今年読んだ本を数えてみたら、現時点で101冊でした。今月末に読み終わる本が何冊かあるので、最終的には103〜105冊くらいになるんだと思います。ちなみにこれ、昨年の同時期にまったく同じこといっていたので、読み直したらちょっと笑えました。
そんなわけで、今年も読んでよかったな〜と思う本を振り返ってみたいと思います。今年は7冊じゃなくて5冊。理由は、なんとなく思いついた数字が5だったからです。
5位 Penのエルサレム特集
- 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
- 発売日: 2012/02/15
- メディア: 雑誌
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いきなり本じゃなくて雑誌になってしまうんですけど、しかもこれ今年買ったやつじゃなくて何年か前に買ったやつを引っ張り出してきて再読したというやつなんですけど、Penのこのエルサレム特集大好きなんです。イスラエル、行ってみたいなあ。岩のドーム、嘆きの壁、聖墳墓教会。おなじみの東エルサレムの観光スポットもいいですが、私がこの特集でいちばん好きなのは、メア・シェリームという、超正統派のユダヤ人が暮らす地区を取材しているページです。
彼らはユダヤ教の教義の研究にのみ一生を捧げるため、労働を一切しないそう。そのため、彼らの収入源は国の補助金です。だけど、彼らへの補助金が現在ではイスラエスの財政を圧迫しているらしい。そしてこの超正統派ユダヤ人たちは兵役も免除されており、正統派、保守派、リベラル派のユダヤ人からの反発を招いているんだとか。来年はもう少し、ユダヤ教というものについて勉強してみたいと思っています。イスラエルとパレスチナの歴史についても。
4位 『冬の夢』スコット・フィッツジェラルド
- 作者: フィッツジェラルド,村上春樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/11/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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こちらはフィッツジェラルドの短編集で、収録作品は『冬の夢』、『メイデー』、『罪の赦し』、『リッツくらい大きなダイアモンド』、『ベイビー・パーティー』の5つ。このうち、『ベイビー・パーティー』については以前感想文を書きました。
ただ私がこのなかでいちばん好きな作品は、やっぱり表題作の『冬の夢』です。これは『グレート・ギャツビー』の下書きになったといわれている作品なんですけど、主人公の男・デクスターがジュディーという美しい娘に恋をして、だけど結局ジュディーとは結婚できなくてウジウジするという物語です。フィッツジェラルドってそんなのばっか書いてるな。だけどこれ、最後の一文がとても素晴らしいのですよ。
かつては抱けたはずの悲しみでさえ、背後の土地に置き去りにされていた。幻想と、若さと、生きることの実りに彩られ、冬の夢が豊かにはぐくまれたあの土地に。
「ずっと昔」と彼は言った、「ずっと昔、僕の中には何かがあった。でもそれは消えてしまった。それはどこかに消え去った。どこかに失われてしまった。僕には泣くこともできない。思いを寄せることもできない。それはもう二度と再び戻ってはこないものなのだ」
『村上春樹翻訳ライブラリー - 冬の夢』p64
この世には、「絶対に手に入らないもの」というのがあると私は思っています。それは、高層階のマンションとか、モデルの美女とか、幻の骨董品とか、そんなものじゃありません。「すでに失われてしまったもの」です。だけど、何かを失わずに生きていくことは我々にはできません。昨日という日が二度とやってこないように、今日という日も、今のこの一瞬も、二度とやってこない。フィッツジェラルドの小説を読むと、そんなことを思って私は胸がぎゅっとなるのですが、今のところあんまり共感してくれる人がいません。残念。
3位 『はじめての構造主義』橋爪大三郎
- 作者: 橋爪大三郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/02/21
- メディア: Kindle版
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これはブログでは一切触れなかった本ですね。私は何冊か本を読んだにも関わらず未だに「構造主義とは何か」を説明できないアンポンタンポカン君なのですが、1つ理解したのは「構造」という言葉の意味をあんまり考えすぎないほうがいいっぽい、ということです。とりあえず、フーコー、バルト、ラカン、あのへんの時代のフランスの思想家が「構造主義」の人と呼ばれているらしい、というくらいしか私には理解できませんでした……。
本書は、そんな構造主義の思想家たちのなかでも特に重要な人物であるらしいレヴィ=ストロースについての解説書でした。私は来年、もう少しこのレヴィ=ストロースさんについて考える時間をとりたいなと思っているのですが、今年の5月くらいから読んでいる『野生の思考』が一向に進みません。もしくは、レヴィ=ストロースを批判しているというジャック・デリダとかを当たっていって周辺から攻めようかなとか考えています。そのために今読んでるのが『存在論的、郵便的―ジャック・デリダについて』。もうちょっと頑張ります。
2位『モロッコ流謫』四方田犬彦
- 作者: 四方田犬彦
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/07/09
- メディア: 文庫
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ポール・ボウルズとジャン・ジュネについて主に書かれたモロッコ旅行記です。私はまだモロッコに行ったことはありませんが、読むと嘘みたいな話がいっぱい書いてあるので、夢がふくらみます。
四方田氏がボウルズを訪ねて小説『蜘蛛の家』についての質問をしているとき、ボウルズの家のTVの上にペットのオウムが止まって、そのオウムに向かってボウルズはAre you crazy? Are you crazy? と話しかけていたそうなんですが、このへんのエピソードとかもちょっと頭おかしくて好きですね。四方田氏いわく、イタリアとは生きる悦びであり、モロッコとは驚異と謎であるそうです。行きたいなあモロッコ。
1位 『暇と退屈の倫理学』國分功一郎
- 作者: 國分功一郎
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2015/03/07
- メディア: 単行本
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今年の1月に読んだ本ですが、2015年に読んだなかでいちばん面白かったのこれですね。「退屈」というテーマが面白すぎて、6月にはイベントでそれをお話させてもらうまでになりましたが、この本ほんとに面白いので、未読の方はだまされたと思って読んでください。
本書でわかりやすくとっつきやすいのは前半部の「消費」や「浪費」の話ですが、私は本書の真髄は後半部の「環世界」の部分にあると最近思い直すようになってきています。環世界の話についてもエントリを書きました。
ただ私、この本を増補版が出る前に買ってしまったので、増補版についている「傷と運命」という文章をまだ読めていないんですよね。今手をつけているもの*1に一段落つけられたら、改めて増補版を書い直そうかなあと思っています。
来年の抱負
最後に、ここでなぜかいきなり来年の抱負を語りだす私なのですが、来年は「小説」と「エッセイ」をたくさん読む年にしたいなあと思っています。哲学や批評の本でも読みたいものはいっぱいあるんですけど、今年の私は抽象思考によりすぎて、実際に目の前にあるものについて考えるのが下手になってしまった(もともと下手だったけどそれがさらに加速した)感があるので、来年は「小説」と「エッセイ」を読んで自分のなかの「実感」が取り戻せたらいいなあ、とか思っています。ずっと積ん読になっているポール・オースターとか、なかなか進まないピンチョンとか。あと映画ももっとたくさん観たいなあと思いました。
だけどだけど、実のないこと考えるの超楽しいんですよね。まあそれは再来年までのおあずけということで。
2016年も、たくさんの素敵な本に出会えますように!
番外編
今年ぜんぜん映画を観なかったのであんまり参考にならないと思うのですが、今年観た映画のなかでいちばん面白かったのはアレクセイ・ゲルマンの『神々のたそがれ』です。3時間の超大作なので途中若干眠くなりますが、ラスト10分で全身鳥肌立ったのでそれですべてチャラ。
*1:年内が難しそうなことが判明したので年度内に引き伸ばして頑張ります……