チェコ好きの日記

もしかしたら木曜日の22時に更新されるかもしれないブログ

映画『風の谷のナウシカ』は序章にすぎないと聞いたので、原作を読んでみました。

タイトルのままなのですが、映画『風の谷のナウシカ』は全7巻にわたる原作漫画の冒頭2巻を、原作の設定を簡略化してアニメ化したものであるという話をけっこう前に聞いたんですね。で、いつか原作を読んでみたいと思いつつズルズル来てしまったんですが、やっと全7巻を読み終わったので、感想などを書いてみようかと思います。

宮崎駿のアニメが好きじゃなかった

毎年のように何度もTVで放映しているため、宮崎駿のアニメは何だかんだいいつつ一通り観ているという人が、日本では大半を占めるのではないかと思います。私もだいたいの宮崎アニメを観ていると思うんですが、物心付いた頃から「何かこの人の作品は好きじゃない」と思ってしまって、高校生になってから以降は一切観なくなってしまいました。なので最近の作品(『風立ちぬ』とか)は知らないのですが、「何かこの人の作品は好きじゃない」と思ってしまった理由はすごく単純で、おそらく主人公がいいヤツすぎる、と感じてしまったからでしょう。特に『風の谷のナウシカ』の主人公ナウシカは、“いいヤツ”主人公の代表格といってもいいくらい優しくて愛にあふれているので、ダークヒーローとか、根性汚いヤツとか、ずる賢いヤツが好きな私とは相性が良くなかったのです。

でも、宮崎アニメは単なる子供向けアニメとして語ることはできない圧倒的な世界観をもっていることもまた事実で、私は「だれにでも好かれるようなヤツは嫌いだ!」とかいいつつも、たぶんラピュタとかナウシカの物語の設定自体には強くひきつけられているんですよね。トトロとか千と千尋とかもののけ姫はまた別の話になりますが、ラピュタナウシカって想像力の源泉が西洋でしょ。私は西洋っぽい神話とか伝説とか戦闘機とか見るとわくわくするので、たぶんあのへんのアニメのSFチックなところは何だかんだいいつつ好きなんだと思います。

風の谷のナウシカ』も、主人公が好きじゃないという(私にとっての)最大の欠点をかかえてながらも、猛毒の瘴気を放つ腐海とか、世界最終戦争とか、そういう世界観への興味が尽きなかったので、今回原作を手にとってみました。『ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)』に、原作を読むべし! とこの全7巻の漫画が紹介されていたことも大きいです。

気持ち悪かったです

映画のナウシカを観たときは、そこまで「気持ち悪い映画だ〜」と思わなかった気がするんですけど、原作を読んでみたら、これはすごく残酷で気持ち悪い話だったんだなということがわかりました。

まず気持ち悪かったのが、虫です。映画でも虫は出てきますが、原作漫画に登場する虫はもうちょっと描写が過激でした。飛行機に羽虫の大群が絡み付いて墜落する場面とかがあるんですけど、無機質な飛行機の船体に虫が蠢いているのを見るとぞ〜っとしますね。あとは、映画には登場しない蟲使いっていう人たちが出てくるんですけど、芋虫のようなやつを操って屍をあさるんですね。最終的にはこの蟲使いという人たちも悪い奴らではないということがわかるんですが、屍をあさるからかものすごいニオイがする人たちだという描写がされていて、グロテスクな世界観を盛り上げるのに一役買っていた気がします。

もう1つ原作に出てこなかったものとして、土鬼(ドルク)っていう種族が出てくるんですが、私は最後までこの種族がいったい何なのかよくわかりませんでした……。この種族の皇帝が原作においてはものすごい重要な存在で、この土鬼という種族が出て来ないというだけでも映画と原作は相当ちがう物語になっているよなー、と思いました。土鬼の皇帝は物語において重要な存在であるだけでなく、身体がバラバラになっても首だけになってしゃべったりナウシカの夢にドロドロになって登場したりと、何かもうとにかく気持ち悪かったです。

他にもいろいろありますが、映画は設定にしろ描写にしろ、原作をだいぶマイルドにしたものだったんだなーということだけはわかりました。巨神兵も、映画だとラストの盛り上げにちょこっとだけ出るみたいな感じですが、原作ではやはり物語においてかなり重要な役割を負わされています。映画は「人間と自然」っていう印象が強いですけど、原作は「人間と人間」というか、戦争がもっと戦争らしく描かれているというか、とにかく血で血を洗うという言葉がふさわしいドロドロした物語でした。

世界観は好きなんだけど、世界観しか好きじゃない

原作を読んでみることで映画の観方も何か変わったりするかな? と思って読んでみたのですが、私が『風の谷のナウシカ』について思うことはとりあえず、「世界観は好きなんだけど、世界観しか好きじゃない」ということです。原作、たぶん好きな人はものすごく好きなんだろうなーと思うんですが、壮大すぎて、設定が複雑すぎて、1回読んだだけだとよくわかりませんでした(私の頭が弱いだけかもしれない)。これからも何回かは読んで、とりあえず設定とかあらすじを何も見ずにスラスラいえるようになってからまた改めて感想を書こうかなと思います。

宮崎駿さんのことを私はよく知らないんですけど、物語のテーマを追求するというよりは設定を作り込む、細かい描写に凝りまくるっていう方向性が強い人なんじゃないかと今回思いました。いや、でもちゃんとした宮崎ファンにいわせたら全然そんなことないのかもしれません。宮崎駿のアニメって設定や描写の1つ1つにはすごくひき込まれるんですけど、肝心の物語はけっこうプロットが簡単だったり、ナウシカの原作みたいに壮大すぎて追いつけなくなっちゃったり。「主人公がたいてい好きじゃない」という理由以外に、私が宮崎駿にどうしても上手くハマれない理由は、そのへんにあるんじゃないかなという気がしました。それでも、やっぱりアニメですさまじい描写をやってのけるところは、たぶん天才なんだろうなと思うわけですが。

「俺は正統派の宮崎駿ファンだ!」という人がもしいたら、いろいろと話を伺ってみたいものです。ちょっと消化不良な感想ですが、今回はこのへんで!