読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

チェコ好きの日記

旅 読書 アート いいものいっぱい 毎日楽しい

【4】ギリアイルの停電する夜

東南アジア

バリ島旅行記の続き(正確にいうともうバリ島じゃないが)。

【3】ウォレス線をこえて、バックパッカー・アイランド - チェコ好きの日記

バリ島からフェリーで2時間、ギリアイルという島にやってきたものの、何せ一周しても徒歩1時間というとても小さい島だ。観光名所もないし、海岸を散歩してお昼ご飯を食べたら、そのまま海を眺めながらカフェで読書でもするしかない。というわけで、夕方になるまで私は本を読みつつぼーっとしていた。

f:id:aniram-czech:20170115232355j:plain
(※お昼ご飯のミーゴレン)
f:id:aniram-czech:20170115234411j:plain

やることがなさすぎたので、夕方からはヨガのクラスに参加する。私の前に陣取っていたフランス人(たぶん)の女の子が超絶体が柔らかく、「ビギナークラスって書いてあったから参加したのに……!」と一瞬後悔したが、左右をよく見ると90°しか開脚できない私のような人もけっこういたので安心した。しかし、体が柔らかい人を見るとそれだけで、私よりその人が人生を何倍も楽しんでいるのではないかと疑ってしまう。いっそあのベターっと開脚の本を買ってしまおうかという気になるが、思いとどまる。

f:id:aniram-czech:20170115233429j:plain

ヨガの時間は1時間くらいだった。

全体の最後に、ちーんちーんという鐘の音を聴きつつ、ヨガマットに仰向けに寝転がり目を閉じる。太陽が沈み、瞼の外の世界が、鐘と音と合わさってゆっくりゆっくり暗くなっていくのがわかる。

繰り返すが、ギリアイルはとても小さな島で、その気になって拡大しないと地図上には存在しないも同然だ。だけど、私は今その小さな島で、ヨガをやって息を整えている。鐘の音を聴きながら、太陽が沈みきるのを待っている。

これはとても不思議な体験だった。海が近いせいだろうか、目を閉じていると、波の音と太陽の角度が少しずつ下がっていく音と、自分の呼吸がだんだん重なってくるような気がした。

f:id:aniram-czech:20170115112153j:plain

先生の合図とともに最後、目を開けると周囲はすっかり暗くなっていて、それはもちろん当たり前なんだけど、私はなんだか狐に化かされたような気分だった。信じられないくらい頭も体もすっきりしていたけど、なんでそんなにすっきりしたのかよくわからなかったし、やっぱり何かに騙されたんじゃないかという気がした。


釈然としないままヨガスタジオを出て、途中でココナッツアイスを買ったりしつつ宿に戻るが、そのときいきなり街灯や店頭の電気が消えあたりが真っ暗になる。どうも停電らしい。ウブドの宿にもどる途中も真っ暗でiPhoneのライトが大活躍したが、まさかここでも使うとは。頼りない明かりで道を照らしつつ、歩いてのんびり戻る。途中、照らした先に牛がニュッと現れたりして、すごくびっくりする。

f:id:aniram-czech:20170110212745j:plain
(※これは翌日、明るい時間に撮った牛です)

宿に着く直前くらいで、復旧したらしく電気が元どおりに点く。しかしこの後、部屋でシャワーを浴びているときと髪を乾かしつつベッドでくつろいでいるとき、またも電気が消える。一晩に三回も停電するなんて生まれて初めてだ。だけど、これが本来の地球の暗さなんだよななんて思いつつ、また停電すると面倒なのでその日は早く寝てしまった。

f:id:aniram-czech:20170116004814j:plain

翌日は、スピードボートに乗ってロンボク島へ進む。船の出発前、改めてギリアイルの海岸を散歩したが、本当にはてしなくのんびりした島だ。島の人は大人も子供もみんなニコニコしていて呑気そうだし、動物も人間様おかまいなしで堂々と道を歩いている。もう一泊してもよかったかななどと思い、今度は隣のギリメノやそのまた隣のギリトラワンガンまで行こうと決める。

ギリアイルからロンボク島までは、ボートで10分程度。すぐに到着する。だけど、10分でも海を隔てたそこはもう別世界だ。ロンボク島のバンサル港というのは客引きがしつこいかつ悪どいことで有名で、私もボートを降りたその瞬間に営業攻撃に遭う。ロンボク島はバリ島と同じくらいの規模がある島なのだが、大きい島というのはなんだか余裕がない。

しかし、しつこい客引きに関してはこちらもモロッコの旅で鍛えられている。私は難なくかわして信頼できそうなドライバーと値段を交渉し、宿の近くにあるロンボクのスンギギというビーチを目指した。

こちらは、波が荒い。

f:id:aniram-czech:20170116010255j:plain
f:id:aniram-czech:20170116010321j:plain
次回へ続く

