チェコ好きの日記

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TBS『クレイジージャーニー』は〈クソ面白い〉以外に形容のしようがない

私、アラサーの女性なんですね。もういい加減大人なので、「クソ」とかいうのは品がないなって思うときもあるんですよ。私のなかで「言葉遣いを直そう問題」は昨年から度々浮上していて、まったく気にしていないわけじゃないんです。

だけど、世の中には「クソ」という言葉を使わないと形容ができないものもあると思っていて、代替できる言葉を探すのはなかなか困難です。「すごく面白い」だと、ちょっとちがうんですよ。「とっても面白い」でも「めちゃくちゃ面白い」でもないんですよ。「クソ面白い」以外に適切な表現が見つからないってものも、世の中にはあると思うんですよ。

何人かの方に「絶対好きだと思うから観たほうがいい」とすすめられたので、TBS『クレイジージャーニー』を観ました。DVDで。もうすぐ(5/7に)Vol.2も出るみたいです。『クレイジージャーニー』とは、毎週木曜24時10分から放送している、松本人志さん、設楽統さん、小池栄子さんがMCを務める、放送ギリギリ・かなりぶっとんだ紀行バラエティ番組です。はい、クソ面白かったです。

というわけで今日は、『クレイジージャーニー』がいかにクソ面白いかということについて熱弁を振るいます。

丸山ゴンザレスさん、ルーマニアのマンホールタウンに潜入

さっそく説明しますね。『クレイジージャーニー』は何がどうクソ面白いかというと、毎回ゲストで登場する人のジャーニーがクレイジーすぎるという一点に尽きるんですけど、たとえば以下の記事にもなっている丸山ゴンザレスさんの回。これはちょっとすごかったですね。麻薬中毒者の巣窟〜!

gendai.ismedia.jp

ジャーナリストの丸山ゴンザレスさんという人がルーマニアのマンホールタウンに潜入取材を試みるんですけど、ルーマニアって経済格差がすごくて、ヨーロッッパのなかではめちゃくちゃ治安が悪いらしいんですよ。それでも大都市の人通りの多いところを気を付けながら歩いていればまあ大丈夫なのかなと思うんですけど、ゴンザレスさんは首都ブカレストのスラム街に、それもマンホールタウンに突っ込んでいくわけです。路上に寝てるホームレスのおっさんに道訊いたりしながら。道端に使用済みの注射器がいっぱい落ちてたりするけど、気にしない気にしない。

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(※この写真はブカレストではなくてアテネです、イメージ図)

ゴンザレスさんが突っ込んでいったマンホールタウンとは、その名の通り、マンホールのなかの下水道に作られた最貧困層の人々の町(というか家)。下水道を利用しているせいか、時折アンモニア臭が鼻につき、湿気がすごいようですが、暖かいことがメリット、とのことです。

ゴンザレスさんは、そんなマンホールタウンを仕切っているボスのブルース・リー(本名は不明)と交渉し、取材のためマンホールを降りていきます。タウンのなかの住人は、ジャンキーが多いよう。ゴンザレスさんに悪態をついたり、目の前で思いっきり注射器で何かを注入していたりして、とっても怖いです。ナイフを腰に差したブルース・リーにゴンザレスさんはパンやコンビーフやレモネードなどの食事を振舞われますが、下水道のなかの施設で調理されたそれは衛生状態が気になるところ。しかし、客人としては出されたものを食べないわけにはいきません。こういうとき、人間、胃腸は強くあるべきだということを実感します。食事をしているすぐ隣で大金のやり取りがあったりするのですが、何をやり取りした大金なのかはわかるようでわからないようでわかりますね。

……と、こんなふうに、『クレイジージャーニー』では想像の斜め上をいく刺激的な映像が続くわけです。スラム街の映像は世界中どこのものでもわりとびっくりしますが、しかしマンホールのなかに住むっていう発想は、日本にいるとなかなか出てこないですよねえ。世界ってとっても広いです。

番組放送後の続報として、なんとこのブルース・リーは麻薬絡みで逮捕されてしまい、ゴンザレスさんが突っ込んでいったマンホールタウンは取り壊しになってしまったそうです。だけど、確かに違法ではあったかもしれないけど、マンホールのなかに勝手に住みついて、そして麻薬の売買をしていた彼らは悪い奴らなのかというと、それは判断しかねるところです。

ゴンザレスさんの取材に対して、「俺たちは、国に見捨てられたんだ」ブルース・リーは語っていました。マンホールのなかに住んでいるのは、路上で眠るより暖かいから。東欧の冬はクソ寒いのです。麻薬の売買をしているのは、拡大する経済格差、高止まりした失業率を前に、それくらいしか生計を立てる術がないから。みんなみんな、生きるためにやっていたことです。「マンホールに住んでいるやつらは、みんな俺の家族だ」とブルース・リーはいっていました。

