チェコ好きの日記

もしかしたら木曜日の22時に更新されるかもしれないブログ

AMの連載でとり上げた本のまとめ(No.41〜50)おすすめ優先度付き

今回もまたAMの連載で紹介した記事がまた溜まってきたので、ここでまとめておきます。過去分は以下。

aniram-czech.hatenablog.com

第41回 動物とのセックスは「異常」だろうか――「私」にとっての対等、合意の意味について

聖なるズー (集英社学芸単行本)

聖なるズー (集英社学芸単行本)

おすすめ優先度 ★★★★★

2020年、動物性愛や小児性愛などについて考えることが多かった。肯定するにも否定するにもかなりナイーブなテーマなので、私が軽はずみに何か書いてはいけないと思っている。でも本当に、いろいろ考えていることはある。この本はAMでの紹介においては、動物性愛の是非というよりは「"対等な関係""パートナーシップ”って簡単にいうけど、それってつまり何よ?」という文脈で書いた。人間の男女、女同士、男同士でも、「対等な関係」ってすごく難しいと思う。

第42回 女性が支配する世界はきっと平和……な、わけがない。男女逆転小説で考える、「力ある者」のふるまい方

パワー

パワー

おすすめ優先度 ★★★★☆

マーガレット・アトウッド侍女の物語』に続いて読んだ、フェミニズムのSF。ただし、フェミニズムのSFってフェミニズムとして読むととても示唆的で面白いんだけど、SFやエンタメとして読むとちょっと設定が詰め切れてないような印象を受ける作品もある気がする。アトウッドは新作『誓願』が出たそうなので、これもまあ一応読みたいリストには入っている。

第43回 「誰かが悪い」と思えば、楽だけど…原因がない「悲劇」の向き合い方

夏の終り (新潮文庫)

夏の終り (新潮文庫)

おすすめ優先度 ★★★☆☆

この回で扱ったのは瀬戸内寂聴。『夏の終り』は、妻に別宅の妾がいることをオープンにしている男とその妾の主人公の話。ただ、主人公は主人公で他に男がいたりするのでややこしい。おそらく人によっては主人公がとても身勝手に思えたりするのだろうけど、私はこの主人公をそんなに嫌いになれなくて、「ま、そういうこともある」と思って読みました。

第44回 「あいつ、もう食ったよ」は、最愛のパートナーにこそ使って欲しい! 性と食を考える『性食考』

性食考

性食考

おすすめ優先度 ★★★☆☆

世界のさまざまな民話・神話から、「性」と「食」について考えている本『性食考』を扱った回。「結婚」というとアラサー前後の妙齢の男女を思い浮かべる人が多いと思うけど、『聖なるズー』で扱ったように動物を生涯のパートナーとしたい人だっているだろうし、それこそ人類は太古の昔から異類婚姻譚というかたちで、人間以外の生き物とセックスしたり子供を作ったりする物語を紡いできたわけで。私は同性婚の法制化にはもちろん賛成しているんだけど、恋愛や性愛の関係にないノンケの男性同士や女性同士が家族を持つために友情結婚するのもアリだと思っているし、もっといえばそれこそ動物を正式なパートナーとすることだって選択肢としてあってもいいのかもしれない。あとは、「遺伝子的に3人の親を持つ子供」も技術的にはもう可能らしいので、それなら父2人母1人子が3人の6人家族とかだっていいよなあ。「恋愛」「結婚」「家族」「共同体」について、もっと自由に考えていきたいと思う私です。

第45回 「粋」なファッションは、姿勢にも影響する。自由に買い物できる日まで『着せる女』を読もう

着せる女

着せる女

  • 作者:内澤 旬子
  • 発売日: 2020/02/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

おすすめ優先度 ★★★☆☆

『着せる女』は著者の内澤旬子さんが作家や編集者の男性たちにスーツを選ぶというエッセイ。緊急事態宣言が出ており生活必需品以外のものを買いに出かけることができない時期に読んだので、バーニーズニューヨークで一流ブランドのスーツを試着する描写の楽しそうなことこの上なかった。そして女性のスーツのバリエーションのなさ、「PTAっぽくなる」というお悩みもまさに。50代くらいのバリキャリの女性が着る仕事着ももう少し種類がほしいよなー。

