チェコ好きの日記

もしかしたら木曜日の22時に更新されるかもしれないブログ

Amazonプライム会員が無料で観られる私の好きな映画10本+有料5本

リモートワーク生活が始まっており、今週の私の外出はといえば「近所のスーパー」「近所のタイ古式マッサージ」「税務署」の3箇所のみとなっている。税務署は確定申告ね。ひとり暮らしだし喋る相手もいなくて寂しいかなと思ったけど、私は元来、超根暗のオタク。人との関わりが不必要とは言わないが、Slackなどでチャットできる環境があれば全然人恋しいとは感じないのであった。通勤時間を映画鑑賞や読書や料理の時間とすることで、めちゃめちゃQOLが上がっている感がある。とはいえ、オフィスワークも全然嫌いではないんですけどね。あと自宅の椅子が安物なので、長時間のデスクワークはちょいと腰がしんどいね。


それはそれとして、しばらく外出を控える人も少なくないと思うので、先日のツイート内容をまとめておく。Amazonプライム会員なら無料で観られる映画10本に加えて、有料だけどAmazonで観られる私の好きな映画を5本追加している。




1.『オマールの壁』ハニ・アブ・アサド

オマールの壁

オマールの壁

  • 発売日: 2017/03/03
  • メディア: Prime Video

よくある三角関係の話……にならなかった話、『オマールの壁』

よかったら以前書いた感想文をどうぞ……。

2.『パラダイス・ナウ』ハニ・アブ・アサド

パラダイス・ナウ(字幕版)

パラダイス・ナウ(字幕版)

  • 発売日: 2018/05/23
  • メディア: Prime Video

自爆テロって、どんな人がやるんだろう? 『パラダイス・ナウ』

これも前に感想を書いていました。

3.『デヴィッド・リンチ:アートライフ』

デヴィッド・リンチ:アートライフ(字幕版)

デヴィッド・リンチ:アートライフ(字幕版)

  • 発売日: 2018/07/04
  • メディア: Prime Video

4.『エンドレス・ポエトリーアレハンドロ・ホドロフスキー

エンドレス・ポエトリー【R15+】(字幕版)

エンドレス・ポエトリー【R15+】(字幕版)

  • 発売日: 2018/09/05
  • メディア: Prime Video
この映画は『リアリティのダンス(字幕版)』の後編にあたる。前編は有料。だけどこっちだけ観ても別に平気です。

5.『ホドロフスキーのDUNE』

ホドロフスキーのDUNE

ホドロフスキーのDUNE

  • メディア: Prime Video

6.『女は女である』ジャン=リュック・ゴダール

女は女である

女は女である

  • メディア: Prime Video

7.『ブラック・クランズマン』スパイク・リー

ブラック・クランズマン (字幕版)

ブラック・クランズマン (字幕版)

  • 発売日: 2019/10/09
  • メディア: Prime Video
有料だけど『グリーンブック(字幕版)』と比較しながら観ると、黒人差別がどのように描かれているか違いがわかって面白いかもしれない。

9.『ダウントンアビー』

嵐の予感

嵐の予感

  • 発売日: 2015/04/13
  • メディア: Prime Video
シーズン6まであるから、これを観ていればすぐに桜の季節だよ……。

10.『恋の罪』など園子温の何か

恋の罪

恋の罪

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video

園子温が苦手な私による園子温論

超大昔なので恥ずかしいのですがこんなことも書いたな。

以下は、有料だけど好きな(というか、この機会に観たい)映画です。

1.『ヘレディタリー 継承』アリ・アスター

ヘレディタリー 継承(字幕版)

ヘレディタリー 継承(字幕版)

  • 発売日: 2019/04/10
  • メディア: Prime Video
『ミッドサマー』も観たので、この機会に前作を観るのもいいかなと思って私は昨日観ました。ジャンルとしてはホラー映画なので注意。

2.『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』ジム・ジャームッシュ

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ(字幕版)

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ(字幕版)

  • 発売日: 2014/06/18
  • メディア: Prime Video
吸血鬼の話なんですが、舞台が私の愛する街であるモロッコのタンジェ。耽美ですべての映像が美しい。ジャームッシュはほか、有料だけど『パターソン(字幕版)』とかもある。

3.『バーニング』イ・チャンドン

バーニング 劇場版(字幕版)

バーニング 劇場版(字幕版)

  • 発売日: 2019/08/07
  • メディア: Prime Video

階級社会とスノッブ:『バーニング』と『納屋を焼く』

去年の私的ベスト映画。みんな観て!

