チェコ好きの日記

もしかしたら木曜日の22時に更新されるかもしれないブログ

2020年上半期に読んで面白かった本ベスト10

恒例のやつです。今年の1月から6月末までに私が読んだ本の中で、面白かった本10冊のまとめ。おそらく今年の夏は、海外はもちろん、国内でも旅行の計画はなかなか立てにくいと思うので、少しでも読んでくれる人のおうち時間の足しになれば幸いです。


2019年末のやつはこちら
aniram-czech.hatenablog.com


10位 『世界史を変えた13の病』ジェニファー・ライト

世界史を変えた13の病

世界史を変えた13の病

このコロナ禍のなかでつい読みたくなってしまった感染症関連の本。ペストからスペイン風邪ハンセン病から梅毒まで、さまざまな病気が人類の歴史にどう影響を与えたのかが書いてある。著者の文体にちょっとクセがあり、たまにアメリカンブラックジョークみたいなのが鼻につくが、私はそういうの慣れてるから平気(?)。

9位 『いまさらですがソ連邦速水螺旋人,津久田重吾

いまさらですがソ連邦

いまさらですがソ連邦

3月上旬まで、バルト三国ポーランドを旅する予定でいた関係で読んだ本。私が大学と大学院で研究していたのもソ連の影響が色濃かった時代のチェコスロヴァキアだったので、一部は少し懐かしく感じるところもあり。リトアニアKGB博物館、行きたかったなあ。

8位 『アメリカ紀行』千葉雅也

アメリカ紀行

アメリカ紀行

千葉雅也さんのアメリカ旅行(旅行ではないな、研究)記。コンビニがないとか、なんとなく水場が汚いとか、すごく小さなほとんどどうでもいいようなことなんだけど、日本以外の国へ行くと身体をとりまく不協和音にいつも戸惑う。その不協和音はおそらく「不快」と感じる人が大半で、しかし私のような旅行中毒者にとってはその不協和音こそが快感で、だから今年日本の外に出られないというのは本当に悩ましいのであった……。

7位 『ハックルベリー・フィンの冒けん』マーク・トウェイン

ハックルベリー・フィンの冒けん

ハックルベリー・フィンの冒けん

「すべてのアメリカ文学の源流はここにある」的なことをヘミングウェイが言ったらしいので(ソース不明)、そういえば読んだことなかったなと思い読んでみたら面白かった。トムソーヤのほうは知っている人が多いと思うけど、ハックルベリー・フィンは子供向けではなく、黒人差別問題や父親の問題などが物語の中心にあり、かなり大人向け。下半期はこの物語をさらに深く読み解くために、批評をいくつか読みたいと思っている。

6位 『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』ポール・オースター

AMの連載でも取り上げたポール・オースター。政治家でも芸術家でもない普通の人々が体験した、「ちょっとヘンな話」を集めた短編集。この状況でバラバラになってしまった何かをもう一度つなぎ合わせるため、あえてバラバラなものを読む。なんとなく、今のこの時期に読むのに適した本だなーと感じる。

5位 『贅沢貧乏のマリア』群ようこ

贅沢貧乏のマリア (角川文庫)

贅沢貧乏のマリア (角川文庫)

『贅沢貧乏』といえば森茉莉だが、森茉莉ももちろんいいのだがより現実感のある(?)群ようこのこちらのほうが印象に残った。ゴミに埋もれながら孤独死を遂げた独身の森茉莉。家にいるしかない今期の私は過去最高にインテリア熱と掃除熱が高まっており部屋はゴミ屋敷ではまったくないんだけど、別に散らかっててもそれはそれでいいんだよな、と本気で思えるようになった(異臭とかするレベルまでいくと近隣の人の迷惑になるけど)。

4位 『ナラタージュ島本理生

ナラタージュ (角川文庫)

ナラタージュ (角川文庫)

なんか前も言ったので宣伝臭がしてしまうかもしれないが、AMの連載で時勢もあってかものすごくたくさん読んでもらえたらしい『ナラタージュ』の回。私自身は倫理観が世の中とかけ離れすぎていて時折戸惑ってしまうこともあるんだけど、それはやたら本ばかり読んでいるので、「ケース・バイ・ケース」の「ケース」をたくさん頭の中に持っているから……ということにしたいですね。『ナラタージュ』もまたひとつの「ケース」だ。