第46回 お金がなくてもひとりでも、哲学と美意識は忘れない。森茉莉に学ぶ、独身女性の楽しい生き方

贅沢貧乏(新潮文庫)

贅沢貧乏(新潮文庫)

贅沢貧乏のマリア (角川文庫)

贅沢貧乏のマリア (角川文庫)

おすすめ優先度 ★★★★★

今回紹介する中ではいちばん読まれたらしい回。独身ひとり暮らしで孤独死を遂げた森茉莉だけど、私は森茉莉の最期をそんなに悲惨だとは思っていなくて、「いいんじゃない?」って感じ。森茉莉は晩年「ひとり暮らしは嫌ね」って言ってたらしいけど、まあ老人になるとみんな心細くて弱音は多かれ少なかれ言うだろうしな。

第47回 男女の区別がない世界で愛は生まれるのか?ステイホーム中に現実逃避できる古典SF『闇の左手』

おすすめ優先度 ★★★★☆

時期的に、この頃から明確に「コロナ」を意識して書くようになったかも。『闇の左手』もアトウッドやナオミ・オルダーマンのようにフェミニズムSFの範疇に入る作品だと思うんだけど、なんかやっぱり設定の詰めが甘い気がするんだよな!? でもそれを言い出したら『TENET』とかも絶対どこかに矛盾があると私は疑っているので、まあ面白いからいいのかもしれない。

第48回 自分の〈被害〉と同時に〈加害〉についても語られる韓国文学『わたしに無害なひと』

わたしに無害なひと (となりの国のものがたり5)

わたしに無害なひと (となりの国のものがたり5)

おすすめ優先度 ★★★★☆

最近アツイと聞く韓国文学。「STUDIO VOICE vol.415」も韓国文学の特集が面白かったので、さらに守備範囲を広げたい人にはおすすめ。この『わたしに無害なひと』は、自分が「虐げられている人」であると同時に「虐げている人」でもあるという視点が『82年生まれ、キム・ジヨン』などとはまた違って新鮮だったように思う。自分の被害者性を訴えることと同時に、加害性について自覚するのも大切だよなと思う昨今です。

第49回 自分は何者なのか? パラパラ読める『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』で己の物語を見つめ直す

おすすめ優先度 ★★★★☆

なんだか社会が不安定だと感じるとき、一般の方々の体験した「ちょっとヘンな話」を集めることで、日常を取り戻す。それ自体は私はとても「わかる」と思うんだけど、それを「"ナショナル"・ストーリー・プロジェクト」と名付けるのはいささかアメリカ的という感じがしないでもない。という、日本とアメリカの違いをひしひしと感じつつも、ドラマチックな出来事よりもこういう「ちょっとヘンな話」のほうに本質が宿る気はしますね、個人的に。

第50回 手をかけた料理が絶対?テキトー弁当で育ったわたしたち『ヴィオラ母さん/ヤマザキマリ』

おすすめ優先度 ★★★★☆

ヤマザキマリさんのエッセイが好きで私はよく読んでいるんだけど、ヤマザキさんは典型的なマッチョ思考なので合わない人は合わないかもしれない……そしてそのマッチョ思考の出所は、ヴィオラ奏者のシングルマザーであったヤマザキさんのお母さんなのだな、とわかるのがこちらの本。コラムの冒頭にブエノスアイレスで見たキッズたちのお弁当のことを書いたのですが、こういうのを見るためにも早く海外旅行に行けるようになるといいなあ。

最後にわたしの本も宣伝

発売してからもう1年以上が経ちました。正直あっという間すぎて「1年経った」という実感がぜんぜんわかないのだけど、これからもAMのコラムやnote(もちろんブログも)更新していくつもりなので、よろしくお願いします。

「マイナビ学生の窓口」で冒険(たび)に出たくなる本5選を考えました。

こちらの記事が8月末に公開されています。5冊ともお気に入りの本ばかりなので、よかったらチェックしてみてください。

gakumado.mynavi.jp

以下は、こちらの記事のあとがき的な内容です。

旅ができない時期の冒険(たび)

長期休暇といえば旅だけど、今年は海外に行くのは無理だし、というか風の噂によると奥多摩がめちゃ混んでいるらしい。まあわかる、私も奥多摩に行きたいよ! 


