たった1人のスーパーリーダーが、彗星のごとく現れて、
今の日本を根本的に、短期間で、エネルギッシュに、劇的に、変えてくれる。
そんな夢みたいなことは、まず起こらないでしょう。
私たちは、そのことを十分に自覚したうえで、今月の衆議院選挙にのぞまなければいけません。
★★★
と、えらそうなことをいいながら、ミーハー心むきだしで読んでしまいました。
伊賀泰代さんの『採用基準』。
- 作者: 伊賀泰代
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2012/11/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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お面をかぶったある人の正体が伊賀泰代さんだということで、どんなことが書いてあるんだろう……と気になってしかたがなかったわけです(笑)
と、手に取ったきっかけは不純でしたが、予想以上に、とてもおもしろい本でした。
著者の伊賀さんは、大学卒業後、証券会社勤務を経て、米国でMBAを取得。
その後、約17年間、マッキンゼー・アンド・カンパニーでコンサルタントおよび人材育成、採用マネージャーを勤めたという、超絶エリートです。
マッキンゼーといえば、私のような一般市民にとっては、「口に出してはいけないあの人(@ハリー・ポッター)」レベルの雲の上の企業。
そんなマッキンゼーの「採用基準」を知ったところでどうしようもないわけですが、タイトルとは裏腹に、本書は「リーダーシップ」がいかにあるべきか――ということを説いた、だれもが知っておくべき・考えておくべき課題がつまった、非常に内容の濃い1冊になっています。
「リーダーシップ」に関する誤解
みなさんは、「リーダーシップ」ときいて、まずどんなことをイメージするでしょうか?
私はまず、就活のイヤ~な思い出がよみがえってきます。
見るのも嫌だったエントリーシートに、「ゼミ長をつとめた経験」とか「アルバイトでリーダーになった経験」とか「サークルで部長をつとめた経験」とかから得た自分の能力を、むりやり絞り出して(笑)書かないといけない。
私は「○○長」といった肩書をもったことがほとんどなく、目立ったり人の上に立ったりすることを好まないタイプなので、就活で「リーダーシップ」について聞かれることが、とても苦痛でした。
そして、あまり大きな声は出さないけれど、私のように「リーダーシップ」ときいてあまりいい印象を抱かない日本人は、それなりの数、いるはずです。
リーダーとは、カリスマ性をもった特殊な人である。
リーダーは、組織に1人いればよい。(○○長、というかたちで)
1人のリーダーが、組織運営について必要なことを、すべてやるべきだ。
リーダーは、押しが強く、目立つタイプの人間のほうが向いている。
われわれが抱く、「リーダー」に対するイメージ。
しかし、伊賀さんはこれらの日本人が抱きがちな「リーダー」像を、本書で強く否定しています。
伊賀さんのいう「リーダーシップのある人」は、目立つタイプでも、押しが強い人でもなく、ただ1つ、「組織の成果達成のために何が最適かを考えられる人」です。
たとえば、職場で忘年会をひらくことになり、ある人物が“幹事”としてリーダーになったとしましょう。
おそらく多くの人は、会場の決定からメンバーの出欠の確認、司会進行から注文からお会計まで、そのほとんどすべてを幹事1人にまかせっきりにしてしまっているのではないでしょうか。(私はそうです。ゴメンナサイ)
そして幹事自身も、その状況を嫌々ながらも受け入れ、忘年会に参加するメンバーを、1人でグイグイ引っ張っていくのではないでしょうか。
でも、伊賀さんのいう「リーダーシップのある人」はちがいます。
まず、その組織、プロジェクトの「成果」とは何なのか、という問題意識の設定から始まります。
今回の忘年会の目的は何なのか。メンバーの親交をどの程度まで深めたいのか。ゆるい会として今年の慰労をしたいのか。それとも、来年のビジョンを共有するためのちょっとかたい会にしたいのか。
全員にとってお金と時間を費やしただけある「価値ある忘年会」にするために、どういった忘年会にすることが最適なのか。
それを、幹事である「リーダー」はもちろんですが、リーダー以外のメンバーも全員がそれを考え、そして組織で「目標」を共有するのです。
(個人的には、“忘年会”はあくまで例であって、それくらいなら「成果」なんてなくてもいいんじゃないかと思いますが、最強組織マッキンゼーはたとえ”忘年会”であっても、「成果」を求めるみたいです……笑)
そして、もちろんリーダーは先頭をきって会の進行を進めていきますが、それ以外のメンバーも、「この会にとって何が最適なのか」を常に考え、ある局面では自分で舵をとり、責任をもってお会計や酔った人の介抱や注文や2次会の場所の決定などを、行なっていきます。
なので、伊賀さんいわく、リーダーシップをもっている人は組織に1人いればいいわけではなく、全員に必要である、ということなのです。
リーダーとはあくまで「成果をもっとも最適な方法で適切に導いてくれる人」であって、盛り上げが得意な人でも、華がある人でも、押しが強い人でもありません。
そのことを、リーダー自身はもちろん、メンバー全員が理解しているのです。
