今回は余計な話題をはさまずに、普通にストレートに旅行記を書くことにします。
ちなみに、前回の話がどこまでで、今回の話がどこからかというと、前回までで一応スペイン編は終了しました。今回は、ジブラルタル海峡(下の地図でスペインからモロッコに矢印がのびている小さいスキマ)を船で渡った先にあるタンジェと、シャウエンの話をします。
(※今回の旅はこういうルート)
タンジェとシャウエンの青いまち
スペインのアルヘシラスから渡った先にある、モロッコのタンジェという街。北アフリカの玄関となる、国際都市です。その立地のせいか少々危うい魅力に溢れ、ちょっと前まで、密輸業者やスパイが街をウロウロしていたとかしていなかったとかっていう話もあります。そして、ポール・ボウルズやマチス、ドラクロワなど、たくさんの作家や画家を惹きつけてきた街でもありました。
私の大好きなボウルズの『シェルタリング・スカイ』はこのタンジェから始まる物語で、宿泊していたホステルのすぐ近くに、映画のロケで使われたという「オテル・コンチネンタル」がありました。ぶっちゃけあんまり面影はなくピンとこなかったのですが、鮮やかな色ガラスは「あー、確かにこんなのあったかもー。」と思いました。
タンジェには大雨のなか夜に到着して1泊し、翌朝CTMというバスに乗って3〜4時間ほどでシャウエンへ。シャウエンは「青の街」として有名で、観光客に大人気です。街がなぜ青いのかは諸説あって、日除けのためとか、元々ここに住んでいたユダヤ人の色だったとか、このあたりの石灰石が元々ちょっと青いとかいろいろいわれているそうですが、はっきりとしたことはわからないらしいです。とりあえず、なんか青くしているんだそうです。
このあたりは街の入り口付近。まだそんなに青くないです。
ここは街の中央にある広場らへん。だんだん青くなってまいりました。
街中に入って行く。青い!!
青い!!!
青い!!!!
本当に青い!!!!
というわけで、シャウエンは青かったです。
大麻とアルコール
ところで、青く美しいシャウエンですが、ここは実は大麻で有名な街でもあります。モロッコでも大麻は一応違法なのですが、にも関わらずシャウエンはなぜか大麻で有名です。
大麻と同じく人々に親しまれている嗜好品といえば、ここ日本でもお馴染みのアルコール。作家のポール・ボウルズはエッセイのなかで、大麻とアルコールについてこんなふうに書いている。面白いです。
アルコールは抑制力を弱め、人格をぼかしてしまう。アルコールを飲む人は一時的にせよ、なにかに参加しているという気持ちになる。キフは抑制力を破壊したりはしない。逆にそれを強化し、人を孤立した自己の奥深くに押しやり、物思いに沈んだ怠惰な人間にする。ある社会の文化と、その構成員が解放感や陶酔状態を得るために使う手段とのあいだには、密接な関係があると推測される。ユダヤ教とキリスト教の場合は、手段は常にアルコールだった。イスラム教ではハシシュである。アルコールの効果は動的だが、ハシシュは静的だ。もしも国家がヨーロッパ化を望んでいるとしたら──それは誤った願いだが──まずはハシシュをやめなくてはならない。
人々が息抜きに嗜好品として何を楽しむかによって、社会のあり方がヨーロッパ的か否かというのが変わってくるということですね。これはまずありえないことですが、もし日本でアルコールが禁止され、代わりに大麻が合法になったらどんな社会変化が訪れるだろうって想像してみるとけっこう楽しいかも。華金にみんなで居酒屋に出かけるんじゃなく、コーヒーショップで大麻を吸うようになったらどんなかんじになるでしょう。とりあえず、ダウナーな大麻効果によってパリピが一掃されそうな気がするので、個人的には私はそっちの社会のほうが暮らしやすいかもしれません。みんなが自分のなかに深く入り込み孤立し、物思いに沈む金曜日の夜。いいなあ。時空の歪みによってそっちのパラレルワールドに引越ししたいです。
※シャウエンは山なので、冬に行くと寒いです。夏はいい避暑地かも
冗談はいいとして、旅行してみてわかりましたが、モロッコはとても魅力的なところです。「イタリアとは生きる悦びであり、モロッコとは謎と驚異である」といった人がいましたが、いいえて妙だと思います。タンジェはわけがわからなくて怖いし、シャウエンは青いけどなんでかわからないし、この後行ったマラケシュは悪夢のような場所でした。全部、めっちゃ褒めてます。モロッコは、生きているうちにもう一度行きたいなあと思っています。
次回は、普通に書くか紛れ込ますか未定ですが、シャウエンの後に訪れたマラケシュという街について書きます。女性のみなさんのなかにはローズ・ド・マラケシュっていうメーカーをご存知の方がいると思いますが、そういえば私が初めてマラケシュという地名をはっきりと認識したのってこのメーカーのおかげだった気がする。
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