午前中にナショナル・ギャラリーを訪れ、本の中でしか知らなかったあの絵この絵に出会って、大満足だった私。
ロンドンひとり旅 あの絵この絵に出会う、ナショナル・ギャラリー! - チェコ好きの日記
しかし、ロンドンに行ったのならば、ここに行かずしては、Japanに帰れません。
その場所とは、そう、大英博物館。
毎日1万人以上の人が訪れているという!
いわずと知れた、この世界最大級の博物館、もとはハンス・スローン卿という、開業医のおじさんが蒐集した、約8万点のコレクションがもとになっているそうです。
が、19世紀後半から20世紀初頭、地球全土に植民地をもち、「日の沈む時なし」といわれるまでに発展したイギリスは、ここに各植民地から収奪した、世界中の珍しい品々を加えていきます。エジプト、アフリカ、ギリシャ、メキシコ、西アジア……膨大にふくれあがったコレクションの数は、現在では約800万点ともいわれています。
とてもじゃないですが、1日ですべてを観終わるようなところではありません。
ギリシャ神殿風のこの建物は、1852年に完成させたものだそう。
ロンドンに来る前から、大英博物館について書かれた本を読んだり、ガイドブックの館内地図を穴が開くほど見つめたりと、見学の準備にはそれなりの時間を費やしてきた私。
意を決して、中に入ってみます。しかし、入場料はもちろんタダ。
外観はギリシャ風でしたが、中はモダンな雰囲気です。
館内は、メイン階、上階、下階があり、アフリカの部屋、ギリシャの部屋など、地域ごとに展示室が分かれています。展示室の総数は、だいたい100くらい。半日しか時間がとれなかった私は、駆け足で、気になっていた地域に焦点を当て、効率を考えてまわりました。
まずはとりあえず、メイン階・右手のテーマ別展示の部屋に。
入場料がタダな上に、写真撮影OKという、出血大サービスな博物館です。
この図書館のような空間を抜けると、待っていたのはメキシコ~アジアエリアの部屋。
口をおっきく開けた、珍妙なヤツが出迎えてくれたと思ったら、
き、君たちはいったい……?
アジアの展示品は、細々としていて、思わず笑っちゃうようなかわいいものがそろっていました。珍品ばかりです。よくこんなものを遠い地から持って帰ってきましたね……。
右手奥の部屋から北階段を上がると、上階、大人気のエジプトエリアの部屋に行けます。
出た! ミイラ!
ただし、私はギリシャやアッシリアのエリアに時間をかけたかったので、このエリアは速足で通り過ぎました。
が、階段を下りてメイン階にもどり、今度は左手の部屋に入ろうとしたところ、
何だかちょっとめまいがする。体調が悪い、という感じではなくて、そこはかとない疲労感が……
午前中からナショナル・ギャラリーで名画を観てまわり、さらに膨大なコレクションを誇る大英博物館の展示品を観て……なんてことをやっていると、もう、とにかく疲れるわけです。朝から歩き回ってるから、という物理的な理由もあるけれど、圧倒的な数・レベルの“お宝”を次々に観ていると、精神的胃もたれを起こすんですね。もうお腹いっぱい。
しかし、ここはロンドン。飛行機に乗る時間とお金があればいつでも来れるとはいえ、やはりそう簡単に、しょっちゅう来れる場所ではありません。たとえ胃もたれを起こしていようと、今はとにかく詰め込んででも、腹に入れて帰ってやる。
というわけで、エネルギーを取り戻すために、売店でリンゴジュースを買って、ベンチでしばし休憩。ベンチの前には、ライオンがいました。
ジュースを飲みながら20分ほど休憩した後、見学再開。
左手の部屋の中央には、おそらく大英博物館の1番人気、あのロゼッタ・ストーンが鎮座しています。
しかし、ツアー客と思われる人だかりに囲まれていたので、私はこれを横目でチラリと見ただけで通り過ぎました。
代わりに、同じエジプトエリアの部屋で、このお方のほうは、じっくり観察しました。ラムセス2世の像です。
巨大!
何でもこのお方、丸太にのせられて、ナイルの河岸までコロコロと運ばれ、イギリスまで持ち込まれたのだとか。エジプトのあの巨大な像を、上半身だけ切り取ってくるって発想もすごいですが、本当に、よく持って帰ろうと思いましたね……
さて、続いて入ったのは、アッシリアのエリア。
ここには、私が大英博物館で1番見たかった、あいつがいます。人面有翼牡牛像!
