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チェコ好きの日記

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アートと政治権力

衆議院が解散し、来月はいよいよ、選挙ですね。

みなさんのお住まいの近くにも、今後ぞくぞくと、候補者のポスターが貼られていくことでしょう。

 

さて、このポスター。候補者のみなさんが、エネルギッシュに、笑顔で、ときにはこぶしをグッとにぎりしめたりしながら、こちらへまっすぐ視線を向けている写真などが、多く使われます。

 

奇をてらう必要はないですけど、今の日本の選挙ポスターはちょっとワンパターンというか……見ていてあまりおもしろくありません。いや、おもしろがらせるためのものではないので、別にいいんですけどね(笑)

 

しかし、歴史上の指導者にとって、「肖像」は自分の権力を民衆に知らしめ、そのイメージを統制するための、非常に重要なものでした。

毛沢東しかり、スターリンしかり、ナポレオンしかり。

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 なかでもソ連のスターリンは、本当は目鼻の細い、典型的なグルジア人の特徴をもった小男だったそうなのですが、当時大量に印刷され配布されていた写真のなかのスターリンは、上記のように、立派な目鼻がきりっと整った、ロシア人の貴族のようです。

 

そして、この有名なスターリンの肖像画以外にも、ソ連や中国といった20世紀の社会主義国では、「汗水ながして働く労働者」や「筋肉隆々とした英雄的な兵士」などなど、何だかマッチョなかんじの人々が描かれた絵画や、そういった人物を主人公にした映画、文学が多数生み出されます。

 

もちろんそういう状況のなかで、ヒョロヒョロとしたやせっぽちの男、言動が子供っぽく、頼りなさそうな男なんかを映画の主人公にしようものなら……その映画をつくった映画監督は、政府の反感を買うことになります。

全体主義で、国をあげてバリバリやろうとしているところに、水をさすような真似をするわけですからね。

 

しかし、この人、イジー・メンツル。

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 彼は、1938年、チェコのプラハ生まれ。

第二次世界大戦と、社会主義国時代のチェコスロヴァキアという、過酷な時代を生きぬいてきた、チェコを代表する映画監督です。

 

メンツルの映画の主人公は、いつもヒョロヒョロの小男です。

ズボンの裾が足りなくてつんつるてん状態だったり、お母さんに服を着せてもらったり、好きな女の子とうまくいかなくてもじもじしたり。

あとは、よくすっ転びます……。

 

しかしメンツルは、こういった男を、政府の反感を買いながらも、ときに上映禁止処分に追い込まれながらも、ずっとずっと、主人公に据え続けたのです。

 

マッチョで男らしい、ワンパターンの人物像しか描かない「社会主義リアリズム」を、批判するために、です。

 

★★★

「人は見た目が9割」という本があったくらい、見た目というのは相手に強烈な印象をもたらします。

 

政治家やメディアに出られる方などは、このあたり、相当意識をして、洋服や立ち振る舞い、言葉づかいなどなどを、ときに専門のコンサルタントをつけながら、戦略的に考えているのでしょう。

 

「見た目より中身が大事」なんて、今更いうつもりはありませんが、

 

もしたくさんの選挙ポスターのなかに、ヒョロヒョロの小男が弱々しい視線でこちらをながめている写真があったら……

 

シュルレアリスティックで笑えるのにな~と思う、今日この頃なのでした。

 

だれか、おもしろい選挙ポスターつくってください。

おもしろいやつ。 

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