チェコ好きの日記

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金持ちになる方法はよくわからないけど、金持ちになれたら私は現代アートコレクターになりたいです

堀江貴文さんの『金持ちになる方法はあるけれど、金持ちになって君はどうするの?』という本をちょっとした出来心で読んでみました。メルマガを書籍化したものらしくて、本の中身は堀江さんのお金儲けのアイディアや、読者の質問に答えるQ&A、堀江さんと親しい人が書いたコラムなどがつまっていました。

こちらの本で印象的だったのは、堀江さんが「自分は金の亡者みたいに世間ではいわれているけれど、実はお金のことは全然考えてない。お金があるからお金のことは考えなくてすむ。世間の人のほうがよっぽどお金について考えてる」みたいなことをいっていた部分です。確かに、お金をもっている人よりももっていない人のほうがお金のことを考えているという話は、実感としてわかる話です。

私は暇なので、たまに「何かの間違いで幸運が舞いこんで、月100万円くらいの不労所得が死ぬまで得られることになったらどうする? どうする?」とか妄想しちゃうんですが、もしそうなったらやってみたいことが1つあって、それが「現代アートのコレクターになること」。国内外のギャラリーをめぐったり、スイスのバーゼルに行ってみたり、ヴェネツィアビエンナーレに行ってみたりして、せっせせっせと最新アートをコレクションして、我が家にやってくるお客様に見せびらかしたいです。

残念ながらそうなることはまずないと自分でもあきらめていますが、それでも、私ですらなじみの薄い「アートを買う」という行為は、もっと身近なものになってもいいんじゃないかなーと思っているんですね。お客様に見せびらかすようなコレクションはできなくても、生涯に20〜30万円くらいの作品を1つか2つ買うくらいなら、庶民でもバチはあたらないんじゃないかと。とはいえ、値段は同じでもブランド物のバッグやなんかとちがって、作品を預かることはいわば作者の魂の一部を預かることであり、保管方法とかしっかり考えないといけないので、私もなかなか手が出ないんですが。

今回は、そんな妄想から出発して、「アートを買う」ってことについて少しいろいろ書いてみようと思います。

「買う」のと「観る」のでは何がちがうのか

私も含め多くの人にとって、アートとは「観る」ものであって、すっ転んでも「買う」ものではないと思うんですよね。でも、世の中にはアートをビジネスとして考えている人がもちろんいるわけで、サザビーズやクリスティーズのオークションでは、何千万円、何億円という単位で作品が売買されています。

富裕層の世界をのぞいてみよう|サザビーズとクリスティーズ - (チェコ好き)の日記

サザビーズ・ジャパンの社長さんが書いた『サザビーズ 「豊かさ」を「幸せ」に変えるアートな仕事術』という本があるんですけど、これを読むと、「アートを買う」っていうことがどういうことなのか、何となくわかります。まぁサザビーズやクリスティーズで高額でやり取りされている作品は、庶民には手が届かないわけですけど、「買う」のと「観る」のではやっぱり同じアートでも全然ちがうんだな、と私は上記の本を読んで思ったんです。

たとえば、私はオディロン・ルドンとかギュスターブ・モローとか、19世紀の退廃的でくら〜い雰囲気の絵画が大好きなんですけど、これらを「部屋に飾りたいか?」と聞かれたらちょっと困ります。画集としては持っておきたいけど、壁にかけて飾るのはどうなんだろう。今の私の部屋に下の絵を飾ったら間違いなく(調和がとれない的な意味で)おかしなことになります。どうせルドンとかモローを飾るんだったら、ヨーロッパの没落貴族みたいなインテリアで部屋を統一したいじゃないですか。
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オディロン・ルドン 『夢のなかで 悲しき上昇』1879年

無印良品のお手頃家具であふれている庶民的な私の部屋に飾るんだったら、やっぱりポップなウォーホルとか、あとは案外ゲルハルト・リヒターなんかもいけるかもしれません。時代でいうと、やっぱり20世紀以降の作品じゃないと、何か変です。
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ゲルハルト・リヒター 『オランジェリー』1982年

「観る」って考え方でアートをとらえている人は少なくないと思うんですけど、「買う」ってなると話はまた別になります。ちょっとちがう観点から作品を見直してみると、案外面白いもんです。

どうやって、どこで作品を買うのか

私の大学院時代の恩師は、だれだったかの写真の作品を、10万円だったか20万円だったかで購入したといっていました(すごく曖昧)。その話を聞いたとき、私は「アートって買えるのか!」とびっくりしたんです。芸術作品を買うなんて、石油王とかじゃないと無理だと思っていたんですね。

現代アートを「買う」っておそらく世の大半の人は体験せずに一生を終えるわけで、情報もあまりなかったりするんですが、そんななかでおそらくいちばん身近で、かつわかりやすく「アートの購入」を解説してくれているのが、宮津大輔さんの『現代アートを買おう!』という本です。

現代アートを買おう! (集英社新書)

現代アートを買おう! (集英社新書)

宮津さんは都内の企業に勤務するサラリーマンなんですが、日本を代表する現代アートのコレクターとして有名な方です。本の冒頭では、自分の最初のコレクションとして、あの草間彌生のA4サイズのドローイングを50万円で購入したエピソードが語られています。もう一度いいますが、草間彌生、50万円です*1。決して気軽に買える値段ではありませんが、それでも、生涯でこの1点だけを、と考えれば不可能な値段ではないと思いませんか?

問題は購入方法ですけれど、これはやっぱり地道にギャラリー巡りをするのがいいみたいです。東京だと、清澄白河あたりに現代アートのギャラリーがそろっていますね。気になっている作家がいたら事前にアポイントメントをとると、スムーズなのだとか。

購入の際は、「自分を信じ、自分自身に決して嘘をつかない」ことのみ考えていればいい、と宮津さんはいいます。「うちの壁のサイズに合うのは……」とか、「将来の値上がりを考えたらドローイングよりペインティングだな」とか、そういうことは考えるなと。

サザビーズ・ジャパンの社長さんの本にも書いてあったのですが、

“Can you live with it?”

この問いにYESと答えられる作品だけを買え、というのはギャラリストもコレクターも共通の見解のようです。

私は好きな作家も絵画もたくさんあるけれど、その作品に生涯をかけられるか、一緒に暮らせるか、という質問に「YES」と答えられる作品には、まだ出会っていないかもしれないとも思います。

もし人生で、「どうしても手に入れたい、どうしても絶対に手に入れたい」と思えるような作品に出会えたら、人はそれをバカな買い物と笑うかもしれないけれど、私はとても幸福なことだなぁと思います。

まとめ

というわけで、みなさん現代アートを買いましょう、と話を締めくくりたいのですが、「まずお前が買え」というかんじだと思うので、この夏は(買うかどうかはわからないけど)ギャラリー巡り、してみる予定です。

金持ちになる方法はわからないけど、運命の作品に出会えたら、私は幸せです。

*1:1994年の話のようなので、今の値段はわかりません。