日記
「年齢による体の変化」みたいなものを、幸か不幸かあまり感じていない。腰痛気味なのだけど肩こりは小学生のときからあったし、肌の調子は曲がり角どころか今が人生でいちばんいい。食べる量も食べ物の好みも変化なし。高カロリーなものは昔からずっと苦手だったし、少食なので「給食でのお残し禁止」だった90年代の学校文化には恨みさえ抱いている。だからなんとなくこの感じのまま歳をとり続けるのだろうと錯覚しているところがあるが、もちろんそんなわけにはいかないのだろう。
ソースを完全に忘れたので引用はできないのだけど、多くの人は「ポックリ」死ぬことを望んでいるらしい。そりゃ、気持ちはわかる。誰も、弱っていく自分、体の自由が利かなくなる自分、寝たきりになってしまう自分なんて見たくないだろう。亡くなる前日までハキハキ動いて意識もしっかり、そしてある日突然ポックリ逝く。だけど現実は理想のとおりになんていくはずはなく、ガタがきている体を修復し修復し、徐々に徐々に悪くなっていくのを体感しながら死ぬのだろうな。なんとなく今週はずっとそんなことを考えていたのだけれど、別に気分がふさぎこんでいるわけではなく、これが私の通常運転だ。
今週読んだ本
- 作者: 古井由吉
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1979/12/27
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古井由吉は実は初めて読んだ。
- 作者: 夏目漱石
- 発売日: 2012/09/27
- メディア: Kindle版
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そして夏目漱石の『虞美人草』は何回目かの再読である。私は夏目漱石の中ではこれがいちばん好き。というか海外文学ばかり読む人間なので、素直に心の底から「好き」と言える日本の小説はこれが唯一かもしれない(村上春樹などは好きだけどいろいろ複雑な感情を孕んでいるので……)。『虞美人草』はまず文章が極限まで洗練されていてとても美しいのだけど、なんといっても、この小説のヒロインである藤尾という女性が魅力的なのだ。
3月に少人数で行なったイベントで、それぞれが「魅力的だと思う女の子」について話したのだけど、私はそこで山崎ナオコーラの『人のセックスを笑うな』に登場した「ユリ」をあげた。映画だと松山ケンイチと不倫する永作博美である。あともう一人、語らせてもらえればよかったなあと読んでいて思い出したのが、この『虞美人草』の藤尾である。
- 発売日: 2013/11/26
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主人公の小野さんは、恩師の娘でもある小夜子という許嫁がいる。だけど真面目で地味な小夜子よりも、インテリで頭の回転が早く会話も面白い・おまけに美人である藤尾にどうしようもなく惹かれ……というのが『虞美人草』のすごい大まかなあらすじなのだけど、夏目漱石の筆が凄まじいので、藤尾の匂い立つような色気と魅力が行間から溢れ出ている。
「ユリ」と「藤尾」の共通点を無理やりあげると、まずは2人とも、決して若くはない。ユリは39歳だし、藤尾は24歳だけど明治時代で考えると「いきおくれ」に該当する年齢である。ユリも藤尾も周囲の男を翻弄するのでまあモテるのだけど、いわゆる(?)女子力やゆるふわ力でモテているのではなく、知性や自立心に裏付けられた芯の強さでモテている。そして、型にとらわれず自由だ。まあ、遠回りな言い方になったけど、ようは2人とも私の憧れの女性なのである。私はこんないい女にはなれないけどな……! 『虞美人草』についても、どこかでちゃんと書く機会があればいいのだけど。
ところで、来月上旬の読書イベントでお話しする予定の本はもう決まっています。まだ申し込み受付中のはずなので、お時間のある方はぜひ遊びにきてください。