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チェコ好きの日記

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「勝負パンツ」という言葉によって認識される世界

読書

もしかしたら今夜はあんなことやこんなことが起こるかもしれない、という期待に備えて履いて出かける、とびっきりの下着。ときに人はそれを「勝負パンツ」とよびます。そしてこんなことを考えるのは私たち日本人だけではもちろんなく、イギリス人でもアメリカ人でも中国人でもインド人でも、(たぶん)全人類が似たようなことを思いついているみたいです。

何でこんな話をしているのかというと、最近読んだコリン・ジョイス氏の『「ニッポン社会」入門』という本がすごく面白かったからです。ジョイス氏は、イギリス生まれ・オックスフォード大学出身のジャーナリスト。彼が自国イギリスについて書いた本もめちゃ面白いです。

「ニッポン社会」入門―英国人記者の抱腹レポート (生活人新書)

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「イギリス社会」入門―日本人に伝えたい本当の英国 (NHK出版新書 354)

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英国人ジャーナリストのお気に入りの日本語ベスト3

『「ニッポン社会」入門』は、ジョイス氏がイギリスから日本にやって来てからの10年以上の間で見た・聞いた・体験した日本の不思議なところ、ヘンなところ、感心したところなどが綴られている本です。ジョイス氏の嘘か本当かよくわからない語り口は、何もやる気がしない休日にベッドでダラダラしながら読むのに最適です。

で、そんなジョイス氏が10年以上日本語を学んだなかで、「お気に入りの日本語ベスト3」なるものがあるらしく、その第3位が「勝負パンツ」とのこと。イギリス英語にはこの「勝負パンツ」にあたる言葉はないらしく、ジョイス氏がイギリスの友人にこの言葉を紹介すると、みんな感心したんだそうです。『ブリジット・ジョーンズの日記』の映画で、ブリジットが大事な局面を前に下着を履き替えているのを見てはじめて「ほかの人もやってるんだ!」とその存在を知覚した人も多いらしく、「言葉による世界の認知」みたいなことをしみじみと考えてしまいます。

ちなみに、第2位は「上目遣い」で、第1位が「おニュー」だそうです。女性が「上目遣い」をするのは日本人だけ……かはわかりませんが、少なくともイギリスでは「上目遣い」という慣習はないらしく、ジョイス氏は最初、女性がたまにやるこの独特の目つきの意味がわからなかったらしいです。ふざけてその目つきを何年も何年も真似していたら日本人の知人が「それは“上目遣い”っていうんだよ」と教えてくれたとのことですが、本にあるジョイス氏のプロフィールを見るとかなりの長身らしいので、いったい誰に「上目遣い」をしてたんだ、と思います。座ってやってたのか。

「おニュー」に関しては、「初めて何かを使うときに感じる束の間の幸福感を見事にとらえているし、そこにはユーモアとアイロニーが同時に含まれている」と本のなかで絶賛してくれています。あと、「ずんぐりむっくり」という言葉もジョイス氏は好きなんだそうです。日本語は擬声語や擬態語の宝庫だと。

日本食とイギリス食


こんなツイートを見ると英語もマトモにできない私は戦々恐々としてしまうのですが、言語や文化以外に、自国と他国の間に超え難い障壁として立ちはだかってくるのが、「食」ですよね。1週間くらい旅行に行くだけでも、自国と他国では食事に対する根本的な概念や胃のつくりそのものがちがうんだと、実感させられます。

ジョイス氏が日本にやって来てまだ間もない頃、日本の食事自体はとても美味しいと思っていたそうですが、イギリスの食事に比べて消化が良すぎるため、食べても食べてもお腹が空いて勉強に身が入らなかった、と語っています。日本人がイギリスに行くと反対に、その消化の悪さに何をどうやっても胃がもたれるため、量が食べられないですよね。胃のつくりそのものがちがうんだな、と身に沁みる瞬間です。10年くらいいたら慣れるんですかね……。

その他

あと面白かったのは、「異なる人種の子供はなぜか信じられないくらい可愛い」らしいということです。ジャパニーズな我々が西洋人の2〜3歳くらいの子供を見ると、まるで天使みたいでめっちゃくちゃ可愛いと思いますよね。が、イギリス人であるジョイス氏も日本の2〜3歳くらいの子供を見ると、まるで天使みたいでめっちゃくちゃ可愛く見えるらしいです。てっきりミニ・イエローモンキーとでも思われてるのかと考えていたので、これは何だか不思議でした。

ほかにも、ジョイス氏が日本のことを「不可知の国」といっているのが興味深かったです。理解されることを拒んでいる国。これはきっと、島国で単一民族国家であることが関係しているのでしょう。理解されることを拒んでいるというよりは、自分たち以外の民族がそこに入ってくることを想定していないというか、“そういうふうに作られていない”のだと思います。でも今後、日本のこういった態度は変わらざるを得ない日がやって来るのかもしれません。


最後に、余談ですが、私が学生時代に大学院で知り合ったイギリス人の留学生に関する思い出を話します。彼と知り合ってまだ間のない頃、授業の後に彼のケータイに電話がかかってきたんですが、着信履歴を見た彼は「やべっ、バイト先から電話だ。めんどくさいから無視しよ」とそれはそれは流暢な日本語で話していて、私は「この人は何て日本語が上手いんだろう」と感動したのです。

卒業してからもうずっと連絡はとっていませんが、彼は元気にしているかな。