チェコ好きの日記

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人事を尽くして天命を待つ/『仕事ができて、小金もある。でも、恋愛だけは土俵にすら上がれてないんだ、私は。』

ファーレンハイトさん改め桐谷ヨウさんがこの度上梓された、『仕事ができて、小金もある。でも、恋愛だけは土俵にすら上がれてないんだ、私は。』というタイトルが長いため『でも恋』と略されている本を遅ばせながら読んでみました。

以下は、そんな『でも恋』の感想文です。

人事を尽くして天命を待つ

こちらの『でも恋』は、カテゴリーでいうといわゆる「モテ本」であり、本屋さんで探してみるとあの前に立つのがけっこう憚られる女性向けのピンク色が多いコーナーに陳列されていることが多いです(でもどうせ店員さんも他のお客さんも他人だし、他人は人のことなんてどうでもいいと思っているので、自意識過剰に陥らず興味がある人は堂々と仁王立ちで前に立とう)。それで、こちらは東村アキコさんの推薦文の入った帯であったりタイトルであったりから察するに、東京のお金を持っていてちょっと派手なアラサーの女性が読む本なのかなと思っていたのですが、内容はわりと硬派なので、男性が読んでも、既婚者が読んでも、小金もなくそんなに派手な生活を送っているわけじゃない人が読んでも、「なるほど」と思える本になっているんじゃないかなと思いました。

なぜかというと、恋愛関係というのは何も特別で特殊なものではなく、仕事先の人たちであったり、友人であったり、家族であったり、そういう数々の他の人間関係のなかにあるカテゴリーの1つに過ぎないんだなということが読んでいてよく実感できるからです。彼氏/彼女だからと思って、夜中に突然呼び出したりすると普通に面倒くさいのでやめましょうとか(本文ではもう少し丁寧な言い方で書いてあります)。もちろん熱に浮かされている時期というのもあって、そういうときはそれが楽しかったりもするのかもしれませんが、熱に浮かされている状態というのはあくまでイレギュラーな状態であって、レギュラーの状態でそれを押し通そうとすると上手くいかないと思います。

本書は0章から5章までの構成から成り立っていて、「ゴミクズのようなモテテクは捨ててしまえ!」から始まり「男が暴く、男の本音」、そして2章からは「恋愛準備編」、「恋愛実践編」、「結婚編」、それから「幸せのその先に編」、というように展開していきます。そこで私はふと思い出したのですが、昨年ご一緒したイベント(「退屈と消費と、恋愛と。」イベント後記 - チェコ好きの日記)で桐谷ヨウさんは、「人事を尽くして天命を待つ」という言葉をご自身の好きな言葉としてあげていた気がするんですね。そして、恋愛を始めとする人間関係には、この「人事を尽くして天命を待つ」以外に対処のしようがない部分というのが確かにあり、それが仕事や個人の目標達成とはまったく異なる人と人との関係の難しさであり面白さであるような気が私にはします。

恋愛に限らず、尊敬している人であったり、友達として親しくなりたい人であったり、広い意味での「好きな人」が目の前にいた場合、もちろんその人に対して積極的に話しかけたりアピールしたり、気を利かせたり外見を整えたりとやるべきことはたくさんあるのだけど、自分にできることをすべてやった上でそれでも「好きな人」に気に入ってもらえなかったとしたら、それはもう仕方のないことだと思うんですね。本書でいうと「恋愛実践編」のp215〜p223あたりの内容のことですが、「人事を尽くし」たのならもう天命を待つしかない。それでダメだったらしょうがない。仕事や個人の目標達成だったら「絶対に結果を出す!」と意気込んでやらなければいけないシーンもあると思いますが、人間関係において「絶対に結果を出す!」という勢いで臨むと心の負担が大きくなってしまうと思います。だから、大好きな人にいまいち振り向いてもらえなくても、尊敬していた人に冷たくあしらわれてしまっても、「ま、いっか。しょうがない」と切り替えて自分のやるべきことを淡々とやる、というふうにしていけたら、恋愛や人間関係で悩んでいる人はきっともう少しラクになると思います。

「ま、いっか」っていえるようになるために必要なこと

それで、「ま、いっか。しょうがない」で上手くいかない人間関係を諦めることができる=他者からの承認や評価を上手に諦めることができるようになるためには、この界隈ではもうすっかり手垢のついた言葉ではありますが、やっぱり「自己肯定感」なんだろうなと思うのです。自分で自分を評価できる状態になっていないと、他者からの評価が自己評価に繋がってしまうため、「好きな人」に気に入ってもらえないとものすごく落ち込むことになってしまいます。でも、自己評価を高めるにはやっぱり他者から評価を得る必要も一定以上はあって、だからこそ、そこがぐるぐるしてしまってなかなか負のスパイラルから抜け出せません。そしてモテる人は、どんどん他者からの評価を得て自己評価も高まり、それがまた他者を惹きつけていく。「お金は持っている人のところに集まる」みたいな話です。

この「自己肯定感」を高めるためにはどうすればいいのか、みたいなテーマについては散々議論されている割には精神論が多く未だ結論が出ていない気がするのですが、私は二村ヒトシさんが『すべてはモテるためである (文庫ぎんが堂)』でいうところの「自分が1人でいても寂しくない場所」を見つけることが他者を媒介とせずに自己評価を高めるいちばんの方法なんだろうな、と思っています。仕事を頑張ったりとか、ナンパを頑張ったりとか、ブログ更新を頑張ってもいいのだけど、そういうのってやっぱり評価を他者に委ねないといけないので、「自己肯定感を高める」目的ではあまり得策ではないように思います。

1円もお金がもらえなくても、だれからも評価されなくても、反応がまったくなくても、それでも1人でるんるんした気分で続けられること。自分の話をしていいのであれば、それは私にとって「本を読むこと」であり「旅行をすること」であり「映画や美術を鑑賞すること」です。このブログのPVが1日10以下とかになったら、もしかしたらブログの更新をやめたくなるかもしれないけど、このブログに書いているような、本を読むことや旅をすること自体は私は絶対にやめないでしょう。だってそれらは、だれかから何かを得たくてやっているわけではないからね。好きな人に振り向いてもらえなかったり、最後の女になれなかったり、尊敬している人にあしらわれてしまったりするとけっこう辛いですが、人間関係って最終的には「縁」に支配されている部分があるので、「絶対」は絶対ありません。

そして私は調子がいいので最後にちゃっかり自著の宣伝をしますが、「じゃあその”1人でいても寂しくない場所”ってどうやって見つけるの!?」と思ってしまった方には、先週3/25よりダウンロード開始となっている『旅と日常へつなげる』にそのヒントが書かれているかもしれません。他者からの評価を気にせずに、自分の大好きなことに集中する方法について書いた本でもあると、私は思っています。

旅と日常へつなげる ?インターネットで、もう疲れない。?

旅と日常へつなげる ?インターネットで、もう疲れない。?

というわけで、みんな新学期に向けて『仕事ができて、小金もある。でも、恋愛だけは土俵にすら上がれてないんだ、私は。』を読もう!