チェコ好きの日記

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ジム・ジャームッシュの映画

みなさんは、日常生活において、何かを「かっこいい!」と思うことは、ありますでしょうか。

実は、「かっこいい」をテーマに文章を書こうとすると、それだけで3000字とかになってしまいそうなくらい、私はこの「かっこいい」という感情を、わりと重要視しています。

身近な異性や芸能人、スポーツ選手に対して思う「かっこいい」でもいいし、服やインテリア雑貨を見て思う「かっこいい」でもいい。けれど、もう少し高度な(?)「かっこいい」として、ある人の思想や行動、価値観に対して思う「かっこいい」や、芸術作品に対して感じる「かっこいい」なんていうのもあったりします。

「かっこいい」の類義語(?)に「かわいい」という感情もあると思うのですが、「かわいい」という感情は、自分より下のものとか、自分の庇護が必要なものに対して抱く感情です。子猫とか、子犬とか、赤ちゃんとか、上目使いの女の子とか、キティちゃんとかね。脱線しますけれど、「かわいい」についてもう少し調べてみたいな、という人にはこの本がおすすめ。

「かわいい」論 (ちくま新書)

「かわいい」論 (ちくま新書)

閑話休題
話をもどしまして、「かっこいい」という感情は、「かわいい」という感情と、いってみれば方向が逆なのです。自分より上のもの、目指すべきもの、一次元レベルが上のもの。人は、そういったものに対して、「かっこいい」という感情を抱くことが多いです。バシッとスーツを着た男性とか、イチローとか、NPOを立ち上げた人とか、芸術作品とか、そういう感じのもの。

だから、その人がどんなものを「かっこいい」と思うかによって、その人の目指しているものや、大切にしている価値観など、そういうことが大筋でわかってしまうんじゃないかなー、と私は考えています。

さて、「かっこいい」論は後日、機会があればまた考えてみることにして、今回紹介したいのは、私が文句なしに「かっこいい」と思っている、ある映画作品です。

ニューヨークを代表する映画監督、ジム・ジャームッシュ

ジャームッシュの映画は、付け入る隙がないくらい、文句のつけようがないくらい、「かっこいい」です。こんなセンスをもった人間がこの世にいるということが、奇跡だと思います。

あまりにもセンスがいいので、幻想だということはわかっていても、彼の映画を見ただけで自分も「かっこいい」人間になった気分になれます。「魂が洗われるようだ」なんていう表現がありますが、ジャームッシュの映画を見ると、それだけで「魂がかっこよく」なるのです。

魂がかっこよくなると、世界がかっこよく見えます。
んなジム・ジャームッシュのおすすめ作品を、以下に5つならべてみましょう。

1・『ストレンジャー・ザン・パラダイス』1984年


JIM JARMUSCH - STRANGER THAN PARADISE ...

ジャームッシュは、ニューヨーク大学大学院の卒業制作である『パーマネント・バケーション』で、映画監督としてデビューします。この『ストレンジャー・ザン・パラダイス』は、彼にとって2作目の映画です。

「若手」「インディーズ」とよばれる時代に制作した作品ではありますが、すでにその後のジャームッシュを特徴付けるあらゆる要素が出尽くしているというか、「完成」されています。音楽がたまらないですね。

2・『ダウン・バイ・ロー』1986年


DOWN BY LAW - Trailer ( 1986 ) - YouTube

こちら『ダウン・バイ・ロー』は、以前書いたエントリで、ジャームッシュの代表作として紹介した作品です。

刑務所でたまたま出くわした3人の男がくり広げる脱獄劇。

音楽も担当している主演のトム・ウェイツは、この後のジャームッシュ作品にもたびたび登場します。

画面構成が完璧に計算されたモノクロームの映像が印象的です。

3・『ナイト・オン・ザ・プラネット』1991年


Night on Earth (Trailer) - YouTube

『ナイト・オン・ザ・プラネット』は、モノクロームが多いジャームッシュ作品では珍しい、カラー作品です。

ロサンゼルス、ニューヨーク、ヘルシンキ、パリ、ローマ……世界のさまざまな都市での、「タクシーの運転手」と「その客」を描いたちょっと奇妙なオムニバス映画です。一筋縄ではいかない、エスプリの効いた展開が魅力です。

4・『デッドマン』1995年


DEAD MAN - Trailer ( 1995 ) - YouTube

『デッドマン』は、私がもっとも好きなジャームッシュ映画です。

「死人と旅をしてはいけない」、という意味深な詩から始まるこの映画は、若き日のジョニー・デップが主演をつとめる、西部劇。

伝統的な西部劇といえば、白人たちがインディアンと闘う、というストーリーがその多くを占めています。これらの西部劇は、人権上の問題から、現在では支持されている作品は多くありません。

しかし『デッドマン』は、白人であるビル・ブレイク(ジョニー・デップ)がお尋ね者となり、インディアンとともに旅をします。そして、ブレイクは自分を追う白人たちを、どんどん銃で撃ち殺していきます。

白人とネイティブ・アメリカン。アメリカという国を考える上で欠かせないこの問題が、見事な映像と音楽によって表現されています。紹介は軽くにしておきますが、この作品だけで5000字くらい書けるレベルの、いい映画です。

5・『コーヒー&シガレッツ』2003年


「コーヒー&シガレッツ」予告編 - YouTube

最後は、『コーヒー&シガレッツ』。トム・ウェイツイギー・ポップビル・マーレイなど、ジャームッシュ作品でおなじみの俳優たちが登場するオムニバス映画。煙草を片手にコーヒーをすすりながら、彼らはユーモアにあふれた会話をくり広げます。

「究極のリラックス・ムービー」という宣伝通り、ゆったりと楽しめる映画です。私は『デッドマン』みたいな重いテーマの作品の方が個人的には好きなんですけれど、こういうのも悪くない。

「無駄な時間」や「体に悪いもの」っていうのも、人生にはときに必要で、それこそが人生を豊かにしてくれることもある。何事もストイックにがんばりすぎてしまう人には、おすすめです。

いつもこのブログを訪問してくださっている方はご存知かと思いますが、私は大学の卒業論文で、チェコの映画を研究しました。

でも、他のゼミの同級生が、このジム・ジャームッシュの映画で、卒論を書いていたんですね。

彼女はジャームッシュを理解するために、ニューヨークを旅したそうなのですが、街のコインランドリーの片隅で、みすぼらしい格好をした老婆が、1人でうたたねをしているところを見たといいます。

刺激的で、世界中から“成功者”が集まる、ニューヨークという街。

しかし街の片隅には、それらの成功者の陰にひっそりと隠れながら、毎日をギリギリで暮らしている人がいるのでしょう。経済的にも、精神的にも。


彼女はそのコインランドリーの老婆を見て、「ジャームッシュが表現したかったものが、わかった」といっていました。


私は、卒論の発表でいっていた彼女のその一言が、今でも忘れられません。芸術を「理解する」って、たぶんそういうことなんだと思います。勉強して知識を集めることも必要なのだけれど、そんなものはお構いなしに、あるときふと「わかって」しまうものなんだと思います。

ストレンジャー・ザン・パラダイス [DVD]

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コーヒー&シガレッツ [DVD]

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ダウン・バイ・ロー [DVD]

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ジム・ジャームッシュ作品集 DVD-BOX 1989-1999

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