【3】ウォレス線をこえて、バックパッカー・アイランド

東南アジア

バリ島旅行記の続き。

【2】私は島とセックスできただろうか? - チェコ好きの日記

バリ島を歩いていると、ここでは神様を信じることが、とても自然なことなんだとわかる。バリ島というか、インドネシアでは全体としても多くの人が何らかの宗教を信仰していて、「自分は無宗教だ」というと無神論者すなわち共産主義者だと思われてしまうこともあるらしい。……と、いう話を聞いていたので、私は「あなたの宗教は?」とたずねてきた幾人かのバリ人・インドネシア人に、ひたすら「仏教」と答えていた。だけどもちろん、本当は仏教のことなんて何も知らない。

f:id:aniram-czech:20170104183544j:plain

バリの人は、とても自然に祈る。そばで観光客が写真を撮っていようが、外からちらちら見ていようが、特に気負いなく神に祈る。当たり前のように観光客がうじゃうじゃいるこの島では、そんなのにいちいち構ってたんじゃオチオチ生活もできないというのもあるんだろうが、神に祈っている人というのが私はどうも好きみたいだ。

はじめて、信仰を持つことを羨ましいと思った。神様がいる世界にとても自然に馴染んでいけた彼らを、羨ましいと思った。私が今ここから何かの宗教を信じることは、かなり不自然なことになるからやらない。そうではなくて、何かを信じるという環境を、生まれながらに用意されていたことを羨ましく思った。

f:id:aniram-czech:20170110203311j:plain

あとは、物売りの子供がまあよく語学ができる。もちろん使える単語は値段交渉ができるシーンに限られてはいるのだろうが、それにしたって日本語も英語もフランス語もペラペラしゃべる。「あの子ら、ああ見えて七ヶ国語くらいできるんだ」とワヤンさんがいう。私も、つい先延ばしにしているが、どこかで語学は本気でやらなければいけない気がする……英語もロクにできないうちから欲張るのは滑稽かもしれないが、もっといろいろな言葉がわかるようになりたいと思う。アラビア語とかわかったらかっこいい。

f:id:aniram-czech:20170110204144j:plain


バリ島観光は実はここまでで、翌日から私は、フェリーでこの島を離れ、ギリ・アイルという島、それからロンボクという島を訪れてみることにした。船の予約はインターネットでできて、値段は片道四千円から七千円くらい。ちなみにこれらの島については、高城剛の本に少しだけ記述がある。ギリ・アイルは「ギリ三島」とよばれる三つの島の中の1つで、仲間とはしゃぐパーティー・アイランド「ギリ・トラワンガン」、カップルで行くハネムーン・アイランド「ギリ・メノ」とならび、バックパッカー・アイランド」とよばれている。要するに、独り身の島である。

f:id:aniram-czech:20170110205453j:plain

予想はしていたが、フェリーに乗り込んだアジア人は私1人で、他はみんな欧米人だった。私はバリ島からギリ・アイルまでの片道チケットをネットで予約し、その後ギリ・アイルからロンボクへ、そしてロンボクの空港からジャカルタに飛ぶことにした。

で、上でもいっているように、このギリ・アイルは徒歩一時間くらいで一周できてしまう本当に小さな小さな島である。だから車がない……というか必要なく、移動は基本的に徒歩、現地の人は自転車、重いものを運びたいときは馬車、みたいになっている。車がないせいか空気がきれいで、そしてはてしなくのんびりした雰囲気の島である。

f:id:aniram-czech:20170110211104j:plain

そして、ここからはちょっとマニアックな話になるのだけど(興奮)、バリ島とロンボク島の間には、実はウォレス線という、生物分布境界線が存在する。どういうことかというと、このウォレス線によって、生物の分布が東洋区(バリ側)とオーストラリア区(ロンボク側)で分断されているのだ。生物や植物の雰囲気が、どことなく変わる。そして面白いことに、宗教も変わる。バリはヒンドゥー教だが、ギリ三島やロンボクはイスラム教だ。船で二時間という距離しか離れていないのに。それで、バリ島のちょっと下にあるレンボンガン島という島もたぶん東洋区なのだけど、ここもどうやらバリ・ヒンドゥーの島。つまり、この生物分布境界線が宗教分布も変えている*1。この話めちゃくちゃ面白くないですか?

というわけで、ギリ・アイルに着いてからは懐かしの、アザーンが聞こえてきた。アザーンイスラム教のお祈りの合図の放送で、私はモロッコと、ヨルダンと、イスラエルでこれを聞いたことがある。女性はヒジャーブをかぶっている。ここはもう、イスラムの世界だ。

f:id:aniram-czech:20170110213331j:plain
次回へ続く

*1:このあたりについて研究した書籍はないのだろうか。知っている人がいたらご一報ください。海外文献でも英語なら頑張って読みます