チェコ好きの日記

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私が今までの人生で会った(見た)なかで、もっともオーラがハンパなかった人は唐十郎

20年や30年という年月を生きていると、だれでもその人生で一度くらい、「この人は生きている世界がちがう」と、そのオーラに頭をガツンとやられる人物に出会ったことがあるのではないかと思います。

私の場合はちょっとちがう意味での(?)「この人は生きている世界がちがう」なんですけど、とりあえずこの二十数年という年月を生きてきて、「こんな人がいるんだ……!」と鳥肌が立ってしまった経験というのがあって、今回はその話をしようと思います。

ちなみに、私が今までの人生で会った(見た)なかで、もっともオーラがハンパなかったその人物とは、唐十郎です。
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ぜんぜん意味分かんないけど夢中で観ちゃう

唐十郎
父は理研映画で監督・プロデューサーを務めた大鶴日出栄。前妻は女優の李麗仙、息子は俳優の大鶴義丹。作家としても活躍、『佐川君からの手紙』で芥川賞を受賞。俳優として自作以外の映画やテレビドラマに出演することもある。他の演出家への戯曲提供も多い。明治大学文学部演劇学科卒業。2012年4月より同大学客員教授に就任。
唐十郎 - Wikipedia

私がその“オーラがハンパない”唐十郎を見たのは2009年、唐組の公演『盲導犬』ででした。正直内容はまったくといっていいほど覚えていなくて(そもそもあらすじがよくわからなかった)、『盲導犬』っていう公演のタイトルも調べてやっと思い出したくらいなんですけど、唐十郎の身のまわりに漂っていたオーラだけは鮮明に覚えているんですよね。この世に生きている人とは思えなくて、「横尾忠則の絵のなかの人が出てきちゃった!」みたいな感じだったんですよ。舞台の上じゃなければまたちがうのかもしれませんが、とにかく公演で観る唐十郎のオーラは、圧倒的すぎて鳥肌が立つレベルでした。
唐十郎の劇世界
先日、ふと唐十郎のあの“オーラ”を思い出して、新宿花園神社に5年ぶりに唐組の公演を観に行ったんです。今回観た『桃太郎の母』には唐十郎は出て来なくてちょっと残念だったんですけど、唐組の公演の何がいいって、きっと紅テントがいいんでしょうね。私は演劇のことはさっぱりわかりませんが、あの“紅テント”っていう空間を体験するだけでも、唐組の公演に行く価値はあると思うんですよ。ネタバレになってしまうかもしれないのであまりいいませんが、紅テント公演はとにかくいつもラストがすごい。「この世にはないものを見てしまった……」と、膝の力が抜けちゃいます。
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※写真撮ったらぼけてしまった……

『桃太郎の母』も、ストーリーは何が何だかというかんじで意味がよくわからなかったんですが、それでも最後まで観させられちゃうんですよね。空間の力と役者のパワーで押し切ってしまうんです。

偶然という亀に乗るには◎唐十郎
桃太郎の母とは一体何者なのだろう。桃太郎には母がなく、母は桃でしかない。たしか、あの話は、どんぶらこと川を浮いてきた桃を、お婆さんとお爺さんが切ったらば桃太郎が出てきたのであり、お爺さんが、若い女に生ませた喩えとも、拾い子とも、爺婆の願いとも受け取れる。キリストに似た孤児の中になぜ桃を介在させなければならなかったのか、桃の考現学はいろいろあろうが、南の風を受けたどこかの女が孕んだのが、桃太郎ということになると、お婆さんとお爺さんと川は何だったのか。

私も昔話の民俗学みたいなものには興味があるので、そういうかんじのものを期待していったんですが、ヤク中患者収容所とか名探偵カンテン堂とか頭部が見つからない遺体とか、「桃太郎どこいった?」みたいな物語がぐわんぐわんと展開されていて、非常に面白かったです。唐組の公演って中毒性があるのかもしれません。

映画俳優と演劇俳優

あまりきちんとした知識はないのでテキトーな感覚で語りますが、映画やドラマの俳優と演劇の俳優ってある部分において決定的に異なると思うんです。映画やドラマの俳優は、カット割りや編集によってその魅力を増したり減じたりすることが可能で、スクリーンを通して観客にそれを伝えるわけですが、演劇の俳優はその場で、“空間”そのものを作らないといけないんですよね。いわゆる芸能人とか有名人は映画やドラマの俳優であることのほうが圧倒的に多いですが、「オーラがハンパない」のはやっぱり演劇を専門的にやっている俳優さんなのでしょう。

私は学生時代にちょこっとだけ演劇を勉強したことが一応あるのですが(自分が演じるんじゃなくて、演劇理論として)、その演劇の授業の先生が、やっぱりオーラがハンパなかったんですよね。一声発するだけで、空気をぐわんっとねじ曲げちゃうパワーを持っているんです。その場にいる50人ないし100人を、一瞬で凍り付かせることができる人というのが、この世にはいるんですよ……。

唐組の紅テント公演、花園神社ほか雑司ヶ谷鬼子母神で6月上旬までやっているようなので、この世じゃないものを見たい方はぜひ行ってみて下さい。

唐組熱狂集成 (ジョルダンブックス)

唐組熱狂集成 (ジョルダンブックス)


★★★

ちなみに、「私が今までの人生で会った(見た)なかでもっともオーラがハンパなかった人」1位はこのエントリのとおり唐十郎ですが、2位は映画監督の若松孝二です。

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「おとぎ話」の作者はだれなのか? - (チェコ好き)の日記
さよなら、若松孝二 - (チェコ好き)の日記