「今までに、政治が、文学が弱い人の味方をしたことがあったか!?だからせめて俺の映画だけは、弱い人の味方をする!!…ちょっとカッコつけすぎかな」鈴木則文
— Kiichiro Yanashita (@kiichiro) 2014, 5月 16
映画監督の鈴木則文が、去る2014年5月15日にお亡くなりになったといいます。
私が観ている鈴木則文作品はというと、『非牡丹博徒』シリーズの一部と『トラック野郎』シリーズの一部、あとは『温泉みみず芸者』と『パンツの穴』。私のもともとのシュミがエンターテイメント系よりはアート系に偏っているため、そこまで熱心に観ていたわけではないし決して“ファンだった”とは言い難いのですが、渋谷のシネマヴェーラで『パンツの穴』を観てヘロヘロに脱力して何もやる気がなくなったことは今でもいい思い出です。
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亡くなった著名人に反応すること
私はこれまでも何回か、映画監督や作家など、著名人が亡くなった際にはそれに反応したエントリを書いているんですよね。
■さよなら、若松孝二 - (チェコ好き)の日記
■今、大島渚について私がいえること - (チェコ好き)の日記
■G・ガルシア=マルケスに合掌 まずは『エレンディラ』を読んでみては? - (チェコ好き)の日記
私は若松孝二についても、大島渚についても、ガルシア=マルケスについても、訃報によせてまとまった文章を書けるほどの知識をたぶん持っていないんですが、それでもなんか、書いちゃったんですよね……。「この程度の知識しかないなら書くな」みたいなご指摘もいただいたんですが、それはもう「ごもっとも」としかいいようがなくて、我ながら「こんな駄文書かないほうがマシ」とかも多少は思ってます。でもおそらく私は、これからも一度でも作品に感銘を受けたことがある作家が亡くなった際には、浅い知識で駄文を書き続けることでしょう。なぜかというと、この機を逃したら、私は一生その作家について文章を書かないんじゃないかって思うからです。
「この作品を観てからじゃないと」「この作品を読んでからじゃないと」、その作家について語るべきではないのでは……っていうのは、私も常に頭にあることです。でもとりあえず、作家が亡くなったら何か書く。浅くても、不十分でも、無理にでも何か書く。うまくいえないですが、それが私なりの敬意の表し方だったりするんですよね。
ということで、鈴木則文について
私がネット上で見つけた鈴木則文についての文章で面白いと思ったのがこちらなんですけど、
鈴木則文論 -歌と踊りとカンフーと笑いと涙が詰め込まれた鈴木則文映画こそ観客のための真の映画芸術なのである (柳下毅一郎) [無料記事] | 柳下毅一郎の皆殺し映画通信
というかこの記事がすばらしすぎて私もう何もいうことなくなっちゃった気もするんですけど、
もし鈴木則文を知らない人に、「鈴木則文ってどんな映画作るの?」っていわれたら、「『少林サッカー』を5倍くらい濃縮したやつ」っていえばいいのかなって思いました。
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『少林サッカー』ってすごいクダラナイ映画だと思うんですけど、クダラナさに一本スジが通っているというか、「徹底的に徹底的なエンターテイメントをやるんだ!」っていうマインドが伝わってきて、そういうのって観てるとわくわくしますよね。それで、鈴木則文もやっぱり「徹底的に徹底的なエンターテイメントをやるんだ!」っていう人だったんですよね。
今の日本の監督でいうと、もしかしたら園子温はそれに近いものがあるかもしれないなんて一瞬思ったんですけど、園子温とちがって鈴木則文は「オレは鈴木則文だ!」っていう自己主張はしないんです。「明るく楽しく品がない」っていう点では共通している部分がある気がするんですが、自己主張があるかないかというのは決定的なちがいです。エロと笑いと涙、それが則文のすべてです。
そんな鈴木則文の映画で、私が1つ選ぶとすればやっぱり冒頭にもあげた『パンツの穴』です。『トラック野郎』なんかはまだ安心して観ていられるんですけど、『パンツの穴』は次に何が起こるのかまったく予想がつかなくて、ネタバレしますけどね、最後のシーンとか高校生がウ◯コ投げ合って大乱闘してるときにUFOが「ケンカはやめんしゃ〜い」って止めにくるんです。「何なのこの映画?」と思って、「これが許されるならもう何でもアリだ。私はもう何も信じない。」みたいな気持ちになって映画館を後にしました。あんな映画体験はもう二度とできないんじゃないかと、鈴木則文の訃報によせて思います。エロと笑いと涙、それって究極の平和だよなぁなんて。エロと笑いと涙しかない世界に、戦争は起きないんですよ……。
ちょっと自分で何いってんのかわかんなくなってきましたが、『パンツの穴』はいい映画です。
最後に
鈴木則文の映画を一度でも観たことがある人がいたら、そしてその人がブログなりtwitterなりをやっているのだとしたら、私は何か書いてほしいなーって思います。同じ作家について一度にたくさんの人が言及したら、いろいろな視点に気が付けて楽しいです。
菊池桃子がデビュー30周年を迎えたこのとき、青春映画の不朽の名作「パンツの穴」をお撮りになられた鈴木則文監督がUFOに乗って宇宙へ旅たたれました。ご冥福をお祈りします。
— 吉村智樹 (@tomokiy) 2014, 5月 16
鈴木則文にふさわしい乗り物は、UFOしかないですよね。
いつもいっていますが、「ある作家と同じ時代を生きた」っていうのは、奇跡みたいなことだと私は思うんです。