3位 『アーレントハイデガー』E・エティンガー

アーレントとハイデガー

アーレントとハイデガー

こちらも、3月上旬までバルト三国ポーランドを旅する予定でいた関係で読んだ本。ポーランドアウシュヴィッツ博物館に行く予定だったので、ユダヤ人やナチスドイツに関する本を上半期はいろいろ読んでいた。『エルサレムアイヒマン』を著したアーレントと、ナチスドイツを支持したと考えられている(反対意見もある)ハイデガーの関係は謎めいていて、宿命めいていて、すごく惹かれるものがあるんだよなあ。

2位 『聖なるズー』濱野ちひろ

聖なるズー (集英社学芸単行本)

聖なるズー (集英社学芸単行本)

ドイツの動物性愛者の団体を追ったドキュメンタリー。賛否ある内容だとは思うけど、すごくすごく面白かった。性愛や恋愛に興味がある人、動物が好きな人にはぜひ読んでみてもらいたい。「獣姦」というと忌々しいけど、動物と対等な関係を築いた上でセックスをすることは可能なのか、そもそも対等とは何なのか、人間同士であれば対等は成り立つのか、などなど問いは無限に浮かぶ。

1位 『猫を棄てる 父親について語るとき』村上春樹

ぶつぶつ文句を言いながらもやっぱりあん村上春樹が好きなのね、という結果になってしまった。いつも通りの春樹のエッセイといえばその通りなんだけど、「村上春樹って日本人だったのか……」という新鮮な驚きがある。子供の頃からずっとバゲットにバターを塗ってレタスと生ハムを挟んで深煎りのコーヒーと一緒に食べてるのかと思いきや(BGMはギル・エヴァンス)、春樹はちゃんと味噌汁と納豆のある場所で生まれ育っていた。「何言ってんだ」と思われるかもしれないけど、本当にそうなんだよ。日本文学よりはアメリカ文学に位置付けられ、無国籍な存在として受け入れられている春樹文学だけど、これはちゃんと「日本」だ、と思える春樹唯一の著作かもしれない。

まとめ

2020年上半期は、コロナウイルスでわちゃわちゃしていた記憶しかない……という人がたくさんいるはず。私もまた例外ではない。2020年といえば東京オリンピックを開催するはずだった年で、『東京タラレバ娘』の主人公たちは「オリンピックを1人で見るなんて!」と結婚を焦っていたわけだけど、実際に訪れた2020年はちょっとそれどころじゃないというか、コロナ以外の部分も合わせて「時代は変わったんだな」という感じがする。私は未来のことや先のことを考えて行動するのが苦手なんだけど、それはこんなふうに、時代や世相や自分を取り巻く環境はすぐに変わってしまうからだ(と、言い切るのは言い訳がましいが)。だから、そのときの自分の信念と確信に基づいて行動するしかない。それ以外の部分は、ほとんど無視したってかまわない。

と、きれいに言い切れるほどアッサリした人間では私も全然ないけれど、下半期も引き続き体力勝負になりそう。健康になりたい……。


★最後に宣伝★ 私の本も夜露死苦

AMの連載でとり上げた本のまとめ(No.31〜40)おすすめ優先度付き

AMの連載で紹介した記事がまた溜まってきたので、ここでまとめておきます。過去分は以下。

aniram-czech.hatenablog.com

第31回 SNSの「幸せそう」な雰囲気ではなく、自分の内側にある感覚を大切にする

静かに、ねぇ、静かに

静かに、ねぇ、静かに

おすすめ優先度 ★★★☆☆

タイトルになっている短編小説はいわゆる「若者の承認欲求」がテーマで、昨今はそれ自体は珍しいものではない。珍しいものではないのに、書かれるとやっぱり突き刺さるような痛みを感じてしまう。不穏な前半から後半にかけてのジェットコースター感がすごい小説だし、読みやすいので、気になる人は無料お試し版もあるので読んでみてほしい。

第32回 学者たちは誰ひとりとして「不倫」を否定しなかった――自分のセクシュアリティについて考えてみる

人はなぜ不倫をするのか (SB新書)

人はなぜ不倫をするのか (SB新書)

おすすめ優先度 ★★☆☆☆

実は、私は現在のいわゆる「一夫一妻制」ってちょっと無理があるんじゃないかな〜と秘かに思っている派。5年おきにパートナー契約を更新する時間差乱婚制とかどうだろうか。まあ、もともとは財産を守るために発生したのが婚姻制度だと私は思っているので、これだと本能には即していても実情からかけ離れているからダメなんだけど。お金と人手の問題がクリアできれば、契約更新ごとに子供を生んで3人くらい父親が違う子供を育てるのとかも面白そうだなと個人的には思う。