そんな状況で「冒険(たび)に出たくなる本」を選ぶのはなかなか難しかったのだけど、永遠にこの状況が続くわけじゃないし(と信じたい)、旅に出られない今だからこそ読書で冒険(たび)に出る、というコンセプトはむしろアリなのでは? と考えながらこの5冊を選んだ。結果、ニューヨークが舞台のエッセイ、トルコが舞台のノンフィクション、チベットやシリアを旅するエッセイ漫画、パプアニューギニアが舞台の漫画などなど、偏りなしにバラバラな土地の本をチョイスしてしまった。とはいえ、「ここではないどこか」に行くだけが冒険(たび)ではないってことで、ゾンビの本がなぜか入っているのはそういう理由もある。


旅行に行かずして「家」の中のことを考えるのもまあ嫌いではなくて、「家具」と「食」について考える本はAMのほうで紹介している。家具は、本当はFLOSの照明とかが欲しいけど経済力に限界があるので、発酵食品とかに凝って遊んでいます……。


am-our.com


(※これは8月末に出た本なのでAMの中では触れられなかったけど、安定の高野秀行さん。食文化をたどるのは楽しい。「食に凝る」となると料理をするのではなく「食文化の本を読む」という方向に走る私です)



一部有料なのですが、最近コラムや日記的な内容はnoteに書くようになっています。でもAmazonリンクの書影が貼りやすいのでブログにはブログの良さがある。


note.com


2020年ももう残すところ数ヶ月ですが、この残りの数ヶ月で私はアメリカ文学研究(独自)をやろうと思っているので、またブログはお知らせ以外でも更新する予定です。

2020年上半期に読んで面白かった本ベスト10

恒例のやつです。今年の1月から6月末までに私が読んだ本の中で、面白かった本10冊のまとめ。おそらく今年の夏は、海外はもちろん、国内でも旅行の計画はなかなか立てにくいと思うので、少しでも読んでくれる人のおうち時間の足しになれば幸いです。


2019年末のやつはこちら
aniram-czech.hatenablog.com


10位 『世界史を変えた13の病』ジェニファー・ライト

世界史を変えた13の病

世界史を変えた13の病

このコロナ禍のなかでつい読みたくなってしまった感染症関連の本。ペストからスペイン風邪ハンセン病から梅毒まで、さまざまな病気が人類の歴史にどう影響を与えたのかが書いてある。著者の文体にちょっとクセがあり、たまにアメリカンブラックジョークみたいなのが鼻につくが、私はそういうの慣れてるから平気(?)。

9位 『いまさらですがソ連邦速水螺旋人,津久田重吾

いまさらですがソ連邦

いまさらですがソ連邦

3月上旬まで、バルト三国ポーランドを旅する予定でいた関係で読んだ本。私が大学と大学院で研究していたのもソ連の影響が色濃かった時代のチェコスロヴァキアだったので、一部は少し懐かしく感じるところもあり。リトアニアKGB博物館、行きたかったなあ。

8位 『アメリカ紀行』千葉雅也

アメリカ紀行

アメリカ紀行

千葉雅也さんのアメリカ旅行(旅行ではないな、研究)記。コンビニがないとか、なんとなく水場が汚いとか、すごく小さなほとんどどうでもいいようなことなんだけど、日本以外の国へ行くと身体をとりまく不協和音にいつも戸惑う。その不協和音はおそらく「不快」と感じる人が大半で、しかし私のような旅行中毒者にとってはその不協和音こそが快感で、だから今年日本の外に出られないというのは本当に悩ましいのであった……。

7位 『ハックルベリー・フィンの冒けん』マーク・トウェイン

ハックルベリー・フィンの冒けん

ハックルベリー・フィンの冒けん

「すべてのアメリカ文学の源流はここにある」的なことをヘミングウェイが言ったらしいので(ソース不明)、そういえば読んだことなかったなと思い読んでみたら面白かった。トムソーヤのほうは知っている人が多いと思うけど、ハックルベリー・フィンは子供向けではなく、黒人差別問題や父親の問題などが物語の中心にあり、かなり大人向け。下半期はこの物語をさらに深く読み解くために、批評をいくつか読みたいと思っている。