リーダーにとっての最初の関門
そんなマッキンゼー風?リーダーですが、この「リーダー」が行なっていくべきタスクは4つあると、伊賀さんは本書で書いています。
その1は、目標を掲げること。
その2は、先頭を走ること。
その3は、決めること。
その4は、伝えること。
どれも重要なことではあると思いますが、私はまず、「その1:目標を掲げること」が、最初のもっとも困難な関門ではないかと思うのです。
なので、その2~4に興味がある方は本書を読んでくださいということで、私はこの「その1:目標を掲げること」について、考えてみたいと思います。
学生時代は「リーダー」的立場になったことがほとんどなかった私ですが、実は現在、職場で私は「○○長」という肩書をもって、仕事をしています。
運営しているのは(私の支配権がおよぶのは)10人程度の小さい組織ですが、自分がそこで「リーダーシップ」をもって組織を最適な方向へ導いているかというと、クエスチョンマークをつけざるを得ません。
なぜかというと、本書を読んで気が付いたのですが、私が「この組織にとっての目標」を、しっかり掲げられていないからです。
ちょっと長いですが、心臓にぐさっと刺さったまま抜けてくれない印象的な文章があったので、本書から引用します。
まずリーダーに求められるのは、チームが目指すべき成果目標を定義することです。そしてその目標は、メンバーを十分に鼓舞できるものである必要があります。
人がつらい環境の中でも歩き続けられるのは、達成すれば十分に報われる目標が見えているからです。その目標、すなわちゴール(到達点)をわかりやすい言葉で定義し、メンバー全員で理解できる形にしたうえで見せる(共有する)のが、リーダーの役割です。
(中略)「俺がいいと言うまで何日でも歩き続けろ」と言われて、ひたすら歩き続けるモチベーションを保てる人はいません。「とにかく売上を上げろ、できるだけ利益を上げろ」と連呼するのはそれと同じです。これでは社員はエンドレスの努力を求められていると感じ、達成感も高揚感も得られないまま疲弊してしまいます。
【P116~117、強調は(チェコ好き)】
いわゆる「目標」ならば、会社なので明確な「売り上げ目標」がありますし、私もメンバーも、それを追っています。
しかし、その売り上げ目標を達成することによって私は、メンバーは、何が得られるのか。
今私がメンバーに追わせている「目標」が、メンバーを十分に鼓舞できるレベルのものであるかといわれると、答えはNOです。
だって、売上あげてもわれわれの給料変わらないんだもんねー
会社から課される売上目標を、ただの数値ではなく、メンバー全員がそれに向かって頑張ろうと思えるくらいの、明確かつレベルの高い目標に、自分の言葉で還元しなければならなかったのですね……。
と、気付いたのは結構なのですが、もちろん、「よし、じゃ明日からそうしよっと!」とできるほど、これは甘い話ではありません。
私と、メンバー全員が共有できる、最終的な成果、目標って、何?
これは、一朝一夕で考えられるほど、簡単なものではありません。
今自分が所属している組織は、何のために存在しているのか。組織全体の役割は何なのか。自分のチームは、組織全体のなかのどういう部分をまかされていて、何が求められているのか。
それを、「売上をあげる」とかのレベルではなく、全員が自分のミッションとして、当事者意識をもって考えられている組織。そんな組織に所属できている人は、とても幸福だと思います。
日本に必要な真のリーダーシップ。
同じことは、会社組織だけでなく、日本という国家にもあてはまります。
さすがに1億うん千万人全員が共通で目標にできるビジョンを掲げるのは、ちょっと無理かなと思いますが……
私たちは、この日本を、どうしたいんでしょうか。
まず真っ先に解決したい課題は、何なのでしょうか。
野田首相を責めるのは結構ですが、では、あなたが総理だったら、何をどうします?
もちろん、この質問についての回答は、個人によってバラバラになるはずです。
でも、国を変えるのはだれか1人のスーパーリーダーではなくて、
自分なりの「成果目標」を掲げた、それこそ1人1人なのかなと。
もちろんリーダーである首相は、先頭をきって、忘年会……じゃなかった、国家の進むべき方向を、考えていく必要があります。
でも、それ以外のメンバーである国民も、「この国にとって何が最適なのか」を常に考え、ある局面では自分で舵をとり、責任をもって、お会計や酔った人の介抱や注文や2次会の場所の決定……じゃなかった、自分が解決すべきだと思う課題に、取り組まなければなりません。
でも、その「進むべき方向」、「最終的な成果」を、考えるのが、超難しいです。
日本にとっても、私が所属する会社組織の、10人程度のチームにとっても。
この本を読んでから数日間、そのことをぐるぐるぐるぐるぐる考えていますが、結局、明確な答えが出せていません。
だけど、もう少しじっくり、考えてみることにします。
★★★
ただし、考えすぎて前に進まないのも、それはそれで問題です。
A bad decision is better than no decision、という言葉が本書にありました。
うーん、隙がないよ、マッキンゼー。笑
- 作者: 伊賀泰代
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