4月中、3つの展覧会に行ってきました。
国立西洋美術館でやっている、ラファエロ展。国立西洋美術館
東京都美術館でやっている、エル・グレコ展。東京都美術館
(こちらは、現在は終了しています)
そして、国立近代美術館でやっている、フランシス・ベーコン展。
フランシス・ベーコン展 Francis Bacon|東京国立近代美術館
面白そうな美術展があると、クセでつい、のこのこ出かけてしまう私。
しかし、いつも展覧会を見終わったあとにふと思うのは、「これって、美術に興味がなかったら絶対つまんないよなー」ということだったりします。
だって、有名な絵の前には人だかりができていてゆっくり見られないし、その絵を描いた作家がどういう人で、どういった時代状況のなかでそれを描き、その絵画がどういった評価をされてきたのかも、よくわかりません。(一応展示作品の周辺に書いてあるけれど、読むのめんどう)
美術館側もいろいろ工夫しているのはわかるのだけれど、いまいち、観客に届いていない気がしてしまいます。
そこで、私は考えました。
美術展の楽しみ方がいまいちよくわからない方のための、
「大人の美術館のまわりかた」。
「大人の」、とつけたのは、美術をファッションとして楽しむのではなく、教養として楽しむことができるように、という意味を込めてです。
教養として……とかいうと堅苦しく聞こえますが、きちんとした目的や知識を持って見たほうが、美術展は何倍も楽しいんですよ。実際。
美術館側のいろいろな試みを待っているだけでは、日が暮れてしまいます。観客側も、どうせ行くなら自分のほうからいろいろな工夫をして、展覧会を、120%しっかりモトがとれるよう、大いに楽しみましょう!
以下の3つの点を意識すれば、美術展が見違えるように楽しくなる……かも!?
★★★
1・ミュージアムショップをのぞこう!
ラファエロなどの有名な画家の作品が日本の美術館にやってくると、代表的な作品の前ではたいてい、人だかりができています。
せっかく絵を見に行ったのに、人ごみに押されているうちに終わってしまった……なんて経験がある人も、きっといるはず。
しかし、美術展というのは、絵を見るだけにあらず!
どの美術館にも、必ずあるのが、“ミュージアムショップ”です。
そう、展覧会のカタログや、ちょっと変わった雑貨が売られている、あの場所です。
人がたっくさんいる美術展でも、ミュージアムショップには、なぜかあまり人がいません。
さて、このミュージアムショップですが、ただのお土産売り場だと思ってはいけません。「大人の美術館めぐり」に必要な、教養を身に付けるためのグッズが、実はザクザクあるのです。(私は展覧会そのものよりも、この「ミュージアムショップめぐり」のほうに時間がかかるくらいです。)
「教養を身に付けるためのグッズ」とは何かというと、それはずばり、関連書籍。
ラファエロをもっと理解したいと思ったらラファエロについての書籍を、エル・グレコってよくわかんないなと思ったらエル・グレコが生きた時代について書かれている世界史の本を、あるいは、フランシス・ベーコンを特集として扱った雑誌を。
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まぁ、要は何でもいいのですが、絵を見るのと同じくらいじっくりと関連書籍のコーナーをまわってみて、絵を見るだけではわからなかった背景知識を身に付けるのです。ミュージアムショップには、その展覧会に関係した作家、時代、コンセプトの書籍や雑誌が所狭しとおいてあります。
もちろん、見に行った展覧会とまったく関係のない書籍を眺めてみても構いません。美術史の本もいろいろあり、すごく充実しているので、近くの本屋さんに行くより探しやすいですよ。
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2・「いつかホンモノを見に行く」ための予習、と考えよう!
作家の村上春樹はとある本のなかで、「うまい酒は旅をしない」といっていましたが、これは、何という名言でしょう。
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インターネットが発達した現代、手に入れようと思えば、それが本だろうがお酒だろうが雑貨だろうが、世界のどの場所のものでも、家にいながらゲットすることができます。
美術作品だって、東京にいれば、世界中からありとあらゆる絵画が集まります。ラファエロ、レオナルド・ダ・ヴィンチといった巨匠の作品から、オディロン・ルドンやアルチンボルドのような、ちょっとマニアックな作品まで。
(気持ち悪いっていわないで!)
