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チェコ好きの日記

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私はなぜブログで堂々とネタバレをしてしまうのか

思ったこと

私はこのブログで、よく映画や書籍の感想を書いています。そんななか、ときどきいただいてしまうコメントに、「ネタバレが多い!」というものがあります。

そんなコメントをもらってしまった際には、申し訳なかったなぁと反省しつつも、最初にこの類のコメントをもらったとき私は正直びっくりしてしまったんですよね。というのも、私自身は、ネタバレしているつもりがまるでなかったのです。1回目は何かの勘違いかと思ってスルーしていたのですが、2回目、3回目と同様のコメントをいただくなかで、どうやら自分は“ネタバレ”の定義が世間と大きくズレているらしいということに、ようやく気付くことができました。

私のような、おかしな“ネタバレ”の定義をもっている人って、他にいるのかな? 

どちらにせよ少数派な気がしますが、もし共感してくれる人がいたらうれしいので、今回は私のなかの“ネタバレ”について、ちょこっと書いてみようかと思います。

世間のネタバレと私のネタバレ

まず、私のエントリで「ネタバレが多い!」といわれてしまった代表的なものが、以下の2つです。

「正直、人生ちょっと後悔してる」そんなあなたが読むべき本はこの1冊! - (チェコ好き)の日記

個人的にトラウマになるくらい後味の悪かった映画7選 - (チェコ好き)の日記

前者はカズオ・イシグロの小説『日の名残り』を紹介したもので、後者は個人的にトラウマになっている後味の悪かった映画を7つ選んだもの。後者においては特に、フランソワ・オゾンの映画『海を見る』あたりを読んだ方に「ネタバレが多い!」っていわれてしまったのかな? と思います。『日の名残り』にしろ、『海を見る』にしろ、たしかにどちらもあっさりと結末をいってしまっていますね(ごめんなさい)。そう、当たり前すぎて確認するまでもありませんが、一般的な、正しい“ネタバレ”の定義とは、「結末をいってしまうこと」。

一方、どこでどう歪んでしまったのかわかりませんが、私のなかの“ネタバレ”の定義とは、「物語の核心をついてしまうこと」でした。

……と、これだけいっても「はっ?」って感じでしょうし、書いている本人もあまりの説明しづらさに「はっ?」と思っているので、順を追って説明しましょう。

結末がすごいんじゃない、結末にいたるまでがすごいんだ

たとえば、カズオ・イシグロの『日の名残り』という小説を例にとってみます。この小説は、イギリスの大きなお屋敷で長年執事を務めてきた中年男性スティーブンスが、主人の留守をきっかけに、イギリス国内を旅行し、そこで昔の思い出にひたる……という物語です。

イシグロの小説はすべてそうですが、この小説には、ある巧妙な“仕掛け”が隠れています。ヒントは、スティーブンスの現在のご主人であるファラディ氏と、かつてのご主人であるダーリントン卿。そして、イギリスという国の歴史、です。それらは物語のなかで、現れては消え、現れては消えを繰り返し、最後の最後ですべての謎が解けるというしくみになっています。もちろん、ファラディ氏がダーリントン卿の息子だったとか、そんな安っぽい話ではありませんよ。

この『日の名残り』は、ミステリー小説では決してありません。しかし、その“仕掛け”によって、感動が何倍にも増幅するしくみになっているのです。いや、感動というか、諦観というか、希望というか……とにかく、私は大感動しまくって、「人生とはすなわち『日の名残り』である」くらいに思っています。ほんと、隙がないくらい完璧に美しい物語です。

で、私はこの小説のポイントは、スティーブンスが初対面の老人にかつての主人の思い出を話すラストシーンにあるのではなくて、この“仕掛け”にあると思っていたんですね。その“仕掛け”がわからなければ、ラストシーンをあらかじめ知ってしまっていても、何ら問題はないと勝手に判断していたわけです。もちろんこのエントリを読んだだけの人は、そんな“仕掛け”があるなんてわからないので、「結末いっちゃったよ、あーつまんない」って思われてしまって当然なんですけど……。

フランソワ・オゾンの映画『海を見る』も、同様です。最後、主人公は旅人の女に殺されるわけですが、殺されるラストシーンがすごいんじゃないんです。殺されるまでの過程がすごいんです。だから、結末をいってしまっても問題ないと私は思ってしまっていたんですね。というか、脚本とかで先に話を全部読んでしまっていても問題ないんじゃないかと思うくらい衝撃的な映画なわけです、『海を見る』は。

ミステリーなど物語の“核心”が結末にある場合は、さすがの私も、あっさりと結末を書いてしまったりはしません。だけど、上記の2作品は、その物語の“核心”が、結末ではなく「結末にいたるまでの過程」にあると私は思っていて、だからこそラストを堂々と書いてしまったというわけです。

私のなかの“ネタバレ”とは、「物語の核心をついてしまうこと」……というのは、だいたいこんな感じの意味です。

ちょっと性格の悪い私

しかし、「ネタバレが多いよ!」というコメントをいただいたとき、「すいません……」とショボショボしつつも、「ふふふ、甘いな」とほくそ笑んでしまった私がいることも、正直に告白しておきましょう。

たとえばですね、ゴールまでの順路がすべて記された迷路の地図を渡されたとするじゃないですか。地図を見ながらであればゴールまで確実にたどりつけるので、「何だ、楽勝じゃん」と、渡された人は思うでしょう。

ところが、実はその地図にはところどころ“仕掛け”があって、ゴールはわかっているのに右に行ったり左に行ったり、同じところをぐるぐるしてしまったりしたら、どう思うでしょう? 最初「楽勝じゃん」と思っていたぶん、落胆が大きいはずです。「全然楽勝じゃないじゃん!」と。

「ネタバレが多いよ!」というコメントをくれた人が、実際に作品を手に取ってくれたのか……やはり手に取ってくれなかった可能性のほうが大きいよなぁと思いつつも、もし「それでも」と思って、小説を読んだり映画を観たりしてくれていたら、私はとてもとてもうれしいです。だって、全然思った通りにゴールにたどり着けなくて、「どういうこと!?」と迷いながら、ふつうの人の何倍も、作品を楽しんでもらえたんじゃないかなと思うから。

私の意図したことが、成功しているかどうかはわかりません。しかし、あえて結末をさっくりといってしまうことで、みなさんにいい意味での「油断」をしてもらいたかった。スキップるんるんしているところで、落とし穴に嵌ってほしかった。基本的には「世間と私の“ネタバレ”の定義がズレていた」、ということなのですが、そんな意図もあったのだということも、少しだけ書いておきましょう。いや、でもこれ相当難しいことをやろうとしてましたね私。たぶん失敗していると思います。

でも、いつかそんな、ジェットコースターみたいな紹介文が書けるようになったらいいなと、私は夢見ています(そして何度も失敗する)。

今回のまとめ

散漫にああだこうだ書きましたが、やっぱり基本的には「結末を知りたくない」という人が多数派なんだなぁということがわかったので、今後、何かの紹介や感想文を書くときは、“ネタバレ”は自重しようかなぁと思いました。でもねー、私が結末をあっさりと書いているときは、むしろ何もいってないに等しいんですよ、ほんと。そこにいたるまでがすごいんだから!

当ブログは、素人の零細個人ブログにすぎません。が、私はそれでも、できるだけいろんなことに挑戦していきたいと思っています。だって、そのほうが面白いからね!

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