チェコ好きの日記

もしかしたら木曜日の22時に更新されるかもしれないブログ

いつか私もこんなものが書けたらいいな、と僭越ながら思った記事-チェコ好き#HyperlinkChallenge2015#孫まで届け

「今年、自分が読んだ中で一番面白かった記事」を発表していく、ハイパーリンクチャレンジ2015」をやっている人がたくさん。しもつくん(id:zuboriradio)がまわしてくれたので、私も2015年に読んだなかで、一番面白かったと思う記事を考えてみました。

※しもつくんの記事
Web編集者としてのキャリアをスタートさせた2015年、いちばん興奮した記事。/ハイパーリンクチャレンジ2015 - shimotsu

企画概要の引用です。

【開催趣旨】

SEOでは計れない、価値がある。」
「ウェブだって、すごいんだぞ!」
「ウェブメディアだって、むくわれたい。」

現状ではウェブメディアに対するアワードがない。しかし、作り手は日々葛藤しながら多くのコンテンツを作り出している。それらが時代の流れに乗って刹那的に消費されるだけではなく、その年ごとの記録を残すことで、資料的価値を持たせる(映画の「日本アカデミー賞」、ユーキャンの「流行語大賞」、書店員が決める「本屋大賞」をあわせもったイメージ)。

アワード形式にすることで、担当編集者・ライターを表彰することも目標のひとつ。

【概要】

・その年(前年12月〜本年11月)までに公開されたウェブコンテンツから印象に残った記事を2本だけピックアップする。1本は自らが執筆・制作に関わった記事、もう1本は他媒体で公開された記事とする。

・参加者はそれぞれの記事を選んだ理由を、ブログやSNS等にまとめて発表する。選考した理由もあることが望ましい。

・また、次にチャレンジを受けてもらいたい人物、印象に残った記事を聞いてみたい人物も2人〜3人程度指名する。なお、指名がなくとも、開催趣旨への理解があれば自発的な参加も歓迎する。

・記事制作後、次のハッシュタグを付けてTwitterにて報告ポストを投稿する → #HyperlinkChallenge2015 #孫まで届け

ハッシュタグ「孫まで届け」には、いずれ日本のソーシャルヒーロー孫正義さんまで参加してくれたら嬉しい、孫の代まで読まれていきたい、参加していただいた方に“ソン”はさせない、という気持ちが込められている。

・投票は、12月20日を持って集計〆切とする。

評議会

本年は(言い出しっぺの)下記4名により評議会を開催。有効得票数による部門別アワード(※予定)と、印象に残ったコメントをピックアップして(何らかの形で)報告する。

・藤村能光
・長谷川賢人
佐藤慶
・鳥井弘文

【ハイパーリンクチャレンジ2015】僕にとって今年1番おもしろかった記事。鳥井弘文 #HyperlinkChallenge2015 #孫まで届け | 隠居系男子」より

他媒体で印象に残っている記事

「絶望しない国」で生きる、ということ(森達也)|ポリタス 戦後70年――私からあなたへ、これからの日本へ

私のなかで今年一番印象に残っているのは、ドキュメンタリー作家の森達也さんが「ポリタス」で書かれた、『「絶望しない国」で生きる、ということ」という記事です。

リンク先を読んでいただくとわかるとおり、この記事はポル・ポトによる虐殺の歴史を刻んだ負の遺産、トゥール・スレン博物館とキリング・フィールドから話が始まっています。折しも、自分が夏休みにカンボジアに行き、プノンペンでこの2つの場所を訪れた直後にこれを読んだので、そういう個人的な事情からも余計に印象に残っています。

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(※私が行ったときのトゥール・スレン博物館)

この記事は誇張ではなく本当に何度も読み返したのですが、webの記事で「何度も読み返す」ことって私に限らずなかなかないと思うので、そういう意味でこの記事は私のなかで文句なしの今年ナンバーワンです。特に深く心に刺さったのが、以下の引用部分。

戦後ドイツを全面的に称揚するつもりはない。ただし自分たちの過ちについて、日本とドイツの意識のあいだには相当な差異がある。戦争における日本のメモリアルデーは、戦争が終わった8月15日と広島・長崎の8月6、9日。そしてドイツのメモリアルデーは、アウシュビッツが解放された1月27日とヒトラーが首相に任命されて組閣した1月30日だ。つまり加害の記憶とナチス体制が始まった日――これがドイツにおける戦後70年の歴史の原点だ。だから彼らは毎年思いだす。なぜ自分たちはナチスを支持したのか。なぜ自分たちはあれほどに残虐な行為に加担したのか。深い絶望とともに考え続ける。だからこそ現実的な選択ができる。


日本人は絶望的なまでに絶望しない。

(中略)

