チェコ好きの日記

もしかしたら木曜日の22時に更新されるかもしれないブログ

AMの連載でとり上げた本のまとめ(No.51〜60)おすすめ優先度付き

AMの連載で公開したものが溜まってきたので、まとめです。時期としては2020年7月〜11月に書いたやつでした。

以下は過去のぶん。
aniram-czech.hatenablog.com

第51回 「なんとしてでもお金を手に入れて欲しい」と100年前にヴァージニア・ウルフは熱っぽく語った

おすすめ優先度 ★★★★☆

生々しい話になるけれど、実は私が結婚願望を完全に手放せたのは、「とりあえず何があっても自分のスキルと人脈で一生食うには困らない(はず)」と自分の経済力をほぼほぼ確信できた2018年頃だった。まあ経済力といってもたいしたことはない、私はたまの海外旅行以外はほとんどお金を使わない人間なので……。「私はお金のために夫と結婚した」なんて堂々と言う人はなかなかいないだろうし、それがいちばんの理由なんかではないことが大半だろうけど、では今の世で「もし離婚したとしても経済的にはまったく困らない」と言える女性がどれくらいいるだろうか? とはたまに考える。結婚とお金、火を吹きそうなテーマなのであまり言及したくないけど、もう少し突っ込んでみたいところではある。

第52回 外に出られないので「食」と「住」に凝る!さらに歴史も楽しめるおすすめ本5冊

おすすめ優先度 ★★★☆☆

他、
『流れがわかる! デンマーク家具のデザイン史(多田羅景太・誠文堂新光社)』
『世界史を大きく動かした植物(稲垣栄洋・PHP研究所)』
『くさいはうまい(小泉武夫角川ソフィア文庫)』
『ひと皿の記憶(四方田犬彦ちくま文庫)』

これはメインで紹介した澁澤龍彦の本以外に、北欧家具の本、植物の本、発酵の本、食べ物の本をまとめて取り上げた回。まだまだ続くコロナ禍のなかで「衣」の重要度は私の中で落ちる一方だけど、相変わらず「食」と「住」は関心を持ち続けている。でも「食」は、料理が好きじゃないので、自分の手をどうこう動かすよりは「いい醤油を使う」「いい味噌を使う」「いい味醂を使う」などの発酵テクノロジーに完全に依存している。

第53回 他者の目なんて気にする必要ないけれど、他者の目を通すとちょっとだけ新鮮。ミランダ・ジュライ『あなたを選んでくれるもの』

おすすめ優先度 ★★★☆☆

AMのほうには書かなかったけど、『あなたを選んでくれるもの』で一個だけどうしても受け入れられなかった記述があって、このミランダ・ジュライという人は子供を持つことにこだわりを持ちすぎているんだよな……もちろん他人にそれを押し付けるのではなく個人でこだわるぶんには第三者は文句を言えないんだけど、ミランダ・ジュライは映画監督であり作家なのだから、ラストでどうにかそれを昇華して欲しかったなあと、個人的には思いました。そこがいいっていう人もいるんだろうけどね。

第54回 常に体調が悪い、やる気はない、他人に邪魔をされて頭はぼんやり…クリエイティブな女性著名人たちもみんな同じだった

おすすめ優先度 ★★★★★

これはAMですごくたくさん読んでもらえたらしい回。体調が良くてやる気が漲っている日のほうが珍しいのはまあみんなそうだと思うので、なんとかしたいですよね。村上春樹の文章は気に入らなくても、村上春樹の執筆スタイル(早起き+ジョギング+ボウルいっぱいのサラダを食べる+たっぷり執筆+夜更かしせずに早く寝るetc)は「すげえ」と認めざるを得ないって人はけっこういるのではないか。ちなみに私は湿度が高いとすべてのやる気を失う人間なので、今年、除湿機を買って本当に良かったな〜と思っている。

第55回 「こんなこと思ったらダメなんじゃ」と本音をごまかす。フェルナンド・ペソアの詩を読もう

おすすめ優先度 ★★★★☆

ポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアは、今だったらTwitterで裏垢を作りまくって「なりきりポエム」を書きまくっていたんじゃないか……なんて話があるけど、「なりきりポエム」ってなかなか大変なんだよね。自分以外の誰かの生活や心情を想像するってけっこう難しいのですごい。一昔前に流行っていた「キラキラアカウント」の中の人も、イケてるレストランやらナイトプールやらを調べたり、またはお値段が高そうに見えるよう工夫して写真を撮ったり、真面目にやったらあれは大変ですよ。でも、そういう「自分ではない誰か」だからこそ言える本音もあるんだろうな。ちなみに今の私には同人オタク用の裏垢があり正直「チェコ好き」よりアクティブにツイートしているけど、これは「なりきり」じゃないからね〜。