4.『ニーチェの馬タル・ベーラ

ニーチェの馬 (字幕版)

ニーチェの馬 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
7時間超え大作『サタンタンゴ』より観やすいはず、なぜなら2時間半だから。『サタンタンゴ』が雨と泥の映画なら、『ニーチェの馬』は風と砂の映画なのだ。

5.『世界』ジャ・ジャンクー

世界(字幕版)

世界(字幕版)

  • 発売日: 2016/03/07
  • メディア: Prime Video
この映画の冒頭にかかる音楽(予告編でも聴ける)が好きで、私の通勤BGMです。内容ももちろん、とても好きな作品。
youtu.be


せっかくなので引きこもりライフを満喫しよう。では。

階級社会とスノッブ:『バーニング』と『納屋を焼く』

イ・チャンドン村上春樹の『納屋を焼く』を映画化した『バーニング』を観てきたので、感想メモ。


ちなみにアップリンク吉祥寺で観たのですが、「伊良コーラ」なるクラフトコーラも美味しかったし、「ミニシアター・コンプレックス」というコンセプトも、ミニシアターとシネコンのいいとこどりで好きだなと思いました。


以下、ネタバレをちょっと含みます。

階級社会とスノッブ

まず、イ・チャンドンの『バーニング』と村上春樹の『納屋を焼く』では、細かな設定が少しちがう。『納屋を焼く』では、主人公は30歳の男で既婚。そしてヒロインは知り合いのパーティーで出会った20歳の女の子である。ハタチはこえているのでまあ犯罪じゃないしいいけど、既婚の男が10歳年下の都合のいいガールフレンドを見つけるという点においては、極めて村上春樹的な設定だ。


対照的に、『バーニング』の主人公とヒロインは幼なじみで、年齢はほぼ同い年である。どちらも未婚。そして、村上春樹の原作では彼らの出身地については特に描写がなかったが、『バーニング』の主人公であるジョンスとヒロインのヘミは、対南放送が聴こえてくるくらい軍事境界線が近い農村地の出身である。


『バーニング』でも『納屋を焼く』でも、そんな主人公とヒロインのもとに、ある不思議な男が現れる。原作では「貿易関係の仕事をしている」といい、映画では「遊んでいます。仕事と遊びの境界線がない感じかな」などといっている、何で稼いでいるのかよくわからない、豪華なマンションに住みながら高級車を乗り回すジェイ・ギャツビーみたいな男だ。


原作では、3人はだいたい同じ「クラス」に属す人間たちである。3人とも都会的で、軽薄で、ふわっとしている。だけど映画では、このギャツビーみたいな男・ベンと主人公たち2人は、何というか、属している「クラス」がちがうのだ。カンナム(よくわかんないけど、日本でいうと港区みたいな感じ?)の高級住宅街に住む男と、軍事境界線スレスレの農村地を出身とし今もそこを拠点とするジョンスとヘミ。原作にはない設定だが、私は、イ・チャンドンのこの視点はすごくいいなあと思った。村上春樹は小説においていわゆる「社会的弱者(経済的弱者)」を描かないので、こういった設定が盛り込まれていることがとても新鮮だった。


ハウスメイド (字幕版)

ハウスメイド (字幕版)


特に韓国映画に詳しいわけではないのだけど、少ない私の知識からいうと、韓国映画は「階級社会」を痛感させる作品が多い(多くない?)。私がめっちゃ好きな韓国映画に上の『ハウスメイド』があるのだけど、これも、お金持ちの上流階級の家に田舎出身の貧困層の女がメイドとして雇われるという話である。地方出身者の、経済的に豊かでない者たちの、上流階級への嫉妬、恨み、悔しさ、不条理な思い。映画『バーニング』では、村上春樹の作品では絶対に描かれることがないその視点が、イ・チャンドンによって盛り込まれている。


(ちょっとネタバレになるけれど、そういえば『ハウスメイド』でも、「燃焼」は物語の結末において重要な意味を持つ。虐げられた者たちの怒り、悲しみ、復讐心。『ハウスメイド』でも『バーニング』でも、それが「燃焼」によって描かれている……と考えると、『バーニング』は村上春樹の短編小説を原作としながらも、やっぱりとても韓国映画的だ。)

どっちが好き?