第33回 変わるべきは「私」ではない。容姿以外で自信はもてる――『ブスの自信の持ち方』

ブスの自信の持ち方

ブスの自信の持ち方

おすすめ優先度 ★★★☆☆

女性に対して「ブス」という言葉を向けること、また自虐として「私ブスだから〜」と自ら言うことは近年どうも歓迎されないムードになってきており、それ自体は私はけっこう良いことだと思う(「ちょうどいいブス」とかも)。ただ、男性に対してはいまだにデブだのハゲだのという言葉が投げられっぱなしなので、とにかく他人の容姿に関しては慎重に言及すべし……という空気がもう少し醸成されるといいなあ。

第34回 「自虐」は有効な処世術なのか?『負け犬の遠吠え』に息苦しさを感じた理由

負け犬の遠吠え (講談社文庫)

負け犬の遠吠え (講談社文庫)

おすすめ優先度 ★★☆☆☆

『負け犬の遠吠え』、この時代に読むとけっこう辟易してしまうような描写も多い。とはいえ、かつては自虐で嘯いてみるのが女性の独り身にとっては確かに有効で、『負け犬の遠吠え』時代もまたひとつのステップだったんだなあと思わせてくれる。この本の内容を真に受けてどうこうするよりかは、「こういう時代もあったのだ」とメタ視点で読むのがおすすめかな。

第35回 「女はオラオラ系が好きなんだろ?」という妬みは100年前から存在した

おすすめ優先度 ★★★☆☆

2014年くらいからずっと「ナンパ師ウォッチ」が趣味でいまだに辞められない私なのだけど(まあお金はかからないのでよし)、「女は誠実で優しくて一途な男よりも、暴力的で女好きな男のほうが好きなのだ」と信じている人がいまだにいることにびっくり。確かに表面だけさらうとそういうふうに見えなくもないかもしれないけど、そういうことじゃないんだよなあ。男性にもぜひ読んでみてほしいフェミニズム評論集。

第36回 生きる上で、「幸せになる」よりも大切なこと──ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引書』

おすすめ優先度 ★★★★☆

ルシア・ベルリンの短編集からは、特別に得られる教訓はない。目標を立てて、未来から逆算して今の行動を決めるという世界観ではなくて、ただ「今」が積み重なって未来に繋がっていく。いや、未来になど繋がらないかもしれない「今」を重ねていく。すごく惹かれる短編集ではあったけど、私はまだこの短編集を味わい尽くせるほど成熟はしていないなと思ったのも事実。

第37回 イ・ランは問い続ける。「なぜ、どうして、何のために?」小さな違和感との向き合い方

悲しくてかっこいい人

悲しくてかっこいい人

  • 作者:イ・ラン
  • 発売日: 2018/11/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

おすすめ優先度 ★★★☆☆

韓国文学が盛り上がっているので、そのムーブメントに乗っかって読んでみたイ・ランのエッセイ。彼女の目線はあまりにも素朴で、「若い女の子だ〜」とつい思ってしまうようなものも正直あった。だけど、その「若い女の子」の目線にもう一度戻ってみることが必要なときもある。基本的には20代の女性に勧めたいエッセイだけど、それ以上のすっかり凝り固まった世代の人が読んでみてももちろんいい。

第38回 ドイツにはキャバクラがない? 海外に比べて日本の風俗が多様なのはなぜ

おすすめ優先度 ★★☆☆☆

軽い気持ちで読める、女性目線の風俗エッセイ。私に時間があればぜひ「風俗文化人類学」なるものをやってみたいのだが……風俗って、風俗だけあって、あんまりちゃんとした文献がないんだよな。ヨーロッパ、アジア、南米、オセアニア、中東などなど、それぞれの地域で現在どのような風俗が発展しているのか、またそれぞれの風俗がどのような歴史的経緯を辿っているのか、調べたら面白いと思うんだけどなあ。

第39回 好きな人に選ばれない…でも「選別されない」世界は平穏なのか?

