チェコ好きの日記

もしかしたら木曜日の22時に更新されるかもしれないブログ

旅行に飽きたので、演劇とかやりたい。

ブライアン・クランストンという役者がいる。アメリカのテレビドラマ『ブレイキング・バッド』の主演俳優で、がんを患い余命2年を宣告された化学教師を演じている人だ。死ぬ前に家族に財産を残そうと、この人は覚せい剤の製造密売に手を染めていく。


Breaking Bad Trailer for STRAIN THEORY

で、同じくブライアン・クランストンが主演を務めているのが映画『潜入者』。こちらは、コロンビアの麻薬王の息の根を止めるため、ベテラン捜査官のロバート・メイザーが麻薬組織の潜入捜査に挑むという実話をもとにした作品だ。


潜入捜査官の衝撃の実話を映画化! 『潜入者』 予告篇

この映画でブライアン・クランストンは、ベテラン捜査官というエリートの顔と、潜入のため麻薬カルテルに近づく裏社会の男の顔とを演じ分けているのだけど、これは一言でいうと「怪演」である。エリートでいるときのロバートと、裏社会の男でいるときのロバートは、まったくの別人に見える。仕草、姿勢、言葉遣い、目線のやり方、それらがちょっとちがうだけで、同じ顔をした男が同一人物に思えない。

さらにいえば、ブライアン・クランストンは『ブレイキング・バッド』で冴えない中年の教師を演じているわけだけど、これもまったくちがう人物みたいに見える。私は『潜入者』の主演が『ブレイキング・バッド』の人であると知った上で映画を観に行ったのだけど、最初は「え、どれがブライアン・クランストン?」と思ってポカーンとしていた。思いっきり主演で映りまくっていたのに気づかなかった。

日本の俳優は、これは文句ではなくてそういう特徴があると言っているだけなのだけど、「雰囲気」で役者をやっている人が多い印象がある。てきとうに例をあげると、窪塚洋介とかはどの映画・ドラマでも全部「やんちゃなキチガイ」みたいな役である。作品が変わるたびに「えっ、これ誰?」みたいになる役者は少ないように思うのですが、どうでしょう。

別にどちらが良い悪いではないんだけど、私はこの2作品3役を見て、「ブライアン・クランストンめちゃめちゃかっこいいな……!」と思ってしまった。雰囲気で魅せちゃう人も素敵だけど、映画のために自分は「コマ」になることに徹する泥臭いプロ根性とか、単純にその役者としての技術の高さとかに、感動してしまった。そして妙な言い方になるけど、同時に、「こんなふうに仕草や言葉遣いを変えることで別人みたいになれたら、きっと楽しいだろうな〜!」と思った。


と、ここまでが前置きで以下から本題なのだけれど、最近、旅行に飽きている。

理由はたぶん、20代のときに行きたい場所にはだいたい行ってしまったからだ。まあそれでも細かく考えると行きたい場所はまだまだあるが、「この場所を見るまでは死んでも死ねない」みたいな強い憧れを抱いているところはもうなくなってしまった。別の言い方をすると、Lv30で倒せる敵はもうあらかた倒してしまったので、次の敵に立ち向かうためにはやみくもに旅に出るのではなく、まずは自分のレベルを30から40くらいまで上げてからじゃないとあんま面白くないな〜と思うようになってしまった。

なので、最近は「いかにしてレベルを上げるか」ということにご執心な私なのだが、「これやるとレベルアップできるのでは……?」とアタリをつけているのが、「身体(芸術)」とか「非言語」の分野である。格闘技を頑張っているのはそのためだし、「演劇をやりたい」というのは本当に役者を目指して演技を学びたいわけじゃなく一種のたとえなのだけど、ブライアン・クランストンみたいになれたら楽しいんだろうな、というのは今本当に思っていることだ。「私以外私じゃない」のは知ってたけど、「私だってそんなに私じゃない」のかもしれない。他人を支配したりコントロールすることはできないって知ってたけど、自分の体だって、自分が思ったとおりには動かないことがある。

演技したり、踊ったり、走ったりしたら楽しいんだろうなと思う。

今の気持ちを飾らずに率直に言うと、デヴィッド・リンチの『インランド・エンパイア』のエンディングに出てくるおねーちゃんたちに混ぜてもらいたい!

Inland Empire ending