チェコ好きの日記

もしかしたら木曜日の22時に更新されるかもしれないブログ

AMの連載でとり上げた本のまとめ(No.71〜80)おすすめ優先度付き

お久しぶりです。AMで連載している書評のまとめです。

以下は過去のぶん。
aniram-czech.hatenablog.com

AMの連載は隔週更新なので、つまり年間約24本の本を紹介していることになり、ということはこのまとめブログも年に2〜3回更新しないとペースが追いつかない計算になります。しかし私がめんどくさがりなので、今回まとめているのはだいたい2021年頃に公開したものです。さ、3年前かよ! ようやくコロナワクチンできたね〜みたいなあの頃の話です。連載100回を超えたら「祝!100回超え!」みたいな記念ブログを書きたかったのに、自分でも気づかないうちにぬるっと超えていたため何もできなかったという…。

第71回 人生に正しい選択は存在しない。「もしもあのとき」幻想に陥ったら読みたい一冊

おすすめ優先度 ★★★☆☆

「因果応報」的なものを、私はまったく信じていません。善き人に吉報が届くとは限らないし、悪しき人に凶事が降りかかるとも限らないのです。それどころか、善き人が不運に巻き込まれたり、悪しき人がその報いをぜんぜん受けなかったりなんてしょっちゅう。そうよ、この世は理不尽よ──という、地獄みたいな世界観で生きている私なのですが、逆に世の中というものにまったく期待していないからこそ、あんまりへこたれないのかもしれません。いいことをしてもいいことは起きないし、悪いことをしても悪いことが返ってくることはない。それなら、世の中の倫理や常識にとらわれず、ただ思うままに自分の好きに生きてみればいいじゃないの。と、『軽蔑』は別にそんな小説ではないのですが、3年前からこの考え方は変わっていないのだなと自分で再確認しました。

第72回 「声を出さずに上げるSOS」は日常のいたるところに存在する?そばにある不気味な穴

おすすめ優先度 ★★★☆☆

因果応報的なものはまったく信じていないけど、「人生は調子のいいときほど警戒しろ」みたいな警句はわりかし「そうかも」と思っている私です。レイモンド・カーヴァーのこの小説は、お金があって、仕事と地位があって、愛する妻と子供もいるミラクル強者男性が一瞬にして転落し、人生をわけわからん感じで棒に振る(ギリギリネタバレしてないつもりの言い方)というストーリーで、たぶんもう一回読んでもゾッとするんじゃないかな。たとえすべてを手に入れたとしても、天に召されるまで「アガリ」はやってこないのです。

第73回 「自分の人生、どうしてこうなった?」――何もかも捨てて、旅に出たくなったら

おすすめ優先度 ★★☆☆☆

「もう全部捨てて見知らぬ土地(ジョージアの田舎とか)で人生リセットしようかな」などという夢想を20代の頃は度々したものですが、そういえば30代以降はあまりこういうことは思わなくなったな。というか、この人生リセットの代替手段として私は長期海外旅行を定期的にやっていたわけですが、何十回も外国に行って帰ってくるのを繰り返しているとさすがに「旅を終えても人生がリセットされるわけではない」と脳が学ぶんですよね。現実的には「全部捨てて見知らぬ土地へ」なんてことができる人はかなり限られているので、だからこそ物語の中で擬似リセットをするんだ、という内容の記事です。

第74回 30代半ばで落ち込むのは「悪意なきほのぼの系の発信」だったりする。人間の多様性とは

おすすめ優先度 ★★★☆☆

これは今読み返すと我ながら「被害妄想が強すぎでは?」と率直に思いましたが、結婚や子育てをしないと一人前ではないという価値観はまだまだ強いです。先日も、「独身はマネジメントが下手くそなので管理職になるべきではない」みたいな投稿がXでバズっていて、「既婚者でも管理職になるべきではない人たくさんいますけどね!」と思いました。

どこで読んだのか忘れたけど(ごめんなさい)、これは「女性はマネジメントが下手くそなので管理職になるべきではない」と同じ思考の罠にハマっているんだろうと思います。女性の管理職や独身の管理職は数自体が少ないので、何か瑕疵があると、それを「女性だからだ!」「独身だからだ!」と属性のせいにしてしまう。一方、既婚男性の管理職は、数がものすごく多いので、何か瑕疵があってもそれは属性ではなく本人の特性のせいだとされるのです。

何においても、それは属性のせいではなく「その人自身がよかった/ダメだっただけ」と考えられるようになりたいね。

第75回 「いろんな価値観を認めることが多様性!」と言うけれど、価値観の問題だけじゃないかもしれない

おすすめ優先度 ★★★★☆

私が人生で初めて就職活動を行った大学生のときにはなかった「第二新卒」というカテゴリが、すっかり世の中に浸透したなあと思います。しかし年金の支給開始が遅れるのがほぼ確定している今の時代、私たちはたぶん70歳くらいまで働かなくてはいけません。とすると、大学卒業が22歳だとして、およそ48年間も労働者として過ごさなければいけないので、未経験職種への転職は20代までね! というのはなかなか酷ではないか。第三新卒、第四新卒くらいの枠まであっていいのではないか。40代後半くらいから新しいことに挑戦するのもアリな社会にしないか!?

