チェコ好きの日記

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旅をすることで人生は変わる パリ編 最終回!

2010年、3月。就活をすっぽかして、イタリアとパリをめぐった半月。

今回で何と8回目となる長期連載になってしまったのですが、いよいよ(?)最終回です。


フィレンツェから入り、シエナアッシジ、オルヴィエト、そしてローマと、ひたすら南下してきたイタリアをついに出て、映画監督アンドレイ・タルコフスキーが息を引き取った場所、フランス・パリ行きの飛行機へとびのります。

やってきた曇天の街、パリは、2週間近くいたイタリアとは雰囲気がまったく異なり、また新たな気持ちで観光をすることになりました。

車の走り方や人々のしぐさが、何だかエレガント。

何かとガヤガヤしていて、粗野な感じの(※そこがいいんです。ほめてます)イタリアとはえらいちがいでした。

私たちが泊まったホテルはモンマルトル墓地の近くだったのですが、まずはそこから歩いて、ムーラン・ルージュへ。
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外観を見ただけですけどね。

シュルレアリスムの芸術家は、このあたりに家をもっていた人がけっこういたらしく、アンドレ・ブルトンもその1人だったとか。

私にとっては、聖地ともいえる場所です。

それに続いて行ったのが、画家ギュスターブ・モローの生家。博物館になっていて、貴重な作品をたくさん見ることができます。
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モローは19世紀末の画家で、私がもっとも好きな芸術家の1人です。

彼の作品を改めてパリで、それも彼の生家で見ると、日本で見るのとはちがい、何だか作品に血が通って、息をしているようでした。
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美しいパリの街の一角で、ひたすら退廃的で、幻想のような世界を描き続けたモロー。
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この絵を見たときは、思わず鳥肌が立っちゃいました。細部の描き方がすごすぎて。

ギュスターブ・モローは1898年に亡くなっているので、実際に会えるわけはないのですが、後ろを振り向いたら、モローが立って息をしているような気がしました。その筆の運び方1つ1つを見ながら、彼と会話ができた気がしました。

何を考え、何を想い、こんな絵を描いたのだろう。そう思って、ちょっと涙が出ました。

その後は、定番のエッフェル塔や、ノートルダム寺院に行ってみました。

エッフェル塔の広場の近くにはメリーゴーラウンドがあるのですが、暗くなってからいくと、まさに映画の世界です。
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あんまりフラフラしていると危ないですが、それでも素敵でした。夜のパリ。
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翌日は各々で自由行動の日だったため、私は1人、同行のメンバーとはなれ、修論の資料を探しに映画の書籍を専門に扱っている書店をたずねたり、サクレ・クールに行ったり、ルーブル美術館に行ったり、現代アートの聖地ポンピドゥー・センターに行ったりしたのですが。

ですが。
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行列にならび、ルーブル美術館にやっと入れた頃でしょうか。何だか、頭がフラフラする……。

何と、発熱しました。

せっかく来たのだし、ちょっとくらいイケるだろうと思い、そのままルーブル美術館の作品を鑑賞し、写真も撮りまくっていましたが(※館内は撮影OKなのです)、だんだんやばくなってきたので、泣く泣くホテルにもどることに。夜はゼミのメンバーと集合し、牡蠣をいただく予定でしたが、それもキャンセル。

ホテルで1人、水とブルーベリーを食べて寝ていました。ああ、牡蠣……

それにしても、異国の不案内な場所で1人でいるときに熱を出して、黒人に絡まれたりスリにあったりしなくて本当によかったです。

たぶん、地図をロクに見ずに、速足でサクサク歩いていたのがよかったのでしょう。(?)

自分のなかで、「観光客じゃありません。近くに住んでる留学生です」っていう設定にしていました。

そんなわけで、最後は若干、消化不良なところもあったパリですが、おいしいものを食べたり素敵なものを見れて、大満足。

イタリアとパリをめぐったあの旅行から、もう3年も経つわけですが、

未だにこうしてブログに書いたり、現地で見た美術や土地に関する本を、探して読んでみたりしています。

長々と連載してきたタイトルにもあるように、この旅は、私の世界観を変えてしまった旅でした。

このイタリア~パリ旅行、ずばり、費用が40万以上かかったんです。僻地の修道院とか、ふつうは入れない庭園とか、マニアックなルートがけっこう入っていたためです。

当時(今も)ド貧乏だった私は、行く前、すごく迷ったんですよね。お金、なかったので。

でも今となっては、「行く」決断をしてくれた3年前の自分に、感謝しています。

仕事で嫌なことがあったり、人生に迷ったりしたとき、この旅行で見たいろいろなものを思い出すと、モヤモヤがすーっと晴れていくような気がするんですよ。

芸術、アートというのは、ただの装飾品ではありません。

人の思いや、宗教的な考えや、その土地の歴史や、風土や、いろいろなものを吸収して、そこに存在しています。

どんなに美しい作品であっても、ドロドロした人間の汚い感情が透けて見えたり、

また逆に、一見下品で卑俗に見える作品であっても、そこに人間の崇高な思想が潜んでいることもあります。

紀元前、中世、ルネサンス、近代、世紀末。そこで暮らしていた人々が、何を考え、何を想っていたか。

「知らない」世界は、「存在しない」のと同じことです。でも、時代をこえて彼らは、今、私のなかに「存在」してくれています。

そのことに、とても感謝しているのです。

一生の財産を、40万円で買ったと思えば、安いもんです。

私が在籍していた学科では、「親をだましてでも金をつくって旅行へ行け」と、いわれていました。

私は親をだましたりはせず、ローンを組んでせこせことアルバイトをして借金を返しましたが、これは本当です。

法に触れなければどんな手を使ってもかまわないので、お金をつくって旅行に行こう。

日本国内でもいいけれど、特に大学生は、やっぱり海外がいいと思います。

そして、社会人でも、やっぱり旅行に行こう。

そのための時間とお金をどう捻出するかが、社会人の腕の見せどころではなのではありませんか。

世界には、まだまだわれわれの知らない美しいものが、たくさんあるみたいですよ。

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★おわり★

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と思ったけど、番外編を書きました!
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