侍女の物語

侍女の物語

おすすめ優先度 ★★★★☆

マーガレット・アトウッドの『侍女の物語』は、小説もいいけどHuluのドラマもおすすめ。あの赤い衣服や白い帽子は、映像で見たほうがやっぱりインパクトがある。しかし、フェミニズムの小説としては面白いが、SFとして読むとところどころ「んん〜〜??」と突っ込みたくなるような設定もところどころある。

第40回 不倫を「だめ、絶対」ではまとめられない。他人の事情に思いを馳せる『ナラタージュ』

ナラタージュ (角川文庫)

ナラタージュ (角川文庫)

おすすめ優先度 ★★★★★

島本理生の小説を私は近年までほとんど読んだことがなかったのだけど、最近まわりでウォッチしている人が多いためここ1〜2年で慌てて読み出した次第。この『ナラタージュ』の回は、東出×唐田さんの不倫騒動の時期とちょうどバッティングしてしまい(AMの原稿は掲載より1〜2週間前に書いて送っているので、もちろん狙ったわけではない!)、なんでも、とてもたくさん読んでいただいたのだとか……。Twitterでは、往年の島本理生ファンと思われる方から「こういう島本理生評が読みたかった」とコメントをいただけて、すごく嬉しかったな。『ナラタージュ』は一言でいうと不倫の話なのだけど、恋愛や夫婦関係に悩んでいる幅広い人に読んでもらえるといいなと思っている小説。

                                                  • -

近いうちにNo.41〜50も書けそうなくらい、気が付いたら記事が溜まっていました。2018年にこの連載を始めて、もう2年というべきか、まだ2年というべきか。100冊を目指して頑張りたいところです。

Amazonプライム会員が無料で観られる私の好きな映画10本+有料5本

リモートワーク生活が始まっており、今週の私の外出はといえば「近所のスーパー」「近所のタイ古式マッサージ」「税務署」の3箇所のみとなっている。税務署は確定申告ね。ひとり暮らしだし喋る相手もいなくて寂しいかなと思ったけど、私は元来、超根暗のオタク。人との関わりが不必要とは言わないが、Slackなどでチャットできる環境があれば全然人恋しいとは感じないのであった。通勤時間を映画鑑賞や読書や料理の時間とすることで、めちゃめちゃQOLが上がっている感がある。とはいえ、オフィスワークも全然嫌いではないんですけどね。あと自宅の椅子が安物なので、長時間のデスクワークはちょいと腰がしんどいね。


それはそれとして、しばらく外出を控える人も少なくないと思うので、先日のツイート内容をまとめておく。Amazonプライム会員なら無料で観られる映画10本に加えて、有料だけどAmazonで観られる私の好きな映画を5本追加している。




1.『オマールの壁』ハニ・アブ・アサド

オマールの壁

オマールの壁

  • 発売日: 2017/03/03
  • メディア: Prime Video

よくある三角関係の話……にならなかった話、『オマールの壁』

よかったら以前書いた感想文をどうぞ……。

2.『パラダイス・ナウ』ハニ・アブ・アサド

パラダイス・ナウ(字幕版)

パラダイス・ナウ(字幕版)

  • 発売日: 2018/05/23
  • メディア: Prime Video

自爆テロって、どんな人がやるんだろう? 『パラダイス・ナウ』

これも前に感想を書いていました。

3.『デヴィッド・リンチ:アートライフ』

デヴィッド・リンチ:アートライフ(字幕版)

デヴィッド・リンチ:アートライフ(字幕版)

  • 発売日: 2018/07/04
  • メディア: Prime Video

4.『エンドレス・ポエトリーアレハンドロ・ホドロフスキー

エンドレス・ポエトリー【R15+】(字幕版)

エンドレス・ポエトリー【R15+】(字幕版)

  • 発売日: 2018/09/05
  • メディア: Prime Video
この映画は『リアリティのダンス(字幕版)』の後編にあたる。前編は有料。だけどこっちだけ観ても別に平気です。

5.『ホドロフスキーのDUNE』

ホドロフスキーのDUNE

ホドロフスキーのDUNE

  • メディア: Prime Video

6.『女は女である』ジャン=リュック・ゴダール

女は女である

女は女である

  • メディア: Prime Video

7.『ブラック・クランズマン』スパイク・リー

ブラック・クランズマン (字幕版)

ブラック・クランズマン (字幕版)

  • 発売日: 2019/10/09
  • メディア: Prime Video
有料だけど『グリーンブック(字幕版)』と比較しながら観ると、黒人差別がどのように描かれているか違いがわかって面白いかもしれない。

