チェコ好きの日記

もしかしたら木曜日の22時に更新されるかもしれないブログ

AMの連載でとり上げた本のまとめ(No.31〜40)おすすめ優先度付き

AMの連載で紹介した記事がまた溜まってきたので、ここでまとめておきます。過去分は以下。

aniram-czech.hatenablog.com

第31回 SNSの「幸せそう」な雰囲気ではなく、自分の内側にある感覚を大切にする

静かに、ねぇ、静かに

静かに、ねぇ、静かに

おすすめ優先度 ★★★☆☆

タイトルになっている短編小説はいわゆる「若者の承認欲求」がテーマで、昨今はそれ自体は珍しいものではない。珍しいものではないのに、書かれるとやっぱり突き刺さるような痛みを感じてしまう。不穏な前半から後半にかけてのジェットコースター感がすごい小説だし、読みやすいので、気になる人は無料お試し版もあるので読んでみてほしい。

第32回 学者たちは誰ひとりとして「不倫」を否定しなかった――自分のセクシュアリティについて考えてみる

人はなぜ不倫をするのか (SB新書)

人はなぜ不倫をするのか (SB新書)

おすすめ優先度 ★★☆☆☆

実は、私は現在のいわゆる「一夫一妻制」ってちょっと無理があるんじゃないかな〜と秘かに思っている派。5年おきにパートナー契約を更新する時間差乱婚制とかどうだろうか。まあ、もともとは財産を守るために発生したのが婚姻制度だと私は思っているので、これだと本能には即していても実情からかけ離れているからダメなんだけど。お金と人手の問題がクリアできれば、契約更新ごとに子供を生んで3人くらい父親が違う子供を育てるのとかも面白そうだなと個人的には思う。

第33回 変わるべきは「私」ではない。容姿以外で自信はもてる――『ブスの自信の持ち方』

ブスの自信の持ち方

ブスの自信の持ち方

おすすめ優先度 ★★★☆☆

女性に対して「ブス」という言葉を向けること、また自虐として「私ブスだから〜」と自ら言うことは近年どうも歓迎されないムードになってきており、それ自体は私はけっこう良いことだと思う(「ちょうどいいブス」とかも)。ただ、男性に対してはいまだにデブだのハゲだのという言葉が投げられっぱなしなので、とにかく他人の容姿に関しては慎重に言及すべし……という空気がもう少し醸成されるといいなあ。

第34回 「自虐」は有効な処世術なのか?『負け犬の遠吠え』に息苦しさを感じた理由

負け犬の遠吠え (講談社文庫)

負け犬の遠吠え (講談社文庫)

おすすめ優先度 ★★☆☆☆

『負け犬の遠吠え』、この時代に読むとけっこう辟易してしまうような描写も多い。とはいえ、かつては自虐で嘯いてみるのが女性の独り身にとっては確かに有効で、『負け犬の遠吠え』時代もまたひとつのステップだったんだなあと思わせてくれる。この本の内容を真に受けてどうこうするよりかは、「こういう時代もあったのだ」とメタ視点で読むのがおすすめかな。

第35回 「女はオラオラ系が好きなんだろ?」という妬みは100年前から存在した

おすすめ優先度 ★★★☆☆

2014年くらいからずっと「ナンパ師ウォッチ」が趣味でいまだに辞められない私なのだけど(まあお金はかからないのでよし)、「女は誠実で優しくて一途な男よりも、暴力的で女好きな男のほうが好きなのだ」と信じている人がいまだにいることにびっくり。確かに表面だけさらうとそういうふうに見えなくもないかもしれないけど、そういうことじゃないんだよなあ。男性にもぜひ読んでみてほしいフェミニズム評論集。

第36回 生きる上で、「幸せになる」よりも大切なこと──ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引書』

おすすめ優先度 ★★★★☆

ルシア・ベルリンの短編集からは、特別に得られる教訓はない。目標を立てて、未来から逆算して今の行動を決めるという世界観ではなくて、ただ「今」が積み重なって未来に繋がっていく。いや、未来になど繋がらないかもしれない「今」を重ねていく。すごく惹かれる短編集ではあったけど、私はまだこの短編集を味わい尽くせるほど成熟はしていないなと思ったのも事実。

第37回 イ・ランは問い続ける。「なぜ、どうして、何のために?」小さな違和感との向き合い方

悲しくてかっこいい人

悲しくてかっこいい人

  • 作者:イ・ラン
  • 発売日: 2018/11/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

おすすめ優先度 ★★★☆☆

韓国文学が盛り上がっているので、そのムーブメントに乗っかって読んでみたイ・ランのエッセイ。彼女の目線はあまりにも素朴で、「若い女の子だ〜」とつい思ってしまうようなものも正直あった。だけど、その「若い女の子」の目線にもう一度戻ってみることが必要なときもある。基本的には20代の女性に勧めたいエッセイだけど、それ以上のすっかり凝り固まった世代の人が読んでみてももちろんいい。

第38回 ドイツにはキャバクラがない? 海外に比べて日本の風俗が多様なのはなぜ

おすすめ優先度 ★★☆☆☆

軽い気持ちで読める、女性目線の風俗エッセイ。私に時間があればぜひ「風俗文化人類学」なるものをやってみたいのだが……風俗って、風俗だけあって、あんまりちゃんとした文献がないんだよな。ヨーロッパ、アジア、南米、オセアニア、中東などなど、それぞれの地域で現在どのような風俗が発展しているのか、またそれぞれの風俗がどのような歴史的経緯を辿っているのか、調べたら面白いと思うんだけどなあ。

第39回 好きな人に選ばれない…でも「選別されない」世界は平穏なのか?

侍女の物語

侍女の物語

おすすめ優先度 ★★★★☆

マーガレット・アトウッドの『侍女の物語』は、小説もいいけどHuluのドラマもおすすめ。あの赤い衣服や白い帽子は、映像で見たほうがやっぱりインパクトがある。しかし、フェミニズムの小説としては面白いが、SFとして読むとところどころ「んん〜〜??」と突っ込みたくなるような設定もところどころある。

第40回 不倫を「だめ、絶対」ではまとめられない。他人の事情に思いを馳せる『ナラタージュ』

ナラタージュ (角川文庫)

ナラタージュ (角川文庫)

おすすめ優先度 ★★★★★

島本理生の小説を私は近年までほとんど読んだことがなかったのだけど、最近まわりでウォッチしている人が多いためここ1〜2年で慌てて読み出した次第。この『ナラタージュ』の回は、東出×唐田さんの不倫騒動の時期とちょうどバッティングしてしまい(AMの原稿は掲載より1〜2週間前に書いて送っているので、もちろん狙ったわけではない!)、なんでも、とてもたくさん読んでいただいたのだとか……。Twitterでは、往年の島本理生ファンと思われる方から「こういう島本理生評が読みたかった」とコメントをいただけて、すごく嬉しかったな。『ナラタージュ』は一言でいうと不倫の話なのだけど、恋愛や夫婦関係に悩んでいる幅広い人に読んでもらえるといいなと思っている小説。

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近いうちにNo.41〜50も書けそうなくらい、気が付いたら記事が溜まっていました。2018年にこの連載を始めて、もう2年というべきか、まだ2年というべきか。100冊を目指して頑張りたいところです。