリアが駆け寄るというシーンです。

『パッション』は、このシーンを中心にイエスとマリアが始終強い絆で結ばれているように描かれているんですが、聖書によると実際のイエスとマリアはあんまり仲が良くなかったらしくて、イエスは母のことを他人のように「産婦」とか「婦人」とか呼んでいたようです。でも映画では字幕が「母」ってなっていましたね。原語はどうなってるんだろうとも思ったんですが、アラム語なので聞き取れません。

ホラー映画の『オーメン』の主人公であるダミアンくんはイエスの幼年時代からイメージを想起しているそうなんですけど、イエスは幼い頃、念力で人を殺したりしているらしくて、なんか私はそのへんにも関心があります。イエスといえばどうしても慈愛に溢れた優しいイメージを作ってしまいがちだけど、実際は家族と不和だったり悪ガキだったりしたみたいなので、この方いったいどういう人なんだろ? という疑問が尽きません。

まあいくら記録が残っているとはいえ2千年も前の人のことなのでわかるわけないんですけど、自分のなかだけでいいので、「たぶんこういう性格で、こういうこと考えてて、それでこういう行動をとったんだろう」という実感みたいなものが欲しいんですよね。おそらくそういうことを考えた先人は、映画監督や画家などわんさかいると思うので、どれがいちばん私のイメージに合うのか今後も少しずつ探っていきたいところです。パゾリーニマーティン・スコセッシの映画を見直してみようと思います。

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『キリストの埋葬』(1602年 - 1603年)バチカン美術館(ローマ)

十字架を背負ったイエスがたどり着き磔にされたのは、ゴルゴダの丘。今はその跡地に聖墳墓教会*3が建てられているわけですが、この場所を、世界中の観光客が訪れているようです。私もいつか行ってみたいなあ。

*1:イスラエルで行きたい場所その1

*2:イスラエルで行きたい場所その2

*3:イスラエルで行きたい場所その3