ということをつらつらと考え、これがアリになったら世の中の専業主婦叩きもなくなるのではないかと思いました。子育てが終わってからでも仕事人間に復帰可能(もちろん復帰しなくてもOK)にしよう。

第76回 「夫婦やパートナーのあり方は人それぞれ」の、その一歩先を考える

おすすめ優先度 ★★★★☆

これを書いたとき、世の中にはまだ「生成AI」というものが登場していませんでした。しかしかのAIの登場によって、これまでロボットではできないとされていた「音楽を作る」「絵を描く」「小説を書く」などのクリエイティブな仕事のほうがAIにとられるかも……という事態になり、人間に最後に残されるのはむしろケア労働かもね、みたいな雰囲気にもなってきたと思います。「送迎」とか「オムツを換える」みたいなことができるロボットは、まだ登場しなさそうだもんなあ。テクノロジーの進化によって世の中の前提が変わるのって面白いし、私自身も損するのか得するのかわからないけど、揺蕩いながらそれらに巻き込まれていたいと思います。

第77回 耐えがたいのは自分が「平凡でぱっとしない人間」だと知ること――『パチンコ』が描く意味

おすすめ優先度 ★★★★☆

ここでおすすめしている『パチンコ』はまず、小説としてエンタメとして圧倒的に面白かったんですよね。一気に読んだ。そしてコラムにも書いたように、娘思いの、我慢強い、働き者の、優しい母親だったヤンジンが、死の間際に娘のソンジャに罵声を浴びせるのが本当に怖かった。

「あいつ性格悪いんだよな」と普段から思われているくらいの人のほうが、年取って認知能力が下がったときのギャップが少なくて済むのでむしろ健全ということありませんかね。露悪的に振る舞う必要はないし、なるべく「いい人」でありたいですが、あまり自分を抑圧しすぎず、適度に毒を吐いとくくらいでちょうどいいのかもしれません。

第78回 男性も(比喩ではなく)授乳できる!――『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』から見えてくること

おすすめ優先度 ★★★★☆

私は「早く人工子宮ができるといいなあ」と思っている生命冒涜野郎でございます。そうしたらベビーはすべて試験管から生まれてくるので女性が家庭とキャリアを天秤にかけて悩む必要がなくなるし、ゲイのカップルが子供を持ちたいと思ったときなども、代理母の議論をしなくて済むからです。どうしても生命を冒涜したくないというのなら、村田沙耶香の『消滅世界』みたいに、カップルの話し合い次第で男性が胎内に子宮を抱えて妊娠してもいい。あるいはアーシュラ・K・ル・グィンの『闇の左手』みたいに、どちらが妊娠するかランダムに決まる仕組みにしよう。そうすれば、レイプもナンパもなくなるかも…?

本書によると男性でも授乳が可能だということなので、早く実現してほしいですね。「何らかの環境変化が原因で女性による授乳が困難になったときのためのバックアップ」機能を使うそのタイミングは、近づいているように思えます。

第79回 人生に行き詰まると小説を書きだす私が『小説のように』から気付かされたこと

おすすめ優先度 ★★★★☆

このコラムは、ちょうどpixivに小説をアップし出した頃に書いたもの。小説は今も書いているので、私は2021年から今に至るまでずっと人生に行き詰まっているのでしょうか。いや、3年も続いているのでさすがに「ただの趣味」ということにしたい。このときは、まさかこんなに長く続けて、数は少ないけど界隈で友達もできることになるなんて思わなかったんです。

第80回 「書きたい、何か書きたい」というピュアな衝動から自分の性癖に気づけたりする

おすすめ優先度 ★★☆☆☆

二次創作の世界には、仕事と家庭と育児でキャパがパンパンになりながらも創作をやっている女性がけっこうな割合でいます。ただでさえ大変なのになんで創作なんかやるのかというと、好きな漫画を読んでいる時間が、好きなキャラを愛でている時間が、推しについて同好の者たちと語り合う時間が、彼女たちにとって自分が自分であるためのとても大切な時間だからです。いざこざやトラブルがないわけではないけれど、「こんなことしても何にもならない、でも自分にとって必要なんだ」とわけのわからない衝動に駆られて創作をやっている女たちの空間が、私はやっぱり好きなんですよね。

続く(近況)

文学フリマでの出展を目指して二次創作に関するエッセイを書いているんですが、当初考えていたよりも難しくて難航しています。コミケの歴史とか振り返り始めるとキリがないし、そもそも私は新参オタクであって古参文化には詳しくない。そんな私が歴史を振り返ったり考察をし始めるとたぶん普通に間違えるので、あくまでエッセイにして自分の体験を中心に書かないと破綻するぞ! とわかってはいるのですが、どうしても歴史とか考察系に首を突っ込みたくなってしまうんですよね。まあ、気長にやっています。

なお、二次創作は今も絶賛ハマリ中です。このブログももう少し更新したいと思っています。