チェコ好きの日記

もしかしたら木曜日の22時に更新されるかもしれないブログ

(チェコ好き)の日記の人気本ベスト5 2014年下半期

ブログで本などを紹介していると、「インターネット本屋さん」気分を味わうことができて、なかなか楽しかったりします。期間ごとにいつもやっているのですが、今回は、2014年下半期に当ブログを経由してAmazonで購入していただいた本のランキングです。Kindle版の売り上げも考慮に入れています。この作業、私のなかで各エントリについてのあとがき的な意味合いもあったりするんですよね。

※前回の集計はこっち
(チェコ好き)の日記の人気本ベスト5 2014年上半期 - (チェコ好き)の日記

では、1位から5冊、いってみましょう。

1 『ここは退屈迎えに来て』山内マリコ

ここは退屈迎えに来て

ここは退屈迎えに来て

この本を紹介しているエントリ
『ここは退屈迎えに来て』ーーファスト風土の“退屈”から抜け出すには - (チェコ好き)の日記

この本について正直に申し上げると、小説自体はあまり面白いと私は思わないんですが、この本で提示されている「ファスト風土」という概念、「退屈」という概念、そしてそのすべてを象徴するかのような魅力的なタイトル、などなどの総合力で、すごい作品に仕上がっている本だよなーと考えています。物語の面白さというよりは、批評する対象としての面白さですね。

上記のエントリで私は「退屈をまぬがれたいなら、消費ではなく生産をすればよい」というとりあえずの結論を導き出してみたのですが、この点についてもう少し深く考えてみようと、現在は『暇と退屈の倫理学』を読んでいます。「消費と生産」ではなく、「消費と浪費」という線で考えてみる必要があるのかもしれません。結果は、追って報告します。

2  『雨天炎天』村上春樹

雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行 (新潮文庫)

雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行 (新潮文庫)

この本を紹介しているエントリ
村上春樹の「好き」「嫌い」はどこで分かれるのか? に関する一考察 - (チェコ好き)の日記

こちらの本、私のブログから本当にたくさん購入していただいているんですが、この『雨天炎天』という本は私がすべての本のなかでいちばん愛しているというか、無人島に1冊だけ本を持っていくならこれにする気がしますね。『遠い太鼓 (講談社文庫)』も捨て難いですが。

特に好きなのは第1章の「アトスーー神様のリアル・ワールド」なんですが、ここには私の書きたい文章、理想の旅行のかたち、私の世界観人生観、まじですべて詰まっておりまして、決して長い文章ではないんですが、これを越えるものに私は未だに出会っていないなあってかんじがします。

アトスというのはギリシャにある島なんですが、ここはギリシャ正教の聖地で、なんと女人禁制なんですよ。島には男の人しか入れないんです。だから私は世界のフェミニズム団体が革命でも起こさない限り、残念ながら一生アトスには行けないんですね。でも、もし革命なんていうものに成功して女性が島に入れるようになったら、たぶん本当の意味での「アトス」は地球上から消えてしまいますね。だから私はやっぱり、どうやっても何をしても、この島にはたどりつけないんです。だからこそ余計に、ここに書かれていることに強く惹かれるのかもしれません。

ところで、性転換した「元女性」は入れてもらえるのかな? 神様に生意気な質問をしたくなってしまいますね。

3 『弱いつながり 検索ワードを探す旅』東浩紀

弱いつながり 検索ワードを探す旅

弱いつながり 検索ワードを探す旅

この本を紹介しているエントリ
「旅で世界観が変わりました」は軽薄か? 東浩紀『弱いつながり 検索ワードを探す旅』 - (チェコ好き)の日記

こちらは私のブログにとどまらず、本当にいろいろなところでいろいろな人が話題にしていましたね。2014年を象徴するような本だったのだろうし、「『弱いつながり』が出たのは2014年だった」というのは、後々語り継がれるようになるんじゃないかとすら思います。

もう私たちの生活をインターネット、もしくはインターネット的なものをのぞいて語ることはできません。現代人なら、どんな人でも興味深く読める本になっているんじゃないかなと思います。

4 『観光アート』山口裕

観光アート (光文社新書)

観光アート (光文社新書)

この本を紹介しているエントリ
東京の美術館の、大きな大きな問題点 - (チェコ好き)の日記

上記のエントリは私の書き方が相当まずかったこともあり、いろいろなところで波紋を呼んでしまった部分もあるのですが、今でも基本的な私の主張は変わっていません。東京、地方に限らず、それぞれの美術館はもっとコレクションの方針をはっきりさせて、個々の存在感を際立たせていくべき。箱モノとしか呼べないような美術館は、極端な言い方をすれば潰したほうが良い。そう考えています。

「何もぜんぶ東京に集めなくても、外国人観光客を地方に案内してあげれば良いのでは」という意見もいただいたのですが、これは同意しかねます。なぜなら相手は、予算も日数も限られている「外国人観光客」だからです。日本大好きなリピーター観光客ならともかく、その他の観光客は東京と、あとは京都をまわるだけで、それ以後二度と日本を訪れない可能性だってあるわけです。私は夏にニューヨークを訪れたとき、本当は近くのシカゴにもボストンにも行きたかったけど、一般観光客である私に、それは無理でした。私は人生のなかでシカゴにもボストンにもそのうち必ず行こうと思っていますけど、それは私が旅行大好き人間だからで、そうじゃない人だっているわけです。そういう経験を踏まえていっています。

5 『芸術新潮』2014年8月号

芸術新潮 2014年 08月号 [雑誌]

芸術新潮 2014年 08月号 [雑誌]

この本を紹介しているエントリ
バルテュス、ろくでなし子…「芸術」と「わいせつ物」の闘争はまだまだ続く! - (チェコ好き)の日記

こちらの雑誌は、本当にキワどかったですねー。表紙は普通ですが、中身はけっこう本気な「ヌード」がそろってます。いい特集だったと思いますね。たぶん、同じ「キワドイ」でも、ただのエロ雑誌だったらこうはならないと思うんですよ。写真がある、絵画がある、そして一応は「アート」という目的がある。だから混乱するし、脳みそがひっかきまわされるようなかんじがするのでしょう。

このエントリで話題にしたような「芸術」と「猥褻物」の話にとどまらず、アートが3Dデータをどう扱っていくのか、付き合っていくのかっていうのは面白いので注目していきたいところですね。

★★★

というわけで、2014年下半期のランキングはこんなかんじでした。変化していくものもあれば、ずっと変わらず売れ続けている本もあって、経過観察するの本当に楽しいです。

それではみなさま、素敵なクリスマスをおむかえください。

関連エントリ