タイトルでほぼ全ていってしまったので、以下は補足説明なんですけども。
最近の流れを見ていると、多くの人に好まれるコンテンツというのは、どんどん短く、あるいは直感的に理解できるようなものへと変化してきているようです。文章であれば字数が少なければ少ないほどいいし、もっといえば文章すら不要である、なんていう記事も話題になりました。
「本当に文字って必要ですか?」メディア出身の人気ブロガーが語る「今の時代に読ませる」ための全て #ブロフェス2014 | エアロプレイン
個人的な好みは置いておくとしても、この流れはおそらく止められないでしょう。しかし少々頭のカタい私は、「一瞬で広まり一瞬で理解されるものは一瞬で古くなるし一瞬で通用しなくなる」と考えているので、コンテンツの作り手としては、短いコンテンツも長いコンテンツも、直感的に理解できるモノも直感的には理解できないモノも、両方とも変幻自在に作れるようになればいんじゃない? なんて思います。思うけれど、これって頭のスイッチの切り替えみたいなものが必要なので、実現はなかなか難しいですね。
この「長いコンテンツより、短くて直感的にわかるコンテンツへ」という考え方は、けっこう前に出た田端信太郎さんの『MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体』という本のなかで、「リニアなコンテンツ(始めから終わりまで一直線に連続した形で見てもらえることを想定したコンテンツ)」と「ノンリニアなコンテンツ(どこから見てもOKだし、というか読み飛ばしても全然問題ないし、時間のコントロールもこちらですることができるコンテンツ)」という言葉で、説明されていたような記憶があります。今流れが来ているのはもちろん、「ノンリニアなコンテンツ」のほうですね。
MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体 (宣伝会議)
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「長回し」を“魅せる”ことができたらたぶん最強
そんな「映画」のなかでも、現代社会においては特にキツいんじゃないかと思われる撮影手法がありまして、それが「長回し(ロングテイク)」です。
「長回し」とは、途中でカットを入れずに数分間ずっとカメラを回し続けるという映画の演出技法なんですが、とにかく短くてすぐわかるモノを求めてしまう我々は、このながーいワンカットを観る集中力が、一昔前の観客よりも欠如しているのでは? なんて思います。
しかしだからこそ、この時代に「長回し」をキメられる映画監督・作品があったら、それって最強といえるのではないでしょうか。「長回し」は現状、他のメディアでは不可能な演出技法です。マンガにもできない、小説にもできない、ゲームにも演劇にもできない、映画にしかできないものだから、画面のなかに観客を引きずり込む圧巻の「長回し」を“魅せて”くれたら、それって作品としてすごくかっこいいと思うのです。
というわけで、最後に「長回し」で有名かつ私の好きな作品を軽く紹介しておきます。最近の映画だと『ゼロ・グラビティ』に長回しがあるという話を聞いたんですが、私これ観なかったんですよねー。
私が惚れているのは、アンドレイ・タルコフスキー『サクリファイス』の長回し。約6分間のあいだ、カットなしですよ。映画作るの下手な人はこんなの撮れません。観るほうにもけっこうな集中力が要求されますが、だからこそ、監督の世界に引きずられたその一瞬が美しいのです。
Sacrificio Offret Andrei Tarkovsky - YouTube
★★★
100年かけて1000人に消費されるコンテンツと、1時間で1000人に消費されるコンテンツとでは、同じ1000人でも、その意味も重みもちがってきます。作り手としては、時代に流される必要も、逆行する必要もありません。どちらも作れたほうがよい。
ただ、コンテンツがどんどん短くなっていく世の中なので、「オレの世界を見ろ!」とばかりに暴力的に観客を巻き込むことに成功できたメディアは何というか「粋」だよね、と思いました。まぁタルコフスキーは1986年に亡くなっているのでぜんぜん今の時代の人じゃないんですが、どうせ作るなら、自分の作ったものに何年も何十年も、できれば死後も、生き残ってほしくないですか? という話です。もちろん、長けりゃ生き残るってわけでも、短いと生き残れないってわけでもないんですが。
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