でも実は、日本で待っているだけでは、アートの真髄は味わえないのです。
芸術作品を制作した画家は、様々なものを背負っています。
その画家が生まれた国、育った環境、時代、食べたモノ、見てきたモノ、周辺の他の芸術家たちの影響。
ローマが生んだ天才画家の1人に、カラヴァッジョという男がいますが、
この人知ってる? 劇的、天才、強烈、破天荒、波瀾万丈の画家 カラヴァッジョ! - (チェコ好き)の日記
彼の作品は、人々の熱気が強烈な日射しに焼かれるローマか、南イタリアでないと、その絵画が放つ卑しいオーラも、そのなかに潜む崇高さも、本当には味わうことはできません。
おいしいお酒を味わおうと思ったら、芸術の真なるところを理解しようと思ったら、
向こうがこちらに来るのを待っているわけにはいかないのです。私たちのほうが、でかけていかなければ。
日本の美術館にやってきた名画というのは、いわば「水族館で見るサンゴ」のようなもの。本物の珊瑚礁を見ようと思ったら、沖縄かどこかの海まで、潜りに行かないといけないでしょう?
なので、日本にやってくる数々の美術展を前にしたとき、そこで「終わり」にしてしまうのではなく、
「いつかこの絵を、本場まで見に行こう」と、絵の前で誓ってみてください。
もちろん、すべての絵を本場まで見に行くことは、難しいと思います。でも、「これは!」と感じた絵に出会ったときは、そのせっかくの出会いを、日本の美術館内で終えてしまうのはもったいない。十分な下調べをした上で、ローマへ、サンクトぺテルブルクへ、ロンドンへ、パリへ、ニューヨークへ、ホンモノを追いかけに行きましょう。
厳密にいうと、例えばサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館なんかは、18世紀くらいに諸外国から買い取った作品のコレクションが中心なので、そこへ行っても「作品が生まれた場所」で見ることにはならないのですが、日本の美術館の「借りもの美術展」で見るよりは、やっぱりすいぶんいいもんだと思います。
3・作品を、買ってみよう!
1枚何億円もする絵画を、庶民が買えるわけないじゃないか……と、お思いですか?
確かに、ピカソやフランシス・ベーコンの作品を私たちが個人的に手に入れることは、逆立ちしても無理です。地球がひっくり返っても無理です……。
富裕層の世界をのぞいてみよう|サザビーズとクリスティーズ - (チェコ好き)の日記
しかし、この「アートを買う」という市場が、最近少しずつ賑わい始めているのも、事実なのです。
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社会科の教科書に載っているようないわゆる「名画」を、私たちが手に入れることは永遠にないでしょうが、まだ評価の定まっていない現代アートなら、10万円~100万円くらいで、手に入るものもあるみたいです。
「アートを買う」という、この分野については、私もまだまだ勉強不足で、人に何かを語れるほどの知識も経験もないのですが、
「この作品と一緒に“生活”をするようになったら、どんな気分だろうな」
なんて想像しながら、美術展を見てみるのも悪くないでしょう。
どんなに美しいと感じる作品でも、いざ一緒に暮らすとなると、派手すぎて落ち着かない……なんてこともあるでしょうし、逆に、美術館では地味でつまらない作品に見えても、自宅に飾ってみると、インテリアとマッチして、すがすがしく味わいがある……なんてこともあるかもしれません。何だか、男女関係のような話ですね。
ま、いずれにせよ、想像するだけならお金はかかりません。タダです。
★★★
もっともっと多くの人が、「アートを楽しむ」ことはもちろん、
人生の伴侶を見つけるように、「自分だけの名画」に出会えたら、こんなに素敵なことはありません。
レッツエンジョイ、美術館!
※26歳からの、という区分に特に意味はありません。私が26歳なので、そうしました。笑