同じ都会生活を送る3人の、ちょっとスノッブで、しかし人生への諦念や虚無感や切なさが描かれている(と思う)『納屋を焼く』。経済的に豊かではない階級の2人と、ギャツビーのように暮らす上流階級の男、両者の間にある越えられない壁とその憎悪と嫉妬と怒りを描いた(と思う)『バーニング』。どっちが好きかと考えると私はどちらもかなり好きで、甲乙つけがたい。そして、「納屋(ビニースハウス)を焼く」というテーマに、そのどちらもがぴったりとハマっている点がとても面白い。焼かれて燃え上がるのは、虚無感の炎と、憎悪の炎だ。


ただ、文筆家(志望)である主人公の好きな作家がウィリアム・フォークナーであるという設定は、『納屋を焼く』よりもむしろ『バーニング』で生きている気がした。アメリカ南部を舞台に、黒人差別や暴力について描いてきたフォークナーを、主人公のジョンスが好んで読んでいるのはものすごくしっくりくる。


韓国映画が描く階級社会ってなんだろう。そんな疑問を残しつつ、個人的には超好みの作品だったので、気になる人は公開が終わる前にぜひ!

螢・納屋を焼く・その他の短編 (新潮文庫)

螢・納屋を焼く・その他の短編 (新潮文庫)

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open.spotify.com

(音楽もとてもよかった)


(そして、私の「ベスト・オブ・放火」が更新されたのであった。火災・放火、あと焼身自殺も好き)

お気に入りの映画音楽でプレイリスト作った

Spotifyで私がたまに通勤電車の中とかで聴いているお気に入りの映画音楽のリストを作りました。でもIT企業に出入りしているわりにはクソほど情弱なのでちゃんと公開できているのかわかりません。「見られない!」とかあったら教えてください。あとめちゃ本名出ているけど私は気にしていないので気にしないでください(ざ、雑〜〜!)。

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特徴としては、ジム・ジャームッシュ率が高い。だってジャームッシュの映画音楽かっこいいんだもんね。あと、これそもそも映画自体を知らない人にとっては、聴いて楽しいものなのかどうか不明です。音楽をきっかけに映画のほうも観てもらえたら嬉しいけれど、その行動を起こさせるには幾分……私のセンスが……足りないかも。。。

1. Louie Louie

コーヒー&シガレッツジム・ジャームッシュ

私が初めて観たジャームッシュの映画が『コーヒー&シガレッツ』で、「世の中にはこんなにセンスのいい人がいるのか!?」と腰を抜かしたのはいい思い出です。以来ジャームッシュが大好きになったけど、20代の途中「世の中にいるオシャレなやつは全員死ね!!!」という謎のルサンチマンを抱える奇病にかかってしまったため、ジャームッシュから一時遠のいてしまいました。最近は一周まわってまた好き。

2. Yegelle Tezeta

ブロークン・フラワーズジム・ジャームッシュ

ブロークンフラワーズ [DVD]

ブロークンフラワーズ [DVD]

これもジャームッシュで、『コーヒー&シガレッツ』にも出ているビル・マーレイが主演。映画自体はそんなに好きでもないのだけど(私は今でもジャームッシュの真髄はモノクロームの映像にある気がするのだ)、曲自体は好きでわりと聴いている。

3. Happy Together

ブエノスアイレスウォン・カーウァイ

ウォン・カーウァイの映画音楽も好きなものが多くて、『花様年華』の曲も探したけどSpotifyになかった。この曲はアルゼンチンから台湾に帰国した主人公が、別れた恋人や友人を思い浮かべながら「生きていればまた会えるさ」と独白するときにかかる曲です。

4. Moonchild

バッファロー’66ヴィンセント・ギャロ

バッファロー'66』で、クリスティーナ・リッチがボーリング場でタップダンスするときの曲。どうでもいいけどこの映画のクリスティーナ・リッチはむちむちしててかわいいなといつ観ても思う。

