突如「クラシックに詳しくなりたい!」という願望を抱いた私。とにかくまずは、自分が知っていてなおかつ好きな作曲家の音楽から聴こうと思って、ここ1〜2ヵ月はずっとマーラーを聴き、本なども読んでみたりしました。
私が聴いていたのは、マーラーの交響曲第5番。読んだ本は、『マーラーの交響曲』です。
- 作者: 金聖響,玉木正之
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/12/16
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まずは好きなように聴く
クラシックの何が難しいって、まずはタイトルが難しいです。「交響曲第◯番」とか、その無味乾燥なタイトルは何!? という感じです。もちろん、美術にも『コンポジションⅡ』とか「は?」っていうタイトルの作品はたくさんあるので、それが悪いというわけではなくて、初心者にとってはハードルが高いよね、という話です。
「交響曲第◯番の第◯楽章の解釈は〜」とかっていう話も興味はありますが、最初は難しいので、とりあえず感覚の赴くままマーラーを好きなように聴いてみることから始めました。
Mahler Symphony No.5, 1st Mvt. World Orchestra ...
本を読んでみると、この『交響曲第5番』はマーラーのなかで一番の人気曲らしいということがわかりました。特にヴィスコンティの映画『ベニスに死す』で用いられた第4楽章の人気が高いというのですが、私のお気に入りは第1楽章『葬送行進曲』。上の動画でいうと6分くらいのところから始まる、曲のなかで一番盛り上がるところが、ちびりそうなくらいカッコイイです。私が普段ふつうに聴いている音楽はUKロックがメインでして、脳がロックに侵されているので、わかりやすい盛り上がりが好きなんだと思います(頭悪そうな意見)。
ただし、“盛り上がり”といっても、明るく楽しい盛り上がりではありません。暗くて、重くて、悪魔的な盛り上がりです。これはマーラー自身の性質もあるのでしょうが、私にはやはり「東欧的な暗さ」に聴こえます。同じヨーロッパでも、カラッとした感じのイギリスやフランスとちがって、チェコとかポーランドとか、あの辺の地域って「じめっ」としているんですよね。そして、私はその「じめっ」が大好きなんです。マーラーがボヘミア(現在のチェコ)生まれであるということは前回も書きましたが、あの辺の地域の人が作るものってやっぱりいいですね……。
マーラーはユダヤ人でユダヤ教の家に生まれていますが、当時ヨーロッパで反ユダヤの空気が強まりつつあったことから、途中でカトリックに改宗しているそうです。私はユダヤ人の作るものとか、文化にもすごく興味があって、もしドラゴンボールを7つ集められたら、「英語とチェコ語とヘブライ語の語学力をネイティブレベルにして下さい」って頼もうと思っているくらいです。
カラヤンとオーケストラ
マーラーを聴くのと同時進行で、大人気指揮者のカラヤンについての本も読んでみました。
- 作者: 中川右介
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第二次世界大戦の最中、カラヤンとフルトヴェングラーの間で繰り広げられていた攻防を書いたこの本は、歴史ドラマとしてなかなか面白かったのですが、私が抱いた一番の感想は「指揮者って性格悪いな」ということでした。
マーラーも作曲家であると同時に指揮者であったという話ですが、彼は厳格な完全主義者で、自分の思い通りに演奏できないオーケストラに対して、容赦なく罵声を浴びせたということです。カラヤンやフルトヴェングラーも己の地位確立のために相当ドロドロした権力闘争をやっていて、ついでにいうと女癖もあまりいいとは思えず、彼らについてはお世辞でも「いい人」とはいえません。ちなみにベートーヴェンは、演奏会の最中に私語を交わした女性に向かって、「自分の音楽は豚に聴かせるものではない」と言い放ち演奏を止めたそうです。
歴史に残るくらいのレベルの昔の指揮者って、なぜか総じて性格が悪いようです。
ただ、それは偉大なオーケストラの指揮者や作曲家というものが、周囲の人間や女性をぐるんぐるんに振り回すくらいパワフルでナルシストでカリスマ性がないと務まらない職業なのだ、ということを意味しているのだと思いました。「いい人」なんてレベルではとてもできない仕事なのだろうなぁ、と。
上の本のあとがきに、『「人柄のいい人」の「お上手な演奏」など、聴きたくない。すごいものを聴かせてくれるのなら、どんな悪人でもいい」と著者の中川さんが書かれているのですが、私は本のなかでこの一文に最も共感を覚えました。私の好きなカラヴァッジョというイタリアの画家は、性格が悪いどころの話ではなくて、人を殺して逃げてますからね。でも、彼らの罪や性格の悪さは、作品の評価に何の影響もあたえません。すごいものを見せてくれるのなら、どんな悪人だってかまわない。本当にそう思います。とはいえ、同時代人だったらちょっと引いちゃうかもしれないけれど。
今後は、マーラーを引き続き聴き続けるとともに、西洋音楽史の概観をつかんでいこうかなと考えています。
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