9.『ダウントンアビー』

嵐の予感

嵐の予感

  • 発売日: 2015/04/13
  • メディア: Prime Video
シーズン6まであるから、これを観ていればすぐに桜の季節だよ……。

10.『恋の罪』など園子温の何か

恋の罪

恋の罪

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video

園子温が苦手な私による園子温論

超大昔なので恥ずかしいのですがこんなことも書いたな。

以下は、有料だけど好きな(というか、この機会に観たい)映画です。

1.『ヘレディタリー 継承』アリ・アスター

ヘレディタリー 継承(字幕版)

ヘレディタリー 継承(字幕版)

  • 発売日: 2019/04/10
  • メディア: Prime Video
『ミッドサマー』も観たので、この機会に前作を観るのもいいかなと思って私は昨日観ました。ジャンルとしてはホラー映画なので注意。

2.『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』ジム・ジャームッシュ

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ(字幕版)

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ(字幕版)

  • 発売日: 2014/06/18
  • メディア: Prime Video
吸血鬼の話なんですが、舞台が私の愛する街であるモロッコのタンジェ。耽美ですべての映像が美しい。ジャームッシュはほか、有料だけど『パターソン(字幕版)』とかもある。

3.『バーニング』イ・チャンドン

バーニング 劇場版(字幕版)

バーニング 劇場版(字幕版)

  • 発売日: 2019/08/07
  • メディア: Prime Video

階級社会とスノッブ:『バーニング』と『納屋を焼く』

去年の私的ベスト映画。みんな観て!

4.『ニーチェの馬タル・ベーラ

ニーチェの馬 (字幕版)

ニーチェの馬 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
7時間超え大作『サタンタンゴ』より観やすいはず、なぜなら2時間半だから。『サタンタンゴ』が雨と泥の映画なら、『ニーチェの馬』は風と砂の映画なのだ。

5.『世界』ジャ・ジャンクー

世界(字幕版)

世界(字幕版)

  • 発売日: 2016/03/07
  • メディア: Prime Video
この映画の冒頭にかかる音楽(予告編でも聴ける)が好きで、私の通勤BGMです。内容ももちろん、とても好きな作品。
youtu.be


せっかくなので引きこもりライフを満喫しよう。では。

VERY3月号でインタビューをしてもらいました/後記

ツイッターですでにお知らせ済みなのですが、VERY3月号に、本にまつわるインタビューをしてもらった記事が載っています。実は初めて顔出しもしている……! が、これまでもイベントなどでは特にお面をかぶったりせず普通にやっていたので、何を今更という感じでもありますね。


内容としては、VERYの読者である既婚・子持ちのママたちの悩みを、私も一緒に考えてみる、というもの。独身なのに既婚ママの気持ちがわかるのか? と思う人もいるかもしれませんが、普通に、同じ人間なのでわかると思います。結婚したって親になったって別の人間に生まれ変わるわけじゃないからね。というか、私は「恋人がいない人は恋人が欲しいと悩み、恋人がいる人は結婚したいと悩み、結婚した人は子供が欲しいと悩み、子供がいる人は育児に悩み、育児が終わった人は自己の存在理由に悩む」みたいな循環? 円環? があると思ってるんで、つまり、人間の苦しみに終わりはない。みんなそれぞれの地獄があり、人はいつも自己のレーゾンデートルを探しているのさ。


VERY(ヴェリィ) 2020年 03 月号 [雑誌]

VERY(ヴェリィ) 2020年 03 月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2020/02/07
  • メディア: 雑誌


ところで、悩みのひとつに、「旦那もかわいい子供もいて、幸せなはずなのに、私はこのまま女として終わっていくのかと思うと……」といった主旨のものがありました。これについて、雑誌の内容とは別の角度から、少し考えてみたい。


ちょっとした好奇心で、先日、とある女性の育児ブログを読んでたんですよ。内容は、不倫をしているママ友に対して、「親としての自分よりも、女としての自分を優先してはダメだと思う」と、意見しているというものでした。でも、私はこの考え方はどうかな? と思う。


まあ、『誰も知らない』みたいにネグレクトになってしまうとダメだけど、「ネグレクトはダメ」と「女としての自分を優先してはダメ」は違う話じゃないかって気もするんだよね。子供の衣食住がきちんと保障されている状態で、かつ子供に愛情がちゃんと伝わっている状態なら、「女としての自分」を優先しても別にいいんじゃない? なんて思います。うーん、いや、「女としての自分」とかいうと不倫を肯定するのか!?!? って話になってややこしいかもしれないので、じゃあ「ただの自分」でいいや。親としての自分より、「ただの自分」を優先、というか軽視しないことはぜんぜんアリじゃないですか?