第56回 3人の子供を立派に育てたマダムの本当の姿が暴かれる。「守るべき人」を持つ人に贈るホラー小説

おすすめ優先度 ★★★★★

これもAMでたくさん読んでもらえたらしい回。けっこう意地悪な話だけど、この小説は私も大好きだ。

嬉しかったのは、子育てがほぼほぼ終了したアラフィフくらいの方から「わかる!」とか「読んでみたい!」などの感想をいただいたこと。自分自身の属性ゆえ私が書く内容はどうしてもアラサーからアラフォーの独身女性向けの内容になってしまいがちだけど、この年になってくると独身の女性もなかなかいないので、読んでくれる層をもっと広げられたらいいな〜と常に思っているのだ。特定の属性の人に刺さるものではなくて、性別も年齢も属性も超えて届く、普遍性のあるものを今まで以上に書けるようになりたいな。

第57回 2020年、パッとしなかった…閉塞感に苛まれたときに読みたい『蜘蛛女のキス』

おすすめ優先度 ★★★★☆

『蜘蛛女のキス』はほぼ全編がセリフで書かれている(地の文がない)変わった小説。セリフだけな上、舞台が監獄の中からほとんど移らないし、登場人物2人の会話だけで進んでいく。だけど物語はとてもダイナミックで、これだけ制約だらけなのによくこんな物語が紡げるなと思う。こじつけかもしれないけど、今の生活から広がりを感じられない人、窮屈な思いをしている人が読んだら救われるのではないか(私は救われた)。

第58回 元カノのSNSをチェックして嫉妬する自分が嫌…でも巨匠・ゴダールの妻も同じだった

おすすめ優先度 ★★★★☆

アンナ・カリーナアンヌ・ヴィアゼムスキー、アンヌ=マリー・ミエヴィル、ゴダールの奥さんはいつだって誰だってなんか鮮烈である。『女は女である』のアンナ・カリーナは眩しすぎるけど、その後妻となったアンヌ・ヴィアゼムスキーははたしてどんな日々をゴダールと過ごしたのか、それが彼女のこの手記でわかる。由緒正しい貴族のお嬢様が世紀の映画監督と恋愛したらどんなロマンチックな物語になるのかと思いきや、この手記に書かれているのは陳腐でありふれた物語だったから、余計にぐっときてしまった。個人的には『中国女』のヴィアゼムスキーがすごく好き。

第59回 「めちゃくちゃに犯されたい」淫らな欲望を“ポリコレ違反”で切り捨てていいのか

おすすめ優先度 ★★★☆☆

この本は、女子学生向けに「みなさんわかりましたか? 男はこうやって誘うんですよ」って感じで書かれているので、ひと昔前ならユーモアとして受け止められただろうけど、今の世だと「何が『みなさんわかりましたか?』だコラ」と各所から怒られそうである。私もそういう書きっぷりはあまり好きじゃないが、とはいえ内容は面白い。別に無理やり実生活に生かさなくても、「世の中にはいろいろな変態がいていろいろな性癖を持っていていろいろな文学が生まれているんだな〜」となるだけでいいので、読んでみてほしい。

第60回 なぜ「婚姻届」を提出するのか?「なんかそういうことになっている」を考えさせた出来事

おすすめ優先度 ★★★★☆

多和田葉子さんのこの本、去年金沢21世紀博物館に行って、例のプールを見るために行列に並びながら読んだな……捉えどころがなく、ふわふわしている小説。しかし、ふわふわしているのに重量がある。私たちは「これ」が普通だと思っているけど、普通と異常は簡単にひっくり返るし、実は境界線は曖昧だということを教えてくれる。

最後にわたしの本も宣伝

出版してから実はもう2年が経ってしまいました。コロナ的な意味で世の中の状況はこの本を出した頃と比べると様変わりしてしまったし、私自身もいろいろと考えていることや実践していることがあるので、そろそろ「本のまとめ」以外のブログを書きたいですね。