チェコ好きの日記

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あなたの会社の、『失敗の本質』を考えよう!

『失敗の本質』という本が、ちまたでなかなか売れているようです。

近所の本屋さんに平積みされていたところを発見したので、私も読んでみました。

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)


日本は、なぜ戦争に負けてしまったのか。

本書『失敗の本質』は、大東亜戦争における日本軍の諸作戦を分析し、その敗因をさぐっていきます。

ちなみに、なぜ日本が戦争に負けてしまったのかというと、すごく単純に考えるならば、
「はじめから勝てるわけのない相手に、戦いを挑んだから」です。
当時の日本とアメリカでは、国力に差がありすぎました。

問題なのは、なぜ負けるとわかっている戦いに、多くの犠牲を投じて邁進していってしまったのか、ということ。

本書はその失敗の要因を、組織の問題として考えていきます。

現在、私たち日本人の多くが属している組織といえば、それはもちろん「会社」です。
しかし、日本の会社組織のほとんどは、その規模に関係なく、今になって、いろいろなところで制度疲労をおこしているように思います。

私たちの「会社」、あるいは「政府」。
本書をとおして、“日本の組織”がもつ問題点とは、いったいどこにあるのか……一緒に考えてみましょう!
以下は、目次です。

序章 日本軍の失敗から何を学ぶか
一章 失敗の事例研究 
 ノモンハン事件――失敗の序曲
 ミッドウェー作戦――海戦のターニング・ポイント
 ガダルカナル作戦――陸戦のターニング・ポイント
 インパール作戦――賭の失敗
 レイテ海戦――自己認識の失敗
 沖縄戦――終局段階での失敗

二章 失敗の本質――戦略・組織における日本軍の失敗の分析
三章 失敗の教訓――日本軍の失敗の本質と今日的課題

★★★

さて、本書を読み進めていくと、

「ひぃー! うちの会社のことが書いてあるっ!!」と、

絶叫する人も少なくないはずです。

日本の組織とは、いや、組織というものはだいたいにおいて、
ほうっておくと本書にあるような、形骸化した、保守的な組織になっていってしまうのかもしれません。
それが日本軍であれ、会社であれ、大学のサークルであれ……

本書に書かれていた失敗の要因はいくつかありますが、今回は、私が特に「ひぃー!」と思った3つについて、とりあげてみたいと思います。

1・異端・偶然の排除

大東亜戦争における日本軍は、ガダルカナル島放棄論を唱えた二見秋三郎参謀長など、「異端」とよばれた人物が権力の中枢を占めることは、なかったそうです。
むしろこういった人物を嫌い、権力の中枢から遠ざけるよう試みました。

組織とは、「異端な存在」や「偶然」を極力、排除しようとします。これは、日本の組織だけにある傾向ではありません。
もっといえば、会社など、大人の組織だけにある傾向でもありません。
小中学校のクラスなど、子供の組織でも、この「異端・偶然の排除」は行われます。(それが顕在化したのが“いじめ”です。)

「異端」や「偶然」を排除しようとする組織の心理は、共感はまったくできませんが、理解はできます。

「自分たちと異なるもの」は、常に自分たちの存在意義を問うからです。
あなたがやっている行動は価値あるものなのか?
あなたが進んでいる方向はまちがってはいないのか?
あなたが主張している論理には欠点があるのではないか?

こういったことを問われると、人は不安になります。
不安になると、それを考えるために皆が立ち止まってしまい、組織としてのスピードが落ちていきます。

なので、「自分たちと異なるもの」を排除します。そうすれば、組織としてのまとまりはよくなっていきます。

しかし同時に、「自分たちの存在意義を問うもの」がいなくなるわけです。
だから、自分たちがまちがった方向に進んでしまっているときに、誰も気付くことができません。
イノベーションも起こりません。

「ひぃー!」と思ったのは、組織の失敗云々の前に、私はこの「異端・偶然の排除」というのが、思想として大嫌いだからです。これ、最高につまんないです。
このブログ内でも何回か書いているのですが、私はいろいろなものがごちゃまぜになっているのが好きだし、おもしろいと感じます。
あなたや私が、オバマ大統領とお友達になる方法! - (チェコ好き)の日記

組織として意思統一をはかっていくことは重要ですが、それが「異端・偶然の排除」というところまでいってしまうと、組織は硬直化します。
思考停止し、失敗をまねきます。

2・過剰適応

過剰適応とは、もう少しわかりやすくいうと、「以前の成功をひきずる」ということです。

日本軍の場合は、日露戦争がその「成功」でした。
アジアの小国・日本がロシアに勝利したことで、日本の国際社会における認知度はいっきに高まります。
そのため、これ以後の戦争も、すべて「日露戦争っぽくやれば勝てる」と思い込んでしまったわけです。

これは、日本の大企業によくあてはまりそうな現象ですよね。
「モノづくりの国」だからといって、家電に余計な機能をつけすぎだろうとか、画素数を高くすればいいってもんじゃないよとか……ぶつぶつ。

本書では、進化論でも、過剰適応が生物の絶滅をまねくことを指摘しています。
恐竜はマツ、スギ、ソテツなどの裸子植物を食べるために機能的にも形態的にも徹底的に適応したのだけれど、適応しすぎて、ちょっとした気候の変動や食物の変化に対応できなかったと。

過去の成功はあくまで“過去”の成功であり、見据えなければならないのは今。

組織としてこういった考え方をしていくのは、なかなか酷なことなのかもしれません。
でも、日本軍が敗戦した原因の1つにこれがあったかもしれない、ということは、知っておいて損のないことだと思います。

3・空気の支配

現在でも日常的によく語られる、きわめて日本人的なことば、「空気」。笑
私も入社以来、何度「空気読め」といわれたことか……

大東亜戦争における日本軍の諸作戦は、論理や科学的合理性がほとんど無視され、「必勝の信念」とか「人情」とか、そういうふわふわした“ムード”に包まれてしまっていた、とのことです。

この戦いで勝てる見込みはほとんどないのだから、撤退したほうがいいんじゃないか。
毎日残業するのではなくて、もっと効率のよい仕事の進め方はないのだろうか。

こういった疑問を口にすると、「根性で何とかするんじゃい!」的な一言で、一蹴されます。
「空気」は、こういったことへの思考を停止させます。

★★★

ここでは、私が「ひぃー!」と思った要因を、3つしかとりあげることができませんでした。
なので、今、自分が属している組織が十分なものではないと感じている方は、本書を読んで、ぜひその失敗の要因をさぐってみてはいかがでしょうか。

そして、読んだあと、
自分が属している組織に問題があると感じるならば、あなたがとるべき行動は2つだけです。

組織を去るか、
組織を変えるか。

本当は3つめの、「愚痴をいいながらも我慢してとどまる」という方法もあります。
でもそれは、あなたの精神も体も人生も、破壊することになっちゃうかもしれません。

ちなみに、非バトルタイプでのんびり人間な私は、組織を変えるほどのバイタリティは持ち合わせていないので、
近いうちに組織を去ることになるでしょう。ふふふ。

あなたの、私たちの、

会社、
コミュニティ、
政府。

変えます? 去ります? どうします?