8月後半から始まったSOLOの連載ですが、現在15回目まで公開されています。
SOLOは自分が書かせてもらう以外に一読者としても楽しく読んでいて、下記の東大教授・玄田有史さんのインタビューは最近の記事のなかでも特に面白く読みました。普段私のブログを読んでくださっている方ならきっと興味深い内容だと思うので、未読の方はおすすめです。
連載のなかでは、普段私が書いているような文学や芸術とは一見関係のないような内容も混ざっているのですが、最近の私が一定量以上の文章を書くときに心がけているのは「書く内容」ではなく「読後感」だったりします。文学や芸術などの自分の得意分野だとその「読後感」に持っていきやすい=書きやすいのですが、他の分野のことであっても普段自分が考えていることに変わりはないし、どの回もなんだかんだいって「チェコ好きらしい」文章になっているのではないかと思います。やけに嫌味ったらしいところとかね!
今回は、そんな連載コラムのなかでも「文学」「芸術」によっている内容のものを選んで後書きを書くことにしました。
1 「やなぎみわ」を考える
タイトルはまったくアートっぽくないですが、このなかでやなぎみわの写真集『マイ・グランドマザーズ』を扱っています。やなぎみわは学生時代にレポートを書かなくてはいけなくて写真展を観にいったのが深く知るキッカケだったのですが、『マイ・グランドマザーズ』以外に『Fairly Tale』も私は好きですね。
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『マイ・グランドマザーズ』は、「自分の50年後」をテーマにおばあちゃんのコスプレをした女性達が集まった写真集なのですが、その想像力の豊かさに驚かされます。「やなぎみわのファン」というと「こじらせ女子」っぽいものを想像してしまうと思うのですが、そしてそれはおそらく当たらずとも遠からずだと思うのですが、ガラパゴス諸島のなかで生物が独自の進化を遂げたように、こじらせ女子がこじらせていくなかで豊かな芸術作品を生み出すのであれば結果オーライじゃん、と私は思ってしまうんですよね。結果が面白ければなんでもアリだと思っちゃうんですよね。
2 「中村うさぎ」を考える
今年はなぜか中村うさぎさんの本をたくさん読むことになってしまったのですが、私が彼女に興味が出たのはその尽きることのない(ように見える)欲望がどこに向かうのか、という部分を調べてみたかったからです。おすすめはこのコラムのなかで紹介している『美人とは何か?―美意識過剰スパイラル (集英社文庫)』か『私という病 (新潮文庫)』なのかなーと思うのですが、個人的にいちばん好きなのはブログで扱った佐藤優さんとの対談本『聖書を語る―宗教は震災後の日本を救えるか』ですね。
aniram-czech.hatenablog.com
中村うさぎさんがキリスト教徒だったということを私は上記の記事内で言及している本で初めて知ったのですが、女性の美醜や性の問題といった、キリスト教ではおそらくタブーとされている世界にキリスト教徒自身が切り込んでいく、というその行動力に私は震撼しました。そして「聖と俗」というテーマから連想したのが『フラニーとズーイ (新潮文庫)』だったのですが、こちらの小説はまだちょっと消化しきれていない部分が私にはあります。
3 「山内マリコ」を考える
なんとこの記事を公開した日にパリで起きたテロのニュースが流れてきたので更新お知らせツイートがものすごくやり辛かったという曰く付きの記事です。内容はテロとはまったく関係ありませんので気軽に読んでいただきたいのですが、山内マリコさんは地方(郊外)に生きる女性とか、都会でボーっとしていたら年をとってしまった女性とか、そういう人たちを描くのが上手いなあと思います。SOLOのなかには、山内マリコさんへのインタビューもありますね。
sololife.jp
私が書いたやつでは、山内さんの『パリ行ったことないの (フィガロブックス)』という小説を紹介しています。やりたいこととか、行ってみたい場所って、本気で計画を立てればわりと一瞬でその場所に行けるので、いつまでも胸のうちにとっておくのも悪くないけどとっとと手を付けちゃったほうがいいかもよ、というメッセージをこめて書きました。
ちなみにブログでは昨年、山内マリコさんの『ここは退屈迎えに来て』について書いたことがあります。
aniram-czech.hatenablog.com
4 「松井冬子」を考える
最近書いたなかでは気に入っている部類に入る文章です。コラム内で言及している『完全な幸福をもたらす普遍的万能薬』はこれですね、この脳みそ丸見えの絵です。
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松井冬子の絵画が私はすごく好きでこのブログでもちょくちょく言及しているんですけど、まとまった量の文章はまだ書いたことがないので、次回どこかで展覧会があったらそれを期に何か書きたいなあと思っています。成山画廊で画集を買ったこともあります。深夜に見ると心に狂気が宿るのでおすすめですよ。
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5 「ニキ・ド・サンファル」を考える
もう終わってしまいましたが、国立新美術館で「ニキ・ド・サンファル展」がやっていたので、ニキの作品について書いたコラムです。タイトルにはニキのニの字もありませんがちゃんとニキについて書いています。
ニキ展はやっぱり女性人気が高かったように思いました。特に熱気があったのがお土産コーナー。美術展のお土産って微妙なのも多い気がするんですが、ニキ展はマグネットもマグカップも可愛かったですねー。私はお土産は諦めましたが、真っピンクのカタログは買いました。女性、宗教、精神世界、そういうのを考えるキッカケになる本当にいい展示だったと思いました。
ただ、コラムで書いたとおり私が彼女の作品でいちばん好きなのってやっぱり〈ホーン〉なんですよね。これどこかで再現してくれないかなあと思っています。
《ホーン》に入る来場者 1966年
番外編 『恋の罪』で考えない
SOLOで何か書けないかなあと思って園子温の『恋の罪』を観たのですが、何か書こうにもまったく筆が進まずお蔵入りとなりました。
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『恋の罪』は東電OL殺人事件をもとに作られたフィクションで、女性性とは何かみたいなことを考えられるかなと思って観たのですがちょっと難しかったですね。この作品はエンターテイメントとしてよく出来ているので私は好きですが、良くも悪くもエンターテイメントであり、コメディ映画みたいなものだと思っています。大方斐紗子さんの怪演っぷりを観て笑う映画だと思っています。あのシーン良かったなあ。
『ニンフォマニアック』もそうでしたが、男性が描く女性ってどんなに頑張ってもやっぱり限界があるものなのかもしれません。
aniram-czech.hatenablog.com
というわけで、引き続きブログのほうも連載のほうも楽しんでもらえたらいいなと思っています。おしまい。