5. In Heaven

イレイザーヘッドデヴィッド・リンチ

天国ではすべてが上手く行く。天国では何でも手に入る。あなたのよろこびも私のよろこびも、天国では何もかもいい気持ち。ラジエーターの中に住む(?)小人が精子のメタファーらしいエイリアンを踏み潰しながら歌う曲。この世では何も上手くいかないし、何も手に入らないし、あなたのよろこびも私のよろこびも何もない。絶望する、いい曲。

6. I Put a Spell on You

ストレンジャー・ザン・パラダイスジム・ジャームッシュ

この曲は『ストレンジャー・ザン・パラダイス』という映画と一緒だからいいんであって、これ単独で聴くとシブすぎるのではないか? とリストに入れるにあたって懸念している。でもこれが流れるエンディングとてもいい〜。ジム・ジャームッシュはオシャレでムカつくけど天才だなあと思う。

7. Sinnerman

インランド・エンパイアデヴィッド・リンチ

私の中で、『マルホランド・ドライブ』と並んで「デヴィッド・リンチの良さがよくわからない映画」ツートップの『インランド・エンパイア』。だけどこの曲が流れるエンディングだけとても好きで、映画館で爆睡していたのだけど目が覚めたことをおぼえています。かっこいい!

8. Jazz Suite No.2:6 Waltz II

アイズ・ワイド・シャットスタンリー・キューブリック
ニンフォマニアック』ラース・フォン・トリアー

二度にわたってエロい映画に使われているため、私の中ですっかり「エロい曲の人」ということになってしまったドミトリー・ショスタコーヴィッチ。クラシックに詳しい人に怒られてしまうのではないか。

9. One

マグノリアポール・トーマス・アンダーソン

高校生のとき、『海辺のカフカ』を読んだ直後くらいに『マグノリア』を観たんだけど、どちらも魚とかカエルが空から大量に降ってくるシーンがある。どちらもフィクションなのだけど、それが強く残っていて、「そうか、空から突然、大量の生き物が降ってくるということが世の中には“ある”んだな」と私は思った。もしも空から魚やカエルが突然、たくさん降ってくる現場に出くわしても、きっと私はたいして驚かないだろう。だってそういうことは“ある”んだから。

10. Paint It,Black

フルメタル・ジャケットスタンリー・キューブリック

キューブリックの作品で『アイズ・ワイド・シャット』の次に好きなのが『フルメタル・ジャケット』なんです。これはエンディングで流れる曲だ。

11. VitaminC

インヒアレント・ヴァイスポール・トーマス・アンダーソン

LAヴァイス (Thomas Pynchon Complete Collection)

LAヴァイス (Thomas Pynchon Complete Collection)

この映画の原作はトマス・ピンチョンの『LAヴァイス』。早く読みたいなと思いつつ、今年はピンチョン作品として『重力の虹』を読むと決めているので、LAヴァイスを読むのはまた来年以降かな……。

12. Jockey Full Of Bourbon

ダウン・バイ・ロージム・ジャームッシュ

この曲は『ダウン・バイ・ロー』のオープニングでかかるやつです。このオープニングもめちゃかっこよくて、高校生か大学生のときに観てセンスが良すぎて絶望した記憶がある。ところで、私がいちばん好きなジャームッシュの映画音楽は『デッドマン』のニール・ヤングのやつなのですが、Spotifyになかった。

13. Love Is A Song

『光りの墓』アピチャッポン・ウィーラセタクン

光りの墓 [DVD]

光りの墓 [DVD]

最後はアピチャッポンにしました。これもいい曲だけど、私はこれより『世紀の光』のエンディングテーマが好きだ。でもSpotifyになかった。アピチャッポンの映画音楽も好きなものが多い。全体的に、ジャームッシュデヴィッド・リンチポール・トーマス・アンダーソンの曲のセンスがたぶん私は好きなんだな……。


箸休めと思って聴いてくれたら嬉しいです!