6位 『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』ポール・オースター

AMの連載でも取り上げたポール・オースター。政治家でも芸術家でもない普通の人々が体験した、「ちょっとヘンな話」を集めた短編集。この状況でバラバラになってしまった何かをもう一度つなぎ合わせるため、あえてバラバラなものを読む。なんとなく、今のこの時期に読むのに適した本だなーと感じる。

5位 『贅沢貧乏のマリア』群ようこ

贅沢貧乏のマリア (角川文庫)

贅沢貧乏のマリア (角川文庫)

『贅沢貧乏』といえば森茉莉だが、森茉莉ももちろんいいのだがより現実感のある(?)群ようこのこちらのほうが印象に残った。ゴミに埋もれながら孤独死を遂げた独身の森茉莉。家にいるしかない今期の私は過去最高にインテリア熱と掃除熱が高まっており部屋はゴミ屋敷ではまったくないんだけど、別に散らかっててもそれはそれでいいんだよな、と本気で思えるようになった(異臭とかするレベルまでいくと近隣の人の迷惑になるけど)。

4位 『ナラタージュ島本理生

ナラタージュ (角川文庫)

ナラタージュ (角川文庫)

なんか前も言ったので宣伝臭がしてしまうかもしれないが、AMの連載で時勢もあってかものすごくたくさん読んでもらえたらしい『ナラタージュ』の回。私自身は倫理観が世の中とかけ離れすぎていて時折戸惑ってしまうこともあるんだけど、それはやたら本ばかり読んでいるので、「ケース・バイ・ケース」の「ケース」をたくさん頭の中に持っているから……ということにしたいですね。『ナラタージュ』もまたひとつの「ケース」だ。

3位 『アーレントハイデガー』E・エティンガー

アーレントとハイデガー

アーレントとハイデガー

こちらも、3月上旬までバルト三国ポーランドを旅する予定でいた関係で読んだ本。ポーランドアウシュヴィッツ博物館に行く予定だったので、ユダヤ人やナチスドイツに関する本を上半期はいろいろ読んでいた。『エルサレムアイヒマン』を著したアーレントと、ナチスドイツを支持したと考えられている(反対意見もある)ハイデガーの関係は謎めいていて、宿命めいていて、すごく惹かれるものがあるんだよなあ。

2位 『聖なるズー』濱野ちひろ

聖なるズー (集英社学芸単行本)

聖なるズー (集英社学芸単行本)

ドイツの動物性愛者の団体を追ったドキュメンタリー。賛否ある内容だとは思うけど、すごくすごく面白かった。性愛や恋愛に興味がある人、動物が好きな人にはぜひ読んでみてもらいたい。「獣姦」というと忌々しいけど、動物と対等な関係を築いた上でセックスをすることは可能なのか、そもそも対等とは何なのか、人間同士であれば対等は成り立つのか、などなど問いは無限に浮かぶ。

1位 『猫を棄てる 父親について語るとき』村上春樹

ぶつぶつ文句を言いながらもやっぱりあん村上春樹が好きなのね、という結果になってしまった。いつも通りの春樹のエッセイといえばその通りなんだけど、「村上春樹って日本人だったのか……」という新鮮な驚きがある。子供の頃からずっとバゲットにバターを塗ってレタスと生ハムを挟んで深煎りのコーヒーと一緒に食べてるのかと思いきや(BGMはギル・エヴァンス)、春樹はちゃんと味噌汁と納豆のある場所で生まれ育っていた。「何言ってんだ」と思われるかもしれないけど、本当にそうなんだよ。日本文学よりはアメリカ文学に位置付けられ、無国籍な存在として受け入れられている春樹文学だけど、これはちゃんと「日本」だ、と思える春樹唯一の著作かもしれない。

まとめ

2020年上半期は、コロナウイルスでわちゃわちゃしていた記憶しかない……という人がたくさんいるはず。私もまた例外ではない。2020年といえば東京オリンピックを開催するはずだった年で、『東京タラレバ娘』の主人公たちは「オリンピックを1人で見るなんて!」と結婚を焦っていたわけだけど、実際に訪れた2020年はちょっとそれどころじゃないというか、コロナ以外の部分も合わせて「時代は変わったんだな」という感じがする。私は未来のことや先のことを考えて行動するのが苦手なんだけど、それはこんなふうに、時代や世相や自分を取り巻く環境はすぐに変わってしまうからだ(と、言い切るのは言い訳がましいが)。だから、そのときの自分の信念と確信に基づいて行動するしかない。それ以外の部分は、ほとんど無視したってかまわない。