ブルース・リーとマンホールタウンの住人は、そこで「生活」をしていたわけです。ごはんを食べて、暖かいところで眠って、同じ境遇の人と言葉を交わして。マンホールのなかの光景は日本ではちょっと考えられないようなものだけど、でもやっていることは「生活」です。ブルース・リーのしていたことは「仕事」です。我々が考えているような「生活」や「仕事」は、実はごくごく狭い範囲のものだったんですね。麻薬の売買を肯定するつもりはないですが、我々がしている「仕事」とブルース・リーの「仕事」を比べたとき、そこに何かしらの優劣をつけることはできるのでしょうか。私はゴンザレスさんのように危険地帯に突っ込んでいくようなことはしないですが、ルーマニアに行ってみたいなーと思ってしまう回でした。

佐藤健寿さん、四大廃墟巡礼の旅

他にも、洞窟探検家の人とかアラスカ写真家の人とか面白い人はたくさん登場します。だけどやっぱりこの人に触れないわけにはいかない、『奇界遺産』の佐藤健寿氏。

奇界遺産

奇界遺産

私はもー、この写真集大好きで何回も人に借りたり立ち読みしてりしているんですけど(買えよ)、世界って本当にまだまだまだまだ本当に不思議なものや未知のものに溢れてるんですね。『クレイジージャーニー』で扱われるのは、そんな佐藤さんの廃墟巡礼の旅なんですけど、番組で放送されるのはたぶん以下の写真集を作ったときの映像ですね。

世界の廃墟

『クレイジージャーニー』でまわるのは、まずはイギリスのマンセル要塞。私はここめっちゃ好きですね。テムズ川の河口に突如現れる奇妙な建造物なんですが、気になる人は後で画像検索してください。SF感がハンパないです。たぶん15分くらいは確実に飽きません。

続いて2ヶ所目となるのが、ブルガリア共産党ホール。上記の『世界の廃墟』の写真にあるのはここです。写真は内部のものだけど、私はここに関しては、外観がかっこいいと思いました。まったく現実感がないし、遠近感が狂っているようにも思えます。そして次に、廃墟マニアのなかでは有名らしいベルギーの冷却塔ときて、佐藤さんは最後にチェルノブイリへ向かいます。

このチェルノブイリの映像のことは、昨日ちょっとnoteに書いちゃったんですけど、佐藤さんは現地ガイドとともに立ち入り禁止区域に入っていって撮影をするんですね(立入り禁止だけど許可があれば入れる)。小学校の教室の床一面がガスマスクで埋め尽くされていたりする映像は、なかなか気持ち悪いです。あと、普通の道は除染されているから平気らしいんですけど、中心の通りからちょっと外れたりコケに近付いたりすると、いきなりガイガーカウンターがぴーぴーぴーぴー鳴るんですよ。あれとかちょっと怖いですね。

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『クレイジージャーニー』を見ていると、世界の裏側にくるんっと行ってしまったような気分になります。今我々が生活をしている、こっちが表側。でも、裏側の世界ってあるんです。ルーマニアのスラム街もそうだし、人間が入ったことのない洞窟もそうだし、マイナス40度になるアラスカの冬もそうだし、廃墟もそう。ただし、こっちが「表」で向こうが「裏」だと思うのはあくまで我々の側からの話で、向こうからはあっちが「表」でこっちが「裏」なんです。なにいってんだコイツ感が高まって参りましたが、私はやっぱり、たまにでいいから石ころひっくり返して「裏」が見たいって思っちゃいます。我々の常識や価値観が一切通用しない世界が、そこにはあります。

オレってばなんにも知らずにここまで来ちゃったもんだから

最後に全然関係ないようでいて微妙に関係のある話をすると、先日読んだ古賀史健さんのnoteがけっこう心に響きました。これ。

note.mu

あっちを見てもこっちを見ても知っていること(人)ばかり、ってボーッとしているとそうなってしまうことがわりとあると思うんですけど、世界はまだまだ広くて知らないことだらけで、我々はいつだって一年生なわけです。『クレイジージャーニー』はかなり頭がおかしい番組なんですけど、だからこそ私は、あんまり頭がおかしくない人にこの番組を見てほしいなあって思います。私の個人的な趣味として、あんまり頭のおかしくない人にこれを見せて、その人がどんな反応するか見てみたい。びっくりするかな、笑うかな、泣くかな。なんだか、夜道で下半身を丸出しにして女性をびっくりさせたい変態みたいな気持ちです。春だから、あったかいから、変なのがいっぱい出てきますね。女性読者のみなさんには、ぜひ気を付けてもらいたいと思います。



そうそう、これを投稿している今日は木曜日だと思うんですけど、木曜日ということは『クレイジージャーニー』の日ですよ。今日はなんと、丸山ゴンザレスさん回。メキシコ麻薬戦争に潜入取材ですよ。痺れますね、たまんないですね。ほんと、私はこれをあんまり頭のおかしくない人に見てほしい。そしてその人の反応が見たい。メキシコ麻薬戦争について熱く語る、あなたの顔が見たいのです。お願いだから、24時になったらテレビの前にスタンバイしてくれませんか?

佐藤健寿さんの本としては、最近出たTRANSITもおすすめです。

TRANSIT 佐藤健寿 特別編集号 美しき不思議な世界 (講談社 Mook(J))

ああ、美しき不思議な世界! 私が出かけるまで、どうかその姿を留めておいて。