f:id:aniram-czech:20200210205528j:plain
うしろにあるのは2月号


もうちょっと具体的にいうと、私は(今のところ予定はないが)結婚して子供が生まれても、ガンガン1人で海外旅行に行くつもりなんだ、ボロボロのバックパック背負ってね。もちろん子が乳幼児の時期は無理だろうから、小学生とか中学生とかになったらの話だけど。その分のお金は自分で稼ぐし、家族がいることで「旅行が好きなただの自分」を諦めることはしたくないんだよね。どこまで行っても私はただの私だし。


VERYでは「女」「妻」「母」以外の、何の役割も付与されていない「ただの自分」がいていいんじゃないか、「ただの自分」を軽視するからモヤモヤするんじゃないか、なんて感じの話をしています。


Kindle版もやバックinサイズも出ているので、ぜひ手にとってみてもらえると嬉しいです。


バッグinサイズ 2020年 03 月号 [雑誌]: VERY(ヴェリィ) 増刊

バッグinサイズ 2020年 03 月号 [雑誌]: VERY(ヴェリィ) 増刊

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2020/02/07
  • メディア: 雑誌

AMの連載でとり上げた本のまとめ(No.21〜30)おすすめ優先度付き

AMの連載でとりあげた本をブログにまとめている。めちゃくちゃ溜まってしまっているので、ここで30冊目までをまとめておきたい!

aniram-czech.hatenablog.com

第21回 「他人の目は気にしなくていい」…だけど他人に愛されたい。どうしたら?

国境のない生き方: 私をつくった本と旅 (小学館新書)

国境のない生き方: 私をつくった本と旅 (小学館新書)

おすすめ優先度 ★★★★☆

ヤマザキマリさんのこのエッセイに出てくる、「人間に愛されることも大事だけれど、地球に愛される人になりなさい」という言葉が私はすごく好きで、救われている。ただ、ピンとこない人には全然ピンと来ず、「はあ?」って感じなんだろうとも思う。私はもともと「他人に愛されたい」という要求があまりないのですっと入ったのだけど、このあたりの話をもっと読みたいと思ってくれる人がもしいたら、noteも合わせて目を通してみてほしい。

第22回 恋に溺れられるのは、依存する女ではなく、信念のある強い女であること

生きて行く私 (角川文庫)

生きて行く私 (角川文庫)

おすすめ優先度 ★★★★☆

宇野千代の自叙伝である。宇野千代岡本かの子向田邦子、2019年は気骨のある女性の本をたくさん読んだなあ。宇野千代は若い頃に散々浮気をしたあとで、晩年は自分が夫の浮気で捨てられてしまうので、一部の人は「因果応報」だと彼女を馬鹿にもするのだろう。でも宇野千代は、そのことを後悔していないという。そのとき本当に好きなものを、興味があるものを、人間でもその他の対象でも、一心に追い続ける。何よりこの自叙伝を書いたのが85歳だから、実にパワフルな人だったんだなあと思う。宇野千代の言葉「わたし、あなたが好きよと言って、真っ直ぐに、ぴたっとその人の眼を見て言ってごらんなさい。いやだと言って、断るものはありませんから 」の破壊力がすごい。

第23回 意味はなくただそこに「好き」がある。南米で考えた「不倫」について

不倫と南米―世界の旅〈3〉 (幻冬舎文庫)

不倫と南米―世界の旅〈3〉 (幻冬舎文庫)

おすすめ優先度 ★★★★★

2019年にアルゼンチンに行ったので、前にも読んでたんだけどアルゼンチン関連として再読した吉本ばななの小説。私は吉本ばななについては
チエちゃんと私 (文春文庫)』がいちばん好きで、この『不倫と南米』は2番目くらいに好き。特に好きな話は、イグアスの滝が出てくる短編だ。不倫相手と一緒に雨が降るのを見つめている描写がとても美しい。