と、きれいに言い切れるほどアッサリした人間では私も全然ないけれど、下半期も引き続き体力勝負になりそう。健康になりたい……。


★最後に宣伝★ 私の本も夜露死苦

AMの連載でとり上げた本のまとめ(No.31〜40)おすすめ優先度付き

AMの連載で紹介した記事がまた溜まってきたので、ここでまとめておきます。過去分は以下。

aniram-czech.hatenablog.com

第31回 SNSの「幸せそう」な雰囲気ではなく、自分の内側にある感覚を大切にする

静かに、ねぇ、静かに

静かに、ねぇ、静かに

おすすめ優先度 ★★★☆☆

タイトルになっている短編小説はいわゆる「若者の承認欲求」がテーマで、昨今はそれ自体は珍しいものではない。珍しいものではないのに、書かれるとやっぱり突き刺さるような痛みを感じてしまう。不穏な前半から後半にかけてのジェットコースター感がすごい小説だし、読みやすいので、気になる人は無料お試し版もあるので読んでみてほしい。

第32回 学者たちは誰ひとりとして「不倫」を否定しなかった――自分のセクシュアリティについて考えてみる

人はなぜ不倫をするのか (SB新書)

人はなぜ不倫をするのか (SB新書)

おすすめ優先度 ★★☆☆☆

実は、私は現在のいわゆる「一夫一妻制」ってちょっと無理があるんじゃないかな〜と秘かに思っている派。5年おきにパートナー契約を更新する時間差乱婚制とかどうだろうか。まあ、もともとは財産を守るために発生したのが婚姻制度だと私は思っているので、これだと本能には即していても実情からかけ離れているからダメなんだけど。お金と人手の問題がクリアできれば、契約更新ごとに子供を生んで3人くらい父親が違う子供を育てるのとかも面白そうだなと個人的には思う。

第33回 変わるべきは「私」ではない。容姿以外で自信はもてる――『ブスの自信の持ち方』

ブスの自信の持ち方

ブスの自信の持ち方

おすすめ優先度 ★★★☆☆

女性に対して「ブス」という言葉を向けること、また自虐として「私ブスだから〜」と自ら言うことは近年どうも歓迎されないムードになってきており、それ自体は私はけっこう良いことだと思う(「ちょうどいいブス」とかも)。ただ、男性に対してはいまだにデブだのハゲだのという言葉が投げられっぱなしなので、とにかく他人の容姿に関しては慎重に言及すべし……という空気がもう少し醸成されるといいなあ。

第34回 「自虐」は有効な処世術なのか?『負け犬の遠吠え』に息苦しさを感じた理由

負け犬の遠吠え (講談社文庫)

負け犬の遠吠え (講談社文庫)

おすすめ優先度 ★★☆☆☆

『負け犬の遠吠え』、この時代に読むとけっこう辟易してしまうような描写も多い。とはいえ、かつては自虐で嘯いてみるのが女性の独り身にとっては確かに有効で、『負け犬の遠吠え』時代もまたひとつのステップだったんだなあと思わせてくれる。この本の内容を真に受けてどうこうするよりかは、「こういう時代もあったのだ」とメタ視点で読むのがおすすめかな。

第35回 「女はオラオラ系が好きなんだろ?」という妬みは100年前から存在した

おすすめ優先度 ★★★☆☆

2014年くらいからずっと「ナンパ師ウォッチ」が趣味でいまだに辞められない私なのだけど(まあお金はかからないのでよし)、「女は誠実で優しくて一途な男よりも、暴力的で女好きな男のほうが好きなのだ」と信じている人がいまだにいることにびっくり。確かに表面だけさらうとそういうふうに見えなくもないかもしれないけど、そういうことじゃないんだよなあ。男性にもぜひ読んでみてほしいフェミニズム評論集。

第36回 生きる上で、「幸せになる」よりも大切なこと──ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引書』

