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人生相談はなぜ面白いのか 「悩みのるつぼ」〜上野千鶴子編〜

朝日新聞に掲載されているという、「悩みのるつぼ」。新聞読者からのお悩みに、岡田斗司夫上野千鶴子美輪明宏などの凄腕(?)回答者が答えていくという、ちょっと他ではお目にかかれない人生相談です。

そんな「悩みのるつぼ」からは、現在3人の回答が書籍化されており、その1冊が先日書いた岡田斗司夫の『オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)』でした。

人生相談はなぜ面白いのか 「悩みのるつぼ」〜岡田斗司夫編〜 - (チェコ好き)の日記

今回は、これの上野千鶴子編、『身の下相談にお答えします』の感想を書こうと思います。

ズレた会話しかできない長男  相談者:主婦 40代

まず、こちらの本のなかで、私がいちばん笑ったのがこちら。

40代の主婦です。高校3年生の長男のことで悩んでいます。長男は温厚な性格で気持ちは優しく、一応は地域の進学校に通っています。そんなに低学力なわけでもないのですが、「非常にずれた会話」しかできないのです。
例えば「フランスのファーストレディが美人だ」といった会話を家族でしていると、いきなり「一種の浮気だよね」。よくよく聞くと「ファーストレディって一夫多妻制の話だと思っていた」などと言い出します。
(中略)
高校生になっても家族ですらあきれる状態なので、学校でも友人が少なく、将来就職試験などの面接で、まともに応対できるのだろうかと心配になります。グローバルな世の中で「コミュニケーションの大切さ」が問われる時代、まともな社会人になれるのだろうかと気になって仕方ありません。良い方法はないものでしょうか。

このお悩みに対する、上野さんの回答が以下。

【回答】その柔軟な発想力、ぜひ上野ゼミへ!
わはは、こういう学生さんにぜひ、東京大学に来てもらいたいものです。このところKYが嫌われ、周囲に同調する若者ばかりが増えているなかで、このずれっぷり! しかもウィットと知性を感じさせるユニークなずれ方ですね。未来を担うのは、へんに空気を読む「コミュニケーション力」の高い若者より、あなたの息子さんのような若者ですよ。このわたしが言うのだから間違いありません(笑)。
(中略)
ギャグとオチは教養があればこそ。それにここまでいちいち発言を覚えておられるのは、それがよほど印象に残ったからでしょう。息子さん語録でもおつくりになってはいかが。

岡田斗司夫の悩み相談とちがい、このテキトーっぷり。この相談者のお母さんが新聞の掲載を見てどう思ったかまったく想像がつかないのですが、「そうなのね、安心!」というわけにはいかなかったでしょう。しかしまぁ、赤の他人からすると読み物としてはこちらのほうが面白かったりするし、高校生の息子の言動なんてこれくらい気楽に考えてて大丈夫ってことなのかもしれません。

上記の相談はまったく下ネタではないですが、上野千鶴子の『身の下相談にお答えします』はタイトルのとおり、下ネタに関する相談が多い構成となっております。60代以上の方の性のお悩みは、20代の若輩者である私には想像もつかない世界でしたが、後学のためにと思い面白く読みました。あと多いのは不倫、アイドルへの恋、セクハラ、婚活などなど、生々しいものばかり。いや、そもそも人生相談って生々しいものなんだから当たり前ですけどね。しかし岡田斗司夫編よりもそのエグさが上なので、より強いインパクトが欲しい方はこちらのほうを読むことをおススメします。

人生相談は歴史的資料?

読売新聞の「人生案内」というお悩み回答コラムは、1914年から1世紀近く続いている老舗だといいます。上野千鶴子さんも後書きに書いているように、100年も続いていると相談内容や回答者の人選、回答のしかたそのものが歴史的資料になるといいます。1914年というと第一次世界大戦の頃なので、確かに当時の人々がどんなことで悩んでいたのか気になりますね(一部書籍化されているものもあるみたいですが)。が、やはりいちばん多い悩みは恋愛についてで、その他も家族、対人関係、進路などの悩みが続くもよう*1。江戸時代のお悩み相談とか、鎌倉時代のお悩み相談とかが資料として残っていたら面白いのになぁと思います*2

上野千鶴子”の魅力

家庭内のドロドロした出来事や性欲、不倫に関することなど、単語を見ただけでお腹いっぱいになってしまうこちらの『身の下相談にお答えします』なんですが、読後感は意外にもすっきりさっぱりしています。それはもちろん、回答者が上野千鶴子だからでしょう。岡田さん編では「悩みを問題に変換する」的なクールかつ実用的な方法で悩みを解決していきましたが、こちらはとりあえず、上野千鶴子にがははと笑い飛ばしてもらう。そういうまったく実用的ではない、しかし効果てきめんな方法で解決していきます。今何か悩みを抱えている方は、「岡田斗司夫だったらどう答えるだろう」「上野千鶴子だったらどう答えるだろう」って考えていくと、何か糸口が見つかるかもしれないですよ。


岡田さん編では、相談内容の前後に「読者のみなさんも回答を考えてみて下さいね」的な一言が入ります。上野さんのこちらの本ではそういう一言は入りませんが、人生相談はするのも楽しい、他人の回答を読むのも楽しい、自分で回答を考えるのも楽しいという、3方面からの面白がり方ができます。私は今回、上野さんや岡田さんの上をいくような回答はまったく思いつかなかったので読むのに徹してしまった感があるのですが、自信がある方はぜひ、ああでもないこうでもないと自分なりの回答を考えてみてほしいと思います。

して楽しい、のって楽しい、聞いて楽しい人生相談。今日も世界は平和です。

車谷長吉の人生相談 人生の救い (朝日文庫)

車谷長吉の人生相談 人生の救い (朝日文庫)

※こちらも「悩みのるつぼ」の書籍化。そのうち読もうかなと思っています。

*1:http://a.wikipedia.org/wiki/人生案内

*2:お悩み相談ではないですが、ウェブ上の“ブログ”もまたいつか、歴史的資料になる日が来るでしょう。ブログは(比喩的な意味でなく、物理的な意味で)燃えないし、腐ったりしないし、保存には最適ですね。