チェコ好きの日記

もしかしたら木曜日の22時に更新されるかもしれないブログ

故郷とは退屈なもの?/芸術家素質チェッカー

まあ、それはいいとして……。


普段、それほどテレビは見ない私ですが、実は唯一、ほぼ毎週欠かさず見ている、けっこう気に入っているテレビ番組があったりします。

テレビ東京で月曜18:30くらいからやっている、『YOUは何しに日本へ?』という番組です。


成田空港や関西国際空港など、日本各地の空港に取材に行って、来日した外国人たちに日本に来た目的をたずねるという、ただそれだけの番組なんですが、何もせずにボ~っとするには最適の、いい番組です。司会はバナナマン。

私は旅行が大好きなんですが、その旅行に欠かせないのが、この「空港」という場所だと思っています。大きなスーツケースやバックパックを背負って駆けずり回っている人々は、それが旅行であれビジネスであれ、皆これから、どこか遠いところへ行くわけです。だからか知らないけれど、皆どことなく、表情が明るい。同じ交通機関でも、都内の地下鉄なんかとはエライちがいです。
その、ちょっと浮き足立ってる、わくわくした感じがたまらなく好きです。

さて、この『YOUは何しに日本へ?』という番組ですが、空港で面白い外国人に出会うと、密着取材を申し込んで、そのまま彼らの日本国内の旅行やお仕事に同行してしまいます。せまくて単調に思える日本ですが、意外にも全国各地で、わざわざ異国から外国人がやってくるくらいの、腰を抜かすようなマニアックな大会や催しが行われていたりします(けん玉世界大会とか)。そういうのを見ていると、日本もこれで、なかなか奥が深い国だなあ……とかぼんやり考えてしまいます。


ところで、先週くらいに、この番組に「ありりん」というニックネームの、黒人の女の子が登場したんですね。

「ありりん」は日本のアイドルやロリータファッションがとても好きらしくて、アメリカのフロリダ州から、ときどき日本にやってくるみたいです。地元では、同じくアイドルやロリータが好きな女の子たちと、ド派手なファッションで「お茶会」を開いて楽しんでいるようです。
(余談ですが、もともとヨーロッパの洋服が原型だったものに日本がアレンジを加え発展させたロリータ・ファッションを、再び欧米の方が逆輸入して着ているのを見ると、妙な気分になりますよね……)


この回では、テレビスタッフが何とありりんの地元・フロリダまで着いていって取材をする! ということをやっていたのですが、ありりんは彼氏の車に乗って海に行くとき、「いい街ですね」と話しかけたテレビスタッフに対して、こう言っていたんです。


「ううん、ここは退屈だよ。海はきれいだけど、刺激がないの。日本に行きたい」
(うろ覚えなので表現が微妙にちがいますが、こんな感じのことを言っていた。)


フリフリのロリータ・ファッションに身を包んだありりんがこう言ったとき、国籍も年齢も関係なく、人間っていうのは元来こういうもんなんだな、と何だか妙に納得してしまった私なのでした。


生まれ育った故郷なんて、たとえそれがどこであっても、だいたいみんな退屈で、刺激のないところです。日本は閉塞的だ、ガラパゴスだといいますが、それはそれを言う私たちが日本人だからです。フロリダで育ったありりんにとっては、日本はエキサイティングでパワーに満ち溢れている、とっても刺激的な場所なんですから。

★★★


大学生のとき、授業中に先生がポロッと、私たちに向けて、こんな質問をしたことがありました。


「芸術家にとって、いちばん必要な素質って何だと思う?」

質問に対して、いろいろ頭をひねって、あーでもない、こーでもないと考え込んだ私たちだったのですが、先生はあっさりと・そしてズバッと、こう答えたんです。

それは、「自分の居場所がない」という、孤独と絶望を感じる力だと。

もしも芸術家に、一流・二流・三流とランクをつけるのならば、


三流芸術家は、自分の故郷を疑いなく、迷いなく、真正面から愛しています。自分の居場所は、生まれ育った故郷にあると、信じています。

二流芸術家は、自分が生まれ育った故郷以外のところに、自分の居場所を見つけます。自分の生まれ育った故郷以上の“故郷”を、自分の足で探して見つけてきます。

しかし一流芸術家は、“故郷”をもちません。どんなに探しても、世界中どこへ行っても、自分は孤独で、異邦人である。そういう感覚をずっと持ち続けていられるのが、一流の芸術家である、と。


まぁざっとこんな話をして、先生は再び授業の話にもどったのですが、いやはや。

芸術家かどうかはおいておくとして、自分が「何流」にあたるのか、その素質をチェックしてみると面白いかもしれません。

★★★

故郷とは、退屈なもの。

その愛憎にまみれた日常を後にするために、私たちは旅行に出かけます。

けれど、やっぱりまた、故郷に帰ってきます。


私たちは、どこへでも行けるけど、どこへにも行けない。
……と、村上春樹が言ってました。

故郷

故郷