おすすめ優先度 ★★★★☆

ルシア・ベルリンの短編集からは、特別に得られる教訓はない。目標を立てて、未来から逆算して今の行動を決めるという世界観ではなくて、ただ「今」が積み重なって未来に繋がっていく。いや、未来になど繋がらないかもしれない「今」を重ねていく。すごく惹かれる短編集ではあったけど、私はまだこの短編集を味わい尽くせるほど成熟はしていないなと思ったのも事実。

第37回 イ・ランは問い続ける。「なぜ、どうして、何のために?」小さな違和感との向き合い方

悲しくてかっこいい人

悲しくてかっこいい人

  • 作者:イ・ラン
  • 発売日: 2018/11/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

おすすめ優先度 ★★★☆☆

韓国文学が盛り上がっているので、そのムーブメントに乗っかって読んでみたイ・ランのエッセイ。彼女の目線はあまりにも素朴で、「若い女の子だ〜」とつい思ってしまうようなものも正直あった。だけど、その「若い女の子」の目線にもう一度戻ってみることが必要なときもある。基本的には20代の女性に勧めたいエッセイだけど、それ以上のすっかり凝り固まった世代の人が読んでみてももちろんいい。

第38回 ドイツにはキャバクラがない? 海外に比べて日本の風俗が多様なのはなぜ

おすすめ優先度 ★★☆☆☆

軽い気持ちで読める、女性目線の風俗エッセイ。私に時間があればぜひ「風俗文化人類学」なるものをやってみたいのだが……風俗って、風俗だけあって、あんまりちゃんとした文献がないんだよな。ヨーロッパ、アジア、南米、オセアニア、中東などなど、それぞれの地域で現在どのような風俗が発展しているのか、またそれぞれの風俗がどのような歴史的経緯を辿っているのか、調べたら面白いと思うんだけどなあ。

第39回 好きな人に選ばれない…でも「選別されない」世界は平穏なのか?

侍女の物語

侍女の物語

おすすめ優先度 ★★★★☆

マーガレット・アトウッドの『侍女の物語』は、小説もいいけどHuluのドラマもおすすめ。あの赤い衣服や白い帽子は、映像で見たほうがやっぱりインパクトがある。しかし、フェミニズムの小説としては面白いが、SFとして読むとところどころ「んん〜〜??」と突っ込みたくなるような設定もところどころある。

第40回 不倫を「だめ、絶対」ではまとめられない。他人の事情に思いを馳せる『ナラタージュ』

ナラタージュ (角川文庫)

ナラタージュ (角川文庫)

おすすめ優先度 ★★★★★

島本理生の小説を私は近年までほとんど読んだことがなかったのだけど、最近まわりでウォッチしている人が多いためここ1〜2年で慌てて読み出した次第。この『ナラタージュ』の回は、東出×唐田さんの不倫騒動の時期とちょうどバッティングしてしまい(AMの原稿は掲載より1〜2週間前に書いて送っているので、もちろん狙ったわけではない!)、なんでも、とてもたくさん読んでいただいたのだとか……。Twitterでは、往年の島本理生ファンと思われる方から「こういう島本理生評が読みたかった」とコメントをいただけて、すごく嬉しかったな。『ナラタージュ』は一言でいうと不倫の話なのだけど、恋愛や夫婦関係に悩んでいる幅広い人に読んでもらえるといいなと思っている小説。

                                                  • -

近いうちにNo.41〜50も書けそうなくらい、気が付いたら記事が溜まっていました。2018年にこの連載を始めて、もう2年というべきか、まだ2年というべきか。100冊を目指して頑張りたいところです。

Amazonプライム会員が無料で観られる私の好きな映画10本+有料5本

リモートワーク生活が始まっており、今週の私の外出はといえば「近所のスーパー」「近所のタイ古式マッサージ」「税務署」の3箇所のみとなっている。税務署は確定申告ね。ひとり暮らしだし喋る相手もいなくて寂しいかなと思ったけど、私は元来、超根暗のオタク。人との関わりが不必要とは言わないが、Slackなどでチャットできる環境があれば全然人恋しいとは感じないのであった。通勤時間を映画鑑賞や読書や料理の時間とすることで、めちゃめちゃQOLが上がっている感がある。とはいえ、オフィスワークも全然嫌いではないんですけどね。あと自宅の椅子が安物なので、長時間のデスクワークはちょいと腰がしんどいね。


