今回もまたAMの連載で紹介した記事がまた溜まってきたので、ここでまとめておきます。過去分は以下。
第41回 動物とのセックスは「異常」だろうか――「私」にとっての対等、合意の意味について
おすすめ優先度 ★★★★★
2020年、動物性愛や小児性愛などについて考えることが多かった。肯定するにも否定するにもかなりナイーブなテーマなので、私が軽はずみに何か書いてはいけないと思っている。でも本当に、いろいろ考えていることはある。この本はAMでの紹介においては、動物性愛の是非というよりは「"対等な関係""パートナーシップ”って簡単にいうけど、それってつまり何よ?」という文脈で書いた。人間の男女、女同士、男同士でも、「対等な関係」ってすごく難しいと思う。
第42回 女性が支配する世界はきっと平和……な、わけがない。男女逆転小説で考える、「力ある者」のふるまい方
- 作者:ナオミ・オルダーマン
- 発売日: 2018/11/23
- メディア: Kindle版
おすすめ優先度 ★★★★☆
マーガレット・アトウッド『侍女の物語』に続いて読んだ、フェミニズムのSF。ただし、フェミニズムのSFってフェミニズムとして読むととても示唆的で面白いんだけど、SFやエンタメとして読むとちょっと設定が詰め切れてないような印象を受ける作品もある気がする。アトウッドは新作『誓願』が出たそうなので、これもまあ一応読みたいリストには入っている。
第43回 「誰かが悪い」と思えば、楽だけど…原因がない「悲劇」の向き合い方
- 作者:寂聴, 瀬戸内
- 発売日: 1966/11/14
- メディア: 文庫
おすすめ優先度 ★★★☆☆
この回で扱ったのは瀬戸内寂聴。『夏の終り』は、妻に別宅の妾がいることをオープンにしている男とその妾の主人公の話。ただ、主人公は主人公で他に男がいたりするのでややこしい。おそらく人によっては主人公がとても身勝手に思えたりするのだろうけど、私はこの主人公をそんなに嫌いになれなくて、「ま、そういうこともある」と思って読みました。
第44回 「あいつ、もう食ったよ」は、最愛のパートナーにこそ使って欲しい! 性と食を考える『性食考』
おすすめ優先度 ★★★☆☆
世界のさまざまな民話・神話から、「性」と「食」について考えている本『性食考』を扱った回。「結婚」というとアラサー前後の妙齢の男女を思い浮かべる人が多いと思うけど、『聖なるズー』で扱ったように動物を生涯のパートナーとしたい人だっているだろうし、それこそ人類は太古の昔から異類婚姻譚というかたちで、人間以外の生き物とセックスしたり子供を作ったりする物語を紡いできたわけで。私は同性婚の法制化にはもちろん賛成しているんだけど、恋愛や性愛の関係にないノンケの男性同士や女性同士が家族を持つために友情結婚するのもアリだと思っているし、もっといえばそれこそ動物を正式なパートナーとすることだって選択肢としてあってもいいのかもしれない。あとは、「遺伝子的に3人の親を持つ子供」も技術的にはもう可能らしいので、それなら父2人母1人子が3人の6人家族とかだっていいよなあ。「恋愛」「結婚」「家族」「共同体」について、もっと自由に考えていきたいと思う私です。
第45回 「粋」なファッションは、姿勢にも影響する。自由に買い物できる日まで『着せる女』を読もう
おすすめ優先度 ★★★☆☆
『着せる女』は著者の内澤旬子さんが作家や編集者の男性たちにスーツを選ぶというエッセイ。緊急事態宣言が出ており生活必需品以外のものを買いに出かけることができない時期に読んだので、バーニーズニューヨークで一流ブランドのスーツを試着する描写の楽しそうなことこの上なかった。そして女性のスーツのバリエーションのなさ、「PTAっぽくなる」というお悩みもまさに。50代くらいのバリキャリの女性が着る仕事着ももう少し種類がほしいよなー。
第46回 お金がなくてもひとりでも、哲学と美意識は忘れない。森茉莉に学ぶ、独身女性の楽しい生き方
おすすめ優先度 ★★★★★
今回紹介する中ではいちばん読まれたらしい回。独身ひとり暮らしで孤独死を遂げた森茉莉だけど、私は森茉莉の最期をそんなに悲惨だとは思っていなくて、「いいんじゃない?」って感じ。森茉莉は晩年「ひとり暮らしは嫌ね」って言ってたらしいけど、まあ老人になるとみんな心細くて弱音は多かれ少なかれ言うだろうしな。
第47回 男女の区別がない世界で愛は生まれるのか?ステイホーム中に現実逃避できる古典SF『闇の左手』
- 作者:アーシュラ・K・ル・グィン
- 発売日: 1978/09/01
- メディア: 文庫
おすすめ優先度 ★★★★☆
時期的に、この頃から明確に「コロナ」を意識して書くようになったかも。『闇の左手』もアトウッドやナオミ・オルダーマンのようにフェミニズムSFの範疇に入る作品だと思うんだけど、なんかやっぱり設定の詰めが甘い気がするんだよな!? でもそれを言い出したら『TENET』とかも絶対どこかに矛盾があると私は疑っているので、まあ面白いからいいのかもしれない。
第48回 自分の〈被害〉と同時に〈加害〉についても語られる韓国文学『わたしに無害なひと』
- 作者:チェ・ウニョン
- 発売日: 2020/04/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
おすすめ優先度 ★★★★☆
最近アツイと聞く韓国文学。「STUDIO VOICE vol.415」も韓国文学の特集が面白かったので、さらに守備範囲を広げたい人にはおすすめ。この『わたしに無害なひと』は、自分が「虐げられている人」であると同時に「虐げている人」でもあるという視点が『82年生まれ、キム・ジヨン』などとはまた違って新鮮だったように思う。自分の被害者性を訴えることと同時に、加害性について自覚するのも大切だよなと思う昨今です。
第49回 自分は何者なのか? パラパラ読める『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』で己の物語を見つめ直す
おすすめ優先度 ★★★★☆
なんだか社会が不安定だと感じるとき、一般の方々の体験した「ちょっとヘンな話」を集めることで、日常を取り戻す。それ自体は私はとても「わかる」と思うんだけど、それを「"ナショナル"・ストーリー・プロジェクト」と名付けるのはいささかアメリカ的という感じがしないでもない。という、日本とアメリカの違いをひしひしと感じつつも、ドラマチックな出来事よりもこういう「ちょっとヘンな話」のほうに本質が宿る気はしますね、個人的に。
第50回 手をかけた料理が絶対?テキトー弁当で育ったわたしたち『ヴィオラ母さん/ヤマザキマリ』
おすすめ優先度 ★★★★☆
ヤマザキマリさんのエッセイが好きで私はよく読んでいるんだけど、ヤマザキさんは典型的なマッチョ思考なので合わない人は合わないかもしれない……そしてそのマッチョ思考の出所は、ヴィオラ奏者のシングルマザーであったヤマザキさんのお母さんなのだな、とわかるのがこちらの本。コラムの冒頭にブエノスアイレスで見たキッズたちのお弁当のことを書いたのですが、こういうのを見るためにも早く海外旅行に行けるようになるといいなあ。
最後にわたしの本も宣伝
寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか 女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド
- 作者:チェコ好き(和田 真里奈)
- 発売日: 2019/09/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
発売してからもう1年以上が経ちました。正直あっという間すぎて「1年経った」という実感がぜんぜんわかないのだけど、これからもAMのコラムやnote(もちろんブログも)更新していくつもりなので、よろしくお願いします。