ラース・フォン・トリアー監督の『ニンフォマニアック Vol.1』が公開中です。中学生のときに『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を観たとき以来のトリアーファンである私は、公開初日にわくわくしながら観に行きました。こちらの映画の感想は、以前書いています。
『ニンフォマニアック』は、“女性のセクシュアリティの物語”ではない。 - (チェコ好き)の日記
『ニンフォマニアック』は単体で観てもまったく面白味に欠けることのない映画ですが、実はこれ、『アンチクライスト』『メランコリア』に続く、トリアーによる〈鬱三部作〉の最終章でもあります。
この〈鬱三部作〉の第二作目となっている『メランコリア』を私はつい最近まで見忘れていたんですが(『アンチクライスト』が個人的にあんまり面白くなかったため)、『ニンフォマニアック Vol.2』が公開する前に観ておいたほうがいいかもと思い直し、遅ばせながらようやく手を出しました。この『メランコリア』は、〈鬱三部作〉のなかでも、監督自身が患った鬱病がいちばんダイレクトに反映されている作品であるといっていいでしょう。主人公のジャスティンは鬱病であり、物語の第一部では、自らの結構披露宴を動揺からむちゃくちゃにしてしまいます。
トリアーを「挑発者」に仕立てるのは、見る者自身の「良識」である
結論からいうと、私自身の『メランコリア』の感想は「???」という感じのものでした。『メランコリア』を観たからといって『ニンフォマニアック』の理解が深まるというわけでもなさそうなので、『メランコリア』を観ておいたほうがいいのはトリアーという監督自身に興味がある私のような人か、コンプリート欲に駆られた人だけでいいと思います。ただ、ハイスピード撮影? によるオープニングの絵画的な美しさは素晴らしいので、これには一見の価値があるといっていいでしょう。また、過激な性描写で話題になるトリアー作品のなかでは例外的にそういった描写がほとんどないので、その意味で特異な作品であるともいえます。
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カンヌ映画祭の記者会見で反ユダヤ主義的発言をしてしまい映画祭事務局から追放処分を受けたとか、ヨーロッパ社会に思いっきり喧嘩を売った『アンチクライスト』とか、観客や批評家を挑発し攻め続けるトリアーですが、トリアーが挑発しているのではなく、観る者の良識がトリアーを挑発者に「仕立てている」。これは面白い考え方だなぁと思うし、『ニンフォマニアック』もこの観点から見るともっと興味深いのでは? と思いました。
私は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を観たことをきっかけに映画の面白さに目覚め、映画の勉強を志したところがあるので、トリアーという映画監督には少なからず恩を感じているんですよね。なので基本的にトリアー作品は好意的に観ることが多いのですが、それにしても作品によって好き嫌いの落差がありすぎるので、何なのこの監督、とか思ったりもします。
最近会って話す人で『ニンフォマニアック観たよ!』っていう人が多いので楽しい。気になっている人は観に行きましょう。
— (チェコ好き) (@aniram_czech) 2014, 10月 20
とりあえず、Vol.2の公開を楽しみにしている私です。映画の公開によってみんなで盛り上がるこの感じ、いいですね。『アナ雪』ブームにも素直にのっておけばよかったのかしら、と後悔しなくもない今日この頃です。
みんな、映画館へ急げ!