それはそれとして、しばらく外出を控える人も少なくないと思うので、先日のツイート内容をまとめておく。Amazonプライム会員なら無料で観られる映画10本に加えて、有料だけどAmazonで観られる私の好きな映画を5本追加している。




1.『オマールの壁』ハニ・アブ・アサド

オマールの壁

オマールの壁

  • 発売日: 2017/03/03
  • メディア: Prime Video

よくある三角関係の話……にならなかった話、『オマールの壁』

よかったら以前書いた感想文をどうぞ……。

2.『パラダイス・ナウ』ハニ・アブ・アサド

パラダイス・ナウ(字幕版)

パラダイス・ナウ(字幕版)

  • 発売日: 2018/05/23
  • メディア: Prime Video

自爆テロって、どんな人がやるんだろう? 『パラダイス・ナウ』

これも前に感想を書いていました。

3.『デヴィッド・リンチ:アートライフ』

デヴィッド・リンチ:アートライフ(字幕版)

デヴィッド・リンチ:アートライフ(字幕版)

  • 発売日: 2018/07/04
  • メディア: Prime Video

4.『エンドレス・ポエトリーアレハンドロ・ホドロフスキー

エンドレス・ポエトリー【R15+】(字幕版)

エンドレス・ポエトリー【R15+】(字幕版)

  • 発売日: 2018/09/05
  • メディア: Prime Video
この映画は『リアリティのダンス(字幕版)』の後編にあたる。前編は有料。だけどこっちだけ観ても別に平気です。

5.『ホドロフスキーのDUNE』

ホドロフスキーのDUNE

ホドロフスキーのDUNE

  • メディア: Prime Video

6.『女は女である』ジャン=リュック・ゴダール

女は女である

女は女である

  • メディア: Prime Video

7.『ブラック・クランズマン』スパイク・リー

ブラック・クランズマン (字幕版)

ブラック・クランズマン (字幕版)

  • 発売日: 2019/10/09
  • メディア: Prime Video
有料だけど『グリーンブック(字幕版)』と比較しながら観ると、黒人差別がどのように描かれているか違いがわかって面白いかもしれない。

9.『ダウントンアビー』

嵐の予感

嵐の予感

  • 発売日: 2015/04/13
  • メディア: Prime Video
シーズン6まであるから、これを観ていればすぐに桜の季節だよ……。

10.『恋の罪』など園子温の何か

恋の罪

恋の罪

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video

園子温が苦手な私による園子温論

超大昔なので恥ずかしいのですがこんなことも書いたな。

以下は、有料だけど好きな(というか、この機会に観たい)映画です。

1.『ヘレディタリー 継承』アリ・アスター

ヘレディタリー 継承(字幕版)

ヘレディタリー 継承(字幕版)

  • 発売日: 2019/04/10
  • メディア: Prime Video
『ミッドサマー』も観たので、この機会に前作を観るのもいいかなと思って私は昨日観ました。ジャンルとしてはホラー映画なので注意。

2.『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』ジム・ジャームッシュ

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ(字幕版)

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ(字幕版)

  • 発売日: 2014/06/18
  • メディア: Prime Video
吸血鬼の話なんですが、舞台が私の愛する街であるモロッコのタンジェ。耽美ですべての映像が美しい。ジャームッシュはほか、有料だけど『パターソン(字幕版)』とかもある。

3.『バーニング』イ・チャンドン

バーニング 劇場版(字幕版)

バーニング 劇場版(字幕版)

  • 発売日: 2019/08/07
  • メディア: Prime Video

階級社会とスノッブ:『バーニング』と『納屋を焼く』

去年の私的ベスト映画。みんな観て!

4.『ニーチェの馬タル・ベーラ

ニーチェの馬 (字幕版)

ニーチェの馬 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
7時間超え大作『サタンタンゴ』より観やすいはず、なぜなら2時間半だから。『サタンタンゴ』が雨と泥の映画なら、『ニーチェの馬』は風と砂の映画なのだ。

5.『世界』ジャ・ジャンクー

世界(字幕版)

世界(字幕版)

  • 発売日: 2016/03/07
  • メディア: Prime Video
この映画の冒頭にかかる音楽(予告編でも聴ける)が好きで、私の通勤BGMです。内容ももちろん、とても好きな作品。
youtu.be


せっかくなので引きこもりライフを満喫しよう。では。