個人的なオールタイムベスト10の映画

「好きな映画を10本あげてくれ」といわれたらそのときどきで気分によって3〜4本入れ替わったりするのだけど、2019年1月時点だと私はこれらの映画が好きだ、と思うやつを10本まとめました。何のために? 自己満足のために……。なお、上位の作品は本当に好きなやつなのであまり気分によって入れ替わったりせず、下に行くほど次にまとめるときは消えていたりします。


一部視聴が難しい作品もあるのだけど、この1年でどの作品も1回ずつくらい見直せたらいいなと思っている。

1.『ノスタルジアアンドレイ・タルコフスキー


Blu-ray&DVD『ノスタルジア』CM「雨」篇

私はこの地球上のすべての映画の中でこれがいちばん好きで、初めて観た18歳のときから不動の1位をキープし続けている。たぶんもう、生涯でこれを超える作品には出会えないんだろうな。すべてのシーンに既視感があって、「私の頭の中をこんなに知っている人がいるなんて、嘘だ」と最初は思いました。その後、この映画のロケ地をまわるためにイタリアのトスカーナ地方を旅行。その旅行をきっかけに海外によく行くようになり、会社辞めたりしているので、私の人生に多大な影響を及ぼしすぎである。

2.『庭園』ヤン・シュヴァンクマイエル

コンプリートBOXの値段を見たらクソみたいに高かった……。また日本でシュヴァンクマイエル人気が再熱して、いろいろな作品が視聴しやすくなるといいな。昨年引退を表明した彼の作品の中で私がいちばん好きなのは、実は『オテサーネク』でも『悦楽共犯者』でもなくこの『庭園』という15分程度の短編なのだった。ちなみにチェコ語のタイトルは『Zahrada』。


ネタバレになるから詳しくは語らないけど、全編を通してものすごく意地悪だなと思うし、ブラックユーモアと悪意に満ちている。虚無であり、絶望である。生きているのが嫌になる。人を食ったような映画である。

3.『世紀の光』アピチャッポン・ウィーラセタクン


『世紀の光』予告編

アピチャッポンの映画はだいたい好きなのだけど、いちばん好きなのはこれ。ちょっとネタバレをしてしまうと、前半と後半で「くり返し」が起こる。自分が幽霊になってしまったような感じになって、すごく気持ち悪いので好き。

4.『世界』ジャ・ジャンクー


世界(字幕版)

中国・北京にある"世界"を模した小さなテーマパークで働く主人公たち。パリの凱旋門もタージ・マハルもピラミッドもあるのに、どこにも行けない、ここから出られない。予告編にもあるけど、凱旋門から噴水がふぁ〜〜〜と出てくるところが綺麗すぎていつも鳥肌が立ってしまう。鬱屈としている感じや閉塞感が何ともいえない。

5.『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』若松孝二

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山本直樹のマンガ『レッド』を昨年読んだのだけど、この映画を観たときと同じヒヤヒヤ感というか、「他人事じゃない感」があったな。現状が不満で、何かを変えたくて、でも地に足はついていなくて、ただ頭の中の理想だけが暴走していく。私もわりとそういうところがあるので、これらの作品に触れて「気を付けよう……」といつも思っています。

6.『神々のたそがれ』アレクセイ・ゲルマン


アレクセイ・ゲルマン監督『神々のたそがれ』予告編

この映画、まず長い。3時間くらいある。3時間ずっと面白いか飽きないかといわれると、正直途中ちょっとウトウトしちゃうところもある。でも、ラストシーンが好きすぎてすべて吹っ飛ぶ。私たちはこういうところからやってきたし、いつかこういうところへ還っていくんじゃないかなあと思う。

7.『パラダイス・ナウ』ハニ・アブ・アサド

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自爆テロに挑むパレスチナの若者が主人公。パレスチナという土地に生まれ、ムスリムとして生きるとはどういうことなのか、本当に考えさせられる。アサド監督の作品を人に勧めるなら恋愛モノの『オマールの壁』なんだけど、個人的に好きなのはこっち。

8.『アイズ・ワイド・シャットスタンリー・キューブリック

今回まとめた中でいちばん視聴しやすい作品はこれ、なぜならAmazonプライムビデオにあるから。他のはDVDを買うとかそもそもDVDが入手しづらいとかなのだけど、これだけはいつでも観られます! 私はキューブリックの中でこれがいちばん好き。というか『時計じかけのオレンジ』別に全然好きじゃないし、なんなら『2001年宇宙の旅』についてはどこがいいのかよくわかっていません。


前もこのブログのどこかで書いたけど、この映画の乱交パーティーのシーンが美しくてエロいのでめっちゃ好き!

