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チェコ好きの日記

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スレンダーマン事件と『小さな悪の華』に見る、“少女2人”の狂信性

先日ぼ〜っとtwitterのタイムラインを眺めていたら、ちょっと衝撃的なニュースが目に飛び込んできました。

アメリカのウィスコンシン州に住む12歳の少女2人が、友達の1人を19回もメッタ刺しにしたという事件らしいのですが、その動機が「スレンダーマンに気に入られたかったから」。スレンダーマンというのは、アメリカでインターネットを中心に都市伝説になっている、長身でスーツを着た不気味なキャラクターみたいです。

被害者の友達が一命をとりとめたらしいので良かったものの、なぜこの2人はネット上のキャラクターなんかを信じて、しかも仲間になりたいと殺人未遂まで犯してしまったのか。現在2人の少女は精神鑑定を受けているみたいですが、本当に理解に苦しむ事件です。しかし私はこのニュースを聞いて、けっこう前に観た『小さな悪の華』っていう映画を、ふと思い出してしまったんですよね。

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“少女2人”の狂信性

『小さな悪の華』は1970年のフランス映画なんですが、寄宿学校に通うアンヌとロールという2人の可愛らしい女の子が主人公です。公開時のキャッチコピーは「地獄でも、天国でもいい、未知の世界が見たいの! 悪の楽しさにしびれ 罪を生きがいにし 15才の少女ふたりは 身体に火をつけた」。

アンヌとロール、2人の少女はバカンスを利用して、盗み、放火、誘惑、小鳥の殺害、悪魔崇拝の儀式などなど、とにかく悪いことをしまくります。映画のなかの彼女たちの表情は純粋そのもので、内緒話をしたり、けたけた笑う様子は本当に可愛らしい。だからこそ、本物の悪魔みたいなのです。

「小さな悪の華」予告編 - YouTube

なぜ上記のスレンダーマンの事件を聞いて、この『小さな悪の華』を思い出したのかというと、それはもちろん“少女2人”が事件を起こしたという点が共通しているからです。1人でも3人でも4人でもダメで、“2人”というところがポイントです。よく考えると、“2人の女の子”が主人公になっている映画やマンガってたくさんあって、15歳前後の女の子、それも2人っきりのコミュニティって、閉鎖的で狂信的なところがあるのかもしれない、と思いました。“内緒話”って、2人じゃないとできないんですよね。3人で内緒話をすると、AちゃんはBちゃんとCちゃんにそれぞれちがう内容の話をしている可能性があるわけです。3人のうちの1人がいないときに、残りの2人がその1人の悪口をいっていることもある。

“2人の少女”が一度固い絆で結ばれてしまうと、そこにはもうだれも入りこめないんです。まわりの友達や男の子、まして大人のいっていることなんて全部嘘。今回の事件を起こした12歳の少女2人も、きっと2人の間でおかしな思想がパンパンに膨れ上がって、破裂しちゃったんだろうなーと、かつて少女だったこともないわけではないアラサーの私は推測しました。

“少女2人”の作品を探してみよう

閉鎖的で狂信的。“少女2人”が主人公である作品は、やっぱりどこかクレイジーなものであることが多い気がします。

たとえばヴェラ・ヒティロヴァの『ひなぎく』は、悪事の質こそ『小さな悪の華』のアンヌとロールにはかないませんが、男の人にたかってごはんを食べまくったり、テーブルの上を靴のままで歩いて食べ物をぐしゃぐしゃにしたりします。たぶん『ひなぎく』の2人は18〜20歳くらいっぽいので、“少女”ではないかもしれないけど。

映画『ひなぎく』予告編 - YouTube

あとはキム・ギドクの『サマリア』なんかもそうです。ヨジンとジェヨン、2人で協力して援助交際をする話ですが、その理由が「旅行に行くため」でしたっけ? もうちょっと大人になって、正規の方法でお金を稼いでからじゃだめなのか。それまで待てないのか。やっぱり理解しがたい物語です(そこがこの映画の魅力なんですが)。

サマリア - YouTube

あとはちょっと映画から離れると、岡崎京子のマンガも、“女2人”が主人公だと大抵ロクなことが起こらない気がします。

チワワちゃん (単行本コミックス)

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たぶん(もしかしたらちがうかも)上記の『チワワちゃん』に収録されていたやつで、2人の女の子がお金がなくなって海の家で働くみたいな話があった気がするんですよ。1人が海の家の跡取り息子に好きになられてしまい、結局マトモに働けなくなって2人で逃げるんですが。だれだか忘れましたが、どなたかが岡崎京子のマンガに登場する女性たちをもって「彼女たちは、男と恋愛するよりも、“男と恋愛した話”を女同士でするのが好きなのだ」といっていて、「なんて的確な岡崎京子評なんだ」と感動したことがあります。

“狂信性”は止められる?

とにかく、“少女2人”というコミュニティは暴走するととても危険です。映画やマンガだと「危険だからこそ美しい」みたいな呑気なこともいっていられますが、やっぱり現実世界ではあまり痛ましい事件は起こってほしくないですね。年頃のお嬢さんがまわりにいる方は、やっぱり注意して見ておかないとだめなのかもしれません。“注意して見る”って、いったい何をどうせいっちゅーねん、って話ではあるんですが。そして彼女たちにとって、そんな大人の目線がうざいことこの上ないのもわかっているんですが。

今回、スレンダーマン事件を受けていくつかの作品を並べてみましたが、我ながら何か重要な作品が抜け落ちているような気がしないでもない今日この頃。みなさんも、ぜひクレイジーな“少女2人”の物語、探してみて下さい。