でもこの国はしっかりと絶望しなかった。ぎりぎりのところで目を逸らしてきた。必ず違う曲を探して踊り続けてきた。

ドイツのメモリアルデーが、アウシュヴィッツが解放された日と、ヒトラーが首相に任命されて組閣した日であると、私はこの記事を読んで初めて知りました。一方、日本のメモリアルデーは、我々は加害の記憶をすぐに忘れてしまうということ、そういった価値観が無意識に内面化されているということを、象徴しているようにも思えます。もちろん、広島と長崎に原子爆弾が落とされた日を我々は忘れるべきではないし、森さんが文中で書いているように、日本人にはそれ故の強さもあるのでしょう。だけど、「我々はすぐに忘れてしまう」ということを、意識して覚えておくだけでもいい。この記事を読んだので、私は覚えておこうと思います。『ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね』なんていうと、どこかのマンガのタイトルみたいですけどね。

そして、上記の森達也さんの記事に何か思うところがあった方は、津田大介さんも紹介していますが、東浩紀さんのコラムも読んでみてほしいです。日本人にとって、加害の記憶を「なかったことにする」ことが、いかに内面化されているかを考える一助となるはずです。ここでは、「なかったことにする」ことの是非を問う必要はありません。ただ、日本人にはそういう性質がある、ということを覚えておくだけでも十分だと思うんです。

さて、上記に引用した森達也さんの文章を読んで、私はぞっとしたし、鳥肌が立ちました。

笑える文章、泣ける文章、ほっこりする文章、好奇心をそそる文章、素晴らしい文章の種類はたくさんあって、優劣はつけられません。だけど、私はこれを読んで、いつか自分も「ぞっとするような文章」を書ける人間になれたらいいな、と僭越ながら思ったのでした。今の自分にそんなものが書けるとは到底思えないので、おそらくそのためには10年、20年、あるいはそれ以上の時間がかかるでしょう。だけど、いつか到達したいと思う地点です。そういう意味でも、私のなかではこの記事が今年ナンバーワン。

自分が執筆・制作に関わった記事

書き手としての私の今年一番の出来事は、SOLOでの連載が始まったことかなあと思っているのですが、正直にぶっちゃけると、連載は大変です。「あんたの力不足だろ」といわれたらそれまでだし、私が大変であることなんて読者には一切関係ないことも百も承知しているのですが、それでも大変です。今まで自分が何気なく読んできた連載記事のライターの方々に、改めて敬意を払いたいと思いました。だけどもちろん、大変さのなかでの学んでいることもあるし、SOLOに声をかけてもらえたことは本当に光栄だったなあと思っています。SOLOのなかで自分が一番気に入っている記事はこちらです。

sololife.jp

だけど、SOLO、ぼくらのクローゼット、自分のブログなどなど、自分が今年webに書いた全文章のなかで、「一番」を上げるとなると……今年一番はこれかな。

only3months.hatenablog.com

「他媒体で印象に残った記事」で意識高い話をしておいて自分で書いた一番がこれか、となると我ながら愕然としてしまう部分もあるのですが、これを選んだ理由は、「今年私が一番楽しんで書いた記事」だからです。たぶんこれを読んで不快な気分になった方もたくさんいたと思うのですが、すいません、これが私の今年一番です。だってウニとかイクラとかカニカマとか海鮮丼の話するの楽しかったんだもん。友人にも、「チェコさん、あれ書いてて楽しかったでしょう?」というズバリなご指摘をいただきました。はい、楽しかったです。

SOLOのほうも「3くだ」のほうも、これまで芸術についての記事が主軸にあった私の文章とはだいぶかけ離れたものになっているのですが、今年は意識して変化球をたくさん投げた年でもありました。変化球を鍛えた理由は、もちろんよりパワフルな豪速球を投げるためです。野球には詳しくないので、変化球を鍛えることで豪速球を投げられるようになるかどうかはよくわからないのですが、比喩はともかく自分のなかではそういった意識がありました。2016年も、映画のこと、美術のこと、旅行のこと、文学のこと、歴史と宗教のこと、たくさんのことを語って残していきたいなあと思っています。(ブログの更新頻度を、元にもどしたい……!)

次にまわしたい方

「印象に残った記事」を聞いてみたいのは、発酵デザイナーの小倉ヒラクさんと、素敵なイラストが特徴のヒビノケイコさん。お2人の対談をとても楽しみにしているのですが、今から申し込みたいと思う方がいたら……どうやらチケットは売り切れ(もしくはキャンセル待ち)のよう。

灯台もと倶楽部 第1回「小倉ヒラク×ヒビノケイコ対談〜これからのローカルとデザインの関係〜」 | Peatix

もしこれを読んでくださっていたら、聞いてみたいなあと思います。お時間があったらぜひ。