9.『イレイザー・ヘッド』デヴィッド・リンチ


映画「イレイザーヘッド」日本版劇場予告

去年アップリンクで観て、好きが再熱した作品。すごく簡単に説明すると、ガールフレンドを妊娠させちゃったので彼女とその家族に結婚を迫られ、「俺の人生、終わった」となっている映画。つまり最低である。でもなんかすごく好きなんだよな。きっと私がガキだからだろう。主人公の消しゴム頭くんは、ちょっとホールデン・コールフィールドみがある。

10.『去年マリエンバードで』アラン・レネ

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脚本はアラン・ロブ=グリエ。豪華な館で出会った男が、女に「去年マリエンバードで会いましたよね」という。だけど、女は男に会った覚えがない。軽率なナンパだろうか。だけど、「去年会いましたよね」「私たちは愛し合った」とくり返しいわれるたび、それらしい根拠を見つけるたび、女は自分の記憶に確信が持てなくなっていく……という話。こういう話がもともとすごく好きなのと、映像は白黒ながら構図がとても美しくてうっとりする。

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今年は、2018年より少し多めに映画を観られるといいな。

とりあえず、いちばん観やすいのはプライムビデオに入ってる『アイズ・ワイド・シャット』なので、みんな乱交パーティーのシーンを観て〜!

渦巻く嫉妬と『世紀の光』

前回の日記Twitterなどで「私は『カメ止め』を評価しない!」みたいなことを散々いっているのだけど、これはまあ、バレているかと思うが嫉妬というか、マウンティングである。どういう類の嫉妬/マウンティングなのかというと……。


たとえば、合コンに行くとするじゃん*1。そしたらね、その合コンでAちゃんばっかりめっちゃモテるわけ。いやわかるよ、Aちゃんかわいいし、ノリいいし、愛嬌あるし、モテるのわかるんだけど。でも、みんなにBちゃんの魅力にも気付いてほしいなって私はいつも思うわけ。Bちゃんは確かに地味だ。ノリもよくないし、隙がなくて近寄りづらいっていうのもわかる。でも、何回も会っているとわかるんだけど、Bちゃんは物事に対して独特の視点を持っていて、洞察力もあって、淡々としゃべるけど話がめっちゃ面白いの。だから、Aちゃんが人気なのはわかるんだけど、みんなもっとBちゃんに注目して! っていう、そういう嫉妬だ。


この場合、Aちゃんが『カメラを止めるな!』であり、Bちゃんは私が同じ日に観たアピチャッポン・ウィーラセタクンの『世紀の光』である。



映画「世紀の光」予告編


アピチャッポンの映画は、いわゆる「映画好き」の間では非常に評価が高くて国際的な賞もたくさんとっているのだけど、私のまわりではあまり観ている人がいない。少なくとも、Twitterのタイムラインを騒がすような映画ではない。でも、「英BBCが選んだ「21世紀 最高の映画100本」にはアピチャッポンの映画が3本もランクインしている。60位に『世紀の光』、52位に『トロピカル・マラディ』、37位に『ブンミおじさんの森』が入っている。アピチャッポン・ウィーラセタクンは、2018年時点で現役で活躍している映画監督の中では、私がもっとも好きな監督でもある*2


マルホランド・ドライブ [DVD]

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(※ちなみに「英BBCが選んだ〜」の記事、1位はデヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』でした。私はリンチといえば『イレイザーヘッド』!)


