チェコ好きの日記

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奥深くも妖しい、“密教”の世界が面白い

このブログ内では何回かいっていますが、私、宗教が好きなんですよね。自分自身は何か特定の宗教を信仰しているわけではないんですが、宗教に関する本を読んだりそれに付随する美術のことを考えたりするのが好きです。西洋美術フリークなのでいちばん気になるのはキリスト教ですが、仏教イスラム教もユダヤ教バラモン教もカルト宗教も何でも好きです。

そんな私が今回手にとってみたのは、謎の多い“密教”の本です。日本で密教といったら真言宗とか天台宗ですが、インドとかチベットとか中国とかのそれと何がちがうのか(あるいは同じなのかとか)よくわからなくて、前々から気になっていたんですよね。

密教 (ちくま学芸文庫)

密教 (ちくま学芸文庫)

というわけで、今回は密教の話をします。

密教と性

まずは、“密教”の定義を確認してみます。

密教とは、インド大乗仏教の最終段階において展開された神秘主義的・象徴主義的・儀礼主義的な傾向の強い仏教である。
また、密教には、性行為を導入したヨーガ、すなわち性的ヨーガ(性瑜伽)ならびに血・骨・皮の儀礼を必須要素とするタイプと、そうでないタイプがあり、前者をタントリズムと呼ぶ。
ちなみに現在では、日本とチベット、およびネパールとブータンに命脈を保つ。このうち、真言宗天台宗の一部から成る日本密教は、原則として性的な要素を含まない。(p14)

たまにニュースを聞いていると、どこかのカルト宗教の教祖が女性信者と……みたいな非常に胸クソ悪い話を耳にしますが、ああいうのはまるで的外れなことをやっているわけではないんだなぁと思いました(気持ち悪いですが)。性行為をすることで真理に到達できるみたいな教義は、いちおう伝統的な宗教のなかにも存在するんですね。日本の真言宗天台宗は性的な要素を含まないということで、ホッとしたような残念なような気分です。

この本のなかでも指摘されているんですが、宗教と性というのはとても面白いテーマですよね。たとえばキリスト教なんかは徹底的に性的なものを悪と見なし、排除しようとします。他の宗教でも性はタブー視されることが多い気がしますが、密教はインドにおいて、ヒンドゥー教と対抗するためという目的もあって、性行為を修行に導入するという禁忌の領域に足を踏み入れたのだそうです。宗教の世界は究極の「聖」であり、性の世界は究極の「俗」です。

ちなみに私の頭のなかでは、宗教と性に“芸術”が加わると、究極の三位一体が完成します。

参考:「あなたにとって芸術とはなんですか?」に回答してみます - チェコ好きの日記

密教とオカルト

とはいえ、やはり性行為を悟りを手に入れるための修行に導入するなんてのは危険極まりないものだったらしく、インドの一部の密教はエスカレートして呪殺や黒魔術のようなオカルトな要素をどんどん取り込んでいき、多くの問題を抱えるようになってしまったといいます。大小便や血の混合物を食べるという修行(?)もあったそうで、こうなってくるともうヤバイですね(食事中の方すみません)。チベットのほうの密教では、修行を口実にただただ性行為に惑溺する人々が現れたり、「度脱(ドル)」という呪殺の秘法によって、敵対者を殺害したり病気にしたりするようになってしまったそうで、しかもその行為を慈悲の実践として正当化していたというから驚きです。悪人を、それ以上悪いことをしないうちに殺してやるのは善行である、という論理ですね。このあたりは、オウム真理教が殺人を正当化していた論理につながるものであることが、本のなかでも指摘されています。

解決法として、修行において本当に性行為を行なうのではなく、呼吸コントロールやイメージ操作などによって“性行為を行なったときと同じ心身状態”を実現する、という方法が採用されるようになったそうです。しかし密教界におけるエライ人・インドラブーティは、「タントラの道は、獰猛な虎と戯れるより危うく、鋭い刃のうえを歩くよりきわどい」と著書で述べたそうで、やはり一部の密教がとても危険なものであったことがわかります。

密教と美術

以前クーリエジャポンか何かでブータンの特集記事を読んだときに、寺院の壁か何かに色鮮やかな大きな男根が描かれていて驚愕したのですが、あれは密教美術の一部といえるんですかね。記憶が曖昧なのでよくわかりませんが、本によると抱き合う男女のホトケの図像みたいなものも密教の美術としてあるようで、どうにもこうにも妖しい作品(?)が一部に存在するのは確かなようです。

COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2012年 09月号 [雑誌]

COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2012年 09月号 [雑誌]

(※この号です)

しかし、密教美術といえば何といっても曼荼羅ですよね。
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両界曼荼羅図(西院曼荼羅胎蔵界 東寺

曼荼羅は、瞑想のために発明された霊的な道具なのだそうです。中央に本尊が、その周囲には数多くのホトケたちがランク順に並んでいるのが特徴らしく、そっかこれってランク順なんだ……と思いますね。曼荼羅には深いふか〜い意味がいろいろあり、きちんと勉強したいなぁと思いつつも、本に書いてあることは難しすぎて私にはよくわかりませんでした。

まとめ

密教の本は全体的に難解で(これでも易しいほうみたいですが)深すぎて、私の理解の範疇をこえていました。でも、せっかく真言宗天台宗という密教の伝統を引き継ぐ宗教のある国に住んでいるのだから、金剛峰寺とか東寺とか延暦寺とか行ってみたいですね。

最後になりますが、密教って“秘密仏教”のことなので、まずは仏教についてちゃんと知りたいよ! っていう方にはこちらの本もおすすめです。みんなで仏教を勉強しましょう。

池上彰と考える、仏教って何ですか?

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