チェコ好きの日記

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文系大学院生という選択

電車のなかで、スーツを来た学生さんをたくさん見かけるようになってきました。

私が初めて就職活動をしたのは、大学3年生のとき、2008年の冬。

寒いなか、朝早く東京の地下鉄を乗り継いで説明会に行ったり、ほとんど寝ないでES(エントリーシート)を書いたり、テストセンターにWEBテストを受けに行ったり、ま、あんまりいい思い出はないです。そして、その2008年の就活で、私は結局、就職ではなく、大学院進学という道を選びます。

私は理系ではありません。バリバリの文系で、しかも文学部芸術学科。文系院生という進路選択が、とても厳しいものであることは、もちろん十分に理解はしていました。

文系大学院というところは、民間企業で役立つようなスキルは一切身に付かないのに、(院に行っていたぶん)2年間歳をとり、お金(学費)も消えていく、という、メリットらしいメリットがはっきりいってない場所です。

しかし、それでも私は、就活をしていろいろな企業を見たうえで、どうしてもそのまま「就職」をすることに抵抗があり、文系大学院という、かなりリスキーな進路選択をしたのです。

当時、何が不安だったかというと、とにかく情報がなかったことです。

修士論文のこと、大学院生活のこと、そしてもちろん、大学院卒業後の進路のこと。

もしかしたら、このブログを読んでくれている方の中にも、現在就職活動中で、文系大学院への進学を考えている人がいるかもしれません。……もちろん、いないかもしれません。笑

今回は、そんな方たちのために、当時の私が知りたかったこと、不安だったことを思い出して、5年前の自分に教えてあげるつもりで、このエントリを書きました。文系大学院への進学を考えている方はもちろん、そうでない方も、「文系大学院ってこんなところなんだー」と、いろいろ知っていただけたら幸いです。

文系大学院のメリット

文系大学院への進学を考えているみなさんは、はっきりいって、その進路選択のデメリットくらい、十分すぎるくらい理解していると思うのです。

でも、それを覚悟の上で、自分を推し進めてくれる、自分を納得させてくれる理由が、欲しいんですよね。

5年前の私が、いちばん知りたかったこと。

それは、文系大学院を卒業した人が、文系大学院という進路を選択したことを、後悔しているか、していないか。……ということだった気がします。

これについてお答えすると、さまざまな考え方があるでしょうし、正直に告白すると、私も、後悔した時期がないわけではなかったです。就職が大変だったし、何とか職にありついて食いつないでいる今も、金銭面でのみ考えたら、恥ずかしながら随分なマイナスです。

でも、人生なんて気の持ちようといいますか……総合的に考えると、やっぱり大学院に進学してよかったな、と思っています。いや、思うようにしています。後悔はしていません。

では、なぜ金銭面ではマイナスなのに、後悔していないのか。

「メリットらしいメリットなんてない」文系大学院ですが、以下に、そんななかでも無理やり私がひねり出した、文系大学院進学のメリットをあげてみました。ほとんど精神論な部分は否めませんが。

1・レールを外れられる

いきなり、「それ全然メリットじゃないじゃん!」という声があちこちから飛んできそうですが、文系大学院(しかも文学部)というアウトローな進路を選択すると、もう人生で捨てるものなんてなくなります。

これは私の性格的な問題なのかもしれませんが、何となく、「自分はどこでどうなっても何とか食いついでいけるだろう」という、得体の知れない自信がわいてきます。

おそらく大半の人は、中学校→高校→大学(専門学校)→就職と、ほとんど何の疑問ももたずに、安全な人生を歩みます。ですが、年齢を重ねれば重ねるほど、新しいことに挑戦すること、レールを外れること、リスクをとることが、怖くなってきます。いったん進みだしたレールの上を、引き返すのは怖いです。

でも、22~23歳くらいで、休学・留学・大学院進学など、一度大きくレールを外れておくと、もうあんまり怖いものがなくなるんですよね。それがいいか悪いかは別として、ですが。

2・「教養」がレベルアップする

卒業論文のテーマとして研究しました」と、「修士論文のテーマとして研究しました」では、やっぱり重みが全然ちがってくると、個人的には思っています。

前者は、趣味的な雰囲気が漂いますが、後者は本気の本気、命かかってる感じがします。しませんか?

院の研究では、とにかく大量の文献を読みこなすことになります。そのなかには、「何いってるのか全然わかんねぇ」というような、かなり難解な書籍もふくまれます。外国語文献もありますしね。

よく、「卒論は参加賞、修論は努力賞」といわれます。卒論では、難解な書籍でも、そのへんは適当にお茶を濁せば(?)何とかなりますが、修論ではそういうわけにはいきません。……いや、実際は結局お茶を濁すことになるのですが、濁し方をもう少し工夫し、クールにやらないとダメです。

とにかく長くてツラい、この文献を集めて読みこなす作業。しかし、この経験によって、頭をかなり鍛えることができたと私は思っています。資格として表すこともできないし、数値で示すこともできませんが、大学院の2年間で、私の「教養」は、格段にレベルアップしたと思います。研究に関連する本も、しない本も、腐るほど読んだ2年間でした。

3・大きな視野で考えられるようになる

メリット1と2を総合して、という感じですが、文系大学院に2年間在籍すると、より大きな視野で、物事を考えられるようになる気がします。レールを外れると、いろいろな人生があるということに気付きます。それも、すぐ隣に。

これは個人の価値観によるものなのかもしれませんが、人生における選択肢がたくさんある、ということは、歓迎すべきことです。また、「教養」がレベルアップすると、自分のなかの哲学のようなものを、より強固に信じられるようになります。

これからの文系大学院

文系大学院への進学は、金銭的なメリットや、キャリアとしてのメリットは、はっきりいってありません。でも、それを覚悟の上で選択する文系大学院という道を、世間はもう少し暖かく迎え入れてくれてもいいんじゃないか、という気がします。

その人の世界がもう少し広かったら、就職が決まらないから自殺……なんて、しなくてすむのに、といつも思います。高齢化社会につき、70歳とか80歳まで働かなければならない世代の私たちは、ノンストップで走ったら、死んでしまいます。

「キャリアにブランクができる」ということを除けば、自分の好きな芸術や文学を、一流の教授の指導を仰ぎながら研究できるなんて、これほど素敵で贅沢な場所はないんですよ。文系大学院。私のように、大卒後すぐでなくても、30歳や40歳になって、昔好きだったあの作家の作品を研究してみようとか、そんなふうに思い立った人が、「ちょっとの決心」で行ける場所に、文系大学院がなればいいのになあと思います。

自分の人生をささげられるような、自分の人生と共に語れるような、そんな作品・作家があるって、やっぱり素敵なことですよ。

私は、チェコ映画に出会えて、幸せでした。

最後は何だか主旨がちがってきてしまいましたが、こんなふうにして、文系大学院の卒業生は生きています。

大丈夫、2年間寄り道したくらいで、人は死にませんから。文系大学院進学を考えている就活生の方の、何かのヒントになれば幸いです。

シュヴァンクマイエルとチェコ・アート

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