3月末〜4月上旬までの2週間、南イタリアとマルタ共和国へ旅行に行っていた。
どうでもいいことだけど、私、なんとなく自分のしていることを「旅」と表記するのは小っ恥ずかしい気がしていて、文字数に制限があるTwitterなどではその限りではないが、なるべく「旅行」の表記で統一しようとしている。「そんなに大それたことしちゃいませんよ」という意識が働いているらしい。まあ、私の場合は実際、本当にただ行ってるだけなので間違いではない……。
以下は、今回の旅行で訪れた都市の概要やツイートのまとめである。いつかの誰かの参考になれば幸い。
1. 快楽と欲望の都市 パレルモ
(※パレルモの中心、クアトロ・カンティ)
まずはシチリア島のパレルモから。シチリアといえば何よりもまず、マフィアである。村上春樹がここで『ノルウェイの森』を執筆していた頃(1986年頃)は、よく銃声が聞こえたという。しかし、現在は普通にしていれば特に心配するようなことはなく、安全で快適なただの一地方都市だ。と、言いたいところだが、心なしか警察の出動回数が多かったような気はした。でも気のせいかも。あと、人はともかく野犬がウロウロしていているのがけっこう怖かった。
パレルモ中心部だと、今のところいちばん感動したのはジェズ教会。とても美しかった pic.twitter.com/qwnb9Oie9C
— チェコ好き (@aniram_czech) March 28, 2018
昨日はえみりさん(@emr_81 )に教えてもらったパレルモ歴史公文書館に行ってみた。あまり観光客が来ないのか無料でマンツーマンで隅々まで案内してもらえました。確かに美しさ重視で安全性は二の次っぽかった。笑
— チェコ好き (@aniram_czech) March 30, 2018
螺旋階段とてもきれい pic.twitter.com/xFhM0f6U2a
あのゲーテが紀行文の中で「悪趣味」「馬鹿馬鹿しい家」と散々ディスりまくっていた貴族の邸宅ヴィラ・パラゴニアに行ってみた。ここは澁澤龍彦の『旅のモザイク』にも出てくるんだけど、塀の上がキモイ彫刻で埋め尽くされており、静かに狂っている。パレルモから電車で15分 pic.twitter.com/w3XQXAGNta
— チェコ好き (@aniram_czech) March 28, 2018
さてパレルモは、どこか"バランスを逸した過剰さ"を感じさせる都市である。不安定で歪んでいる。しかし、その歪みこそがパレルモの魅力なのだ。灼けつくような太陽が照らすのは、黒く煤けた街並み──この都市は、快楽と欲望のために存在している。
2. 深い蒼にはきっと何か裏がある ヴァレッタとゴゾ島(マルタ共和国)
もしも私がインスタグラマーだったなら、ここまで来てコミノ島へ行かないというのはちょっとありえない。コミノ島とは、あの「水の透明度が高すぎて船が浮いてるみたいに見える〜!」ことでお馴染みのブルーラグーンがあるところである。私はわりとミーハーなので行きたかったのだが、時間配分をミスって行けなかった。私の計画ではチェルケウア→ゴゾ島→コミノ島と進むはずだったのだけど、ゴゾ島からコミノ島へ行く船がなかった(絶対あると思っていた)。コミノ島へ行きたい人は、ヴァレッタかスリーマかチェルケウアから出発しましょう。
(※ゴゾ島の中心部、ヴィクトリアの街並み)
マルタ共和国の要塞都市ヴァレッタにいるのですが、海がとても深いコバルトブルーをしている。なぜこんな色なんだ。
— チェコ好き (@aniram_czech) April 1, 2018
ヴァレッタは、トマス・ピンチョン 『V.』の舞台の一つでもあって、美しいけどどこか裏も感じる。
マルタもう少しいたかったけど、今日はもうイタリア本土へ行きます pic.twitter.com/fYoBr4DgO4
マルタ共和国の首都ヴァレッタから見る海は、とても深いコバルトブルーをしている。美しい色だが、見る者をそのまま飲み込んでしまいそうな、ちょっと不気味な蒼だ。きっと何か裏がある。決して油断してはいけない。なぜならヴァレッタはトマス・ピンチョンの小説『V.』の舞台であり、「V」とはヴァレッタの「V」なのだ。この美しさに気を許したら、きっと何か怖ろしいことが起こる。