美術の教科書にたまに出てくるこいつ、足の数をよーく見て下さい。正面に2本、奥に3本で、合計5本あるんです。
これは決して間違えたわけではなくて、正面から見ると2本、真横から見ると4本と、どちらから見てもOKなように、古代人が立体的に造形しようと、考えて作った結果なのです。そのため、ナナメから見ると、足が5本あるんですね。こいつはもともと、宮殿や神殿の入り口に配置され、中に邪悪なものが侵入しないように、守っていたらしいです。それを、イギリスがかっぱらってきたわけですね。
こいつもラムセス2世に負けず劣らず巨大ですが、よく見ると、穏やかでいい表情をしています。確かに、こんな顔をされたら、中に悪いものは入れないかも。
こいつを通り過ぎて先に進むと、今度はお待ちかね、ギリシャ・ローマエリアの部屋です。ここには、あの有名な、エルギン・マーブルコレクションがそろっています。
18世紀、スコットランド伯爵家出身のエルギン・マーブルという男が、大英博物館のお偉方からパルテノン彫刻の調査依頼を出され、チームメンバーと共に、ギリシャに渡ります。
当時のギリシャは、オスマン・トルコの支配下にありました。ギリシャ現地の役人からは調査の妨害をされたそうですが、その上のオスマン・トルコ皇帝に調査をかけあってみると、何とこれがあっさりOK。しかも、「碑文や像が彫られた石を、自由にイギリスに持って帰っていいよ」とまで、許可をいただくことができたんだとか。
こうなったら、ちんたら写生をしたり石膏で型をとったりしている暇はない! チームメンバーは、神殿を囲んでいる彫刻を次々に剥ぎ取って、イギリスに持ち込みます。俗にこれを「エルギンの掠奪」というらしいですが、無断で持って帰ったわけではなく、ちゃんと許可を得たんだから、何も悪いことしてないでしょ、というのがイギリスの言い分らしいです。まぁそういわれてみると、確かに……という気がしないでもない。
衣服のラインが繊細で、石とは思えません
しかし、ギリシャはやはりこれらの彫刻の返還を強く求めていて、噂によると、その交渉は着々と進んでいるらしいです。エルギン・マーブルコレクションを、大英博物館で観られなくなる日が、いつかやって来るかもしれません。
ギリシャ以外にも、大英博物館に展示品の返還を求めている国はいくつもあって、交渉が進んでいるところもあれば、イギリス側が強くつっぱねているところもあり、進捗状況は様々なようです。
けれど、イギリスが“お宝”と見込んで持ち帰り、大英博物館で大切に保存したからこそ、今の世に残ることができた……なんて解釈できる展示品も、当然ながらあるわけです。そのまま本国に放置していたら、現地の住人が家を作るために石を削って持って帰ってしまった、なんてものもあったかもしれないし、戦争で粉々に破壊されてしまっていたものも、あったかもしれない。
そう考えると、イギリスがやってきたことも一概に悪いとはいえないわけで、その辺りの歴史認識をめぐる問題は、とても難しいですね。
と、深く考えるといろいろ問題のあるところではありますが、いち旅行者としては、いろいろな国の古代コレクションを一気に観ることができる、楽しいことこの上ない場所です。何回もいいますが、タダですからね。タダ。
上階に、Japanの茶室もありますよ!
★★★
ナショナル・ギャラリーに大英博物館と、世界最大級の美術館・博物館を1日で一気にまわり、晩ご飯を食べる気力すらなくなるほど疲れはてた私はこの後、真っ直ぐホテルに帰ります。ディナーは、ホテルの近くの果物屋さんで買った、バナナと水。完全にやる気をなくしてますが、まぁしょうがない。
翌日の夜にはもう、帰りの飛行機に乗らないといけない。やっと慣れてきたロンドンを離れることが、少しさみしくなってきた私。バナナをぶら下げてとぼとぼ歩いていると、すれ違う人々が、「Rainy!」といっているのが聞こえます。
ん? と思って空を見上げてみると、ポツポツと雨が降ってきました。
ロンドンが、私との別れを悲しんでいる!!!
と妄想癖を炸裂させながらホテルの部屋に着いたとたん、いよいよ本格的に雨が降ってきました。
少し元気になり、バナナを食べながら、窓の外の雨を観察する私。
実は、旅行中に雨が降ったらいいのになって、ちょっと思っていたところだったんです。
なぜかというと……
「イギリス社会」入門―日本人に伝えたい本当の英国 (NHK出版新書 354)
- 作者: コリン・ジョイス,森田 浩之
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2011/07/07
- メディア: 新書
- 購入: 11人 クリック: 131回
- この商品を含むブログ (21件) を見る
以前のエントリでも紹介したこの本に、イギリスの雨について書かれた章がありまして、本当かどうか確かめてみたかったんです。
日本で「雨」というと、一時的に降るゲリラ豪雨なんてものもありますが、基本的に一日中、しとしと降り続くものですよね。朝のテレビ番組で天気予報をチェックして、洗濯物を干していくか、傘を持って行くか決める。それが日本の「雨」です。
しかし、イギリスの天気は変わりやすく、毎日が「くもり時々雨、時々晴れ」なんだと、この本には書いてあるのです。雨が降ってきた! と思ってあわてて洗濯物を取り込んでも、その20分後には雨は止み、晴れ間がのぞいてくると。そこで、もう一度洗濯物を干そうとすると、また雨が……なんてことが冗談抜きであるらしく、この「洗濯物問題」には、本国イギリス在住の方でも、けっこう頭を抱えているらしいです。
本で読んだことを思い出しながら、本格的に強くなりだした雨をじーっと観察していると、降り出してから20分もしないうちに、本当に、ぴたりと雨が止みました。
そして、ホテル下の道に目をやると、Tシャツ1枚の軽装備のランナーが、ぜぇぜぇと息をきらしながら、走っていくのが見えます。イギリス人が走っているということは、当分雨の心配はない、降ってもすぐに止む、ということでしょう。
イギリスの雨は15分以上降り続かない……という噂は、マジだったのか! と、感動した一瞬でした。
さて、明日でこのロンドンひとり旅も、いよいよ終わりをむかえます。
その前に、ブログでは、イギリス食事編をはさもうかと思っています。
というわけで、次回に続きます!
ロンドンひとり旅 イギリスの料理は本当にまずいのか? - チェコ好きの日記