第24回 イケてるやつほど地元を出ない?出自や世代について話したくなる『私がオバサンになったよ』

おすすめ優先度 ★★☆☆☆

ジェーン・スーさんがさまざまな人と対談している本で、さらっと読める。スーさんは東京出身なんだそうだが、東京出身の人が書く「東京」よりも、雨宮まみさんなど地方出身者が書く「東京」のほうが、東京の本質をよく捉えているしドラマチックに感じることが多い。私は神奈川県の出身なので、東京出身ではなく地方出身者というほどでもない非常につまらん人間であり、東京出身者にも地方出身者にも両方コンプレックスを感じるというとてもアンビバレントな存在である。

第25回 あなたは「衝動買い」しますか?私たちがお金を払っている“本当のもの”

しあわせのねだん (新潮文庫)

しあわせのねだん (新潮文庫)

  • 作者:角田 光代
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/03/02
  • メディア: 文庫
おすすめ優先度 ★★★☆☆

角田光代さんの買い物エッセイ。特に印象的だったのは、あとがき(たぶん)にあった、「貯金ばかりが多くて自分の好きなものの話が何もできない中年男性」のこと。あんまり自己啓発っぽいことは言いたくないのだけど、若いうちはあまりケチらずお金を使ったほうがいいと私は思う。……という話を、noteにも書きました。

第26回 20代前半からの婚活もアリだが、その先長いのが人生だ。向田邦子の短編エッセイ

男どき女どき (新潮文庫)

男どき女どき (新潮文庫)

  • 作者:向田 邦子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1985/05/28
  • メディア: 文庫
おすすめ優先度 ★★★★☆

Dybe!のコラムでも書いたし、2019年は向田邦子ネタをちょっと使いすぎたな感がある。向田邦子は、小説はもちろん美意識のある暮らし方や料理や器など、憧れ要素が多いですよね。旅が好きだったことにも親近感がわく。

第27回 好きな人に「ネトスト」したことある?SNS時代特有のストーカーの実態

ストーカーとの七〇〇日戦争

ストーカーとの七〇〇日戦争

おすすめ優先度 ★★★☆☆

内澤旬子さんのこのエッセイは、現在の状況に法律が追いついていないことの代表例みたいな話だった。不謹慎な言い方かもしれないけど、この本は何よりもまず面白い。一気に読める。

第28回 顔面偏差値もセックスの好き嫌いも関係ない。私は私の欲望に正直になっていい

きりこについて (角川文庫)

きりこについて (角川文庫)

おすすめ優先度 ★★★☆☆

2019年はルッキズムについてよく考えていた年でもあった。私の中での結論は、おそらく多くの人は「逆では?」って言うと思うんだけど、仕事には容姿が少なからず影響する。が、恋愛には実はあまり影響しない。なぜなら、私の解釈では、美しい容姿とは「入り口」だからだ。仕事の入り口は常に広げてあることが望ましいが、恋愛においては基本的に決まったパートナー数人としか関係を築けない(ポリアモリーの場合などにおいてもである)。つまり、入り口が無関係とまでは言わないが、その後の関係性の構築や満足感において恋愛に容姿はあまり関係ないというのが私の結論である。

第29回 あの谷川俊太郎も「ひとり暮らし」!むなしくなったら思い出して

ひとり暮らし (新潮文庫)

ひとり暮らし (新潮文庫)

  • 作者:谷川 俊太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/01/28
  • メディア: 文庫
おすすめ優先度 ★★★★☆

このエッセイに登場する、「人間の基本単位はひとり」という谷川俊太郎の思想が私はとても好き。もちろん2人以上で暮らす楽しさや喜びはあるだろうが、暮らしや生き方を一時的ではなく永久に「2人以上セット」で考え続けることは、あまり望ましくないのではないかと私は思っているのだった。

第30回 高望みしない「普通」なんて生き方は、逆に自分を追い詰める

新編 普通をだれも教えてくれない (ちくま学芸文庫)

新編 普通をだれも教えてくれない (ちくま学芸文庫)

おすすめ優先度 ★★★☆☆

「普通」という言葉は現在、多くの場合においてちょっと息苦しい使われ方をしているように思う(そんなの"普通”じゃないよ、など)。今使われている「普通」という言葉が「だれでも持っているもの」「どこにでも普遍的にあるもの」というニュアンスを持っている以上、それを手にできなかったときに、おそらくすごく苦しい思いをする。とはいえ、やっぱり多くの人は王道ルートにのって人生を歩んだほうが生きやすいのかなあ。

                    • -

こちらの連載が書籍化されたやつも、引き続きよろしくお願いします。私はそろそろ2020年の旅行計画を立てます。