V.〈上〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)
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3. ただの交通拠点 バーリ
バーリは正直どこにも行ってないし何も見てないのだが、南イタリアを観光する上で交通の拠点となる都市なので、訪れざるを得ない。基本的に南イタリアの交通はクソなので、直線距離で結んだら早いものをなんか行ったり戻ったりしないといけないのである。私もマルタ→バーリ→アルベロベッロ→バーリ→マテーラ→バーリ→ナポリと3回も訪れた。3回目ともなると「またお前か……」と思ってしまう。
昨日はマルタ→イタリア本土のバーリに移動しようとしたのですが、バス停を降り間違え空港付近で迷子になる。刻々と搭乗時間が迫る中「終わった…」と思っていたら通りがかりの守衛さん?がタクシーを呼んでくれ、さらにタクシー来るまで守衛室でコーヒーをごちそうしてくれました。ギリ間に合った
— チェコ好き (@aniram_czech) April 2, 2018
(※こんなこともありました)
4. この可愛さは税金対策 アルベロベッロ
とんがり屋根のかわいいおうちが並ぶアルベロベッロ。このおうちの名前は「トゥルッリ」という。なお、私が行った日はイースターで祝日だったのでめちゃめちゃ人がいた。日本でいうところの白川郷みたいな扱いらしく、国内観光客が多いのも特徴。
とんがり屋根の白いおうちが並ぶ変な町・アルベロベッロへ行ってみた。
— チェコ好き (@aniram_czech) April 3, 2018
なぜこんなかわいい形なのかというと、昔この地域では家一軒ごとに課税される仕組だったらしいんだけど、解体と組立がしやすい屋根部分をブチ壊して「家、ないっす」と主張することによって節税をしてたんだと。意外と悪どい pic.twitter.com/n3k2SuyXQ6
なお、とんがり屋根には石灰で月や太陽やハートなどの謎の記号が書かれているのだが、この記号が何を意味するのかはあまりよくわかっていないらしい。一説には、魔術的な意味があったと言われている。
5. 迫害の歴史が生んだ奇想住宅 マテーラ
洞窟住居(サッシという)で有名なマテーラ。前回の日記で「もうさ、景色とかはすごいの見てもあんま感動しないっていうか、慣れちゃったんだよね」とか言っているのだが、とはいえここはちょっと衝撃だった。
(※え、岩じゃん、みたいな教会)
(※街の外部は深い渓谷。死にそう)
洞窟住居で有名な、マテーラという町に行ってみた。
— チェコ好き (@aniram_czech) April 4, 2018
この廃墟感が大好きなのですが、戦後しばらくはとても貧しい人たちが住む劣悪な場所だったらしく、南イタリアの恥部と思われていたとか。1950年代の法整備で住民を強制退去させた後、観光地として復活したようです。
教会が断崖絶壁の上に。 pic.twitter.com/UwFMXM1atV
そもそもの始まりは、7世紀頃、迫害から逃れたギリシャ正教の修道士たちがこの地に住み始めたのがきっかけだという。これは個人的な意見だけど、美術的(建築的?)観点からいうと、私、「正教」がキリスト教の中でいちばんヤバイと思っているのね。ちょっと誤解を招く言い方かもしれないけど、いちばん狂ってるというか、カルトっぽさがある。マテーラは街全体が「奇想」の塊だ。こんな場所が現実世界にあるなんて、私はまだ信じられない。
6. ガラは悪いがメシは美味い ナポリ
ナポリと言えばピッツァである。私もソルビッロというけっこうな有名店で定番のマルゲリータを食べてみた。美味しいのは想像通りなのだが、それよりも驚くのは値段。ナポリでは「1ピース」という概念がないらしくピッツァは基本的に1人丸ごと1枚スタイルなのだが、その1枚が2ユーロからとかだったりする。チーズが美味しかった……! また、ナポリは海鮮の街でもあるのでボンゴレも食べた。ガラは悪いがメシは美味い街、それがナポリ!