Bちゃん──いや、『世紀の光』は確かにわかりにくい映画だとは思う。


ネタバレが重要な映画ではないので(でも気になる人は以下は読まないでね)概要を書いてしまうと、この作品は2部構成になっている。第1部は、ノスタルジックなタイの田園風景の中にぽつんとある病院で、女性医師が新米の男性医師に面接を行なっている場面から始まる。ちなみに「病院」はアピチャッポンの映画に頻出するモチーフなのだけど、これはアピチャッポンの父親が医師であったことに関係しているらしい。病院の一室や病人が横たわっているベッドは、監督にとって強いノスタルジーを喚起するものなのだろう。


映画の中では特に劇的なことが起こるわけではない。歯科医が僧を治療している場面があったり、僧が医師に病状を相談している場面があったり、冒頭の女性医師が突然青年に求婚される場面があったりする。でも、すべて淡々としている。正直、退屈に感じられる場面だってあるだろう。


https://www.cinra.net/uploads/img/news/2015/20151125-seikinohikari06_full.jpg
(『世紀の光』 ©2006, Kick the Machine Films Co Ltd (Bangkok))


不思議な感覚がわき起こるのは第2部だ。第2部は、都市部にある真っ白で清潔な近代的な作りの病院で、またも女性医師が男性医師に面接を行なっている場面から始まる。第1部とまったく同じ質問と応答が、ここで繰り返される。


冒頭以外も、ほとんどが第1部の反復である。歯科医と僧。僧が医師に病状を相談している。異なるのは、舞台となっている病院だけ。田園風景の中にポツンとある病院が、真っ白で近代的な病院になっただけ。


ここで私たちがおそらく思い浮かべるのは、「記憶」や「輪廻」といった言葉と、それに付随するノスタルジー、そして「反復」への軽い絶望である。自分が、成仏できない浮遊霊になったかのような感覚を味わう。


私はずっとここにいて、変わりゆく風景を眺めている。確かに、何も変わらないわけではない。病院の設備や、会話の細かいディティールは変わる。でも、いつの時代にも、どんな場所にも、なんとなく同じような人がいて、なんとなく同じような会話をずっと繰り返している。生ぬるくて、あたたかい絶望に包まれる。私にとっては、それは決して居心地の悪いものではないのだけど。


カメラを止めるな!』では、観客は観客だ。共犯者的ではあるけれど、やっぱり観客である。多くの映画はそうだし、もちろんそれが悪いというわけではない。


でも、『世紀の光』はすごく不思議で、これを観ている「私」は幽霊なのだ。場所をするすると移動する。そこで起こることに、「私」は関与できない。ただじっと、反復される光景をながめている。退屈で、生ぬるくて、頭がぼーっとしている。映画館を出たあとも、「私」はしばらく幽霊だ。だから、誰とも会話できなくなる。


そんな不思議な感覚をもたらすBちゃんに、私は「また会いたい」って思ってしまうんだよな。だから、アピチャッポンの映画を今後も私は観続けるだろう。


映画評や書評を書くことが多い私だけど、正直、「こんなこと書いて何になるんだろ?」という思いはいつもつきまとっている。マンガに映画、本、Netflix、ウェブの記事、雑誌、世の中にはありえない量のコンテンツが流通していて、自分が気になるものを追うだけでも精一杯だ。そこに、新たに「人のおすすめ」なんて入る余地あるのだろうか。ないだろう。みんな、忙しい。


それでもまだ、即効性を感じられるもの、窮地に追い込まれた自分を救ってくれるかもしれないもの*3、Aちゃんみたいに魅力がわかりやすいものであれば、入る余地がある。でも、『世紀の光』はそのどれでもない。即効性はない、窮地に追い込まれた自分を救ってくれない、おまけに魅力はわかりづらい。


この記事だってたいして読まれないと思うけど(別にすねてるわけじゃありません)、それでも書いてしまうのは、「アピチャッポンって聞いたことがある名前だな、どこで知ったんだっけ?」程度でいいから、この風変わりな聞きなれないタイの映画監督の名を、脳に刻んでおいてほしいからだ。


この人の映画は本当にすごいと、私は思う。Bちゃんまじでかわいい。



Fez - Neil & Iraiza
(※ところで私はアピチャッポンの映画音楽っていつもめちゃ好きになってしまう。これは『世紀の光』のエンディングに流れる音楽)

*1:ちなみに私は合コンに行ったことが人生で1回もないのですが……これはたとえ話なので……

*2:ゴダールシュヴァンクマイエルだって現役っちゃ現役だが、あれはもう評価の揺るがない巨匠枠なので

*3:好きな人から返事が来ない…不安で「追いLINE」する前にこれ読んで!|AM」がこれに当たります。ここで勧めた本はとてもおすすめ