(※ソルビッロのマルゲリータ)
(※ボンゴレ。別に有名店ではない)
ナポリ、きたねえわガラ悪いわ変な奴はウロウロしてるわでロクでもねえ街だった。しかし、「それがどうしたよ?」と言わんばかりの謎の生命力に満ちている…東南アジアっぽさもある。
— チェコ好き (@aniram_czech) April 6, 2018
わたしイタリアのこういうところが好きなのよ〜!と再確認した滞在でした。綺麗なだけじゃ物足りないからね。 pic.twitter.com/Wrm0nhFT76
7. 長い冬を耐え、羊飼いの夫の帰りをじっと待つ スカンノ
ひたすら山の奥へ、奥へと進んで行ってやっと現れるオアシスのような村、スカンノ。決して訪れやすい場所ではないし、ほとんどガイドブック等には載らないマニアックな場所だけど、独特の時間が流れている。
山奥にやっとたどり着いたのですが道中、雪が凄まじく残っていたり野生の鹿が車の前を横切っていったりしました。運転手さんも「ファンタスティック!」と言いながら車を降りて自撮りしていた
— チェコ好き (@aniram_czech) April 6, 2018
この山を降りられるかが今回の旅最大の難所だったのですが普通になんとかなりそうです。行けばわかる pic.twitter.com/sBS8p04dSc
イタリアの山奥にあるガイドブックにほぼ載らない小さな村、スカンノ。
— チェコ好き (@aniram_czech) April 8, 2018
写真家のアンリ・カルティエ=ブレッソンやマリオ・ジャコメッリがここを訪れて有名な作品を遺してるので、来てみたかった。
この村で教会の鐘の音を聞くと、「あれ、わたし夢を見てるのかな?」と思います。あまり現実感がない pic.twitter.com/8LbjIELZLA
左上はアンリ・カルティエ=ブレッソン、右上はマリオ・ジャコメッリ。左下は私がアンリ・カルティエ=ブレッソンが撮影した場所を半日歩き回り見事特定(!)、同じ構図で撮ってみた写真。右下は無駄にモノクロにしてみたやつです。自己満 pic.twitter.com/6BL7ubxlBJ
— チェコ好き (@aniram_czech) April 8, 2018
アンリ・カルティエ=ブレッソン:20世紀最大の写真家 (「知の再発見」双書)
- 作者: クレマン・シェルー,伊藤俊治,遠藤ゆかり
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スカンノは人里離れたところにある上に、誇り高く、外部の文化をそう簡単には受け入れないとても保守的な村だという。冬は長く、とても深く雪が積もる。その閉塞感に息が詰まり、この地を離れる若者もいる。静寂に包まれた美しい村だが、もしもこの地に生まれていたら、私もスカンノを恨んでいたかもしれない。
8. 神に愛された永遠の都 ローマ
そして、私の最愛の都市ローマ。訪れるのは8年ぶり2回目。私のローマ愛をポエミーに綴ったポエミーすぎる恥ずかしいエントリを以前書いたのだけど、愛するローマを再訪できて良かった。生きてて良かった。何年後になるかわからないけど、おそらく3回目があるでしょう。なぜなら私はローマを愛しているので……。でも住みたいとはあんま思わないんだよね、住みたいのはタンジェ(モロッコ)。パックスロマーナ〜〜〜
ここもずっと来てみたかった。第二次世界大戦前、ムッソリーニがローマ近郊に建設した都市E.U.R(エウル)。
— チェコ好き (@aniram_czech) April 9, 2018
野性味と人間味に溢れる華やかなローマとは対照的に、白・直線・無機質を極めたシュールで不気味な近代都市。
SF映画か悪い夢を見てるみたい。トマス・モア『ユートピア』の世界だ pic.twitter.com/0MwEsMbpRU
(※今回訪れた変わり種スポットは、ローマ近郊の都市E.U.R。 最強にクール、最凶に悪夢)
23歳のとき初めて訪れたローマがあまりにも美しかったので、この8年間どこかで「あれは夢だったのでは?」と思っていたのだけど、二度目に訪れたローマもやっぱりあまりにも美しくて、あ、夢じゃなかったんだ、本当だったんだ、良かった、と思いました。
— チェコ好き (@aniram_czech) April 11, 2018
ローマは世界でいちばん好きな都市です。 pic.twitter.com/npFrjYo0sW
余談 迷っている奴に道を訊かないで
迷っていても歩くときは早く進みたいのでサクサク。浮かれた感じを出さない人間なので、中国系の移民とかに見えたのかもしれない。移民じゃないです……。
脇目をふらずサクサク歩いているからか、「どう見ても外国人だろうが!」と思うのですがめっちゃ人に道を訊かれる。
— チェコ好き (@aniram_czech) March 29, 2018
東京でもよく人に道を訊かれるし、ロンドンでもジャカルタでも道を訊かれたので、私は万国共通の「道訊かれ顔」みたいなのをしているのかもしれない…
愛してるよ、イタリア!!!